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  玄「京太郎くん、お茶が入ったよ。どうぞ」 京太郎「ありがとうございます、なんだか至れり尽くせりですね」 玄「えへへ、おもてなしは我が家の得意分野だから」 京太郎「雰囲気もいいし、ここでずっと暮らしたいくらいですよ」 玄「それならウチの子になればいいよ、お姉ちゃんだってきっと喜んでくれる」 京太郎「あはは。いいですね、それ」 玄「うん。その湯のみ茶碗は京太郎くん専用だよ」 京太郎「え?」 玄「うん? なにかおかしなことでも言ったかな、私」 京太郎「いえ、特にそういうわけじゃありませんけど」 玄「よかった。どうかな、そのお茶碗。気に入ってくれた?」 京太郎「え、ええ。やっぱり日本人ならマグカップより湯のみですよね」 玄「そう言ってもらえて安心したよ。本当は一緒に買いに行きたかったんだけどね」 京太郎「あはは」 玄「お揃いの湯のみ茶碗を二人で買いに行くのは、流石にちょっと恥ずかしくて。ごめんね」 京太郎「お揃い? このお茶碗、もう一つあるんですか」 玄「うん。もう一つは私の分だよ」 京太郎「へ、へえ」 玄「お店屋さんはどこも顔見知りだから、一人で買いに行っても結局からかわれちゃったよ。えへへ」 京太郎「玄さん、このお茶碗ってもしかして」 玄「うん。もちろん夫婦茶碗だよ。ちょっと気が早いかもしれないけど、これから家族になるんだから問題ないよね?」 京太郎「え」 玄「どうしたの? すごい汗、体調が悪いのかな」 京太郎「いえ、体調はすこぶる良いですよ。ただ」 玄「ただ?」 京太郎「玄さんって、俺のこと好きなんですか?」 玄「ごめんね、京太郎くんが何を言ってるのかよく分からないや。体調、本当は良くないんでしょ?」 京太郎「あはは、そうですよね。まさか俺なんかに気があるわけ」 玄「大好きに決まってるよ。私たち、もう家族だもんね」 京太郎「…………」 玄「熱はないみたいだね。むしろ京太郎くんのおでこの方が冷たくて気持ちいいや」 京太郎「…………」 玄「どうしよう、こういうときはやっぱり膝枕かな。大阪の人たちの真似っこになっちゃうけど」 京太郎「玄さん」 玄「えへへ、ちょっと恥ずかしいけどお姉さんのお膝を貸してあげるね。横になってくれるかな」 京太郎「俺、憧のことが」 玄「聞きたくない」 京太郎「…………」 玄「聞きたくないから、黙って膝枕されてよ」 京太郎「玄さん」 玄「イヤなの。大事な人が遠くに行っちゃうなんて、もうたくさんだよ」 京太郎「でも」 玄「京太郎くんのこと一番思ってるのは私!」 京太郎「…………」 玄「私だから」 京太郎「…………」 玄「傍にいてよ。私のものになってよ」 京太郎「ねえ、玄さん」 玄「…………」 京太郎「俺、今でも憧のことが好きです」 玄「…………」 京太郎「多分、玄さんは知ってますよね。もう」 玄「うれしかった」 京太郎「…………」 玄「憧ちゃんが京太郎くんを振ったって聞いたとき、許せないって思ったけど」 京太郎「…………」 玄「ごめんね、やっぱりうれしかったんだ。ずっと大好きだったから」 京太郎「…………」 玄「だから京太郎くんを招待したの。口に出すのは怖かったから、よくわからないお芝居までして」 京太郎「玄さん」 玄「馬鹿みたいだよね。お揃いのお茶碗なんか買ったりして、叶うわけないのに!」 京太郎「玄さん!」 玄「教えてよ! どうして私は憧ちゃんの代わりになれないの!」 京太郎「俺を膝枕してください!」 玄「…………」 京太郎「…………」 玄「へ」 京太郎「膝枕、してください」 玄「なんで」 京太郎「一休みしたら、全部ちゃんとするから」 玄「…………」 京太郎「だから、玄さんもちゃんとしてください」 玄「…………」 京太郎「ちゃんと、お友だちから」 玄「…………」 京太郎「…………」 玄「……うん」  

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