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カタンカタン。 規則的に洗濯機が回り続けている。 「よぅ、咲」 「京ちゃん、お帰り」 「なぁ、お前今日どこか行ったのか?」 「ううん、私は別に」 「せっかく東京に来たのに…具合でも悪くなったのか?」 「そんなんじゃないけど…」 インハイ初日が終わった夜。どこか堅い咲の空気。 京太郎はいつもの軽口が何となく阻まれ、暫くの間沈黙が続く。 「そう言えば今日優希のヤツ、タコスのハシゴしててな。休養日の方が疲れるってどんだけ…―」 コツン。 「咲?」 「すー、すー」 弱々しく京太郎の肩にもたれ、咲が小さな寝息を立てる。 カタンカタン。 規則的に洗濯機は回り続ける。 「おね―…ちゃん…」 猫みたいに甘えながら身体を擦りつける咲。 未成熟な柔らかさに京太郎は全身が硬直する。 な、何考えてんだ?俺は。相手は咲だぞ!?和でも風越の美人さんでもない―… 「おね―…ちゃん…」 弱々しく再度漏らした咲の呟きが、京太郎の硬直を解いた。引き寄せられる様にゆっくりと手を伸ばす。 ふにっ。 不意に抱きしめた咲の身体は想像以上に小さく柔らかかった。思わず力が入ってしまい、その度に咲の身体が僅かに震えた。 「…ふぇ?」 微睡んだ咲の呟きに、京太郎は一瞬で我に返った。 「…京ちゃん?」 「い?!いや、違…―」 慌てて飛び退こうとした京太郎に咲がぎゅっとしがみつく。真っ赤になって俯く姿に京太郎は再度硬直する。 カタンカタンカタンカタン。 洗濯機の回る音がやけにハッキリと耳に響く。 ずっと妹みたいに思っていた。異性というよりは家族に近い感情だと。 東京のインターハイという非日常が思考を麻痺させているのか。この日の咲は、誰よりも可愛かった。 「…ひゃぅっ」 腕の中で小さく震える咲に下腹部が更に熱くなる。 「き、京ちゃ……ンッ?!」 京太郎は衝動的に唇を奪っていた。 それはまだ何も知らない蕾を摘み取る様な嗜虐的な感情だったのかもしれない。 「んっ…んっ…ンン…ッ」 小動物みたいに怯えながらも懸命に応える咲。 もう表面を触れあうだけの優しいキスでは物足りない。 「ンッ?!んンッ?!…んーッ…んーッ?!」 京太郎は舌で咲の口内を強引に蹂躙し始めた。 痛いくらいに身体を密着させ、互いの体温に脳裏が揺さぶられる。 「んっ…はぅッ……ぁ」 何度目かの深いキスを終え、ようやく身体を離すと、映画みたいに一瞬銀の橋が架かって消えた。 とろん、と上気した表情で咲は京太郎に全身を任せている。 始めに湧いたのは気恥ずかしさ。それからは怒濤の様な罪悪感だった。 果てしなく長い沈黙。ダメだ、咲の顔も見れない。 「ご…ごめんなっ」 京太郎は逃げる様に立ち上がり咲に背を向けた。 「京ちゃん」 「ん?」 「ありがと」 「な、何で咲がお礼を言うんだよ」 咲が笑えば笑う程、京太郎の中で言い様のない罪悪感が膨れていく。 「京ちゃんが謝るからでしょ」 頬を膨らませて咲が拗ねる。 「…痛かっただろ?俺、一人でテンパってたから」 「確かにちょっと痛かったけど…嬉しかったよ。それに凄く落ち着いたよ?」 「無理すん…ムグっ?!」 見また謝ろうとする京太郎の唇を、今度は咲の方から奪う。 「あ、あのね、京ちゃん。その…明日もまたしようね」 それはいつも見慣れた、でもどこか違う笑顔。 「咲―…お前」 「だ、ダメかな?」 「結構ムッツリだな」 「京ちゃんに言われたくないよっ」 仲良く部屋を後にする二人の背中を見送りながら、洗濯機は静かに回り続けた。    了
カタンカタン。 規則的に洗濯機が回り続けている。 「よぅ、咲」 「京ちゃん、お帰り」 「なぁ、お前今日どこか行ったのか?」 「ううん、私は別に」 「せっかく東京に来たのに…具合でも悪くなったのか?」 「そんなんじゃないけど…」 インハイ初日が終わった夜。どこか堅い咲の空気。 京太郎はいつもの軽口が何となく阻まれ、暫くの間沈黙が続く。 「そう言えば今日優希のヤツ、タコスのハシゴしててな。休養日の方が疲れるってどんだけ…―」 コツン。 「咲?」 「すー、すー」 弱々しく京太郎の肩にもたれ、咲が小さな寝息を立てる。 カタンカタン。 規則的に洗濯機は回り続ける。 「おね―…ちゃん…」 猫みたいに甘えながら身体を擦りつける咲。 未成熟な柔らかさに京太郎は全身が硬直する。 な、何考えてんだ?俺は。相手は咲だぞ!?和でも風越の美人さんでもない―… 「おね―…ちゃん…」 弱々しく再度漏らした咲の呟きが、京太郎の硬直を解いた。引き寄せられる様にゆっくりと手を伸ばす。 ふにっ。 不意に抱きしめた咲の身体は想像以上に小さく柔らかかった。思わず力が入ってしまい、その度に咲の身体が僅かに震えた。 「…ふぇ?」 微睡んだ咲の呟きに、京太郎は一瞬で我に返った。 「…京ちゃん?」 「い?!いや、違…―」 慌てて飛び退こうとした京太郎に咲がぎゅっとしがみつく。真っ赤になって俯く姿に京太郎は再度硬直する。 カタンカタンカタンカタン。 洗濯機の回る音がやけにハッキリと耳に響く。 ずっと妹みたいに思っていた。異性というよりは家族に近い感情だと。 東京のインターハイという非日常が思考を麻痺させているのか。この日の咲は、誰よりも可愛かった。 「…ひゃぅっ」 腕の中で小さく震える咲に下腹部が更に熱くなる。 「き、京ちゃ……ンッ?!」 京太郎は衝動的に唇を奪っていた。 それはまだ何も知らない蕾を摘み取る様な嗜虐的な感情だったのかもしれない。 「んっ…んっ…ンン…ッ」 小動物みたいに怯えながらも懸命に応える咲。 もう表面を触れあうだけの優しいキスでは物足りない。 「ンッ?!んンッ?!…んーッ…んーッ?!」 京太郎は舌で咲の口内を強引に蹂躙し始めた。 痛いくらいに身体を密着させ、互いの体温に脳裏が揺さぶられる。 「んっ…はぅッ……ぁ」 何度目かの深いキスを終え、ようやく身体を離すと、映画みたいに一瞬銀の橋が架かって消えた。 とろん、と上気した表情で咲は京太郎に全身を任せている。 始めに湧いたのは気恥ずかしさ。それからは怒濤の様な罪悪感だった。 果てしなく長い沈黙。ダメだ、咲の顔も見れない。 「ご…ごめんなっ」 京太郎は逃げる様に立ち上がり咲に背を向けた。 「京ちゃん」 「ん?」 「ありがと」 「な、何で咲がお礼を言うんだよ」 咲が笑えば笑う程、京太郎の中で言い様のない罪悪感が膨れていく。 「京ちゃんが謝るからでしょ」 頬を膨らませて咲が拗ねる。 「…痛かっただろ?俺、一人でテンパってたから」 「確かにちょっと痛かったけど…嬉しかったよ。それに凄く落ち着いたよ?」 「無理すん…ムグっ?!」 見また謝ろうとする京太郎の唇を、今度は咲の方から奪う。 「あ、あのね、京ちゃん。その…明日もまたしようね」 それはいつも見慣れた、でもどこか違う笑顔。 「咲―…お前」 「だ、ダメかな?」 「結構ムッツリだな」 「京ちゃんに言われたくないよっ」 仲良く部屋を後にする二人の背中を見送りながら、洗濯機は静かに回り続けた。    了

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