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鹿児島で巫女さん4-3」(2014/04/06 (日) 20:02:00) の最新版変更点

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【夜・縁側】 京太郎「……気分が悪い」 京太郎(あんなメールを見たせいか目が冴えている。寝れない……) 京太郎(月はこんなに綺麗なのにな……はぁ) 京太郎「縁側で涼んでいよう……」 初美「京太郎?」 京太郎「うす、ずみさん?」 初美「イエースっ!はっちゃんなのですよー!」 京太郎「どうしてこんな夜にテンションが高いんですか……」 初美「そういうことは気にしたら駄目ですよー」 京太郎「は、はい」 初美「それよりも元気がありませんねー、どうかしたんですか?」 京太郎「えっと……」 京太郎(もう、いいか……言ってしまっても) 京太郎(幻滅されるなら勝手にすればいい) 京太郎(いい機会じゃないか。信じれるか、信じられないかを試す) 京太郎「……長い話になりますよ」 初美「どんとこいですよー」 初美「それに、こんななりでも私は京太郎よりも年上ですからねー」 初美「年下の舎弟が悩んでる時に聞いてあげるのも役目っ」 京太郎「舎弟になった覚えはないんですけどね……まあ、いいですけど」 初美「長くなるんだったら、私の部屋に来てくださいー。お茶ぐらい出しますよー」 京太郎「あ、はい」 京太郎「……そういえば、薄墨さん」 初美「はい?」 京太郎「……ありがとうございます」 初美「よく言えましたー」ヨシヨシ 【初美の部屋】 京太郎「という訳です」 京太郎「だから、俺は……小蒔さんの言っていることを素直に聞けません」 初美「……」 京太郎「すいませんね、こんな辛気臭い話をして」 初美「…………」 京太郎「薄墨さん?」 初美「京太郎」ニコッ 京太郎「はい?」 初美「まずは歯を食いしばれーっっ!!」バチーン 京太郎「けでぶっ!」 初美「京太郎は馬鹿ですよー!!!大馬鹿ですよーっ!」バチンバチン 京太郎「いた、いたいっ!」 初美「どうしてそんなになる前に周りを頼らなかったんですか!」 初美「苦しい時は苦しいっていうものなのですよ!」 初美「何で、一人で抱え込んだんですか!」 初美「それじゃあ、ただの自滅ですよ!」 京太郎「……っ!俺だって考えたさ!」 京太郎「だけど、巻き込んだら」 初美「そうやって一人で抱えて勝手に壊れる方がよっぽど迷惑ですよっ」 京太郎「薄墨さんになにがわかるってんだ!」 初美「あーもう、イライラしてきましたよー!ネコを被るのはもうやめですっ!」 京太郎「はっ、何を言ってるんだ。さっきからごちゃごちゃと!」 初美「やぞろしよっ!京太郎っ!!」 初美「わかりもはんよ!伝ゆいこともせんのに人の気持なんちわかっわけなかっ!」バチーン 京太郎「じゃあ、伝えたらどうだって言うんですか!」 初美「京太郎のこと、助くいに決まっちょっ!」 初美「口は何の為にあるんじゃっとな?人に言葉を話す為にあっとですよーっ」ベチコーン 京太郎「……だけど」 初美「じゃっどんも何もなかっ! 京太郎が一歩前に進んでいたら誰かが救いの手を差し伸べてくれたかもしれんっ!」 京太郎「そう言っておいて裏切るんだろ、どうせっ!友達なんてそんなもんだよなぁ!!!」 初美「裏切らない!試しっみもすかー?へんこっむん」バチーン 京太郎「この……!」ググッ 京太郎「俺は……!俺だって……!」 京太郎「俺だって、信じたかった!咲達を!友達を! あいつらの友達でいたかった!ずっと、ずっと好きでいたかった! 誰も嫌わずに麻雀を打っていたかった!」 京太郎「胸を晴れるように、真っ直ぐにたっていたい!だけど、もう遅いんだよ! 無理なんだよ!!」 初美「無理じゃなか!」 京太郎「無理だよ!アイツらは俺を騙していた!影で嗤っていた! それなのに、平然と友達面をしやがる!」 京太郎「何だよ、俺は道化かよ……本気の本気で友達だって思ってたのは、俺だけか?」 京太郎「……俺は許さない。騙した奴等を。影でコソコソ嗤っていた奴等を! 強くなるって願ったんだ!誰も彼も見返してやるって誓ったんだ! 真剣に、麻雀をやり始めたっ!」 京太郎「それを踏みにじったのは俺じゃない!周りじゃないかっ! だったら……!だったら、俺も狂っちまってもいいだろ!? 強くなる為に周りを蹴落としてもいいだろっ!」 京太郎「全部、無価値にしてやるって決めたんだ。俺が最強になって……」 京太郎「全員ぶっ飛ばす時まで!俺が望んでるんだ!」 初美「……嘘つき」 京太郎「ああ、嘘つきさ!嘘つきのクズで結構だ!」 京太郎「クズでもいい……俺は力が欲しいんだよ!」 初美「言ごあっこちゃそしこですか」 京太郎「それが、どうしたよ」 京太郎「俺は、迷わない。迷っちゃいけない。その為に……!」 初美(止めんと……!後戻いができなくなる前に!) 初美(私は――。私がやるべきこちゃ何だ!) 京太郎「……あ」 初美「京太郎が重い荷物を背負っててたのはもうわかったから」 初美「はぁ……私としたことが我を忘れて素で喋っちゃったのですよー」 京太郎「あ、ああっ」 初美「言いましたよね、京太郎は一人で抱え込み過ぎだって」 初美「一人で全部背負い込んだから重さに潰れて壊れちゃったんですよー」 京太郎「それでも、今更捨てられませんよ……もう、どうしようもないくらいまでくっついてるんですから」 初美「誰が捨てろと言いましたかー?」 京太郎「……えっ」 初美「京太郎一人じゃあ荷が重すぎる。それなら、私が一緒に持ってあげたら解決じゃないですかー」 初美「その狂気も。苦しみも。分けてしまえば痛くないですよーっ!」 京太郎「それは……駄目です」 京太郎「これは、俺のものです。どんな間違いがあっても責任は俺自身がとるものです」 初美「堅いこといいっこなしですっ、言ったはずですよ、もっと周りを頼れって」 初美「もっと、頼って下さい。周りを。まあ、すぐには無理だと思いますがねー」 京太郎「俺は……」 初美「答えは今すぐに出さなくてもいいですよー」 初美「嫌だって言っても無理矢理付いていきますから」 京太郎「……薄墨さん」 初美「はっちゃん、そう呼んで下さい」 初美「今まで私だけ苗字読みで何だか蚊帳の外だったんですよ?」 京太郎「……はっちゃん」 初美「はい」 京太郎「正直、まだ気持ちの整理はつきません」 京太郎「裏切った咲達は憎いって思ってます」 京太郎「狂気に染まってでも力が欲しいって思ってます」 京太郎「それでも……貴方の言ったことは胸に刻まれました」 京太郎「その、何というか!」 京太郎「はっちゃんなら……信じてもいいかなーって」 京太郎「ああもう!恥ずかしい!」 初美「えへへ、京太郎-!」ギュウッ 京太郎「ちょ、強く抱きつき過ぎですって!!」 初美「気のせいなのですよーっ!」 京太郎「……全く」 京太郎(でも、なんでだろうな。すっげー暖かくて……いい気分だ) 京太郎(何だかはっちゃんのことを考えてたら……) 京太郎(いやいや、だってロリだぜ?あり得ないって) 京太郎(お、俺まだロリコンになった訳じゃねーし!) 初美「京太郎、どうしたんですかー?」キョトン 京太郎「うわああああああああああああ!!!!」 京太郎(違う違う、ありえんありえんっ!) 京太郎(くそっ、初めて過去を自分から打ち明けた人なのか知らねーけどさ!!) 京太郎(静まれ、俺の意識っ!!!!) 初美「はいはい、暴れたら駄目ですよー」ギュウッ 京太郎「いい加減離して下さいよっ!」 初美「駄目ですー。離したら、京太郎が逃げちゃいますしー」 京太郎「逃げませんから、もう!」 京太郎「……すいません、見苦しいところを」 初美「ふっふっふ、京太郎の弱みゲットなのですよー」ニパーッ 京太郎「勘弁して下さいよ、もう」 初美「でも、“二人だけの秘密”って嬉しいですー。何か、乙女心にくるといいますかー」 京太郎「……本当に秘密にしといて下さいよ?」 初美「わかりましたー。でも、姫様達は笑わないで真剣に聞いてくれると思いますよ?」 京太郎「……そうですかね」 初美「ていっ」デコピンッ 京太郎「いてっ」 初美「ダメダメですよー!人は信じる、これ大事っ!」 京太郎「さ、然様ですか……」 初美「そう言えば京太郎ー」 初美「今日は一緒にこの部屋でお泊りですよー!」 京太郎「えっ」 初美「今日は一緒にこの部屋でお泊りですよー!」 京太郎「いや、二度は言わなくてもわかりますから」 初美「むむむ」 京太郎「むむむじゃなくて。それはさすがにやばいでしょう」 京太郎(主に俺の理性とか) 京太郎「誰かに見つかったらどうするんですか?」 初美「……」 京太郎「黙らないで下さいっ!」 初美「な、なるようになりますよー」 京太郎「ならないですって!はっちゃんは女の子なんですから」 初美「えへへ……」 京太郎「じゃあ俺はここで」 初美「ぎゃーー!待って下さいーー!」 京太郎「腰にひっつかないで下さいよ!ズボンがずれ落ちるー!!!」 京太郎「はぁ……はぁ……」 初美「全く、油断も隙もあったもんじゃないですよー」 京太郎「だから自分の部屋に帰りますってば」 初美「だーめーでーすー」 京太郎「どうして?」 初美「今の京太郎を一人になんてできはしませんー」 初美「落ち着いたとはいえ……京太郎は人のぬくもりをもっと味わうべきなのです」 京太郎「それで」 初美「私と一緒の布団で寝るんですよー」 京太郎「ノーチャン」 初美「な、なぜ!」 京太郎「俺男、はっちゃん女。はい、ファイナルアンサー」 初美「そんな細かなことを気にしたら負けですー」 京太郎「そういう問題じゃないと思うんですけどね……」 初美「い・い・か・ら!明日は早いんですから寝ますよー! ここで寝るまではしがみつきますー!」 京太郎「……め、面倒な人だなあ」 初美「京太郎には負けますよー」 京太郎「……今日だけですよ?」 初美「えー」 京太郎「えーじゃないですよ、こんな所見られたら……」 初美「去勢ですねー、チョッキンチョッキンですよー」 京太郎「やめて!」 初美「ふぁぁ……ねむねむ。京太郎、いい加減寝ますよー」 京太郎「な、何かすごい理不尽な気がするぞ」 初美「はいはい。おとなしくしてくださいねー」 京太郎「うわあっ!抱きつかないで下さいっ」 初美「あったかーい……」 京太郎「聞いちゃいねえ!」 初美「zzz」 京太郎「しかも寝るのはやっ!」 京太郎「……ええいままよ!俺は寝るぞーっ!」 【朝・はっちゃんの部屋】 初美「……京太郎、ずっと一緒ですよー」 京太郎(なんつー恥ずかしい寝言、聞いているこっちが恥ずかしいぞ) 京太郎(しかし、何だかんだで押し切られてしまった……お互い抱き合って寝てるとか何処のバカップルだ) 京太郎(こんな所を誰かに見られたら……) 京太郎(朝勃ちがなくてよかった。もしこんな所を見られたら……)ブルブル コツコツコツ 京太郎(げえっ!誰か来るぞ!!) 初美「京太郎ー」 京太郎(まだ寝てるとかちょ、まっ!) 巴「はっちゃんー。朝だよー」ガラッ 京太郎「あ」 巴「え」 京太郎(ヤバい、巴さんの目が店になっているぞ!) 巴「きょ、きょーちん?どうしてはっちゃんの部屋に?」 巴「というか何で二人一緒の布団で寝てるんですかねぇ……」 巴「これは霞さん行きですねぇ」 京太郎「ま、待って下さい!」 巴「見ちゃったものは見ちゃったものですし……」 京太郎(おいおいおいおい!洒落にならねーぞ!このことが他の人達にバレたら……!!) 京太郎(な、何とか言い訳をしないと!!) 京太郎「巴さん!!!」 京太郎「はっちゃんに捕まったんです、許してくださいなんでもしますから!」 巴「ん?」 京太郎「あ、やばっ」 巴「今なんでもするって言ったよね?」 京太郎「イッテマセン」 巴「かす」 京太郎「許して下さい、何でもしますから!」ドゲザーッ 巴「いや、まあ……そこまでしなくてもいいんですけどね」 巴「そんなことだろうとは思っていましたし」 巴「といいますか、私はかすみん達と違ってそういうのにはおおらかですから」 巴「だから、安心して続きをやってもいいんですよ」ニッコリ 京太郎「やりませんってば!というかそういうことはしてませんっ」 巴「はいはい。今日は夕方からデート、するんでしょう?なら浮気はいけないなー」クスリ 京太郎「仰る通りでございます」 巴「で、そのことは私とはるる以外は知ってるの?」 京太郎「知らないデス……」 巴「睾丸……破裂……仕方がなかった……京子ちゃん」 京太郎「わかりました……後でちゃんと伝えておきます」 巴「うん、そういうことは後出しされると嫌だからね」 巴「それにしても、きょーちん、はっちゃんの呼び名変わったよね?」 巴「これまた深い間柄になったんでしょうねー。ひゅー」 京太郎「ま、まあそれなりに」 巴「ややや。正直ですねー。まあ、私には関係ありませんが」 巴「早く部屋に戻った方がいいですよ。かすみん達が来るかもしれませんし」 京太郎「わ、わかりましたっ!」イソイソ 巴「そういえば午前中は誰と仕事なんですか?」 京太郎(今日は霞さんと仕事かー) 霞「……」ウズウズ 京太郎(何かすっごいふるふるしてるけど大丈夫なんだろうか) 霞(京くんと二人きり……久しぶりの二人きり……) 霞(へ、変な所はないはずよ!ちゃんと、朝にお風呂も入ったし!) 霞(髪もとかして服装も整えたわ。完璧よ!!!) 京太郎「あ、あのー……」 霞(!?) 京太郎「仕事終わったら少し時間貰えませんか?話したいことがあるので」 霞「えっ」 京太郎「駄目、でしょうか」 霞「だ、駄目じゃないわ!」 霞(やだ……もしかして、告白!?お、落ち着きなさい、石戸霞。 京くんは見ての通り朴念仁、そういう行動に出るとは思えない) 霞(冷静になって考えてみるとわかることよ。そうすると、彼が話したいことって?) 霞(やっぱり、告白!?や、やだーーー!私心の準備できてないのよーーーー!!)イヤンイヤン 京太郎(だ、大丈夫なのか、この人) 霞(でもでも!すぐに告白を受けてオッケーを出すのは軽い女って見られるんじゃないかしら? それはいけないわ!付き合いには節度を持ってむかわないとっ) 霞(ま、まずはデートから……?) 霞(それとも、文通から?) 京太郎(……返事はまだですか) 霞(も、もう!!!本当にもう!京くんはいつも私を困らせるんだからっ) 霞(それを知らないで君は……!悔しいなぁ) 霞「わ、わかった……仕事が終わってからでいいのかしら?」 京太郎「はい、それで大丈夫です。あ、それと」 霞(でも、女の違いにわからないとこはやっぱし未熟ね……。 せっかく、衣装も整えて髪型も整えたのに) 京太郎「いつもより綺麗ですね。髪型、似合ってます」ニコッ 霞「……えっ」 京太郎「いやぁ、なかなか言い出せなくて……」 霞「も、もうっ!そういうお世辞を言って!」 京太郎「お世辞じゃありませんよ。俺、霞さんのこと綺麗だって本当に思ってるんで」 霞(卑怯よ、京くんっ!卑怯よ……) 霞(そうやって褒められると、期待しちゃうよ……。 私にもチャンスがあるって) 霞(京くんは無意識かもしれないけど、女の子はそういう言葉には弱いのよ?) 霞(……君のこと、ますます好きになっちゃうじゃない!!!) 霞(……京くんの馬鹿) 霞(甘やかしの馬鹿よ、君は) 霞(でも、好きなの) 霞(その馬鹿な所を含めて、全部) 京太郎「あの……」 霞「何かしら?」 京太郎「聞きたいことがあるんです。この家のことなんですけど」 京太郎「この家の裏にあるでっかい神社の本殿はここが管理しているじゃないですか」 霞「ええ、そうね。あの神社は神代家が管理しているわ」 京太郎「俺、一度も入ったことないんですけど大丈夫なんでしょうか? 何か、色々とお参りとしたほうが……」 霞「その心配はいらないわ。あそこは選ばれた人しか入ることができない神境だから」 霞「京くんが無理に入る必要なんてない」 京太郎「なら、いいんですけど」 霞「だから、絶対に入っちゃだめ」 霞「あの先は神様の領域だから。常人にはちょっと厳しい空間だと思うの」 京太郎「わ、わかりました……」 霞「わかってくれたらいいの。それじゃあ仕事を再開しましょう?」 京太郎(霞さんがそこまで言うってことは何かあるのかな……) 京太郎(いや、やめておこう……) 霞「それよりも仕事を早く終わらせないと」 京太郎「しかし、裏方ってこんなにも大変なんですねー」 霞「それはどの仕事でも言えることよ。表では華々しいものも裏ではすごいんだから」 京太郎「そうですね……よし、頑張ろう!」 【昼・霞の部屋】 京太郎「ありのまま起こったことを説明すると霞さんに拉致られていた」 霞「人聞きが悪いわ。ただ、一緒にお食事しましょうって連れてきただけじゃない」 京太郎「ほぼ強制だった気が……いや、いいですけど」 京太郎「ご飯とかどうします?」 霞「その心配はいらないわ!私が朝作っておいたから」 京太郎「よ、用意がいいですね……」 霞(まずは、成功ね。男の人を掴むには胃袋からって本に書いてあったわ。 コカージスッコーヤの恋愛本なだけあって説得力も十分ねっ!) 京太郎「とりあえず、頂きます。他の皆は」 霞「ほ、他の子達は各自食べていると思うわ!」 霞(ステップ一。ライバルよりも先を行け。悪いけど、先に京くんの胃袋をゲットするわ) 京太郎「そうですか。いやー、俺だけ霞さんの料理を味わうのは抜け駆けかなーって」 霞(ううっ……京くんのキラキラした視線が痛い。で、でもこれで勝負をかけないと!) 京太郎「じゃあ、改めて頂きますっと」ングング 京太郎「……うまいっ」テーレッテレー 霞「そう、よかったっ」 霞(ステップニ。彼にあーん。この前は失敗したけど、今回こそは……!) 霞「きょ、京くん」 京太郎「なんでしょう?」 霞「あ、あ、ああっ。あっ」 京太郎「……?」 霞「アーン!!!」ズビシッ 京太郎「ふごっ!スプーンが口に刺さったあ!」 霞「あ、わわわっ」 霞「こ、こういう時の対処法は……!」 霞(本には……確か、ここは優しさをアピールすることで逆に好感度アップって!) 霞(でもどうしたらいいのよぉ!!) 京太郎「……霞さん」 霞「きょ、京くん?、だ、大丈夫?」 京太郎「それについてはご心配なく。それよりも……はい、あーんしてください」 霞「ふぇ?」 京太郎「いや、だって霞さん手が震えて全然できないじゃないですか。だから、俺が代わりに」 京太郎「昨日、はっちゃん達がやってたのを見てやりたかったんですよね?」 京太郎「俺なんかでよければって思ったんですけど……駄目でしたか?」 霞「う、ううん!!全然平気!」 霞(ま、マズイわ……想定外の事態!苦手分野よ、これぇーーーー!!) 霞(どうしてこういうのは麻雀みたいにうまくいかないのよ!) 京太郎「はい、口開けて下さいー」 霞「……あ、あーん」モグモグ 霞「おいしい……」 京太郎「それは霞さんが作ったから当然でしょう」 霞「そうじゃなくて……あーんされたから、おいしいのっ」 京太郎「そうですか?」 霞「そうなのっ!京くんはもうっ!」 霞(無自覚すぎるのよ、やっぱり甘やかしのタラシだわ! ああ、顔が真っ赤よ……!) 京太郎「あはは……そう言ってもらえて光栄です」 京太郎「では、もう一度しますか?」 霞「……うん」コクン 京太郎「俺で良ければ」 霞「……思ってたより恥ずかしいのね」 京太郎「そうですか?こういうのって友達同士やったりしません?」 霞「それは同性の話でしょう?異性になると、その……」 京太郎「まあ、俺はやってて楽しいですけどね」 霞「もうからかって!」 京太郎「だって、今日だけで霞さんのいろんな素顔を見れたんで」 京太郎「それってすっごい嬉しいことだなーって。霞さんって見ていて可愛いですし」 霞「」ボンッ 京太郎「霞さん?」 霞(か、かかかかかかっかく) 霞「そ、そ、そそそっそなんあことおないわわよ」 霞(か、可愛いって!かかくくぁ可愛いって!) 京太郎「ど、どうしたんですか?顔がやばいことになってますよ?」 霞「だ、誰のせいよ、誰の!」 霞(マズイ、そんなこと一度も言われたことなかったから……すごい、嬉しい) 霞(駄目ね……私、完璧に惚れちゃってるみたい) 霞(はぁ……こうも好きになっちゃうなんてね) 霞(それにしても、こうしてるとまるで私と京くんが新婚さん……! ああ、また顔が赤くなってきたわ!) 霞「……うふふ」 京太郎(何か変なことでも言ったのかな?さっきから顔を真っ赤にしてるし) 京太郎(うーん、どうしたものか) 霞(新婚……初夜……愛しあう……きゃーーーーー!!!) 小蒔「霞ちゃん、失礼しますねー」ガラッ 霞(……ね、寝取り!?小蒔ちゃんに寝取られちゃうの!!) 小蒔「あ、京太郎さん!」トテテテ 京太郎「どうしたんですか?お昼なら小蒔父さんと一緒なはずじゃ……」 小蒔「えっと、それでもお腹が空いちゃって……」 霞(な、何で……ラブラブな夫婦なのにいつの間にかに仮面夫婦!) 霞(いやあああああああああああああああ!!!) 京太郎「霞さんはさっきからどうしたんでしょうか?」 小蒔「具合がわるいのでしょうか……そうでしたら早くお医者様へと連れて行かないといけませんっ) 京太郎(たぶん、違うんじゃないかなぁ) 京太郎「落ち着きましたか?」 霞「わ、私は最初から落ち着いていたわ……」 京太郎(全然そんな感じには思えないけど) 霞「……コホン。それで、小蒔ちゃんはどうしてここに?」 小蒔「まだお昼休憩の時間もあるので遊びに来ました」ニコニコ 霞「そ、そう……」 霞(できればもっと遅く来て欲しかったわ……) 京太郎「そうですか」フアア 霞「あら、京くん。眠いのかしら」 京太郎「そうみたいですね。まるで小蒔さんみたいだ」 小蒔「もうっ、私はそんなに寝ていませんっ」 京太郎「あはは……すいません、霞さん。午後の仕事の時間まで後どれくらいありますか」 霞「一時間くらいはあるわ。朝に昼食を作っておいたからいつもより多めね……」 京太郎「そうですか」 京太郎「寝るにしても枕が欲しいですね……」 霞「……」ピコーン 霞「きょ、京くん?」 京太郎「はい、何でしょうか?あ、そうでしたね、寝るなら自分の部屋でってことですよね」 霞「そうじゃなくて!あー、もう……」 霞(恥ずかしくて言えないわよっ、膝枕してあげようかだなんて) 霞(でも、ここで攻めなきゃ……他の娘達に置いてかれちゃうわ) 霞(勇気をだすのよ、石戸霞っ) 霞「その、ね……別にこの部屋で寝てもいいのよ?」 京太郎「お気持ちは嬉しいですが、霞さんの布団を借りる訳には」 霞「だから違うのっ!膝枕、してあげるって言ってるのっ!」 京太郎「えっ?その、いいんですか?」 霞「私がいいって言ってるからいいのよ!」 京太郎「それじゃあ、お言葉に甘えて……」ゴローン 霞「……ひゃっ」 霞(京くんがこんなにも近くにいる……マズイ、緊張して太ももが震えるわ!) 小蒔「いいなー、私もやりたいですー」 霞「こ、小蒔ちゃんはまた今度ね」 霞(この座は渡さないわ……千載一遇の好機っ、いただくわ!) 京太郎「あー、その……意外と恥ずかしいものなんですね、これって」 霞「えっ」 京太郎「だって、霞さん。顔とか真っ赤じゃないですか」 霞「も、もももう!!!これは違うの、あったかいものを食べたからなのっ」 京太郎「……じゃあ、そういうことに」 霞「馬鹿……っ」 京太郎「はは、でも。馬鹿でよかったっす。俺」 京太郎「霞さんのそういう顔、見れたから」 霞「……」ボンッボンッ 京太郎「それに、すっごくきもち、いいし……」グー 霞(いやあああああああ!さっきからそういうことを自然と言わないでよぉ!) 霞(……穴に入って引きこもりたいわ。全く) 小蒔「……いいなぁ」 大切な人が掌からすり抜け、落ちていく夢を見た。 ぐしゃり。何かが破裂した音が聞こえた。 それは、元々は人間。否、人間“だった”ものという表現が正しいだろう。 ごく当たり前の日常を生きて平穏を謳歌していたはずのありふれた人間だ。 だらだらと流れている赤の河。それは生命の象徴たる、血。 明らかに致死量だった。素人から見てもわかる。 最も、それ以前に人としての原型を留めていないのでそんな判断は必要はない。 腕はひしゃげ、足は破裂し、頭は不恰好なスイカのようだ。 気持ち悪い。グロテスクな肉塊を見て、彼、いや彼女だろうか。 ともかく、それは性別の判別ができない程に壊れていた。 吐いた。死体を汚すなど、やってはいけない禁忌の行為なのに。 吐き出すものがなくなるまで、吐き続けた。 「――――」 “誰か”が咆哮を上げている。 怒りか、哀しみか。 両の瞳からは止めどもない涙を流し、視線は宙を穿つ。 見上げた空に落ちていく。 優しい物語は終演のカーテンフォールを告げる。 アンコールなど存在しない。 死んだら終わり。それは人間の摂理なのだから。 助けてください。“誰か”がピンク色の肉を握り締めて周りに乞う。 ぶちゅり。肉が潰れる音が掌から聞こえてくる。 あれ、おかしいな。まだ生きているのに。“誰か”は薄く笑って肉を掻き集める。 それは耳たぶであり。それは折れた腕であり、それは毛ほども残っていない足であり。 それは固い固い歯であり。それはぶにぶにとした脳みそであり。 それは――何の未来を映していない、瞳。 ぐちゅぐちゅとありったけの人間“だった”ものを集めて叫ぶのだ。 助けてください、と。意味もないのに。 “誰か”は立ち上がる。 そうだ、病院に行こう。病院に行けばきっと助かるはずだ。 あはは。ははは。はははははははは。あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっっ。 はははははあひゃひはははゃひゃひゃひひゅひゅふはははははひゃひゃひゃひゃひゃっっ。 ひゃはやははyはははははtyはっygっへfらgrhがえwrsがえrsgvdscthdれ! a。あ。ああっ。ああああぁあぁぁああぁああっ!!! 赤い化粧を塗りつけて。“誰か”は笑う。 人間“だった”ものを抱きしめて。 京太郎「うわああああああああっ!!」ガバッ 霞「きゃっ!」ボインッ 京太郎「あ、ああ……ゆ、夢?」 霞「えっと、どうしたの?突然、顔色が悪くなって起こそうかなって思っていたけど」 京太郎「か、霞さん……?」 霞「ええ、そうよ……っきゃあ!」 京太郎「よかった、無事で……本当に、よかった……!!!」 京太郎「…………よかった、よかったぁ」 霞「……はいはい。私はここにいる。ここにいるから」 霞「君の前からいなくなったりしないから」 霞「だから、泣かないで?ねっ」 京太郎「………はい」 京太郎「すいません、仕事の前にちょっと失礼します」ダッ 霞「あ、京くんっ」 京太郎(やばい、やばいやばいやばいっ!あの夢はやばい!何でかわからないけど、やばいんだよっ) 京太郎(何か、護れる武器を。人を護れる武器をっ!) ドン ???「うおっ!おいおい、前はちゃんと見とかないと怪我するぜ?」 京太郎「あ、すいません……」 ???「まあまあ、落ち着けって。何を慌ててるかどうかは知らねえけどよ……巫女さんがお前のこと、呼んでたぜ?」 京太郎「え、えっ」 ???「その巫女さん、すっげー心配してたぞ?戻ってやれって」 京太郎「でも……」 ???「とりあえずだ。お前が急いでる要件は後にしとけ」 京太郎「わかり、ました」 ???「女を泣かすんじゃねえぞ、色男」ニヤッ 京太郎「えっと」 流「流。俺は秋葉流ってんだ。別の宗派なんだが、用事があってね。立ち寄らせてもらったんだわ」 京太郎「流さん、すいませんでした」 流「俺よりも巫女さんに謝ってやれ。ほら、俺のことはいいから行ってこい」 京太郎「はい!」ダダダダッ 京太郎(今は……少し考える時だ。落ち着こう) 流「……あー。そういや、名前聞いておくの忘れてたわ」 流(まあいっか。どうせ――誰も、俺の風を止ませてはくれねぇんだしよぉ) 京太郎「……」 小蒔父「やあ」 京太郎「えっと、俺を呼んでいた巫女というのは」 小蒔父「私だ」 京太郎「すいません、殴っていいですか?」 小蒔父「ぼ、暴力反対っ」 京太郎「はぁ……まあいいですけど。俺になんの用でしょうか?」 小蒔父「メイド喫茶に行きたいから道連れ要因が欲しいんだ」 京太郎「すいま」 小蒔父「いやいやいや!」 京太郎「はぁ……わかりました」 小蒔父「わかってくれて嬉しいよ。それじゃあ、行こうか」 小蒔父「……道中、君の悩み事を聞くよ」 京太郎「ありがとうございます」 京太郎「夢を見たんです……」 小蒔父「夢を、かい?」 京太郎「はい、実は……」 カクカクジカジカ 小蒔父「誰かが死ぬ夢か」 京太郎「……それも、いやにリアルで、鮮明だったんです」 京太郎「もし、夢の人が俺の周りにいる人だと考えたら……」 小蒔父「ふむ……私は夢を見た君ではないから明確な回答は出せん」 小蒔父「ただ、全身バラバラで破裂しているということは大分懸念を絞ることができる」 京太郎「それは……」 京太郎「リンチによる惨殺……?」 小蒔父「君の見解はそれか……本当にそう思うかね?」 京太郎「集団で鉄パイプでボコボコ叩かれたりノコギリで斬られそうになったり」 京太郎「怖いですからね……」ギリッ 京太郎(そうさ、集団でかかられると逃げられない) 京太郎(畜生……!嫌なことを思い出しちまった) 京太郎「狂った奴等は平気でやりますからね……赤信号、皆で渡れば怖くないってよく言うじゃないですか」 小蒔父「まあ、そうだが……いやに詳しいね」 京太郎「ははは、たまたまですよ。たまたま」 京太郎(……はぁ。アイツら、今は全国大会に向けて呑気にやってるんだろうさ) 京太郎(まあ、それもそうだろうな。なんつったって首謀者みてーなもんなんだから、アイツらは) 京太郎(…………ケッ) 小蒔父「どうしたのかね、須賀君。リラックスだよ、リラックス。 あ、すいませーん!メイドさ~ん!」 京太郎(しかし、メイド喫茶で話すことじゃないな、これ) 京太郎(できることなら……この手でアイツらを――) 京太郎(目には目を歯には歯を。同じ目にあわせてやりたい) 京太郎(やられっぱなしで終われるかよっ!) 京太郎(前までは、そう考えていたんだけどな) 京太郎(はっちゃんにいくらかぶちまけたから気が緩んでるのかな) 京太郎(だけど。アイツらが憎いってのはそう簡単には消えねえ) 小蒔父「いやぁ~~~~、理緒ちゃんは今日も可愛いねぇ~~~~。 さすが、爆裂ロリータの異名なだけはあるね!!」 理緒「はうっ!そんなことありませんよ~~~」 京太郎(うーん、相談する人を間違えたかな……) 理緒「そちらのお客さんもそんな顔をしていないで楽しんでいってくださいね~」 京太郎「あ、はいっ!」 京太郎(とりあえず、今は気を休めとくか……) 小蒔父「ほら、須賀君っ!一緒にリオリオダンスを踊ろうっ」 京太郎(巴さんとかに相談したほうが良かったな、うん) 【夕方・小蒔家】 京太郎「何か午後は小蒔父さんと街で遊んでいただけだったような……」 京太郎「まあ、これも仕事の一種だって伝えておいたよ☆って言われたからいいんだろうけど」 京太郎(いいのかなぁ……これで) 京太郎「先に戒能さんに連絡しておこう」 プルルルルルルル 良子「はい、戒能です」 京太郎「あ、須賀です。どうもー」 ガラッキョウク 良子「少年か、約束通りちゃんとかけてきたな」 京太郎「そりゃあそうですよー。戒能さんとのデートを俺が忘れる訳ないじゃないですか」 エッ 良子「全く、よく口が回る奴だ」 京太郎「そりゃあ綺麗な女性の前では王子様を気取りたいものなんですよ、なんちゃって」 良子「…………ぅ」 京太郎「あれ、か、戒能さん?」 良子「……何でもないっ」 ガラガラピシャッ 京太郎「それでですね、仕事が終わったんで電話したんですけどどうしましょう」 京太郎「俺の方はちょっと用事があってまだ外にはでれません」 良子「そう……用事は早く終わるの?」 京太郎「多分……早く終わるかと」 良子「ならいい。女の人をまたせるのはデートに誘った男としてどうかと思ってるから」 京太郎「ははは、遅れませんよ。では、用事が終わったらまた連絡しますね」 良子「オーケー。シーユー少年」ブツッ 京太郎「…うーん、相変わらずクールな人だなあ」 京太郎「さてと……どうしようか」 【霞さんの部屋】 京太郎「霞さーん、いますかー」トントン 霞「……いるわ」 京太郎「失礼しますねー」ガラッ 霞「…………」ゴゴゴゴゴゴ 京太郎「ど、どうも」 京太郎(な、なんだ。この空気!すごく重いぞ!?) 京太郎(色々と話すことはあるけど何から話そう!?) 京太郎「霞さんって嫉妬深くて怖いです」 霞「……えっ」 京太郎「いやあ、何というか……雰囲気が」 霞「ち、違うのっ!こ、これは嫉妬じゃなくて!」 霞「愛情表現よっ!愛情表現っ!」 霞「その、よくあるでしょう?好きな人にはついついいじわるしたくなるって」 霞「それと同じよ。うん、そうに違いないわ」 京太郎「……えー」 京太郎(というか、俺もしかして告白されてる?) 京太郎(おもいっきり愛情って言われてるんだけどなぁ……) 京太郎(霞さんの無言の圧力も愛情表現なのか?) 京太郎(わかんねーよ!!恋愛関係については昔っからからっきしだしよぉ……) 京太郎「つまり、愛情表現だから嫉妬じゃないと」 霞「そ、そうよ。京くんもわかっているじゃない」アセアセ 京太郎「……ひとまずはそういうことにしておきます」 霞「……」ホッ 京太郎(まあ、いいか。今はそうじゃなくて) 京太郎「あの……俺、これから出かけてくるんで」 霞「そ、そうなの?」 京太郎「はい、戒能さんにお礼も兼ねて食事でも」 霞「ふんふむ……」 京太郎「一応、今日は遅くなるって伝えておこうかと。前は連絡もなかったんで」 霞「そうなの、ちゃんと学習しているのね。」ナデナデ 京太郎「……その、こうしてると。まるで俺が霞さんの子供みたいなんですが」 霞「十月十日、頑張ってお腹の中で育てました」 京太郎「何言ってるんですか」 霞「冗談よ、冗談」 京太郎「という訳の約束です」 霞「そう、わかったわ」 霞(本当はわかりたくないけど……今は我慢よっ) 霞(私は寛容な女の子になるのよ、ここで一歩引くことで私に対してのイメージも変わるはず……) 霞(完璧よ、これで京くんをゲットよ!) 京太郎(んー、本当に大丈夫かなぁ……) 京太郎(一回デートを断った手前もあるしなあ) 京太郎(正直、霞さん達は一緒に暮らしているから一緒に出かけても大したことないと思うんだけど) 京太郎(わからん……こればっかりは女の人に聞くしかないのか?) 京太郎(誰か頼りになる人はいないか?) 京太郎「よし、色々あったけどこれで後の心配はなくなったぞ」 京太郎(戒能さんとも待ち合わせ場所も確認したし万事オッケー) 京太郎(服も普段よりはおしゃれにコーディネート、チャラくない程度にアクセもつけて) 京太郎(まあ、何だかんだでこういうデートって初めてじゃないか?) 京太郎(音楽でも聞きながら行くか……) 京太郎(普通のでいいか……) 京太郎(何だか交通事故を起こしそうな曲だしな、アレ) 京太郎(待ち合わせの場所に辿り着いたら戒能さんがぐっちゃりなんて……) 京太郎(あれ……まさか今日見た夢ってこれか?) 京太郎(ということはもう、安全かな。後は安心して遊べるかなっ) 【待ち合わせ場所】 良子「やあ、少年」 京太郎「どうも。いつものスーツ姿なんですね」 良子「うるさいっ、仕事から直帰だから仕方ないだろ」 良子(私だって出来れば、私服のおしゃれな格好で来たかったさ……) 京太郎「そうですか。でも、似合ってますよ。仕事が出来る女って感じで」 良子「褒めても何もでないぞ……」 京太郎「いえいえ。本心からですよ」ニコッ 良子「……っ」 良子(ぐぬぬ……調子が狂う。私の方が年上なのに) 京太郎「それじゃあ立ち話もなんですし、何処か食べに行きましょうか」 良子「ん。あ、そういえばなんだけど」 京太郎「はい、どうしたんですか?」 良子「いや、知り合いから有名なピアニストのリサイタルのチケットを二枚もらったからどうかなーって」 京太郎「時間はどうなんですか?」 良子「まだ余裕があるから大丈夫。先にご飯を食べてもオッケー」 京太郎「わかりました。それじゃあ開演時間に上手くあわせますか」 良子「……それでなんだけど」 京太郎「??」 良子「これって一応デートなんでしょう?」 京太郎「一応はそういう感じですね」 良子「だったら、その……わからないか?」カアアッ 京太郎「俺にはさっぱり……言ってくれなきゃわかりませんよ」 良子「……手を、つなぎたくないのか?」ボソッ 京太郎「へっ?繋ぎたいんですか?」 良子「ち、違う!少年がデートだって言うからしかたな」ギュッ 京太郎「それじゃあ繋ぎましょうか、『良子』さん」 良子「~~~~~~~!!」カアアアアッ 京太郎「デートなんですよね?それじゃあ苗字呼びは失礼ですよね」 良子「あ。あ、あわっ」 京太郎「ですから良子さんも俺のこと、少年じゃなくて京太郎って呼んで下さい」ニコッ 良子「そ、そんな恥ずかしいことできる訳ないだろっ!!」 京太郎「えー、そうですかぁ?ただ、下の名前で呼ぶだけじゃないですかー。 良子さんってもしかしてそういう経験が」 良子「あ、ある。あるに決まってる!わ、私は――」 「しょ、処女じゃないしっ!!!」 シーン 京太郎「……あのぉ」 良子「処女じゃないから下の名前で呼ぶことぐらいできるっ!」 京太郎「……そ、そうですか」ドンビキ 良子「そ、そうだ!すっげーんだからな、何人もの男をちぎっては投げてきた!」 京太郎「表現がおかしいですよ良子さん!」 良子「私が処女という風潮、ノーウエイノーウエイ」 京太郎「ソウデスネー」 京太郎(周りの視線が痛い……帰りたい……!) 良子「きょ。きょっときょきょっ」 京太郎「もう、いいですから……無理しなくていいんですよ」ニッコリ 良子「だ、駄目だ、それじゃあ不公平じゃないか!」 良子「い、意地でも呼ぶからっ」 京太郎「わかりましたわかりました。とりあえず、ここから離れましょうね」 良子「まだ話は終わってないぞっ」 【喫茶・緑屋】 良子「というわけで私は処女じゃないから」 京太郎「分かりましたって。何回目ですか、その言葉」 良子「仕方ないじゃない。きょ、きょっ!『京太郎』が余りにもわからずやだったから」 京太郎(街中で処女じゃないって叫ぶ人よりはましだとおもうけどなぁ……) 良子「それで、京太郎はなぜこの喫茶店に?」 京太郎「ああ、小蒔父さんにここのコーヒーはおいしいって聞いたんですよ」 京太郎(女の子が可愛いから行ってるんだ~と言ってたことは考えないでおこう) 京太郎「それじゃあ何を頼みますか?」 京太郎「すいません、注文いいですかー」 眼鏡の少女「はーい」 京太郎「このラブラブカップルセット一つで」 良子「なっ、な、なっ!」 眼鏡の少女「うわぁ。お二人さん、彼氏彼女の関係ですか?」 京太郎「それに近い関係ですね」 良子「何言ってるんだ、お前はーーー!」 京太郎「だって、これデートですし。それにカップル割で安いですよ?」 良子「そういうことを言ってるんじゃない!その、恥ずかしいだろう!」 京太郎(さっきのアレのほうがもっと恥ずかしいと思うんだけどなぁ……) 京太郎「ともかく、これ一つ」 眼鏡の少女「畏まりましたー」 京太郎「……そんなに睨まないで下さい。俺、何かしましたか?」 良子「自分の胸に手を当てて聞いてみろ」 京太郎「はて、俺の胸は正直者で嬉しいなーって言ってますが」 良子「一回、心臓を止めてやろうか……?」 京太郎「そんな物騒なことを言わないで下さいよ……」 良子「誰のせいだ、誰の」 京太郎「ちょっとした下心だけしかありませんよ?」 良子「それを駄目だって言ってるんだ」 京太郎「いやいや、これが俺の地なんですって。はるる達の前ではあんま見せないんすけどね」 良子「どうして?」 京太郎「何か、違うんですよ。全員がいい人だってことはわかるんですけど」 京太郎「どうしてだかわからないんです、自分でも。ただ、壁を作っているといいますか」 京太郎「一緒の家に暮らしてるとどうも気を使っちゃうんでしょうね」アハハ 良子「ふむ……ハルが聞いたら悲しむぞ。アイツ、お前に懐いてるし」 京太郎「何ででしょうかねえ……」 良子「何かのオーラがあるんじゃないかな?」 京太郎「んなバカな。俺は凡人オブ凡人ですよ?」 良子「嘘。それは、嘘だね」 良子「君の中には何かが眠っている、そんな気がするんだ」 京太郎(貴方も、照さんと同じ事を言うんですね) 京太郎(そういえば、何でか……思い出せないけど) 京太郎(誰かにすっげーことを言われたような) ――姫様を助けて下さい 京太郎「っ!」ズキン 良子「どうした?突然。苦い顔をして」 京太郎「いやぁ、何か突然頭痛がして」 良子「無理をしているなら帰ってもいいんだぞ」 京太郎「冗談言わないで下さいよ。大丈夫ですって」 眼鏡の少女「お待たせしましたー」 京太郎「辛かったらちゃんと言うんで」 良子「なら、いいんだけどね」 京太郎(それにしても、さっき頭に浮かんだ言葉は、何だったんだ?) 京太郎「ということで食べましょうか」 良子「ちょっと待て」 京太郎「はい?」 良子「これはどういうことだ?」 京太郎「いや、至って普通のエビピラフですね」 良子「それはわかる。だが、どうしてスプーンが一つしかないんだ」 京太郎「一つのスプーンで食べろってことじゃないですかB」 良子「そ、それって……間接キス」ボソッ 京太郎「まあ、交互に食べましょうか。俺もお腹すいてますし」 良子「きょ、京太郎が全部食べていいぞ」 京太郎「そういう訳にはいきませんって。一緒に食べましょうよ」 良子「だ、だって、か、間接キス……」 京太郎「えっ、だって処女じゃなかったらキスぐらいしてるんじゃないですか?」 良子「…………っ」カアア 京太郎「はい、良子さん。口開けて下さい」 良子「なっ……んぐ、美味い」 京太郎「小蒔父さんのオススメ店で正解でしたね。ん、美味しい」 良子「……!」 京太郎「はい、二口目をどうぞ」 良子「で、でも……」 京太郎「早く食べないと冷めちゃいますよ?」ニコッ 良子「うっ……で、でも」 京太郎「まあデートなんですし、今回は!」 良子「……わ、わかった」 京太郎「はい、じゃああーんしてください」 良子「私は子供か!……あーん」 良子「……美味しい」 良子(か、間接キスとはいえ、私の初めて……) 良子(う、私の方が年上なのに……) 良子(この年まで恋愛なんて無縁だったよ、なんて言える訳ないし) 良子「そ、そんなに見るな……」 京太郎「いや、良子さんはやっぱり綺麗だなーって」 良子(……ふっ、私も学習する女だ。もうこれぐらいでは) 京太郎「でも、こうして見てると素の方が可愛いなって」 良子「……!?!?!?!?!」 良子「か、可愛いって」 京太郎「いや、俺ってギャップ萌えでして」 京太郎「良子さんっていつもキリッてしてるじゃないですか」 京太郎「そんな人の素顔を見てると何だか嬉しくて」ハハッ 良子「」ボンッ 京太郎「うん。やっぱり、良子さんは笑っている方がずっと素敵ですよ」 良子「」ボンッボンッ 良子(け、結局全部食べさせてもらった……) 良子(これじゃあ、本当のカップルみたいじゃないか) 良子(確かに、京太郎には感謝している。うちのハルもお世話になっているしね) 良子(でも、ハルは京太郎のことを――) 良子「なあ、京太郎」 京太郎「どうかしましたか?」 良子「お前、ハルのことどう思ってる?」 京太郎「どう思ってるって……友人だと思っていますが」 良子「そうか……」 良子(もし、もしもだ。私が京太郎のことを好きになったら、どうするの?) 良子(ハルに譲れるの?一方白に下がれるの?) 良子(ノーウエイノーウエイ。あり得ない、私が恋するなんて) 京太郎「良子さん、ぼーっとしてどうしたんですか?」 良子「な、何でもないっ。それよりも、食べ終わったんだ。早くリサイタルに行くぞ」 良子(私は……私は、君のことが――) 【リサイタル会場】 良子「着いたぞ、時間は……まだ幾分か余裕があるな」 京太郎「そうですね。それにしても、そんなに有名なんですか?アイズ・ラザフォードって」 良子「何を言うか。彼はピアノ界の寵児とまで言われてるくらい有名だ」 ナルミサーンコッチデスヨーヒッパルナ、ソデガノビルダロ 京太郎「へぇ……良子さんはものしりですね」 良子「これぐらい常識だ。その、なんだ……知らないんだったらこれから知っていけばいい」 良子「私が、教えてやるさ」 京太郎「……はい!」 コナンクーンヒトリデハジラナイノゴメンナサイランネーチャン 京太郎「それにしても、人が多いですね」 良子「そりゃあね。大々的なリサイタルだから。それにアイズ目当ての人も多いだろう」 オイミユキー、ナンデヤロウノリサイタルナンテキカナキャイケナインダヨモンクイワナイノッホライコッ スーパーベンゴシノオレニフサワシイオンガクヲキカセテクレルンダロウネゴロウチャンソレダケノジツリョクハアルカト 京太郎「うわぁ……老若男女選り取り見取りですね」 良子「それだけ人気だって証拠。私も知り合いからチケットを貰わなかったらここにいなかっただろうし」 京太郎「まあ、今日は良子さんとのデートなんで。いい雰囲気にしてくれることを祈りますよ」ニシシ 良子「……バカ」 京太郎「ちょ、それはひどすぎやしませんか!」 良子「バカにバカって言って何が悪い。全く、人の気も知らないで」 良子(自然に手を繋いでくるし……もう、君が見るのはハルなんだよ?私じゃない) ユッキーユッキー!ソンナニレンコシナクテモボクハニゲナイヨ 良子(あそこにいるカップルみたいに、ハルには幸せになってほしい) 良子(ちゃんと大切にしてくれる彼氏を見つけて) 良子(私が、京太郎を奪っちゃいけない) 京太郎「ん?」 良子(きっと、君は素でやってるのかもしれないけど) 良子(私にはすっげー大きいんだよ?) 良子(京太郎……) 【リサイタル会場(別視点)】 初美「うわーーー!すごいですよー!!」 巴「さすが世界を股にかけるアーティストのリサイタルですね」 初美「霞達はお留守番で残念ですねー。でも、じゃんけんの結果ですから仕方がないですよー」 巴「それにしても、ラッキーだね。姫様のお父上がチケットを二枚持っていたなんて」 初美「二枚でしたからみんな一緒は無理でした……」シュン 巴「そうしょげこまないの、はっちゃん。お留守番の二人の分までちゃんと聞きましょう」ドンッ 初美「そうですねー!それにしても、京太郎は何処に行ったんでしょうか?」 巴「あはは……はっちゃんは知らない方がいいと思うな」 初美「む!それはどういう意味ですかー!」 巴「はっちゃんには関係ありませんー」 初美「教えてくれたっていいじゃないですかーーー!」 巴「あはは……」 巴(きょーちん、今頃何処にいるんだか……戒能さんを泣かせていなければいいけど) ――皆、死んでしまえばいい。 【第四章前編復活ただし、悪意End】

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