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<p>女子高生ともなれば色恋話で夜が明けるまで話し続けられるともいうけど、そうじゃない人もいる事はわかって欲しい。<br /><br /> 特に聞かれたくない奴が同じ空間にいるときはなおさら。<br /><br /> だからハルエの計画した全国練習試合の旅で、車の中では暇だからという理由でそんな話を振るのはやめてほしい。<br /><br /> だいたい恋バナなんて女の子だけで夜にやるものじゃないの?<br /><br /> シズがいきなり突拍子もないこと言い出すから開けようと思ってたポテチの袋が破裂しちゃったじゃない。<br /><br /><br /> 散らばったポテチを片付けながら思う。ビックリしたけどこれでうやむやにできるかな……って思った私が馬鹿だった。シズは諦めない。<br /><br /> 最初に矛先が向かったのはクロだった。楽しそうだねーなんて言ってたクロも流石にテンパってる。<br /><br /> 好きな人の1人や2人さっさと白状しちゃいなよなんて煽る灼。<br /><br /> 流石に観念したのか、クロが話し始める。でも、だらだらと喋った割には「いない」の3文字で済む内容だった。<br /><br /> 諦めが悪いのがシズの特徴とはいえ、「じゃあどういうタイプが好みなんですか?」という質問で完全に殺しに行ったのは酷い。<br /><br /><br /> 寝た振りしてればスルーできるじゃない、と気付いたのはクロの話が終わるころ。<br /><br /> 早速不自然にならないように目を瞑る。<br /><br /> 朝早かったからかな、車の揺れが気持ち良くてこのまま眠れそう。このまま寝ちゃってもいいよね……。<br /><br /><br /> 意識が落ちかける直前に「だめだよ」と、シズの声が聞こえて現実に引き戻される。<br /><br /> 「次はアコの番だよ」とか言われて逃げ場を潰された。何とかして逃げ道を探さなきゃ。<br /><br /> そういうシズはどうなのよ?と聞き返してみる。人に聞く前に自爆してなさい。<br /><br /> 意外と……でもないか、即「今はいないかなー」と返された。<br /><br /> すかさずクロが「じゃあどんな人が好みなの?」と聞き返した。仕返しのつもりかはわからないけど、ナイスアシスト。<br /><br /> 「んーっとねー」シズが答える。「背が高くて、気が利いて、一緒に居ると楽しい人がいいなー」<br /><br /> あとで何かに使えるかもしれない。心の中のメモ帳に書き留めておこう。<br /><br /> 「それじゃあ……」ハルエが黙って聞いてたハルエが口を挟んできた。<br /><br /> 「須賀君なんかはシズの好みってこと?」<br /><br /> 何を言い出すのかこのバ監督は。確かに背はそこそこ高いけど、気が利くかと言えばそうでもないし、一緒に居るといつも私が怒る破目になる。<br /><br /> 予想通り、シズの答えはノーだった。「もっとしっかりした頼れる人の方が良いなー」というコメント付きで。<br /><br /> そんな事は無い、と一応訂正しておく。細かいことに気がつくし、最近は麻雀部のために色々働いてくれてるのに。あと細身に見えて結構筋肉付いてたりとか。だから最近は結構頼りになるのよ?<br /><br /> ……って、なんでみんなそんな目で私を見てんの?いや宥姉、全然あったかくないから。<br /><br /> 「さすが憧は良く見てるねー」って全然違うから。そういうのじゃないから。<br /><br /> そんな感じで弁明してたら、シズが私の脇腹をつついてくる。<br /><br /> いったい何の用?<br /><br /><br /> 「ねえ、次はアコの番だよ?」シズが真っ直ぐ私の目を見て言う。私は別に良いかなーって……。<br /><br /> 「ねえアコ、私は言ったんだよ?」この追及するような視線がキツい。うぅ……なんとか話を逸らして……。<br /><br /> 「 ア コ ?」目を逸らしたらさらに口調が強くなった。ごめんなさい。もう許して。<br /><br /> 顔が熱い。「さっさと吐いた方が楽になると思……」後ろから野次が飛んでくる。<br /><br /><br /> なんとかこの場を切り抜ける方法を……。そうだ。いない!そう、居ない!これで押し通す。それ以上は言及できないはず……。<br /><br /> 「じゃあ、アコの好きな人はどんなタイプか、当ててみようか」ハルエがまた口を出してくる。しかも今度は凄く余計なことを言いだした。<br /><br /> 「背がそこそこ高くて」「気が利いてて」「楽しい人が好……」皆が好き勝手に捏造する。「頼りになる人が好きなんだよね?」宥姉まで混ざってきた。<br /><br /> いや、と否定する。私の気も知らないで毎回毎回イライラさせてくるし、子供っぽいし、巨乳好きの変態で全然頼りになんてならない。<br /><br /> 「おもち好きは変態じゃないよ!?」とクロが主張するけど、あいつの視線とか誰がどう見ても有罪だと思う。<br /><br /> シズが身体を寄せてくる。体重を預けてきて重……くなかった。流石に軽過ぎて不安になる。「アコ……語るに落ちたね?」<br /><br /> ……ん?どうい……う……?「『誰かさん』のことなんて誰も言ってないよ」……あ……っ!<br /><br /> ふきゅっ。ヤバい、変な声出た。ちがう。違くないけど、それは違って、え……っと、その……。<br /><br /><br /><br /> 混乱しきってたら「イジメ過ぎたね、ごめん」と、シズが謝ってきた。「最近アコあからさまに意識してるからさ、からかいたくなっちゃった」<br /><br /> そんなに解かり易いかな?髪伸ばしたり、化粧変えた程度なんだけど。「気付かない須賀君の方がおかしいと思……」<br /><br /> そうなのよね、と愚痴を漏らす。大体この前だって、買い物手伝って貰ったんだけどほんとに失礼だったんだから。もうこの際だからみんなに聞いてもらってすっきりしよう。<br /><br /><br /><br /><br /><br /><br /><br /><br /><br /><br /> 話しながらそういえば……と考える。「さっきからずっと須賀君静かだけど、どうかしたの……?」宥姉も同じ疑問をもったらしい。自分の話がこんなにされてるのに話に入って来ないなんて……。<br /><br /> あいつのことだからすぐに口出してくると思ってたんだけど。<br /><br /> 「ああ、高速入って直ぐに寝ちゃったよ。昨日の夜も色々準備してくれてたからね、疲れたんじゃない?」ハルエが答える。<br /><br /> 成程、だから静かだったのね。色々と聞かれてなかったのは良かった……けどそれはそれとして、ムカついてきたからとりあえず後ろからデコピンかましてやった。<br /><br /> それを見た皆がやけにニヤニヤして私の方を見てくる。あぁもう、なんかまた腹立ってきた。</p>

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