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鹿児島で巫女さん 断-4」(2014/04/06 (日) 19:51:57) の最新版変更点

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【午後・清住高校麻雀部・部室】 京太郎「……帰ろう、もう学校も閉まるし」 京太郎(校門に来たはいいけど何でいるんですかねぇ?) 京太郎「モモェ……」 桃子「来ちゃったっす」 京太郎「……えっ」 桃子「いやいや、その反応はおかしいっすよ。というか今から行くっすよーってさっきメールしたはずっすけど……」 京太郎「あー、気づかなかったわ。悪い……というか何でこんな時間に?もう夜だぞ」 桃子「それはもう部活だったからっすよ?」 京太郎「つーかよく学校にいるってわかったな?エスパー?」 桃子「偶然っす。というか本題に入るっすよ」 桃子「京太郎、何か隠してないっすか」 京太郎「隠し事なんてねーって。わざわざ遠路はるばる来た理由ってそれか?」 桃子「第六感というものっすよ。不吉な感じがしたんで来たんすよ」 京太郎「考えすぎだって……。心配性だなあ」 桃子「京太郎がそう言うなら一応は納得しとくっすよ。あんま、無理はしたらいけないっすよ?」 京太郎「わかってるって。そうだ、ここまで来たんだから家来いよ?」 桃子「……は?」 京太郎「ついでだし親に紹介しとこーかなって。大切な人だって」 桃子「ちょ、ちょっ」 京太郎「……顔赤くしてどうした?」 桃子「な、何でもないっす!」 桃子(いやいやいやいや!違うっすから、私と京太郎は友達っすから!なななな、っ!) 京太郎「変な奴だなあ。調子が悪いなら無理にとは言わんけど……」 桃子「体調は超健康っすから!」 京太郎「ならいいや。俺にとってモモは一人しかいない大切な人なんだからさ。何かあったら嫌なんだよ」 桃子「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!」 京太郎「そんな口パクパクしてると虫入るぞ?」 桃子「誰のせいっすか!誰の!」 京太郎「えー。俺何かマズイこと言ったか?」 桃子「この天然タラシは……!」 京太郎「別に間違ったことを言った覚えはないんだけどな、モモが大切なのは本当だし」 桃子「もういいっすから!よくわかったっすから!」 京太郎「そうか?とりあえず、ここで立ち話も何だから家行こうぜー」 桃子「先輩といい京太郎といいタラシが多すぎるっすよ、もう……」 咲(……京ちゃんまだ学校に残ってるかなあ) 咲(最近何か疲れていそうだしお弁当作って差し入れにきたけど……) 咲(まあ、駄目なら家に誘えばいいしね!) 咲「あっ、京ちゃ……!」 キャッハウフフ 咲「…………」 咲「また、あの人と……」 咲「最近、私にもそっけないし」 咲「私、嫌われてるのかなぁ」 京太郎「という訳だから、今日の晩にモモ入れてもいいかな」 京母「何がという訳だ、お前。説明はちゃんとしろ」 京太郎「ですよねー」 桃子「……」ビクビク 京太郎「まあまあ、細かいことは言いっこなしってことで」 京母「で、混ぜるのはいいけどさー。この娘は京太郎のなんなのさー」 京太郎「えっ」 京母「酒の肴になるかもしれんネタが目の前にあるってのに飛びつかない訳ないでしょうが」 京太郎「悪趣味な……」 京母「うっさい。ほら、さっさと吐け」 京太郎「俺にとって大切な人です」 桃子「!?」 京母「何故に敬語?しらんけど」 京太郎「何となく、ノリってやつ?」 京母「ホント、お前はわからん息子だ……まあ、その娘が大切な人だってことはよくわかったわ」 京太郎「わかってくれて嬉しいね」 京母「何が嬉しいだ、このバカ息子。モモちゃん待たせたら悪いし、さっさと飯をつくるよ」 京太郎「はいはい……」 桃子(親公認の、仲……!!!嫌でも意識しちゃうっすよぉ) 【食事描写はキンクリじゃあ!】 桃子「ふぅ……」 京太郎「ほぼイキかけました」 桃子「いや、何がっすか?」 京太郎「わからないならわからないでいい」 桃子「じゃあ、そろそろ私は……」 京太郎「おう、そうだな。もういい時間だし」 京母「ん?帰るの?」 京太郎「そりゃあモモは家もここから遠いし。早く帰らないと電車なくなるだろ」 京母「ぶっちゃけ、家に泊まっていけばいいんじゃね?」 桃子「ひゃっ?」 京母「いや、別に朝だったら仕事行くついでに車出して送るよ?」 京太郎「それじゃあ、今日送ればいいじゃん」 京母「もうビール五缶開けてるから無理」 京太郎「なんということだ……」 桃子「え、えっ」 京太郎「どうする?別に俺はどっちでもいいけど……」 桃子「泊まるっすよーーー!」 京太郎「そっか、じゃあ部屋を用意しないとな」 京母「一緒の部屋でもいいんじゃねーの?咲ちゃんとだってそうだし」 京太郎「アイツは一人で寝るの怖いとか言って震えながら部屋に来るから仕方なくだ」 桃子「……む」 京太郎「モモは大丈夫だろ、へたれてないし」 京母「なら、適当に客室でも使えばいいさ」 京太郎「そうさせてもらう。まあ、眠くなるまでは部屋で何かゲームでもしてようぜ」 桃子「わかったっすよー」 桃子(さすがに一緒に寝るのは恥ずかしすぎるっすよー……) 京太郎「ここが俺の部屋だ」デデーン 桃子「前も来たから新鮮味がないっすね」 京太郎「そりゃそうだ。んな短期間で劇的ビフォーアフターしてたまるか」 桃子「エロ本とか探すの楽しみにしていたんすけどねぇ」 京太郎「ばっか、んな簡単に見つけられてたまるか」 桃子「ということはあるんすね」 京太郎「そりゃあ、俺だって男だし興味はある。今は麻雀一筋だから音沙汰はないけど」 桃子「そうっすか……」 京太郎「まあ、俺は男としてはあんま魅力ねーしな」 桃子「そんなことないっすよ!私を護るって言ってくれた時はすごくかっこよかったっすよ!」 京太郎「お、おう……そこまで言われると照れるな」 桃子「~~っ!言ってるこっちだって恥ずかしいっすよ!」 京太郎「なら言うなよ!」 桃子「自己評価が低すぎるんすよ、京太郎は」 京太郎「そんなことないって。正当な評価ってやつだよ」 桃子「こればっかりは京太郎の嫌いなとこっすよ」 桃子「命をかけてもらったって時点で私の評価は高いのに……」ボソッ 京太郎「そりゃあお前、友達は護るもんだろうが」 桃子「そういうことがシラフで言える所は素敵だって思うっすけどね」 京太郎「へー、それじゃあ俺のことを男としてどう思ってるわけ?」 桃子「ふぇ!?」 京太郎「そこまで言うんならきっと高いんだろうなー」 桃子「もうっ!からかうなっ」 京太郎「ごめんごめん、ちょっと調子に乗っちまった」 桃子「全く、京太郎は……」 京太郎「ははっ。悪かったって。ダチだと素で話しちまうからな、俺は」 京太郎「こういう風にからかう奴ってあんまいないから」 桃子「……ずるいっすよ。そんな事言われたら嬉しくなっちゃうじゃないっすか」 京太郎「何言ってるんだよ、友達なんだからさ、遠慮すんなって」 桃子「バカ」 京太郎「ああ」 桃子「バカバカ」 京太郎「二回も言わんでいい」 桃子「アホ」 京太郎「語彙を変えただけじゃねーか!?」 桃子「アホにアホって言って何が悪いんすか」 京太郎「開き直りやがって、この野郎……!」 桃子「はぁ……何か京太郎を見てると危なっかしいんすよ」 桃子「私にも隠してないっすか?無茶してるんじゃないんすか?」 京太郎「突然、何だよ……俺は大丈夫だって」 桃子「本当っすか?」 京太郎「ああ、神に誓って」 桃子「キリシタンっすか、京太郎」 京太郎「いや、ノリで」 京太郎「わかったわかった、約束する」 京太郎『きつくなったらちゃんと話すよ。お前には全部打ち明ける』 桃子「約束っすよ……必ずっす」 京太郎「ああ、約束だ。信じとけって、俺を」 桃子「そこまで言うなら信じるしかないっすよ」 京太郎「ああ、ごめん……」 桃子「何で謝るんすか、悪いのは詰め寄った私なのに」 京太郎「そうだよな……でも、ごめん」 京太郎(だってさ。その約束、嘘だから) 京太郎(話せる訳がない、俺が学校で爪弾きにされてるって) 京太郎(言ったら、もっと心配させちまう。巻き込んでしまう……!) 京太郎(だから、ごめん。俺がどうなろうとも、お前には手を出させないから) 京太郎(護る、護ってみせる……!) 京太郎(本当はきつく当たって友達なんて思わせない方がいいんだ) 京太郎(そうしたらこいつは俺から離れていって安全になる) 京太郎(それができないのは、俺の弱さなんだろうな) 京太郎(人と触れ合っていたい、一人は寂しいから) 京太郎(ホント、弱っちいな……) 京太郎「朝……か」 京太郎(眠い、半端なく眠い) 京太郎(昨日はモモと深夜まで話していたしなぁ……そりゃあ眠いか)ムニュ 京太郎(あー抱き枕だっけー、抱き心地がいいなあ、これ)モニュ 京太郎(思わず強く抱きしめてしまうぜ、へっへっへ) 桃子「……んっ、やぁ」 京太郎(最近のは喘ぎ声も出るのかよ、画期的だな)モニューン 桃子「ひゃっ……ぅっ……」 京太郎(いやあ、実にすばらっ!はっはっはっ)モニュール 京太郎(……いやいやいや!違うから!これモモだから!) 京太郎(ノリで抱きしめたり胸揉んだりしちまったけどさ!) 京太郎(今の状態は俺がモモを抱きしめている。そう、抱きしめている) 京太郎(もし、モモが起きたらやばい。色々とヤバい) 京太郎「息子とか愚息とかリーチ棒とか!」 桃子「うるさいっすよ、もう~」パチリ 京太郎「あ」 桃子「へ」 京太郎「おはよう、モモ。いい朝だな」キラッ 桃子「何やってるんすか、もーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」 バチコーン 京太郎「はい、すいませんでした」ドゲザーッ 桃子「まあ、私が部屋を間違えたのがいけなかったし……」 京太郎「さっすがモモ!」 桃子「調子が良すぎるっすよ!?」 京太郎「はい、すいませんでした」ドゲザーッ 桃子「本当に京太郎は……」ジーッ 京太郎「悪い悪い。それよりも、学校行かないといけねーだろ」 桃子「そうっすね。京太郎とはお別れっす」 京太郎「ああ……またな」 桃子「私がいないとこで無茶しちゃだめっすよー」ヒラヒラ 京太郎「俺も学校行かないとな……」 池田「お、また会ったなー」 京太郎「池田さん、おはようございます」 池田「おう。お前は礼儀がなってていいなぁ……それに比べてお前んとこの一年は」 京太郎「すいません、会ったらちゃんと言っておくんで」 池田「いいよ、お前は悪くないんだし。華菜ちゃんは器が大きいからなっ」 池田「それよりも、前に会った時よりは顔色は落ち着いてるけど大丈夫なのか」 京太郎「あはは……まあ、何とか」 京太郎(嫌がらせメールはずっと続いてる。気味が悪いのは相変わらずだけど慣れてしまった……) 池田「そうかー?やっぱりお前、何か違和感あるぞ?」 京太郎「考えすぎですって」 池田「んー、何かお前って危なっかしいというかさ」 京太郎「会う人皆に言われてます……」 池田「なら自覚しろって。ちゃんと周りを頼らないと駄目だぞ」 池田「あーもう!埒があかない、メアドとケー番教えるから!」 池田「困ったり迷ったりしたらメールでもすればいいし!」 京太郎「は、はぁ……」 池田「いいか、人を頼るんだぞ!それじゃあ学校だからじゃあな!」ダッダッダッ 京太郎「うーん、面倒見がいい人なんだな……池田さんって」 【清澄高校・玄関】 京太郎(今度は上履きにガムと画鋲か……) 京太郎(池田さんにはああいったけど、やっぱ辛い) 京太郎(じわじわと、首を絞められてるみたいだ) 京太郎(教室に行こう……モブ友達はいるかな) 京太郎「はよー」 モブ友1「……」 京太郎「おい、どうかしたのかよ」 モブ友1「……話しかけるな」 京太郎「えっ」 モブ友1「話しかけるなって言ってるんだよ、あっち行け」 京太郎「……お、おい。嘘だろ」 モブ友1「うるせえってんだよ!」ドカッ 京太郎「っ!」 モブ友1「…………」 京太郎「どうして……?」 モブ友1「くそっ、朝から嫌な気分だぜ」 京太郎「……ぁ」 京太郎(あの後、他のダチにも同じ態度を取られたし……ついにクラス全員から無視されちまった) 京太郎(どうしてだよ、昨日まで仲良く飯食った仲じゃねーか……) 京太郎(もう訳わかんねーよ……) 京太郎(誰か、助けてくれよ) 京太郎(……しばらく落ち着かないと) 京太郎(部室に行くか……授業を聞いている気分じゃねえ) 【夜・京太郎の部屋】 京太郎(……あれから部活もあったけど身に入らなかった) 京太郎(くそっ、何が起こったんだよ?昨日まで仲が良かったのに) 京太郎(何でだ、何でだよっ!!!!) 京太郎(誰も、いない。誰も悩みを話す人が、いない) 京太郎(話しても巻き込んだら……どうなるかが怖い) 京太郎(嫌がらせメールも今日はひっきりなしだしよ……俺のメアドを知ってることといいどうなってるんだ) 京太郎「はぁ……寝よう」 京太郎(寝て起きたら、何かが変わってるといいんだけどな) 京太郎「……あ」 京太郎(朝か。いつの間にかに寝ちまってたんだな、俺) 京太郎(くそっ……わかんねーよ。何があったんだよ、アイツらに) 京太郎(俺が悪いのか……?) 京太郎(ああ、畜生。頭がこんがらって思考がまとまんねぇ) 京太郎(それに、怖い……何かにすがりつきたくなるくらいに) 京太郎(とりあえず、学校に行こう……親に心配掛けたくないし) 京太郎「……ああ、衣さんですか」 衣「うむ、今日もいい天気で実に快なり!」 京太郎「そうですね、ええ」 京太郎「…………」 衣「どうした、浮かない顔をしているが」 京太郎「いえ、ちょっと考え事を」 衣「衣でよければ聞いてやるぞー!」フンッ 京太郎「はは……じゃあちょっとだけ」 京太郎「何を信じればいいのかわからなくなってしまったんです」 京太郎「今まで積み重ねてきたものがあって、一緒に笑ってきた記憶があって」 京太郎「だけど、それは違うって突きつけられて」 京太郎「俺はどうしたらいいんだって悩んでいるんですよ」 京太郎「俺は、そいつが嫌いになったのかって。今までずっと一緒にいたのに……」 衣「そうか……衣から言えることはあまりない。きょーたろーの立場に立っていないからな」 衣「だが、これだけは確かだと思う」 衣「きょーたろー、ここでそいつを憎んでしまったら負けだぞ」 衣「信じてみればいいじゃないか。きっと、その思いは届くから」 京太郎「信じる、ですか……わかりました。俺、信じてみます」 京太郎「まだ心の整理はついてませんけどね」ハハハ 衣「大丈夫だ、案ずることはない。それだけの年月を過ごした仲なのだからな」 京太郎「……」 京太郎(今度は靴に画鋲かよ……しかもご丁寧に木工用ボンドまでつけて) 京太郎(ボンドはティッシュで拭きとって、画鋲はゴミ箱に捨ててっと) 京太郎(憎んだら負け、か。そうだよな、俺は信じよう。信じてみるんだ) 【教室】 ワイワイガヤガヤ 京太郎「はよーっす」 シーン 京太郎「熱烈な歡迎ありがとう、いえーい!」 シーン 京太郎「いやいや、照れちまうね。ここまで歓迎されてると」 京太郎「わざわざ机に花まで置いてくれちゃって。ファンが多いイケメンは辛いね!」 京太郎「まあ、邪魔だし後ろの棚にでも置いておこうかなー!」 京太郎(…………) 京太郎「よう、おはよう!」 モブ友1「……」 京太郎「何だよ、元気ないなー。どうかしたのか?」 モブ友1「話しかけるなって言っただろ」ガタッ モブ友1「気分悪いわ……マジで」 京太郎「……っ」 【昼・教室】 京太郎「よう、モブ友1。飯食いに行こうぜ」 モブ友1「……」スタスタ モブ友1「よーう、飯食いに行かね?」 モブ友2「ああ、いいね。行こうか」 モブ友1「だなー、やっぱり飯は一緒に食べてて楽しい奴等とじゃないとなー」 京太郎「…………」 京太郎(……しん、じるのは、正しいのか?) 【放課後・部室】 京太郎(もう、ここしかないのかもしれない。俺の日常は) 京太郎(縋るしかない。だから、ここに逃げてしまう) 京太郎「リーチ」タンッ 咲「あ、それロンだよ」 京太郎「あ……」 咲「どうしたの、京ちゃん?いつもより調子が悪いけど」 咲「せっかく打ってるんだしもっと楽しもうよ、麻雀!」 京太郎(カンカンカン嶺上開花なんてされて楽しい訳ないだろ……勝てなきゃ、楽しく――っ! 何、考えてるんだよ、俺。八つ当たりなんてらしくねぇ) 京太郎(落ち着け。咲は悪くないだろ、これが実力の差なんだからしゃーないだろ) 京太郎「……そうだな」 京太郎(俺は、前みたいに笑えているのだろうか?) 【夜・清澄高校・玄関】 京太郎「今日も最後まで雑用ばっかりだったな……」 京太郎「仕方ないんだ、全国行ったアイツらが打たなくちゃいけないのは当然なんだ」 京太郎「俺自身の我儘でそれを潰したら駄目だ」 京太郎「俺が、弱いからいけないんだ。皆が帰った後、牌譜を見たりネトマをやったりだけど。 やっぱ足りねえか。早く強くならないといけないのに……」 京太郎「勝ちたい……勝ったら、俺は認められる」 京太郎「……は、ははっ」 京太郎(靴箱がゴミだらけ……やってくれるわ、ホント) 京太郎(■い……のか?) 京太郎「違うッ!駄目だ、憎んだら駄目だッッッ!」 京太郎「それじゃあ、何も解決しない!」 京太郎「信じなきゃ…いけないんだ」 京太郎「信じたら、きっと届くって衣さんも言ってくれた」 京太郎「これぐらいじゃ、へこたれないぞ……!」 京太郎「はぁ……どうしたらいいのかねぇ」 ワイワイガヤガヤ 京太郎「もう、わっかんねー」ドンッ チンピラ1「ああ、テメエいてぇじゃねえか!」 チンピラ2「おいおい、ケンくん痛がってるじゃねえか!」 チンピラ1「ああ、痛いわー。これは骨折してるわー」 チンピラ3「おら、どう落とし前つけてくれるんだ、あ?」 チンピラ4「これは、教育やろなあ……」 京太郎(チッ!厄介なのに捕まったな……) 京太郎(逃げるにも四人。もう、適当に殴り飛ばして突き抜けないといけねえ)スッ チンピラ1「おいおい、生意気にも逆らっちゃうわけですか」 京太郎「うっせえ!道開けろォ!」 京太郎「だらっしゃあ!」ドカッ チンピラ1「この野郎ォ!」 京太郎「そのまま寝てやがれっ!」バキッ チンピラ1「ぎゃあああっっ!」 チンピラ2「ケンくん!」 チンピラ3「テメエ、よくもケンくんを!」 チンピラ4「これは、教育やろなあ……」 京太郎「今の内に逃げないと……」ダッダッダッ モブ友1「…………」ニイッ 【公園】 京太郎「はぁ……っ。疲れた……」 京太郎(ったく、ついてねーな) 京太郎「一発も食らわなくてよかった……余計な心配されちまう」 池田「ほうほう、余計な心配されてしまう訳か」 京太郎「そうなんだよ、母さんとか咲は心配性だから……って池田ァ!」 池田「呼び捨てにするなし!一応先輩なんだからなー」 京太郎「いや、何となくそう呼ぼうかなって」 池田「いいけどさー。お前はその辺礼儀正しそうだし」 京太郎「それで、なぜ池田先輩はここに?」 池田「帰り道だよ。部活が長引いちゃってなー」 京太郎「そうですか……」 池田「んー、やっぱお前どっかおかしいわ」 京太郎「えっ」 池田「何か溜め込んでるだろ、それもかなり」 京太郎「そ、そんなこと……」 池田「言いたくないならいいよ、言わなくても」 池田「ただ、私は言ったからな。誰かを頼れって」 京太郎「……それができれば苦労はしませんよ」 京太郎「頼りたい、友達が……いないから」 池田「……そっか。まあ、華菜ちゃんでよければ少し聞いてやるよ」 京太郎「ありがとうございます……」 【朝・京太郎の部屋】 京太郎(ははっ、寝る前の日課だったメールをする気すらなくなるなんてな。 よっぽど堪えてやがる) 京太郎「だけど……学校には行かなくちゃ、いけない」 京太郎(正直、休みたい。もう逃げたい) 京太郎(だけど、母さんに迷惑がかかっちまう) 京太郎(伸ばしてくれた手はある……モモや衣さん、染谷先輩、ハギヨシさんは俺に手を伸ばしてくれた) 京太郎(手を取りたいけど、取れない。大切だから巻き込みたくない。もし、危害がそっちに向かったら……俺は耐えられない。 それに、怖い。俺がイジメられてるって知られることが) 京太郎(幻滅されるんじゃないか?馬鹿にされるんじゃないか?鼻で笑われるんじゃないか?) 京太郎(そんなことしないってわかってるのに、どうしても浮かんじまう!) 京太郎(クソックソッ!クソオオオオオオオオッ!!) 京太郎「……あ」 巴「おはよう、きょーちん」 京太郎「おはようございます、巴さん」 巴「うん、やっぱりあだ名で呼び合うっていいね。帰ったら知り合いにもつけてみようかな」 京太郎「そうですか、気に入ってもらえて何よりです」 巴「それでね……きょーちん。早速だけど君には一つ話したいことがあるんだ」 京太郎「何ですか?」 巴「率直に言うとね。君はこれ以上学校に行くべきじゃない。もう手遅れだから」 京太郎「……!?」 巴「気づいてるはず、あそこは淀んでいる」 巴「最近、色々と小さな問題が起こってるから祓ってくれないかという依頼があってね。 ずっと私は学校にいたんだよ」 巴「悪意の源を祓っても、一度生まれた悪意の連鎖は止まらない。乗り移った憎しみは増大してるしね」 巴「悪いことは言わない。もう学校に行くべきじゃない。君も気づいてるはずよ?」 京太郎「…………だけど」 巴「君自身が破滅してもいいの?自分の身が一番大事にすべきだと私は思うけどな」 京太郎「今不登校になったらっ!親に心配をかけるっ!不登校になったってレッテルを近所に貼られるかもしれない!」 京太郎「仕事で大変な思いをしている母さん達に余計な迷惑をかけてしまうっ!」 巴「……矛盾してるよ。本当に親のことを思うなら、助けてって言うべき」 巴「君はただ、怖いだけじゃないの?頼って迷惑をかけることを怖がってる。 選択を決めることをためらってる。前に一歩も進みたくないって駄々をこねて」 京太郎「…………ッッ!」ダッ 巴「あっ!ちょっと!」 京太郎(俺は……俺はっ!) 巴「これは、やばいかもしれないね……記憶の『書き換え』が必要なのかも」 【清澄高校・玄関】 京太郎「…………っ」 京太郎(ゴミが増えてる……昨日は全部取り除いたのに) 京太郎(ネチョネチョとした感覚が気持ち悪い。嫌な気分になっちまう……) 京太郎(咲達にバレてないことが救いだな……アイツらは朝は俺より早いからかち合わないし) 京太郎(そういえば、しばらく咲と一緒に学校に行ってないなあ) 京太郎(……あの頃は、楽しかった) 【教室】 死ね。生きているだけで不愉快。どうして死なないの? 糞でも食ってろ。バカみたい!視界に入らないでほしい。 京太郎(……ぁ) クスクス 京太郎(今度は机に落書きかよ……) クスクスクスクス 京太郎(こんなことをやってる主犯格を殴り飛ばしたい気分だ……) 京太郎(だけど、俺がここで暴れたら。アイツらが掴んだ全国に泥を塗る。出場停止になっちまうかもしれない) 京太郎(耐えたら何か解決策が浮かぶかもしれない) 『……矛盾してるよ。本当に親のことを思うなら、助けてって言うべき』「」 『君はただ、怖いだけじゃないの?頼って迷惑をかけることを怖がってる。 選択を決めることをためらってる。前に一歩も進みたくないって駄々をこねて』 京太郎(違う、違う!違うッッ!) 京太郎(俺は逃げてなんかいない!怖がってなんかいないっ!) 京太郎(俺は正気だ、全然普通だ!!) 【昼・部室】 京太郎(あんな空気の中に入れないし、思わず部室に来たけど……) 京太郎「そりゃあ、全員クラスメートに友だちがいるんだ。わざわざここに来る必要はないか」 京太郎「は、友達か……もう、信じられねぇよ、衣さん」 京太郎(話しかけても、無視。視線すら合わせない。まるで俺がいないみたいに) 咲「あれ、京ちゃん?」 京太郎「咲……どうして、ここに?」 咲「何、私がいたら嫌なの?」プスーッ 京太郎「いや、そんなことはないけど」 咲「なら、私がここにいてもいいよねッ」 京太郎「ああ、好きにすればいい」 咲「つれないなあ。せっかく可愛い咲ちゃんが会いに来たのに」 京太郎「誰が可愛いだ、誰が。画面の向こうの皆を笑って否定するわ」 咲「……まあ、自分で言っててどうかと思ったけど」 京太郎「それなら言わなくてもいいだろ」 咲「それもそうだけど……それで、京ちゃんはどうしてここにいるのさ?」 京太郎「うるせー。いいんだよ、俺のことは」 京太郎(俺がクラスでイジメられてるなんて言えるか。無駄に心配させちまう……) 咲「まあ、いいよ。それで、私も一緒にここで食べていい?」 京太郎「いいけど……」 咲「やたっ」 京太郎「全く、お前は……」 京太郎(こうして話してると普通の文学少女なんだけどなぁ……麻雀になると人格が変わっちまう……) 京太郎(最初は近かったはずなんだけどな……今は遠い) 京太郎(…………) 京太郎「なあ、咲」 咲「なぁに、京ちゃん?」 京太郎「今日の放課後の部活でさ、俺と本気で打ってくれないか」 咲「えっ、京ちゃんと?」 京太郎「そうだ、優希達も一緒でいいからさ」 京太郎「頼む」ガシッ 咲「ひゃっ!ちょ、強く握りすぎだよ……」 京太郎「わ、悪い……」 咲「別にいいけど……何か京ちゃんちょっと怖い」 京太郎「どこがだよ。俺はいつも通りだ」 咲「……本当に?」 京太郎「ああ、本当だ」 京太郎(このままだといずれ俺はだめになるかもしれない。精神的にも、もう後がないから) 京太郎(だから、前に出よう。今の雑用ばっかりの環境を壊すためにも) 京太郎(今の俺が本気の咲達にどれだけ通用するか。練習し続けてきた俺の麻雀に価値はあるのか) 京太郎(俺が麻雀部にいる意味、俺じゃなきゃ駄目だって理由を見つけ出す) 京太郎(本気で相対することで何かが掴めるなら、それでいい) 京太郎(もし負けたら、俺は――麻雀から……) 京太郎「……じゃあ、頼むな」 咲「う、うん……」 咲(京ちゃん……やっぱり、転校しちゃうのかな?) 咲(それで、最後だからって本気で相手をしてくれって) 咲(思い出作り、かな) 咲(それだったら……京ちゃんにいい思いをして終わらせたいな) 咲(京ちゃんが笑って去れるように) 咲(京ちゃんに一位を取らせてあげたいな) 【放課後・部室】 京太郎(……これで決める) 京太郎(俺の今まで全部をぶつけてやる。今だけはイジメとか何もかもを忘れて) 京太郎(だから、本気で来いよ……咲。手加減なんてなしだぜ?) 京太郎(俺もお前のことを本気で見るから) 京太郎(勝つつもりで打つからさ) ギイイッ 咲「ごめん、待たせたかな?」 京太郎「いや、そんなに待ってないから大丈夫だ。メンツは揃ったか?」 咲「うん。その点に関してはばっちりだよ!」 和「どうも……」 優希「久しぶりの出番だじぇ~!!!」 咲「ということで揃ったよ!」 京太郎「おう。それじゃあ早速打とうぜ」 京太郎(勝ってみせる、何としても!) 京太郎「……俺が、一位?」 咲「良かったね!京ちゃん!」 優希「っ~~~~~!!犬のくせにぃ!」 京太郎「夢じゃ、ねぇんだよな?」 優希「何いってんだ、お前ー。こんなに可愛い優希ちゃんが夢だと申すか」 京太郎「は、ははっ。俺、勝てた……勝てたんだっ」 京太郎(やればできるんだ!才能なんてなくても!努力し続ければ届く!) 京太郎(間違っていなかったんだ!いつかは麻雀の神様は笑ってくれるんだ!) 咲「……あはは、喜び過ぎだよ」 和「…………」 和「おかしいですね……」ボソッ 和(確かに須賀君は最近力をつけてきました。影でずっと努力し続けていましたし) 和(でも……いつもはラスを引いてばっかりなのにいきなり一位というのはおかしくないですか?) 和(麻雀は運で偏るゲームですからそういうこともありますけど……) 和(宮永さんがラスを引いたことといい、捨て牌がおかしかったことといい……引っかかります) 和「宮永さん、ちょっと見せて下さい」 咲「あっ」 ペララララー 一九一九七九 萬萬索索筒筒東南西北北中發 和「……これは、国士無双一向聴待ちですね」 優希「……ぁぁ」 京太郎「えっ」 和「どういうことですか。さっきの局で、宮永さんならきっと上がれたと思います」 咲「そんなことないよっ。最後にやっと揃えたんだもん」 和「本当ですか……?」 咲「うん、本当だよ」 和「……嘘ですね」 和「それならば、最後に優希が捨てた一筒で上がれたはずですよ」 咲「うっ……」 優希「た、たまたまだじぇ!」 和「麻雀にそんなたまたまはありえません」 京太郎「………」 京太郎(つまり、どういうことだ?) 京太郎(咲は本気じゃなかったってことか?優希もそれを指摘しなかったから同じか?) 京太郎(つーことはさ……この勝ちも全部茶番だってことかよ) 京太郎(俺の今まではそんな茶番で潰される程度のもの、か) 京太郎(見下されていたのか、俺は) 京太郎「……は、ははっ」 京太郎「あはっ、はははははっ!ひゃはっあっっははははははははははっ!!! はははあああああはっはははっっっっっはははっっっははっはあっは! かはっ、ははっははっはっあははぁひゃひゃひははははははっ!!」 京太郎(本気で向かわれる価値すら、なかった) 和「須賀、君?」 京太郎「くひゃははははははっっ!ハハハハアははっっっっ! ははははははははっはは、あははっハハハハハハッ!」 京太郎(努力に意味なんてなかった) 優希「京太郎……?」 京太郎「ぁぁああああぁぁぁぁああははっははあぁゃははひゃははは!」 京太郎(全部、無駄だったんだ。いいように馬鹿にされていただけ) 京太郎「あは、あははは、あは、はぁはははっはははははひは はひゃひゃははははははっああぁあぁぁあはははっはひっは ひゃははっはははっ!?ごほっげふっ!はは、は あはっははっはひゃはあぁぁははははははは、あぅひゃぁ あひゃっはははははぁひゃあっはぁあっははははははっっ!」 京太郎(おかしくておかしくて笑いが止まんねえ!こんなにもおかしいのにっ!」 京太郎「ひゃははははははははっ!あひゃははは、あっははははははは、 あひゃぁはははは、げ、が、 がは、ふっぐっはぁあああはひゃはは、お、、おぐ、 ぐほっ、げほっごほっ、あはははぁぁっ!がはっ、げほっ、 ぎふっ、ぐ、ぐげ、ぎひ、ふひゃっ、ひゃあはははははははァァァっ、 ぁぁぁぁぁぁぁあああぁぁは、ぅぅぅぅうぇぇぇぇあはぁあああああ ぁあぁあああぁあああぉぉあああアぁぁぁあああああああああ!!!」 京太郎(どうして、涙が止まらないんだろうな) 京太郎「あ、あっあ、ああああああああああああっ!!!」 京太郎(どうして) 京太郎「はぁ……ヒャ…………ははっ」 京太郎(俺には) 京太郎「――ふざけるな」 京太郎(ほんの少しだけでも) 京太郎「ざけんなざけんなざけんなざけんなぁぁぁあああぁあっっ!!!」 京太郎(才能が、なかったんだ?) 京太郎「ふざけるな、ふざけるなよッ!」 京太郎「そうだな、そうだよなぁ!!所詮、俺は雑用で使いっ走り、こんな風に麻雀を打つ必要ねーもんなあ!」 京太郎(憎い、憎い) 京太郎「いっつも、気のいい男子部員としてっ!一人で買い出しとか掃除とか全部やってっ!」 京太郎(才能のない俺自身が、憎い) 京太郎「それが当然だよなあ、弱いからさ!弱い奴は麻雀打つなって話だよなあ!?」 京太郎「雑魚は雑魚らしく雑用ってやつか!!ああ、そいつはぴったりだ! 使い勝手のいい人間がいて便利だよな!!」 咲「ち、ちがっ」 京太郎「違わねえよ!!違わねえ!!!全部、その通りだろうがっ!!」 京太郎「だったら、何で本気でやらなかったんだよ!!!俺は、俺はっ!!」 京太郎「本気で打ってくれるなら、どんな結果でもいいって思ったんだよ」 咲「ち、違うの。違うんだよ、京ちゃん!」 咲「京ちゃん、転校すると思って、最後にっ」 優希「そ、そうだじぇ!安易に乗った私も悪かったじぇ!」 和「…………」 京太郎「うるせえよ」 京太郎「そんな押し付けの善意なんていらねえんだよ!」 京太郎「喜ぶと思った?最後に笑っていて欲しい?」 京太郎「迷惑なんだよ、いらねえんだよ!」 京太郎「才能があって目立つお前等っ!影でコソコソ雑用している俺っ! 頑張っても足元にも及ばないっ!どいつもこいつも女子はすごいのに男子はひどいっ! いつまで俺は雑用で愛想笑いをしていればいいんだ!?」 京太郎「ああ、そうだなっ!はなっから諦めていればよかったんだよな!!!麻雀なんてっ!」 咲「京ちゃん!」 京太郎「ついてくるなっ!」 京太郎「……もう、ここには来ない」 京太郎「除籍なりなんなり勝手にしといてくれ」 京太郎「お前等は全国で活躍すればいいさ。その時はかっこいいーって祝福してやるからよォ!」 京太郎「ひゃひゃひゃひゃひゃひはははははははっ!!ははひゃはやはっははははははっ! ひゃひゃひははゴホッガッ!はは、あははっ!はっはははっははははははははははっっっ!!!」 バタン 咲「あ、ああっ」 咲「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっ!!!! 優希「私、追いかけてくるじぇ!!!」 和「あっ、優希!!!」 咲「どこで、間違っちゃったのかなぁ……」 咲「私は、ただ……京ちゃんに笑っていて欲しかっただけなのに」 【清澄高校体育館裏】 京太郎「……っ」 京太郎(はっ、カッコ悪いことありゃしねぇ……) 京太郎(よく口が回ったもんだ、悪いのはどう考えても俺だろうが) 京太郎(俺はアイツらの目に耐えられなかっただけだ。俺のことをまっすぐに見ているのに耐えられなくて) 京太郎(俺はそんなにイイヤツじゃねえ。そんなんじゃねえって言ってるのに真っ直ぐに見てやがる) 京太郎(そんな目で見られたら、嫉妬している俺が惨めじゃねえか。かっこ悪いじゃねえか) 京太郎(せめて、お前等の前だけではカッコつけさせてくれよ。なあ) 京太郎(ま、俺には無理だったけどな。結局、勝手にブチギレて今の関係を壊しちまった) 京太郎「やっすいプライドだよ、全く」 京太郎(そのやっすいプライドに縋った俺はどこまでも屑ってか?ははっ、最高に笑えてくる) モブ友1「ははっ、いい様だなァ」 モブ女子「……」 モブ男子「ぎゃはははっ」 ゾロゾロ 京太郎「…………」 モブ友1「おっと、暴力はなしだ。いいんだぜ、暴力沙汰で全国出場停止になったってよ」 京太郎「…………」 モブ友1「その顔だよ、その顔が見たかったんだよ俺はァ!おい、やっちまおうぜ!」 ガスッバキッ 京太郎「ごふっ」 モブ友1「お前は昔から顔もイケメンでスポーツもできるっ!勉強は普通だがそれも愛嬌だってなる!」ブンッ モブ友1「いつでも、お前は俺よりも上を行きやがる!」ドカッ モブ友1「麻雀部にいるお前がずっと妬ましかった……咲ちゃんに原村、片岡、会長と美少女に囲まれているお前がなァ!」バキッ モブ男子2「はっ、ハーレムかってんだ!俺らみたいな根暗はずっとお前の影に隠れているはめになるっ」ボキッ モブ女子「そもそも会長達に近づいてるんじゃないわよ!アンタみたいな碌でもない人がいたらばい菌が伝染るわ!」バキッ モブ女子2「そうよそうよ!アンタの居場所なんて必要ないわ!私達は見向きもされないのに!」 モブ男子「お前ばっかりがいい思いをしやがって!ふざけるなっ!」バキッ モブ女子3「貴方がいるだけで麻雀部の格が下がるのよっ!」ドスッ モブ男子3「実際、お前は一回戦負けでお荷物だしなあ!」バカッ モブ男子「大体何で入ったんだよ、見ていてお前が目障りなんだよ!」 モブ女子「どうせ会長達の体目的何でしょう!」 モブ女子4「変態!変態!変態!」 モブ男子「麻雀なんてどうでもいいって思っているんだろ?女の子がいればそれでいいんだからなあ!」 モブ男子2「だから、弱いんだろ、お前!ぎゃはははははっっ!」 モブ女子「見ていてわかるもの、麻雀に真剣じゃないって!」 モブ男子「強くなろうともしてないしな!」 モブ女子「強くなろうともしない奴が麻雀部にいていいわけ?」 モブ男子2「はーい、いない方がいいと思いまーす」 モブ女子「というか視界に入るだけで汚れるんだけど。あー、目が汚れるわー」 モブ男子「うわっ、俺こいつに触っちまったよ、きったねえ!イラつくから蹴らせろや!」ドカッ 京太郎「が、……ふっ」 モブ女子「うわっ、きったーねー。こいつヨダレ吐きやがった」 モブ男子「汚いことしてんじゃねえ、よ!」ドカッ モブ女子「アハハハ、ビクンビクンしてる!おっもしろーい!」 モブ男子2「このままだと死ぬんじゃね、こいつ?」 モブ女子2「死ねばいいのよ、こんなヤツ生きていて価値なんて無いわ」 モブ男子「あひゃっ、こいつが死んでも誰も悲しまねえしなあ!」バキッ モブ男子3「死ねよ、早く!」ドカッ モブ女子「シューット!アハハハハ!」バカッ 『死ーね!死ーね!死ーね!死ーね!死ーね!死ーね!』 『死ーね!死ーね!死ーね!死ーね!死ーね!死ーね!』 『死ーね!死ーね!死ーね!死ーね!死ーね!死ーね!』 『消えろ!消えろ!消えろ!消えろ!消えろ!消えろ!』 『消えろ!消えろ!消えろ!消えろ!消えろ!消えろ!』 『消えろ!消えろ!消えろ!消えろ!消えろ!消えろ!』 モブ友1「いい気味だぜ、見ていて無様だわ~」 京太郎「……あ、が」 モブ友1「どうよ、痛めつけられた感想はよォ!」バキッ 京太郎「かふっ!……噂を流したのはお前等か」 モブ友1「そうさ、お前に対する悪印象を広めるのに頑張ったんだ、感謝してくれてもいいんだぜぇ! でも、お前に対して嫉妬してる奴等が多かったからなあ、その分すっげー楽だったよ!!」 モブ友1「ここ最近はずっと噂を広めたり、総シカトしようぜって感じで楽しかったなあ!お前のその姿を見れて気持ちいいしよ」 モブ友1「それとよ、お前前に告白されたよな?モブ女に?」 京太郎「それが、どうした」 モブ友1「もう出てきていいぞ~」 モブ女「…………」 京太郎「えっ」 モブ友1「まさか、本当に告白されたと思った?残念でした、ヤラセでーす!」 ギャハハハハハ モブ友1「馬鹿みたいにガチガチに緊張してさァ!まじうけるんですけど!」 京太郎「あ、あっ」 モブ女「来ないで下さい、不快です」 モブ女「この人はずっと苦しんでいるのに……貴方はいい身分ね。 誰かに負けて本気で悔しいって気持ちなんてわからないんでしょうね」 京太郎(は、ははっ) 京太郎(告白してきた女の子もグルかよ……なんだよ、それ) 京太郎(俺には……もう何も残ってねえ) 京太郎(帰る場所は自ら潰した) 京太郎(好きだって言ってくれた女の子は嘘だった。そんな女の子はいなかった) 京太郎(信じてた麻雀は糞呼ばわり。努力に意味はなかった……) 京太郎(ずっと一緒だった友達は俺のことを妬ましいと嫌ってた) 京太郎(咲も、本気で打ってくれなかった。俺の本気でやってくれって言葉を信じてくれなかった) 京太郎(誰を信じればいいんだ?友達でさえ嘘をついていたのに) モブ友1「ああ、もう一つあったわ」 モブ友1「お前さ、あの麻雀部の人達とは仲がいいと思ってるんだろうけどそれは間違いだぜ」 モブ友1「――――」 京太郎「そんな……」 モブ友1「嘘じゃない。何なら聞いてみるんだなっ」ガスッ 京太郎「が、は……っ」 モブ友1「はっはっはっ、さてと最後に気の済むまで蹴ろうぜ」 モブ男子「そうだな!」 モブ女子「いつまで耐えていられるか賭けない?」 モブ男子「俺、十分で!」 モブ女子「五分っ!」 モブ女「二分で。カップラーメンよりはやーい!」 モブ友1「おいおい、それじゃあ俺らがつまらないだろー!」 ギャハハハハハ 京太郎(……俺、は。こんなにも嫌われてるのに、辛いのに、苦しいのに) 京太郎(何で、生きてるんだ?) 京太郎(しに、たい) 京太郎(なき、た、い) 京太郎(もどりた、い) 京太郎(つよ、くなり、たい) 京太郎(たす、け……て) 京太郎(結局、誰も助けにも来ない) 京太郎(そりゃ、そうか。俺なんかの為に誰も助けには来ないよな) 京太郎(は、はは……ざまァ、ねえな) 京太郎(そうだ、よな……神様は――助けてくれないもんな) 京太郎(教えてくれ、俺は――どうすればよかったんだ?) 京太郎(誰に、縋ればよかったんだ?) 京太郎(俺は、ただ……強く、なりたかった、だけなのに) 京太郎(助けてくれ……)ドカッ 京太郎(苦しい……痛い……) モブ友1「あひゃひゃひゃっ!」ドスッ 京太郎(殺してくれ……) モブ男子「死ねっ死ねっ」バキッ 京太郎(もう何も、望まないから) モブ女子「あははははっ!」 京太郎(もう誰とも、仲良くならないから) モブ女子2「ぎゃははははははっ!」 京太郎(誰の視界にも、入らないし『見ない』から) モブ女「あはっ、あははっ」 京太郎(認めてなんて言わないから) モブ友1「とどめなんて指すと思うか?お前はそこでずっと無様に這いつくばっていろよ!あひゃひゃはやはっっ!」 京太郎(たす、けて)ガシッ モブ友1「触るんじゃねえよ、汚らしい手でよ」バシッ 京太郎(寒い、よ。いた、い……よ) 京太郎(ごめん、母さん。俺、もう駄目みたいだ) 京太郎(ごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめん ごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめん ごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめん ごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめん ごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめん) 京太郎(生まれてきて、ごめんなさい。無用な心配をかけてごめんなさい) 京太郎(あ、夕焼け、綺麗だな) 京太郎(痛いのに、きれ、い。あは、はは) 京太郎(こわい。誰かを、信じて、裏切ら、れるのが) 京太郎(なら、だれも、しんじ、なければ、いい。こんな思いをするなら、しんじなければ、いい) 京太郎(すき、になって、ほしいとねがっ、てごめん。もう、おもわ、ないから) 京太郎(だから、うらぎら、ないで。モ、も。はギよ、しさ、ん。ころ、もさ、ん。そめ、やせん、ぱい) 京太郎(みえて、しまって、ごめ、んな。もう、か、かわら、いから) 京太郎(ごめ、ん) 京太郎(し、な……せて、く……れ) ――――あひゃひゃひゃひゃひゃひゃ! もう、何も見えないし、聞こえない。 ただ、最後に思ったのは――。 京太郎(モ、モ。おれ、おまえのこと、まもれないわ) 京太郎(だって、おれ――) 京太郎(――しんじられないんだ、おまえのことすら) 京太郎(しんじれないのに、まもれるわけ、ないもんな) 京太郎(わかんねーや。なにもかもが) 京太郎(ああ、でもひとつだけ。わかる) 京太郎(こんなろくでもなしにかちは、ねーってこと) 京太郎(だから、かちもねーおれのことを) ――――忘れてくれ。 咲「ううっ、ひっく」 和「宮永さん……ごめんなさい」 咲「いいや、原村さんのせいじゃないよ。私がもっと考えていれば……! 優希ちゃんにも協力してくれるよう頼んじゃったから!」 和「正直、宮永さんのせいだけじゃありませんよ。それに、須賀君の方にも非はあったと思います」 和「あそこまで過剰に反応するのはやっぱりおかしいです。 和「でも、だからといって宮永さん達は悪くないと言うわけではありませんよ?」 和「誰だって手心を抜かれたら嫌な気持ちになりますから」 咲「うん……」 和「まあ、そのことについては後にしましょう」 咲(今は……) 咲「私、京ちゃんを捜しに行ってくる」 咲「きちんと謝って、仲直りをするよ」 和「……須賀君がそれを否定しても?」 咲「うん。それに、今まで私達は京ちゃんに雑用を押し付けてばっかりだった」 咲「いくら私達が全国に行くとしても京ちゃんをないがしろにしちゃダメだったんだよ 最近、京ちゃんが牌に触ったとこ……私見たことなかったもん」 咲「だから――その謝罪も込めて、かな」 和「そうですね。私達は彼をただの便利屋扱いしていたのかもしれません」 和「いつだって、彼は笑顔で支えてくれたのに」 咲「行くよ、私は……」 和「私も行きます。宮永さん一人では心配ですから」 和「……謝らないといけませんね、私も」 咲「それと、もう一度京ちゃんと麻雀がしたいからってのもあるかな」 咲「こうして私が前に進むきっかけをくれたのは京ちゃんだったから」 咲「言わなくちゃいけないんだ。ありがとうと、ごめんねって」 【校舎裏】 京太郎(……あァ) 京太郎「痛い、な」 京太郎(アイツらは、いないか) 京太郎(ボコるだけボコってとんずら、か) 京太郎(気がすんだのか?馬鹿か、ただの気まぐれだ) 京太郎(どうせ、またやってくるさ。気に食わなかったら殴りによ) 京太郎(それに――) 優希「きょう、たろう?」 京太郎(来たか……) 優希「ど、どうしたんだじぇ!」 京太郎(耳に響くんだよ、うるっせーなァ) 優希「早く、保健室に!」 京太郎「……いらねぇよ」 優希「でも!」 京太郎「いらねぇって言ってんだろ、聞こえねえのか」 優希「五月蝿いっ!いいから保健室に行くんだじぇ!」 京太郎(そうやって、いい顔をしておいて) 優希「ほら!手をつかめ!」 ――いつまでも俺らはダチだからな! ――麻雀部にいるお前がずっと妬ましかった! 京太郎(裏切るのか?また、俺にあんな苦しみを与えるのか?) ――好きです。 ――来ないで下さい、不快です。 京太郎(それでも、俺に信じろっていうのか?) 京太郎(友達だって言い張るのか?手を差し伸べるのか?) ――お前さ、あの麻雀部の人達とは仲がいいと思ってるんだろうけどそれは間違いだぜ。 京太郎(そもそもどうして俺がこんな目にあわなくちゃいけないんだ?なあ、答えてくれよ) 京太郎(お前も、友達だって言い張るのか?) 京太郎「優希」 優希「ん?どうした!」 京太郎「お前は、俺を助けてくれるのか?」 優希「当たり前だろ、京太郎とはと、友達なんだからなっ」 京太郎「本当か?」 優希「ああ!それにしても、重たいじょ!もっと痩せろー!」 京太郎「わりい……」 京太郎(は、ははっ。こいつなら。俺を必死に助けようとしてくれるこいつなら) 優希「私一人じゃあ駄目だじぇ……!くそう、援軍を呼ぶじぇ!」 京太郎(信じられるかも――) 優希「京太郎を運ぶなら男手の方がいいよな!待ってろ、モブ友呼んでくるじぇ!」 京太郎「―――――――あ?」 京太郎「――そういうことかよ。お前もグルだったのか」 京太郎(そうだ、きっとそうなんだ!この状況でモブ友を呼ぶなんてそうとしか考えられない!)ガリッ 京太郎(初めからこいつは影で笑っていやがったんだ!)ガリッ 京太郎(今度は自分もボコりたいってか?ふざけんな) 優希「えっ、グルって、さっきのことか?そのことについては謝るじぇ……咲ちゃんと一緒に必死に考えたんだじぇ」 京太郎「咲もかよ……ははっ、はは。マジかよ、アイツの言うことは本当だってことか」 京太郎(何だよ、最初から信用できる奴なんていないじゃねーか) 優希「アイツって?京太郎ちょっとおかしい?」 京太郎「触るな。このクソ野郎が」 優希「えっ?」 京太郎「そうやって影でコソコソと笑って楽しいかよ」 優希「な、何言ってるんだ?」 京太郎「惚けるなよ。また、俺をボコりたいってか?助けたと一瞬思わせて油断を誘ってんのか?」 優希「わ、訳がわかんないじぇ……それよりも早くモブ友を呼ばないと!」 京太郎「させるかよ……!」バシッ 優希「ひっ!」 京太郎「なァ、楽しいか!俺がイジメられてんのを影で見て! 迷惑メールに悩まされて眠れねえを想像して!」 京太郎「挙句の果てにボコってまたさらにボコってよォ!」 優希「い、イジメって?京太郎イジメられてるのか!} 京太郎「しらばっくれるんじゃねぇ!もう騙されねえぞ!」 優希「騙されって……私は騙してなんか!」 京太郎「うるせぇ!近寄るな!友達の振りしてんじゃねえよ!」 咲「京ちゃん!」 和「優希……?」 京太郎「はっ、こうなることを見通して呼んだのか?随分と周到だなあ!」 咲「京ちゃん、あのね」 京太郎「お前と話すことなんて何もねぇよ、この屑が」 咲「……えっ」 京太郎「そうやって無害なふりしてんだろ?もうバレバレなんだよ」 京太郎「いつまで手をとってんだよ、離れろや」パシッ 優希「あっ……」 京太郎「二度とそのツラを見せんじゃねぇよ」 咲「京ちゃん待ってよ!まだ私言わないといけないことが……!」 京太郎「俺はねぇよ。消えろ」 和「須賀君、宮永さんは……!」 京太郎「和も共犯なのか?まあこいつをかばうんならそうだろうなあ!」 和「えっ……共犯って何のことですか」 京太郎「自分の胸に聞いてみろよ」ドカッ 和「きゃっ」 優希「のどちゃん!おい、京太郎!のどちゃんは関係無いだろ!」 京太郎「黙れ……!これ以上、俺を……!」バタッ 京太郎(クソッ、身体が、動かねぇ……) 優希「京太郎!やっぱりモブ友を呼んでくるじぇ!」 咲「うん!じゃあ、私達はここで京ちゃんを見ているね!」 和「とりあえず、保健室に運んでからじっくり話を聞かないといけませんね」 京太郎(やめ、ろ……また、俺を痛めつけんのかよ) 京太郎「ち、くしょう」 ―――――――――――――――――― 【帰り道】 京太郎「……がっ」 京太郎(結局、モブ友はニヤついた顔で来やがった。それも、仲間を連れて) 京太郎(咲達はそいつらに連れられて先に保健室に行ってしまった。 何か困惑してたけどきっとそれも演技なんだろう) 京太郎(そうして、またボコられて……数えるのも馬鹿らしくなるくらいに) ??「きょ、京太郎!?どうしたっすか!」 京太郎(こんな姿で帰ると、母さんに心配されちまうな。ごめん) ??「酷い……早く病院へ行かないと」 京太郎(家に帰ったらまずは消毒しねーとな) ??「京太郎、聞いているっすか!」 京太郎(クソッ、歩くだけでも辛い。誰かの肩を借りたいけど今は『一人』だし) 京太郎「一人は、辛いな」 桃子「ここにいるっすよ!私が!」 京太郎「ははっ、まあいいか。一人は気楽だし」 桃子「どうして……!今までは見えていたのに! 私はここにいるっすよ!」 京太郎「痛いけど、我慢しないとな」 桃子「ねぇ、答えてよぉ……!京太郎!」 京太郎「間違っていたんだろうな、きっと」 桃子「私の頭を撫でてよ!私の声を聞いてよ!」 京太郎「こんな時に、モモがいてくれたらな……ははっ、ないものねだりをしてもしゃーないか」 桃子「いるっすよ!私は京太郎の傍に!」 京太郎「辛いことがあったらちゃんと言うって約束、破っちまったな」 桃子「ちゃんと聞くっすから!だから!お願いだから!」 『私のことを、見つけてよぉ……!』 京太郎「まあ、いないもんはしゃーないよな」 桃子「……っ!」 京太郎(こんな有様を見せて心配させたくないしな) 桃子「きょう、たろうっ」 桃子「ねぇ、覚えてるっすか。私達が最初にあった時のこと」 京太郎(最初に会った時はあんなに刺々しかったのに) 桃子「私は先輩を取られるんじゃないかってムキになったっすよね」 京太郎(加治木さんがモモの友だちになってくれって言ったのが始まりだった) 桃子「最初はどうせ、メールもなしに放っておくんだと思ってたっすよ」 京太郎(あの後、夜にメールをしたらすごい速さで返ってきたんだよな) 桃子「でも、京太郎はすぐにメールしてくれた。あれ、すごく嬉しかったんすよ?」 京太郎(それから夜中までメールするとは思わなかった。楽しかったからいいけどさ) 桃子「素直に言えなかったっす。私、こういうのが初めてだったから」 京太郎(それからさ。俺が体調崩して寝込んでた時、お前すっげえ心配してくれたよな) 桃子「京太郎は一人で無理をし過ぎっすよ!でも、風邪の時にメールをしてくれたのは……えへへ。 ああ、私を頼ってくれてるんだなって感じでニヤついたんスよ、もう!」 京太郎(冗談だと思ってたんだぜ、看病とかも。本当に来るとは思ってなかった) 桃子「看病に行った時も京太郎は私に気を使ってくれて……これじゃあ看病の意味がないじゃないっすか! 夫婦みたいで恥ずかしかったっすよ!」 京太郎(夫婦みたいだーってからかったモモはすっげー可愛かったし) 桃子「京太郎は本当に意地悪っすよ!私をいつもからかって!」 京太郎(で、俺があの変なサイトの時、言ったんだっけ。 大事な友達だから絶対に護るって) 桃子「でも、私のことを護るって言ってくれたりして……もう! 本当に京太郎は甘やかしっすよ!そういうことを言われたら……!」 桃子「好きになっちゃうに決まってるじゃないっすか!!!」 桃子「京太郎の家に泊まった時とか、すっごい緊張してたんすよ!? それに比べて京太郎はいつも通りで!私のことをどうとも思っていないし! というか、京太郎のベッドにわざと入っても何もしなかったし! は、恥ずかしすぎて私があわあわして逃げたのも悪いんすけど!」 京太郎「モモに、会いたいな」 桃子「私はここにいるっすよ!お願い、京太郎……っ」 京太郎「まあ、もう無理かもしれねーけど」 桃子「見つけてよぉ!!!私を……っ!答えてよっ……」 京太郎「ホント、『一人』は辛いな……なあ、モモ」 桃子「ああっ、ああ!」 桃子「あああああああああああああああああああああああああああっっ!!!」 巴「随分と奇抜な状態ですね、きょーちん」 京太郎「……巴さん。俺に何か用ですか」 巴「前にあった時よりも辛辣ですね」 京太郎「色々あったんで」 巴「そうですか。さてと、その前に……君は『一人』ですか?」 京太郎「何を当たり前のことを。『一人』に決まってるじゃないですか」 桃子「……っ」 京太郎「それとも何ですか、俺の後ろにお化けでも憑いてるとでも? 確か、巴さんは巫女でしたっけ。そういう関係で祓ったりとかしてくれるんですか?」 巴「これは重症かもしれないですね……」 京太郎「??変なことを言いますね。誰も居ないでしょうに」 巴「わかりました。こんな所で立ち話もなんですから場所を変えましょう」 巴(やはり、見えなくなっていますか……) 京太郎「いや、ここでいいです。誰に聞かれる訳でもないですし」 桃子「うっ……ひっく……」 京太郎「ここには俺と巴さんしかいないですよね。なら、構うことはないじゃないですか?」 京太郎「それとも、本当にお化けでもいるんですか?だったら祓ってくれませんか。気分が悪いんで」 桃子「っ……ぁぁっ!」 巴「……本当に聞こえないし見えないの?」 京太郎「だから、何がですか!はっきり言って下さいよ!後ろに悪霊でも立っているっていうんですか!」 桃子「……悪霊っ、うぅ」 京太郎「……すいません、用件については今度にしてくれませんか?正直……立っているだけでも辛いんで」 京太郎「何か、さっきからざわざわするというか……見えない圧迫感があって嫌なんですよ」 桃子「そ、ん……な」 ポツポツポツ 京太郎「それに、雨も降って来ましたし」 桃子「きょう、たろうっ」 京太郎「ともかく、俺には何も聞こえませんし見えもしません。用件はそれだけですか?」 桃子「い、や……もう、いやっ!」ダッダッダッ 巴「……用件はそのことについてではありません」 京太郎「じゃあ、何ですか!」 巴「記憶は戻りましたか?関節は治りましたか?」 京太郎「どうして、それを……」 巴「その様子だとまだみたいですね。言ったはずですよ、早く取り戻せ、と」 京太郎「それじゃあ、アンタが……!」 巴「ええ、あれを送ったのは私です。何か刺激を与えれば戻るのかと思えば……一向に戻りませんね」 京太郎「何が、目的だ?」 京太郎「言いたいことがあるなら俺に直接言えばいいだろうが!」 巴「言えたら苦労はしませんよ!言えないから……直接伝えても、忘れてしまうから!」 京太郎「そんな……」 巴「……失礼、取り乱しました。ともかく、時間切れなんです。見つかってしまったから」 巴「神様の手による修正ですよ」 京太郎「修正、って……」 巴「書き換えられるんですよ、記憶を。イレギュラーを」 京太郎「そんな、アホなことが……ぁ」グラリ 巴「神様は賽なんて投げない。投げても目は決まりきっているから」 京太郎「と……もえ、さん」 巴「もしも、私の言葉を覚えているのならば。須賀の字が何に繋がるのかを思い出して下さい」 京太郎「ま、って」 巴「……できれば、私のことも思い出してくれると嬉しいです」 「どうか姫様を。助けて下さい。須佐之男命よ」 京太郎「――あれ、俺は何をしていたんだっけ」 京太郎「……そうか、ボコられて咲達も信じられなくて逃げたんだ」 京太郎「その後……何かあったような」 京太郎(まあ、いいか。思い出せないレベルの記憶なんて大したことないか) 京太郎(さてと、どうしようか) ザーザーザー 京太郎(どうしようもない、か。家に帰っても、こんな有様心配されちまう) 京太郎(それに、学校になんてもう行けない。いや、行きたくない) 京太郎(迷惑、かけてしまうな……母さんに) 京太郎(ああ、でも迷惑をかけるぐらいなら、いっそ――) 京太郎(このまま、どっかの道路に出て轢かれて死んでしまえば)フラリ 京太郎(何も考えなくてもいんだ。楽に、なれるんだ) ???「……」 京太郎(死ねば、助かる) 京太郎(あ、はは。もう俺、結構限界だったじゃん) 京太郎「これで、いいんだよな」 ???「……それを決めるのは貴方なの?」 京太郎「……誰ですか」 ???「――宮永照」 【断章終わってしまった話End】

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