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  玄「京太郎君は、どうしておもちが好きになったのかな?」 京太郎「そりゃあ勿論、それが男のロマンだからですよ!」 玄「ロマン、かあ」 京太郎「届かないものに憧れるのが、男の性ですからね」 玄「そういうものなの?」 京太郎「そういうものです」 玄「じゃあ…私のおもちに対する気持ちも、ロマンって言えるのかな?」 京太郎「どうでしょうか。玄さんも中々立派なおもちをお持ちですし、俺からは何とも言えません」 玄「…そう」 京太郎「どうかしたんですか?」 玄「ううん、なんでもないの」 京太郎「いやいや…玄さんって、おもちの話をする時はいつも明るく振舞ってるじゃないですか」 玄「単にあなたが知らないだけで、私にだってたまにはこんな風になる時があるんだよ」 京太郎「そう言われちゃうと、尚更気になりますよ!」 玄「…そうかもね」 京太郎「差し支えなければ、話を聞かせて欲しいです」 玄「…いいの?」 京太郎「いいですとも!」 玄「後悔、しない?」 京太郎「俺の方から話を振ってるのに、そりゃないっすよ」 玄「これから私が言う事…信じてくれるかな?」 京太郎「おもちのロンです!」 玄「あのね…私がおもちにこだわるのは、亡くなったお母さんの面影を追い求めてるからなの」 京太郎「…えと、玄さんのお母さんが亡くなったなんて、そんな話は聞いたことが」 玄「話してないからね」 京太郎「そりゃまあ、お互いの家族について話したことなんかなかったですけど…どうして?」 玄「どうしてって、京太郎君が聞いてきたからだよ?」 京太郎「それはそうですが、こんなのどう考えても薮蛇ですよ」 玄「警告はしたよ?」 京太郎「そのですね、俺は口にしにくい下心の類だとばかり思ってましたよ」 玄「下心だって当然あるよ。けど、それだけじゃなかったってだけ」 京太郎「……」 玄「…私ね、お母さんがいなくなってからずっと言いつけを守ってたの。ドラを大事にしなさいって」 玄「でもそれでお母さんが帰ってくる訳じゃない。せいぜい、お母さんとの思い出を忘れずに済むくらい」 玄「決してお母さんのぬくもりを感じることは出来なくて…私、それが凄く悲しかったの」 京太郎「ぬくもり、ですか」 玄「うん。それから私はお母さんのぬくもりを追い求めるようになって…やがておもちに出会った」 玄「あの感触を味わえば、お母さんが生きていたあの頃に戻れるような気がしたから」 京太郎「それって、本当にロマンなんでしょうか?」 玄「ロマンだよ。大好きな人と何不自由なく過ごせる時間…私達家族にはそれが叶わなかった」 京太郎「……」 玄「ねえ、京太郎君」 京太郎「…何ですか?」 玄「あなたは、私を置いて行ったりしないよね?」 京太郎「…玄さん、俺は」 玄「私、別れたり待ってたりには慣れてるけど…それでもやっぱり辛いものは辛いから」 京太郎「……」 玄「だから…だからね…ずっと、ずっと一緒にいて欲しいなって…私は…あなたに……」 カンなのです!  

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