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優希「のどちゃん、まだそいつにお礼言えてないのか?」
和「はい……どうしてもタイミングが掴めなくって」
優希「もう、そういうのは勢いだじぇ!って私が言ったじゃないか」
優希「遅れれば遅れるほど言い難くなるじぇ?」
和「それは、そうなんですけど……」
――清澄高校を受験した日、私はまだ迷っていました
――ゆーきと一緒に進学をするか、父の言う通り東京へ進学するか
――確かにゆーきは中学で一番の親友でしたし、一緒に高校生になるのも悪くないと思っていました
――阿知賀の時ように、また友人と離れて疎遠になってしまうのが嫌だったというのもあります
――でも高校生の内にまた転勤が無いとは限りませんし、だったら全寮制の学校の方が辛くないのではとも思っていたのです
――そんな迷いのあるまま会場へ行き、私は彼と出会ったのです
優希「でも消しゴムなんか無くったってのどちゃんなら合格できたんじゃないかー?」
和「流石にそれは無理ですよ」
優希「そんなもんかー、でもそれなら私にもそいつはのどちゃんを合格させてくれた恩があるわけだな!」
和「なんですかそれは……」
――受験票をだして試験の準備をしていた時、私は消しゴムを忘れていたことに気づきました
――優希とは場所が離れていたし、清澄を受験する高遠原生は他にいません
――進学に迷ってはいたものの、このままではゆーきに申し訳が立たない
――そう思って落ち込んでいたときです
――『あの、これ、良かったら……』
――そう言って不恰好にちぎられた消しゴムをおずおずと、しかし笑顔で差し出す彼と出会ったのは
優希「じゃあいっそそいつを麻雀部に誘っちゃうじぇ!」
和「ええっ!?」
優希「部活が一緒で仲良くなれば何時かはお礼がいえるじぇ、私も言いたいしな!」
優希「それに人気競技だし、のどちゃんが誘えば誰だってホイホイついてくるに決まってるじぇ」
和「何だかお礼を言うよりハードルが上がってるような……」
――私が清澄に来た理由、それは半分がゆーきで残りの半分はまだ名前も知らない彼にあります
――清澄での毎日は楽しくて、ここに進学して良かったと思えます
――だから彼にはきちんと会ってお礼が言いたい
――そして……
優希「と、いうわけで早速作戦会議だじぇ!行くぞーのどちゃん!」
和「ま、待ってください!」
――あの時の胸の高鳴りを確かめたいと、そう思います