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朝、目が覚めるといい匂いがした。
京太郎「……またか」
豊音「……zzz」
ちょっと首を回せばそこには幸せそうな寝顔。長い髪が首筋にあたってこそばゆい。
京太郎の体を覆うように回された腕と足はガッチリと京太郎の体をホールドして離さない。
少し前に豊音が寝ぼけて布団に乱入してきてからは、こうして京太郎の布団に潜り込んでくることが増えた。
京太郎「…鹿倉先輩とかに見られたら大変なことになりそうだなぁ」
凄い時には京太郎が豊音の部屋まで連れ込まれることもある。
どう寝ぼけたらそうなるのか、激しく問い詰めたいところだが
豊音「…えへへ~……」
京太郎「この寝顔を見ると何も言えないんだよなぁ…」
ずっとひとりぼっちだった彼女が、人肌の温かさを知ってしまったら。
朝、目が覚めた時に、隣に誰かがいることの喜びを知ってしまったら。
きっともう、元には戻れないのだろう。
京太郎「……ま、いいか」
健全な男子高校生としては非常に喜ばしい。
今でこそ落ち着いた対応が出来るが、最初は布団も豊音も吹っ飛ばして飛び起きる勢いだった。
京太郎「ホント、可愛い人だよ」
豊音「ん……ん……♪」
登校時刻まであと1時間。まだ余裕はある。
もう少しこの寝顔を堪能していようと頬に手を伸ばすと、豊音の頬が幸せそうに緩んだ。
朝、登校する時も。
豊音「いっしょにいこー」
昼、弁当を食べる時も。
豊音「いっしょに食べよー」
放課後、HRが終わって部室に行く時も、教室の入り口で。
豊音「待ってたよー」
みんながコタツで暖まっている時、スペースがないので我慢して雑用でもしようとした時には。
豊音「私が詰めるよー。2人一緒ならもっとあったかいよー」
休日、映画を見に行く時も。
豊音「私もいくよー」
趣味に合わないと思いますよ、と言うと。
豊音「京太郎くんといっしょなら何でも楽しいよー?」
京太郎「……」テクテク
豊音「~♪」トコトコ
姉帯先輩、と呼ぶとこの人はヘソを曲げる。
姉帯さん、と呼ぶとこっちをチラ見する。
豊音さん、と呼ぶと
豊音「! はーい!」
思いっきり抱きつきながら返事をしてくれる。
身長が10cm以上離れた相手だけど、つい可愛くて頭を撫でてしまう。
後輩離れできない先輩と先輩離れできない後輩である。
豊音「ずーっといっしょだよー!」
カンッ