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  「ふぅ……」 「どうした新入り。緊張してるのか?」 「あっ軍曹殿」 「お前は確か今回の作戦が初めてだったな」 「あ……は、はい」 「安心しろ。誰でも最初は緊張するもんだ」 「……ありがとうございます」 「ま、作戦開始時刻までもう少しあるからな……少し隣座るぞ」 「はい。どうぞ」 「そうだな。暇つぶしにお前の事でも聞こうか」 「俺の事……ですか?」 「あぁ。話していたら少しは気も紛れるだろうしな」 「……良いんですか?」 「ん?あぁ、軍規の事か」 「はい。あまりお互いの事を詮索するのは良くないと聞きました」 「アレはまぁ、お題目みたいなもんだ」 「お題目?」 「俺達はお互いの素性どころか素顔も知らず、同じ目的に向かって力を合わせてる訳だが……中には詮索しようとするバカな奴もいる」 「そういう奴への対策って事ですか?」 「あぁ。それにまぁ自分から話す分には何の問題もない。勿論、俺は命令したりは出来ないから自主性に任せる事になるが……」 「……はい。大丈夫です」 「そうか。じゃあ……まずはお前はどうしてこの作戦に参加したんだ?って事から聞かせて貰おうか」 「……それは――」 実は俺、ある高校の麻雀部員なんですけれど……自分の時間ってやつが殆ど雑用で潰れてしまって。 あ、いえ、大丈夫です、イジメとかじゃないですから。はい。ありがとうございます、心配してもらって。 それにまぁ……俺は雑用そんなに嫌いじゃないんです。俺がやった事で、あいつらが笑顔になるならそう悪くないと思えますし ……だけど、最近はその頻度が凄くて……ちょっと嫌になってまして……え?どれくらい……ですか? えっと……まず朝起きて飯作ったら隣に幼馴染を起こしにいかなきゃいけないんです。 そこは父子家庭って奴で……親父さんの仕事が早いんで起こして貰えないらしくて。 だから、俺が起こすんですけど……凄いそいつ寝坊助なんですよね 揺さぶった程度じゃ起きないですし……まずそいつを起こすのに結構時間が掛かります。 女の子なんで俺が着替えさせる訳にもいかないですしね。 それで着替えたら着替えたで髪を整えてやったり、朝ご飯食べさせてやったりしなきゃいけないんで凄い手が掛かりますし……。 流石に食べ終わった後には目も覚めてきますけど、そいつすげー方向音痴なんで学校まで手を繋いでいかなきゃいけません。 で、まぁ、女の子なんであんまり歩くの早くないから、登校にも結構時間が必要になります。 休み時間も移動教室の度に側にいてやらないとすぐに迷子になりますし……トイレも案内してやらないとダメなくらいです。 昼休みはそいつの面倒見なくても済むんですけどね。 ただ、今度は別の部員が出来たてのタコス食べたいってせっついてくるんですよ。 はい、あのタコスです。いえ、作ろうと思えば割りと簡単ですよ。慣れれば簡単に生地が出来ますし。 で、焼いたら焼いた分だけそいつ食べるんですよ。 身体は小学校の頃から成長してないんじゃねってレベルで小さいんですけど……この前なんか昼休み終わるまでに10個喰ってましたからね。 まぁ、それだけ気に入ってくれたんなら俺も嬉しいんですけど……でも、昼休み焼きっぱなしで飯食べる時間もなくって。 だから、そいつが買って来たパンをタコスを作ってる最中に口に放り込まれるんですよ。 「あーん」って言いながら恥ずかしそうに頬染めて……そこまでするくらいタコス食べたいのかって話ですけどね。 放課後になったらなったで本格的に雑用開始です。 部長……えっと、正確には元なんですけど、その人があれやこれやと買うものを指示してくるんで。 あ、いえ、大丈夫ですよ。領収書切ってますし、部費からちゃんと代金は貰ってます。 ただ、なんか最近、突き上げが厳しいらしくて無駄遣いしていないかチェックされるんですよね。 その所為で部活の時間は殆ど部長と一緒に出かける事になって……いや、部長はかなりフレンドリーな人なんで一緒でも気にならないんですけど。 でも、何故か最近、遠出が増えて来て……この前なんか気づいたらデパートの女性用下着売り場に立たされてましたし。 それだけならまだしも下着売り場で「どっちの方が興奮する?」とか勝負下着見せられても反応に困るじゃないですか。 そんな事するのに帰りに「デートみたいね」なんて恥ずかしそうにはにかまれるとこっちもドキッとしますし……。 相手にそういうつもりがないって分かってるんですけど……完全に翻弄されてるって言うか。 俺もそうやって一緒にいると楽しい所為で時間忘れて、気づいたら部活終わってたって事が殆どです。 それで部活が終わって帰る時になったら……今度はある子を送り迎えしなきゃいけなくて。 何でも最近、悪質なストーカーからいやらしい手紙が届いたみたいで……え?いや、お、俺じゃないですよ、俺じゃ。 と、とにかく……その子を送り迎えするんですけど……その子は一人っ子で親が弁護士と裁判官なんです。 はい……だから、親が帰ってくるまで一人っきりで……放っておけないじゃないですか。 その子も出来るだけ一緒に居て欲しいって言ってるんで……親が帰ってくるまで一緒に居てますよ。 ただ、大抵、親御さんが帰ってくるのは11時過ぎとかなんで……晩飯はご馳走になってます。 え?あぁ、はい。そうです、手料理ですよ。せめてものお礼だって毎日作ってくれるんですよ。 お陰が毎日おいしい晩飯が食べられて役得……なんて事言ったら本気で怖がってる彼女に悪いですけど……。 ちょっと物音がしただけで俺に抱きついてくるくらい怖がってますし。 でも、そうやってもう数ヶ月経ってますけど、ストーカーの影も形も見えないんですよね……。 彼女は「俺が居てくれてるお陰だ」ってそう言ってくれてるんで少しは力になれてるんでしょうけど……。 「これからもずっと護って下さい」とまで言われるとなんか弱味に漬け込んで美味しい思いしてるようで申し訳ない気もするんですよね。 で、その子の親が帰ってきたのを確認して挨拶してから帰った後にはもう風呂入って寝る時間ですよ。 幼馴染のお陰で毎朝、早めに起きなきゃいけませんし……出来たとしても宿題終わらせるくらいです。 休日も上の誰かしらに呼び出されて買い物やらに付き合わされますし……一人でいる時間が殆どないんですよ 勿論、俺もそいつらの事は嫌いじゃないんで、別に構わないんですけど……でも、お陰で一人になる時間もなくて。 それになんかモヤモヤしてたところに……今度は全員から「クリスマスは自分と一緒に居て欲しい」ってメールが来たんです。 その瞬間……なんか自分の中でぷっつりと糸が切れてしまったんですよね……。 世のカップルがイチャイチャしてる時に俺はクリスマスまでこいつらと一緒で自分の時間すら作れないのかって……そう思ってしまって。 勿論、面倒を見るって言っても役得は少なからずありますし……俺だって少なからず皆に迷惑を掛けてます。 それなのにそんな風に思ってしまった自分が嫌で……でも、そうやって気分が落ち込んでいく分、町中の何処に居ても聞こえる『あの歌』がとても耳に響いて……。 気づいた時には俺は入団届けを書いて……今日という日に備えていました。 「これが……俺がここにいる理由です」 「……そうか」 「軍曹殿……その……」 「何、先達から一つ言わせてもらえればその程度は誰にだってある」 「ですけど……」 「お前は少し人に真摯になりすぎたんだ。少し人と距離を取って疲れを取るのが良いだろう」ポン 「……それで俺はもう一度、あいつらを向き合えるでしょうか」 「あぁ。きっとな。ただし……その子たちとの付き合い方を考えるのは必要だろうな」 「付き合い方……ですか?」 「少し疲れを取っても今のままじゃ同じことの繰り返しになるだけだからな。今度は同じ失敗をしない為にも気をつける事だ」 「……はいっ!ありがとうございます」 「礼など要らんよ。寧ろ、礼を言いたいのはこっちの方だからな」ビキビキ 「……え?」 「俺の……いや、俺達の倒すべき敵が身内にいて……しかもそれを暴露してくれるなんてな……」ガシッ 「あれ……?ぐ、軍曹殿……?」 「今の俺たちは……阿修羅をも凌駕する存在だ……!」 「せ、先任伍長殿たちまで……い、一体、これはどういう……」                           ,. -――- 、                       /し, /    _>.                      / { \レ/,二^ニ′,ハ                      |'>`ー',' ヽ._,ノ ヽ|                      |^ー'⌒l^へ~っ_と',!       __             ! u'  |      /   /´ ̄       `!             ヽ  |   u'  , イ   |  `にこ匸'_ノ            |\_!__.. -'/ /|   ノ u  {                 _.. -―| :{   ,/ /   \ . / l   | __  / ̄ ̄`>'´   ノ'    ´ {、    \ / |/     {'´    `ヽ. " ̄\ U `ヽ.    __,,.. -‐丶 u  ヽ | / ヾ、..  }      u' 〉、    }    `ー''´  /´ ̄ `ヽ '" ̄\ ! :}  )「` ノ、     ノ l\"´_,,ニ=-― <´  ヽ{  ノ(   `、  | l   、_,/j `ー一''"   },  ノ ,  '''''""  \   ヽ ⌒ヾ      v  | ヽ   _         /   } {. { l ┌n‐<  ヽ/ ``\        ノ   `¨´    `¨¨¨¨´ ̄`{ 0  `'^┴'ー┘|ヾ    }、 u'   `  --‐r' 「お前ら……!嫉妬の心は!!」 「「「「父心!!!!!」」」」 「押せば命の!!!」 「「「「「泉湧く!!!!」」」」 「団員ナンバー1046789!!!貴様とて一時であったにせよ、しっと団に属していたのだから知っているはずだ!」 「我々、しっと団は『自虐風自慢罪』は例外なく死罪と定めている!!」 京太郎「い、いや、別に自慢してた訳じゃ……」 「クリスマスにお誘いがあったなんて自慢以外の何物でもないだろうが!!」 「その上、同い年の幼馴染を毎朝起こして、ロリ少女にあーん!?」 「小悪魔系部長とデートして、健気系少女に抱きつかれて手作り料理まで……!!」 「その罪一時でも仲間であった我々が裁かずして誰が裁く……!!!!」 「さぁ……!お前の罪を数えろ!!!!」 ポンポン 「あぁ!?なんだ!?今、こっちは忙しいんだ……」 「すみません。警察ですが、さっきから何をされているんです?」 「ちょっと職務質問させて頂いてもよろしいですか?」ニコッ  __[警]   (  ) ('A`)   (  )Vノ )    | |  | | こうしてしっと団員たちの長い夜・・・・・・ 性の6時間余が終わった 付近に潜伏していたしっと団1040名のうち870名が連行及び 職務質問によってパトカーへと連れ込まれ消えた・・・・ 彼らのしっと団員としての活動は閉じた ここから先も独身の一語 カンッ  

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