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  ”Carry on my wayward son  For there'll be peace when you are done  Lay your weary head to rest  Don't you cry no more” 「Kansas アルバム『伝承』DISC2より『Carry on Wayward son』」 ………… 「京太郎、時間じゃ」 部長の声に俺は顔を上げ、壁の時計を確かめた 黒い長針が「10」に届いたところだった 10分後には俺は歓声のなかに座して初めて会う人間達と鎬を削る事になる 緊張を抑えるために組んだ手が何かの祈りに見えるのは不自然じゃあない 事実、俺は得体の知れないものにすがりつきたい気分だった いつまでもここに留まっているわけにはいかない パイプ椅子から離陸し、戦場に向かわなくては 両手を解き、そのまま頬を叩く きん、と耳に響く音のなかにあの人の声が聞こえた気がした ――須賀君、みっともなかろうがやってきなさい   なんだかんだで皆、どんなあなたでも大好きなんだからね 2年生になって挑む個人戦、その三日前に俺は前部長の竹井久先輩に電話をしていた 去年のような失態が部活中も消えなくて、不安のあまりその日の夜にかけてしまった 竹井先輩は俺の泣き言に黙って耳を貸して、その言葉をくれた 吹っ切れた、とまではいかなかったが、胸に残る一言だった ――どんな俺でも好き 俺は今までどういう俺を皆に見せていたのだろうか ………… 「清澄か…男子部員なんて初めて聞くな」 卓についた対面の男が呟いた 表情にも口調にも嫌味は見えない 純粋にそう思っただけなのだろう 左右の男達も俺をちらちらと見る ――まあ、いいさ 俺は高いところを見すぎていた 咲達のようなレベルの雀士になるには何を見ればいいか、何を考えればいいか そうやって学ぼうとすれば俺も追いつけると本気で思っていた でも、そんなの盲目もいいところだった 明らかに実力差や才能差があるのに、今まで何もしてこなかった人間が1年ちょっとで近づこうとするなんて馬鹿げていた 身の程を知った俺に残されたものってなんだろうか 先輩達に見せられるもの、同輩達に誇れるもの、後輩たちに残せるもの それはなんだろうか、と自問自答し続けてきた 本当は何もないんだって、分かっていた 答えは最初からわかっているのに問い続けてきた とことん馬鹿だ 「手加減しないぞ清澄」 対面の男が眼光を鋭くする よく喋る男だ この男は分かっているのだろう 自分が見せられるもの、誇れるもの、残せるもの 築き上げてきたのだろう、一生懸命に、必死に 俺にはない だから―― 「なあ、アンタ」 「何だ」 「俺さ、須賀っていうの」 「…?」 「名前だよ、清澄じゃない」 お前が相手をするのは清澄じゃない 俺だ 「須賀京太郎がお前の相手だ」 何も築いてこなかったなら 「アンタらに勝って、俺は手に入れる」 今からでも築くしかない! ………… 「京ちゃん頑張れー!」 「京太郎ー!骨だけは拾ってやるじょー!」 「須賀君、落ち着いてますね…頑張って……」 「須賀先輩ファイトー!」 「せんぱーい!キリっとした顔も素敵ー♪」 「おおおおおおおいそこの一年娘ぇ!いま何ていったじぇ!?」 「きゃー片岡先輩嫉妬してるー!かわいー!」 「落ちつかんかい優希」 「でも本当に京ちゃん今日は顔つきが違うね…もうこんなに凛々しくなったんだ」 「うわっ、宮永先輩も須賀先輩にホの字って噂本当だったんだ…」 「お前ら、ちゃんと京太郎の試合観てやらんかい!」 「そうですよ!」 「ごめんなさーい!」 「(京ちゃん……みんながついてるからね)」 Carry on, you will always remember(さあ行け、お前はきっと忘れない) Carry on, nothing equals the splendor(その並ぶ者のない輝きを) Now your life's no longer empty(もうお前は空っぽなんかじゃない) Surely heaven waits for you(さあ、天国はお前のものだ) Carry on my wayward son(突き進むんだ頑固息子よ) For there'll be peace when you are done(安らぎを得たければやり抜くしかない) Lay your weary head to rest(どうにも頭が回らなくなったら休めばいい) Don't you cry no more(だからもう泣くんじゃない) 「ロン!!」 カンッ  

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