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491 名前:【桃子 -MOMO-】エピローグ[sage] 投稿日:2011/02/18(金) 01:46:10 ID:80/Wr1aAO 「はぁ・・・・・」 昼休みの屋上で一人の少女がおにぎりを持ちながら溜め息を吐く。 彼女の名前は東横桃子、清澄高等学校に通っている一年生だ。 彼女は最初、鶴賀学園を志望校としていたが今年は鶴賀を志望する学生が多く、倍率が例年よりも数倍に膨れ上がってしまった。 そこで桃子はあまり倍率が高くなかった、清澄高校への進学を決意して見事合格を果たす。 しかし、清澄高校は自分の家から遠かった。そのため桃子は両親から離れ、学校から近いアパートを借りて、そこから通学する事となった。 普通の女の子なら一人だけでの生活に不安を抱くのだろうが、桃子はその事に対して全くの不安を抱く事はなかった。 何故なら桃子にとって―――家族が居ても居なくても同じ事だったから。 桃子には他の人とは違う特徴があった。それは絶望的なまでの存在感の無さ。 彼女は幼少の頃から誰よりも影が薄く、自分から踊ったり大声を出さない限り他人に認識してもらえなかった。 それは自分を産んだ両親でさえも例外ではなく、桃子が家にいても全く気が付いてもらえない事も珍しくはない。 そういう事が続いたせいで桃子は他人との付き合いに消極的になってしまった。 だけど桃子は心の何処かでは何もしなくても、自分の存在に気が付いてくれる人間を求めていた。 高等生活が始まったら誰かと話をしたり遊んだり、 時には喧嘩したり―――そんな日々がやってくるんじゃないかと淡い気持ちを桃子は抱いていた。 だけど、何も変わらなかった。入学式から数週間経っても桃子は相変わらず一人ぼっちの生活を送っている。 一人で学校に通い、一人で昼休みを過ごして、一人でアパートに帰る。そんな日々の繰り返しだ。 桃子はやっぱりかという気持ちと共に、期待を裏切られた事に対する悲しみで胸が一杯だった。 どうする事も出来ない現実に桃子はただ、空想に逃げる事しか出来なかった。 昼御飯を食べ終えた桃子はスッと立ち上がると、グラウンドを眺めた。 サッカーをしている生徒や歩きながら会話をしている生徒が桃子の瞳に写る。 「・・・・・・」 桃子は楽しそうに笑っている彼らが羨ましかった。だけど自分はあの中には入れないだろう、自分はそういう星の下に生まれてきたのだから。 そんな諦めの気持ちを抱きながら桃子は屋上を後にした。 (あーあ・・・早く学校なんか終わってくれないっすかねー) 桃子はボーッとしながら教室へと続く階段を降りる。 「きゃっ!」 注意力が散漫になっていた桃子は階段の段差につまずいてしまう。 自分の身体が宙に浮く感覚に桃子の心臓の鼓動が早くなる。下に待ち構えるは硬い床、恐らく大怪我は免れないだろう。 迫りくる恐怖のあまり桃子は目を閉じてしまった。 そして、桃子が床へと叩き付けられる・・・・・・その瞬間、一人の生徒が階段の下に駆け寄ると桃子の身体を衝撃から守るように受け止めた。 「ああうっ!」 桃子の短い悲鳴と共に二人の身体が床へと倒れこむ。 492 名前:【桃子 -MOMO-】エピローグ[sage] 投稿日:2011/02/18(金) 01:47:53 ID:80/Wr1aAO 想像していた痛みが全くない事を不思議に思った桃子はゆっくりと目を開く。 「いててて・・・・」 そこには金髪の頭をした男子生徒が、痛そうな表情をしながら桃子の身体を抱き締めていた。 「え・・・・なん・・・で・・・」 「だ・・・大丈夫?怪我はないかい?」 男子生徒は心配そうな顔をして桃子の安否を問うが、桃子の耳には入らない。桃子は自分が助けられた事に対してかなり動揺していた。 存在感のない自分は誰にも認識してもらえないはずなのに、目の前にいる男子は自分を救ってくれたのだから。 つまり―――この男子生徒は自分の姿が見えているのだ。 「君・・・・同じクラスの東横さんだよね?」 「えっ!?」 男子生徒の言葉に桃子はさらに驚愕する。彼は自分の姿が見えているだけではなく、名前まで呼んでくれた。 桃子は男子生徒の身体から離れつつも、彼の顔をまじまじと見つめる。 ひょっとして、ひょっとしたらこの人は自分が長年探し求めていた――――! 「あ、あの・・・・」 「どうやら怪我はないみたいだな。全くヒヤヒヤしたよ・・・廊下を歩いていたら、階段から落ちる東横さんが見えたからさ! しかし、大事に至らなくて良かった良かった!」 ポリポリと頭をかきながら男子生徒は笑うとゆっくりと立ち上がった。 「立てるかな東横さん?良かったら手を貸すよ・・・・はい」 男子生徒は桃子にスッと手を差し伸べる。桃子は恐る恐る自分の右手を彼の手の上に置いた。 ギュウッ・・・・ 「あっ・・・・」 手を握りしめられた桃子の心臓が大きく鼓動する、生まれて初めて―――桃子は親以外の人間に手を強く握られた。 たったそれだけの事だったが、それは桃子にとって非常に衝撃的な事である。 「そろそろ授業が始まるよ東横さん!早く行こう!」 「えっ?ちょ、ちょっと・・・・」 驚きの連続で呆然としていた桃子を尻目に、男子生徒は桃子の手を放すと走りだそうとした。 「待ってくださいっすよ!」 「ん、どうした東横さん?もしかして・・・何処か痛む所でもあるのか」 「ち、違うっす!その・・・・君の名前を教えて欲しいっすよ」 桃子はモジモジしながら男子生徒に名前を聞く。 桃子は生まれて初めて自分の手を握ってくれた人の名前を知りたかった。 「あらら・・・俺の名前を覚えてくれてないのか・・・ちょっとショックだぜ」 「ご、ごめんなさいっす・・・・」 「いやいや!東横さんが謝る事じゃないよ!とりあえず・・・改めて自己紹介させてもらうよ。 俺は・・・・須賀京太郎っていうんだ」 「須賀・・・・京太郎君・・・」 「別に呼び捨てでも構わないよ。んじゃ、紹介した事だし早く行こう東横さん」 京太郎はニッコリと微笑むと、教室へと走り出す。 「須賀京太郎・・・・京太郎君・・・やっと・・・私を見てくれる人が・・・・」 京太郎の後ろ姿を見つめ、桃子はそっと自分の胸に両手を添えると嬉しそうに呟いた。 須賀京太郎との出会いが彼女の運命を大きく変える事となる―――――― 544 名前:【桃子 -MOMO-】プロローグその2[] 投稿日:2011/03/19(土) 21:55:11.11 ID:vP3uc0mTO 「眠れないっすよ・・・」 桃子はベッドにゴロゴロと寝転がりながら小さく呟く。須賀京太郎―――今日、自分を助けてくれた人の事がいつまで経っても頭から離れない。 本当は学校が終わったすぐ後に話がしたかったけど、 今までこんな経験がなかったせいで何を話したら良いのか分からず、結局その日は帰って行く京太郎の後ろ姿を見詰める事しか出来なかった。 「このままじゃ駄目っすよね・・・・やっぱり自分から京太郎君に話をしないといけないっす」 ようやく自分の存在に気が付いてくれる人を見つけたのだ。京太郎と仲良くなりたい、仲良くなって色々な話がしたい。 桃子は京太郎と楽しそうに会話をしている自分の姿を想像しながらうつ伏せになる。 「そう言えば私、京太郎君に助けてもらったお礼をまだ言ってなかったっす。大切な事を忘れるなんて・・・・私のバカ」 桃子は自分の頭をコツンと軽く小突き、枕に顔を埋める。明日、ちゃんとお礼を言おう。そしてそれをきっかけにして自分なりに精一杯、京太郎と話をしよう。 桃子はそう決心しながらゆっくりとまぶたを閉じた。 次の日の朝。桃子は眠たそうに目を擦り、足下をフラフラとさせながらアパートを出る。 桃子はまぶたを閉じた後、京太郎とどんな風に会話をしようかイメージトレーニングを始めた。 しかし、それがいけなかった。あれこれ考えているうちに着実に時間が過ぎていき結局、桃子が眠りに付いたのは深夜4時頃になってしまって、 そのせいで桃子は完全な寝不足になってしまったのであった。 「こんなみっともない姿を京太郎君に見せる訳にはいかないっす・・・シャキッとしないといけないっすよ!」 桃子は欠伸を噛み締め、若干猫背になっていた身体を真っ直ぐに伸ばし歩き出す・・・・が、 やっぱり長続きする事が出来ず、十数歩くらい移動しただけですぐに元に戻ってしまった。 こんな無様な姿を京太郎君に見られる前に学校に着かなければ。桃子は焦りながらも歩く速度を早める。 もっとも、歩く速度はほとんど上がってはいないのだが・・・・。 しかし、ただでさえ寝不足で意識がしっかりとしていない事に加え、急ぎ足で移動すれば、通常は足下への注意力がおろそかになってしまうもの。 「きゃっ!」 そして案の定、桃子は道に落ちていた石に躓いてしまったのであった。自業自得とはまさにこの事である。 #comment
491 名前:【桃子 -MOMO-】エピローグ[sage] 投稿日:2011/02/18(金) 01:46:10 ID:80/Wr1aAO 「はぁ・・・・・」 昼休みの屋上で一人の少女がおにぎりを持ちながら溜め息を吐く。 彼女の名前は東横桃子、清澄高等学校に通っている一年生だ。 彼女は最初、鶴賀学園を志望校としていたが今年は鶴賀を志望する学生が多く、倍率が例年よりも数倍に膨れ上がってしまった。 そこで桃子はあまり倍率が高くなかった、清澄高校への進学を決意して見事合格を果たす。 しかし、清澄高校は自分の家から遠かった。そのため桃子は両親から離れ、学校から近いアパートを借りて、そこから通学する事となった。 普通の女の子なら一人だけでの生活に不安を抱くのだろうが、桃子はその事に対して全くの不安を抱く事はなかった。 何故なら桃子にとって―――家族が居ても居なくても同じ事だったから。 桃子には他の人とは違う特徴があった。それは絶望的なまでの存在感の無さ。 彼女は幼少の頃から誰よりも影が薄く、自分から踊ったり大声を出さない限り他人に認識してもらえなかった。 それは自分を産んだ両親でさえも例外ではなく、桃子が家にいても全く気が付いてもらえない事も珍しくはない。 そういう事が続いたせいで桃子は他人との付き合いに消極的になってしまった。 だけど桃子は心の何処かでは何もしなくても、自分の存在に気が付いてくれる人間を求めていた。 高等生活が始まったら誰かと話をしたり遊んだり、 時には喧嘩したり―――そんな日々がやってくるんじゃないかと淡い気持ちを桃子は抱いていた。 だけど、何も変わらなかった。入学式から数週間経っても桃子は相変わらず一人ぼっちの生活を送っている。 一人で学校に通い、一人で昼休みを過ごして、一人でアパートに帰る。そんな日々の繰り返しだ。 桃子はやっぱりかという気持ちと共に、期待を裏切られた事に対する悲しみで胸が一杯だった。 どうする事も出来ない現実に桃子はただ、空想に逃げる事しか出来なかった。 昼御飯を食べ終えた桃子はスッと立ち上がると、グラウンドを眺めた。 サッカーをしている生徒や歩きながら会話をしている生徒が桃子の瞳に写る。 「・・・・・・」 桃子は楽しそうに笑っている彼らが羨ましかった。だけど自分はあの中には入れないだろう、自分はそういう星の下に生まれてきたのだから。 そんな諦めの気持ちを抱きながら桃子は屋上を後にした。 (あーあ・・・早く学校なんか終わってくれないっすかねー) 桃子はボーッとしながら教室へと続く階段を降りる。 「きゃっ!」 注意力が散漫になっていた桃子は階段の段差につまずいてしまう。 自分の身体が宙に浮く感覚に桃子の心臓の鼓動が早くなる。下に待ち構えるは硬い床、恐らく大怪我は免れないだろう。 迫りくる恐怖のあまり桃子は目を閉じてしまった。 そして、桃子が床へと叩き付けられる・・・・・・その瞬間、一人の生徒が階段の下に駆け寄ると桃子の身体を衝撃から守るように受け止めた。 「ああうっ!」 桃子の短い悲鳴と共に二人の身体が床へと倒れこむ。 492 名前:【桃子 -MOMO-】エピローグ[sage] 投稿日:2011/02/18(金) 01:47:53 ID:80/Wr1aAO 想像していた痛みが全くない事を不思議に思った桃子はゆっくりと目を開く。 「いててて・・・・」 そこには金髪の頭をした男子生徒が、痛そうな表情をしながら桃子の身体を抱き締めていた。 「え・・・・なん・・・で・・・」 「だ・・・大丈夫?怪我はないかい?」 男子生徒は心配そうな顔をして桃子の安否を問うが、桃子の耳には入らない。桃子は自分が助けられた事に対してかなり動揺していた。 存在感のない自分は誰にも認識してもらえないはずなのに、目の前にいる男子は自分を救ってくれたのだから。 つまり―――この男子生徒は自分の姿が見えているのだ。 「君・・・・同じクラスの東横さんだよね?」 「えっ!?」 男子生徒の言葉に桃子はさらに驚愕する。彼は自分の姿が見えているだけではなく、名前まで呼んでくれた。 桃子は男子生徒の身体から離れつつも、彼の顔をまじまじと見つめる。 ひょっとして、ひょっとしたらこの人は自分が長年探し求めていた――――! 「あ、あの・・・・」 「どうやら怪我はないみたいだな。全くヒヤヒヤしたよ・・・廊下を歩いていたら、階段から落ちる東横さんが見えたからさ! しかし、大事に至らなくて良かった良かった!」 ポリポリと頭をかきながら男子生徒は笑うとゆっくりと立ち上がった。 「立てるかな東横さん?良かったら手を貸すよ・・・・はい」 男子生徒は桃子にスッと手を差し伸べる。桃子は恐る恐る自分の右手を彼の手の上に置いた。 ギュウッ・・・・ 「あっ・・・・」 手を握りしめられた桃子の心臓が大きく鼓動する、生まれて初めて―――桃子は親以外の人間に手を強く握られた。 たったそれだけの事だったが、それは桃子にとって非常に衝撃的な事である。 「そろそろ授業が始まるよ東横さん!早く行こう!」 「えっ?ちょ、ちょっと・・・・」 驚きの連続で呆然としていた桃子を尻目に、男子生徒は桃子の手を放すと走りだそうとした。 「待ってくださいっすよ!」 「ん、どうした東横さん?もしかして・・・何処か痛む所でもあるのか」 「ち、違うっす!その・・・・君の名前を教えて欲しいっすよ」 桃子はモジモジしながら男子生徒に名前を聞く。 桃子は生まれて初めて自分の手を握ってくれた人の名前を知りたかった。 「あらら・・・俺の名前を覚えてくれてないのか・・・ちょっとショックだぜ」 「ご、ごめんなさいっす・・・・」 「いやいや!東横さんが謝る事じゃないよ!とりあえず・・・改めて自己紹介させてもらうよ。 俺は・・・・須賀京太郎っていうんだ」 「須賀・・・・京太郎君・・・」 「別に呼び捨てでも構わないよ。んじゃ、紹介した事だし早く行こう東横さん」 京太郎はニッコリと微笑むと、教室へと走り出す。 「須賀京太郎・・・・京太郎君・・・やっと・・・私を見てくれる人が・・・・」 京太郎の後ろ姿を見つめ、桃子はそっと自分の胸に両手を添えると嬉しそうに呟いた。 須賀京太郎との出会いが彼女の運命を大きく変える事となる―――――― 544 名前:【桃子 -MOMO-】プロローグその2[] 投稿日:2011/03/19(土) 21:55:11.11 ID:vP3uc0mTO 「眠れないっすよ・・・」 桃子はベッドにゴロゴロと寝転がりながら小さく呟く。須賀京太郎―――今日、自分を助けてくれた人の事がいつまで経っても頭から離れない。 本当は学校が終わったすぐ後に話がしたかったけど、 今までこんな経験がなかったせいで何を話したら良いのか分からず、結局その日は帰って行く京太郎の後ろ姿を見詰める事しか出来なかった。 「このままじゃ駄目っすよね・・・・やっぱり自分から京太郎君に話をしないといけないっす」 ようやく自分の存在に気が付いてくれる人を見つけたのだ。京太郎と仲良くなりたい、仲良くなって色々な話がしたい。 桃子は京太郎と楽しそうに会話をしている自分の姿を想像しながらうつ伏せになる。 「そう言えば私、京太郎君に助けてもらったお礼をまだ言ってなかったっす。大切な事を忘れるなんて・・・・私のバカ」 桃子は自分の頭をコツンと軽く小突き、枕に顔を埋める。明日、ちゃんとお礼を言おう。そしてそれをきっかけにして自分なりに精一杯、京太郎と話をしよう。 桃子はそう決心しながらゆっくりとまぶたを閉じた。 次の日の朝。桃子は眠たそうに目を擦り、足下をフラフラとさせながらアパートを出る。 桃子はまぶたを閉じた後、京太郎とどんな風に会話をしようかイメージトレーニングを始めた。 しかし、それがいけなかった。あれこれ考えているうちに着実に時間が過ぎていき結局、桃子が眠りに付いたのは深夜4時頃になってしまって、 そのせいで桃子は完全な寝不足になってしまったのであった。 「こんなみっともない姿を京太郎君に見せる訳にはいかないっす・・・シャキッとしないといけないっすよ!」 桃子は欠伸を噛み締め、若干猫背になっていた身体を真っ直ぐに伸ばし歩き出す・・・・が、 やっぱり長続きする事が出来ず、十数歩くらい移動しただけですぐに元に戻ってしまった。 こんな無様な姿を京太郎君に見られる前に学校に着かなければ。桃子は焦りながらも歩く速度を早める。 もっとも、歩く速度はほとんど上がってはいないのだが・・・・。 しかし、ただでさえ寝不足で意識がしっかりとしていない事に加え、急ぎ足で移動すれば、通常は足下への注意力がおろそかになってしまうもの。 「きゃっ!」 そして案の定、桃子は道に落ちていた石に躓いてしまったのであった。自業自得とはまさにこの事である。 #comment

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