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---涙の雨、やんだだろうか---
柔らかくて。暖かくて。気持ちいい。凝り固まったものをほぐしてくれるような温もりを求めて。
働かない寝ぼけた頭を放って、ただただ本能のままに近くのそれに身を寄せる。
むにゅり。そんな柔らかな離れがたいものに顔をうずめて、
幸福を甘受する。甘くて、優しい、慣れ親しんだ身近な臭い。
ふと、何の気なしに顔を柔らかいそれから上げると・・・。
「甘えんぼさんやなー、きょうたろー」
一人の女性が俺を見ていた。形のいい小さな口を優しく歪ませている。というか、にやけている。にやにや。ニヤニヤと。
ふにふにと、溢れこぼれ落ちんばかりの良質な肉の感触を手のひらで味わい、思う。
この豊かな乳房改めおっぱいをちゅうちゅうさせてくれるのは嬉しいけど、そんなにやけれらると恥ずかしい。だから・・・。
---止んだ。でも、病んだ---
瞬間、唇に触れる柔らかく、湿った感触。かりそめの余裕は瞬く間に崩れ、
思わず目を見開いたその視線の先には誰よりも見馴れた金色の髪が。
ほんの少しだけ触れて、ちゅぽっと水音をたてて離れた。
そしてその唇の持ち主は、再び自分の胸元へと顔を埋めている。
一瞬呆然としてしまったが、安心しきった顔ですべてを委ねているこの子を見ると、
まぁいいかと思ってしまうあたり、頭が働いてないなと思ったり。
「・・・やっぱ未成年に酒飲ませるもんちゃうなぁ」
まるで塞き止められたダムが崩壊したかのような勢いで
涙を流した京太郎と浴室を後にし、ともに買ってきたコンビニのお酒と
家に常備しておいたちょいええお酒。これらを浴びるように飲んだ。私も、京太郎も。
普段ウチや京太郎の両親が飲みすぎるのを抑える役目のこの子
もはめをはずす側として、大いに飲んだ。普段やったらさすがに、と止めるウチやけど、今回ばかりは止めんかった。
・・・飲みたい夜もあるわな。
だが、これがいけなかった。京太郎の酒癖は、ウチが想像する以上に悪かった。
普段から暴走する娘のストッパーとしての役割を十二分に
遂行しているからか、どこかしっかり者のイメージを払拭できずにいた。
この子のしっかりしているそれは、洋榎の隣にいるために身につけたにすぎない。
ならば、その役割を懲戒免職された直後ならどうなるか、という話だ。
「この子の将来が心配でならんわ、私は」
まるで“たが”が外れたかのように。ウチのなかへと入ってきおる。
お前はどこのホストやと内心つっこんだ、酒に飲まれかけた自分を 誉めてやりたい。
酒は母を沈め、その言葉はウチの中の女を引き上げる。
まだ幼かった筈の少年の言葉に気をよくしたウチは、ずくずくとこの子の酒によって豹変した空気に呑み込まれる。
それはとても恐ろしくも、抗いがたい誘惑に駆られて、気がついたら・・・。
「酒の勢いでって、どこぞの3流ドラマや」
自分の子供たちとさほど年のかわらん息子同然の子と体を重ねるとか、
規制の大きく幅を効かせとる現代やと中々見ぃひん。
・・・正直、淫行罪で捕まっても文句が言えんぞ。
いや、京太郎やったら黙っといとくれるんやろうけど。いえば、責任をとるくらいまで言いそうな子や。
「言えるか。そんなん」
だから、だんまりを決め込むしかないのだろう。
いたずらの見つかった子供のようにすることが、大人の対応だと知っているから。
なかったことには出来ない。だが、触れずになあなあで済ませることが出来ると夢想して。
察するあの子に、自分と同じ枷を背負わせて。
---病んでしまったのは、どっちなんだろうね?---
「わっかんねー。自分の全てが、わっかんねー・・・」
記憶は、ある。罪の意識は、わかんねぇ。
流された時に自分の意思があったか、定かじゃない。なんで生きてんの、俺?
結局、一緒に寝たベッドから起き上がり、愛宕家を出るまで至って普通の俺たちだった。
だがその普通が、一夜の犯した罪を覆い隠しているようだった。
年の差と近い間柄故に自らを嫌悪する女と、想い人からの失恋を経験したその日の夜に、
想い人の母を抱いたことに困惑する男。あまりに、滑稽だ。
頭の中はぐしゃぐしゃで、酒の残る頭は、満足に物を考えられない。
どこでくるったのか。はじめからくるっていたのか。それすらもわからない、わからないよ。
---綻びは広がるばかり。巻き込んで広がる---