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【休み時間】 小蒔「京太郎様~♪」 京太郎「こ、小蒔…次の準備とか大丈夫なのか?」 小蒔「えへ…♪そんな事よりも…私、京太郎様に会いたくって…」 小蒔「ここまで…一生懸命に走ってきちゃいました…っ」グッ 京太郎「つっても会えるのなんて数分もないぞ?」 小蒔「それでも構いません。私は京太郎様のお顔が見れるだけで…また一時間頑張れるようになるんですから」グッ 小蒔「その為ならちょっと走るくらい何でもないです…!」 京太郎「あー…もう…ホント、可愛いな、小蒔は」ナデナデ 京太郎「でも、廊下は走っちゃダメだぞ。危ないからさ」 小蒔「えへ…はぁい…♪」 京太郎「後…そんなに我慢出来ないんなら、俺からも会いに行くから」 小蒔「え…?良い…んですか…?」キュン 京太郎「良いっていうか…まぁ、その…」チラッ モブ男「転校生で童顔巨乳美少女巫女でおっとり天然系お嬢様の神代さんと婚約者になったでは飽きたらず…」ガタッ モブ夫「毎時間、わざわざ二階から会いに来てくれているだと…!!」グッ モブ助「これは教育やろなぁ、ワイは詳しいんや」スブリ 京太郎「…お、俺の命の為にもそうしないと拙いっていうか」 小蒔「???」 京太郎「何でもない。ともあれ…小蒔ばっかりに負担を掛けるのは嫌だから…さ」 小蒔「えへへ…♪嬉しいです…っ」 【昼休み】 小蒔「京太郎様~♪」ガラガラ 京太郎「あぁ、小蒔」 小蒔「お弁当、作って参りましたから一緒に食べましょうっ♪」 京太郎「あぁ。何時も悪いな」ナデナデ 小蒔「いえ…婚約者として当然の事ですから…」テレテレ 小蒔「それに…何れは私の料理が京太郎様の家庭の味になるんです」 小蒔「少しずつ京太郎様の味覚に合わせていかないといけませんし」ニッコリ 京太郎「小蒔は頑張り屋さんだなぁ」ナデナデ 小蒔「京太郎様の為なら…私、一杯、頑張っちゃいます…っ」グッ 京太郎「はは、でも、頑張り過ぎて無理しないようにな」 京太郎「小蒔が無理して倒れたりしたら、俺は石戸さんに顔向け出来ないし」 小蒔「…でも、その時は京太郎様が助けてくださいますよね?」 京太郎「当たり前だろ」 小蒔「えへへ…♪だから…私は大丈夫ですよっ!」 京太郎「まったく…危なっかしくて目が離せないじゃないか」 小蒔「ふふ…♪それならずっと私だけを見ていてくださいね…♥」 小蒔「私の目は何時だって…京太郎様に向いておりますから…♪」 京太郎「んじゃ…ついでに弁当箱と一緒にその手も向けてもらおうかな」ギュッ 小蒔「はい…っ♪」 モブ男「(もう良いからとっとと何時ものトコロ行けよ…)」ナミダメ モブ夫「(何で一々、教室でイチャついてるんだよ、糞が…!!)」ケツルイ モブ助「(ついこの間まで俺らと同じ(モブ)枠だったのに…何でアイツあんなに好かれてるんやろうか…)」サメザメ 【なかにわっ】 京太郎「うっす。お待たせ」 小蒔「お待たせしました~♪」 和「まったく…遅いですよ」 京太郎「悪いな。ちょっと俺が手間取っちゃって」 咲「…どーせ神代さんとイチャついてたんでしょ」ムスー 優希「京太郎はスケベだからな」プクー 京太郎「お前らは俺を何だと思ってるんだ…」 咲「合宿終わった後にいきなり旅に出たと思ったら婚約者連れて帰ってきた変態」ジトー 優希「巫女さん侍らせて、自分の価値が上がったと思って調子にのってるダメ男」ジトー 京太郎「相変わらず対応がセメント過ぎる…」ガクリ 小蒔「…」 和「だ、大丈夫ですよ。アレがあの二人の距離感なんですし」 小蒔「分かってます…分かってますけど…」プクー 小蒔「それでも京太郎様を変態だとか…ダメ男だとか言うのは許せません…」ポツリ 和「…割りと当たってると思うんですけどね」ボソッ 小蒔「え…?」 和「いえ、何でもないですよ」 和「ほら、二人共。須賀君が構ってくれるのが嬉しいからってあんまり弄っちゃダメですよ」 咲「はーい…後で覚えといてね、京ちゃん」 優希「月のある夜ばかりと思うなよ犬…」 京太郎「何でお前らはそう俺に対して風当たりがそんなに強いんだよ…」 和「神代さんに須賀君を取られて拗ねてるんですよ」 咲「す、拗ねてなんかないもん!」 優希「そ、そうだじぇ!そんなオカルトあり得ないですし!!」 和「ふふ…さて、どうでしょうか」 咲「ぅ~…最近、和ちゃんが余裕だよ…」 優希「何か一皮剥けた感があるじぇ…」 和「な、何を言ってるんですか、馬鹿馬鹿しい…」 和「それこそ、そんなオカルトあり得ません」 小蒔「~♪」 咲「でも、最近、良く部活抜けだしたりするよね?」 優希「しかも…京太郎が買い出し言ってる時ばかりなのはどういう事だじぇ?」 和「そ、それは…たまたまです」 和「確かに統計としてそういう偏りがあるかもしれませんが、それは単純にタイミングの問題であって、他にも無視出来ない変数が沢山あり、別に狙ってやっているとかでは…」 咲「…怪しい」ジトー 優希「…怪しいな」ジトー 小蒔「はい、京太郎様♪準備出来ましたよっ」 京太郎「お…今日も美味そうだな」 和「…」 咲「…」 優希「…」 小蒔「今日は何から食べますか?」 京太郎「そうだな…それじゃアスパラのベーコン巻きを頼む」 小蒔「はい♪それじゃ…あーん」 京太郎「あー…ん…んぐんぐ…うん。美味い」 京太郎「この前とはちょい味付け変えたか?」 小蒔「はい。焼く前にベーコンを少し漬け込むようにしてみました」 小蒔「如何でしたか?」 京太郎「こっちの方が俺好みかな」 京太郎「でも、手間掛かってるんじゃないか?もうちょっと手を抜いても良いんだぜ?」 小蒔「京太郎様のお食事を作るのに手を抜くなんて出来ません」 小蒔「それにお料理作るのは嫌いじゃありませんから」 小蒔「特に私が作ったものを京太郎様が食べると思うと…嬉しくなっちゃうんです♪」 京太郎「小蒔…」 小蒔「えへへ…♪」 咲「……相変わらず蚊帳の外…」 優希「ぬぐぐぐ…ぬぐぐぐ…」 和「…ほら、二人共、早く食べないとお昼休み終わってしまいますよ」 咲「ぅ~でも…」チラッ 優希「これじゃ京太郎と一緒に食べている意味が…」シュン 和「それなら混ざりに行けば良いじゃないですか」 咲「でも…あの空間に入るのは凄い勇気がいるし…」 優希「のどちゃんは…気にならない?」 和「私は別に…何とも思ってませんよ」 和「えぇ…別に…ちゃんと約束は護ってくれていますし…」グッ 和「仕方ないことだって分かっていますし…私は…一番ですから…」 和「だから…まったく気にしていませんし、気にする必要がないんです」ニッコリ 優希「の、のどちゃん…?」 咲「」ブルブル 小蒔「あ~んっ♪」 京太郎「はい…あーん…っと…あ、悪い。口に端にソース着いた」 小蒔「…舐めとってくれますか?」 京太郎「こんな事もあろうかと俺はハンカチを準備していてな」 小蒔「残念です…」 京太郎「はは…そういうのはまた今度な」 小蒔「はいっ♪」 和「…」ピシッ 咲「」フルフル 優希「」ブルブル 【放課後】 小蒔「京太郎様~♪」 京太郎「あぁ、迎えに来てくれたのか」 小蒔「はいっ♪入れ違いになったら拙いと思って」 京太郎「走らなかった?」 小蒔「…ちょっと小走りになっちゃいました」 京太郎「小蒔は悪い子だな」フニッ 小蒔「ふにゃぁ…♪」 京太郎「でも、今日の弁当が美味しかったから許してやる」パッ 小蒔「あ…」 京太郎「ん?」 小蒔「も、もうちょっとして欲しいなって…」カァァ 京太郎「弄り過ぎて癖になっちゃったのか」 小蒔「ち、違います。き、京太郎様に触れられると…私は何処でも嬉しくて…ですね…」 小蒔「その…だから…えっと…」チラッ 京太郎「…はいはい」ナデナデ 小蒔「ふあ…ぁ♪」 京太郎「小蒔は甘えん坊だなぁ」 小蒔「京太郎様が素敵なのが悪いんですよ…ぉ♪」 京太郎「俺は小蒔の方が素敵だと思うけどな」 小蒔「京太郎様の方です」 京太郎「いや…小蒔の方が」 モブ一同「良いからとっとと部活行けよ」 【部活後】 まこ「じゃあ、今日はこれくらいにしとこうか」 優希「えー。まだまだ打てるじぇ」 まこ「そろそろ大会も近いし、日が落ちるんもはよぉなってきたしのぉ」 まこ「今は体調管理の方が重要じゃ」 まこ「それに…」チラッ 小蒔「京太郎様、今日は何が食べたいですか?」 京太郎「そうだな…魚系とかが気分かな?」 小蒔「では、ブリの照焼などどうですか?」 小蒔「まだ旬にはまだ足りない感じですけど、それでも脂が乗り始めて美味しいですよ」 京太郎「お、良いな。じゃあ、それで頼む」 小蒔「はいっ♪では、その…」 京太郎「買い物だろ?分かってるって。それくらいやるさ」 小蒔「えへへ…♪有難うございます」 京太郎「気にするなって。つか、最近、お袋も平気で小蒔に料理を押し付けるようになってきたからな…」 京太郎「寧ろ、俺の方が毎日、美味しい飯を作ってくれて有難うって言わなきゃいけない立場だ」 小蒔「でも…私嬉しいですよ」 小蒔「一緒に台所に立って…京太郎様とお料理して…まるで本当の夫婦みたいだなって…嬉しくなっちゃうんです…♪」 小蒔「ご母堂様も多分、それを知っていて…だから…その…あまり悪く思わないであげて下さいね」 京太郎「…」ナデナデ 小蒔「あぅ…」カァァ 京太郎「小蒔は優しいな」 小蒔「えへへ…♪」 咲「…うぅ…」 和「…」グッ まこ「今の状態で部活やろうとしても逆効果になりかねないしの…」 ~ 京太郎 ~ 京太郎「はぁ…どうすっかなぁ…」 そうやって俺が言葉を紡ぐのは学校の中庭だった。 普段は人で一杯になっているそこには今は殆ど人がいない。 それは今が休日で、部活に出る奴以外は青春を謳歌しているという事が主な理由なのだろう。 それが羨ましいと思う気持ちがない訳ではないが、新人戦が近い今の状態で手を抜く訳にはいかなかった。 特に俺は皆と比べて実力が数段劣っている分、努力しなければろくに結果を出せないのは目に見えているのだから。 京太郎「(だけど…時間が少なすぎる)」 漫さんに会いに行くためにバイトを疎かにする訳にはいかず、また和や小蒔の『処理』に付き合わなければいけない。 そんな俺にとって、麻雀と向き合える時間というのはそれほど多くはないものだった。 と言うか、今はほぼ部活でしか打ってない。 それは別に麻雀が嫌になったとか、部活がダルいだとかそんな理由ではなくて… ―― 京太郎「(昔は…休み時間にちょっとアプリ弄ったりしてたんだけどな…)」 だが、ここ最近は俺に会いに来てくれる小蒔の相手で時間が潰れる事が多かった。 勿論、そうやって子犬のように無邪気に、そして健気に尽くしてくれる小蒔を重荷に思ったりはしない。 そんな小蒔と話すのは楽しいし、何より小蒔は可愛いくて癒しオーラ全開なのだから。 小蒔と話しているだけで俺はバイト疲れも消し飛び、活力が湧いてくる。 だが、それでもやっぱりこのままで良いのだろうか、と思う気持ちはなくならなかった。 京太郎「(そもそも…小蒔が長野にいるってのはかなり無理をしている事なんだよな)」 こうして長野に来たと言っても、小蒔の本業は鹿児島の巫女である。 本来ならばそこに拠点を置いて、活動するのが普通なのだろう。 しかし、俺と離れたくないという一念で、小蒔は周囲に無理を押し通し、こうして清澄に転校していた。 結果、三年である石戸さんたちも含め、こちらに転校手続きを取っているらしい。 新人戦の少し後…恐らく秋季大会前後には石戸さんたちもこちらに引っ越してくるとの事だった。 京太郎「(迷惑…掛け過ぎだよなぁ…今のコレって)」 長野に居たいという俺の我儘に引きずられる形で、多くの人に迷惑を掛けている。 特に三年で進路の事だって考えていたであろう石戸さんたちには頭が上がらない。 皆は「姫様のお願いだから」と笑って許してくれたものの、俺はそれで気が済まなかった。 とは言え、俺が石戸さんたちに出来る事なんて殆どなく、歪な今の状態に申し訳なさを感じる事しか出来ない。 京太郎「(だから、せめて小蒔には笑顔でいて欲しいんだけど…)」 石戸さんたちの事がなくても心にあったであろうその言葉。 それに指先に力を込めるものの、俺がそれを護りきれているとは言いづらかった。 確かに小蒔は俺の傍にいる時は大抵、笑っているし、幸せそうにしてくれている。 そんな小蒔の姿に救われたのは一度や二度ではなかった。 しかし、それが決して正常なものかと言えば、決してそうではないのである。 京太郎「(小蒔には…俺しか見えていない)」 休み時間も、昼休みも、放課後も。 まるで自分の時間の全てを費やすようにして、俺に尽くしてくれる小蒔。 それは勿論、嬉しいものの、かと言って普通かと言えば…間違いなく否だ。 和や咲たちと一緒に昼食を摂る時でさえ、小蒔は俺としかほとんど会話していない。 部活の時間も麻雀以外は俺にべったりで、咲たちとはろくにコミュニケーションを取れていなかった。 その上、休み時間の度に、わざわざ俺のところまでやって来れば…クラス内で孤立していてもおかしくはない。 少なくとも、小蒔が転校してきてそれなりに日が経つが、友人らしい人が居るのを見た事がなかった。 まこ「京太郎」 京太郎「染谷せんぱ…部長」 そんな俺に話しかけてきたのは部長だった。 勿論、たまたま見かけて話しかけてきてくれたなんて訳じゃない。 ここは部室のある方角とは違うし、部活の時間にもまだ早いのだから。 それでもこうして俺達がここで会った理由は一つ。 部長が俺のメールに応えて、部活の一時間前に暇を作ってくれたからだ。 まこ「言われた通りに来たが告白でもしてくれるんか?」 京太郎「ははっ、もし、そんな事したら小蒔に殺されちゃいますね」 まこ「なんじゃ。惚気か?」 部長はそう笑ってくれるものの、それは冗談の類じゃない。 普段の人畜無害な小蒔の様子しか知らない部長には分からないだろうが、暴走した時の小蒔の腕力は俺を遥かに超えるのだから。 それこそ片腕で人一人くらい縊り殺すくらいは余裕なはずだ。 勿論、そんなもの抜きでも小蒔を裏切るつもりはないが、もし、そうなった場合、俺は恐らく真っ先に死体へと変えられる事だろう。 まこ「じゃあ、どうしてうちを呼び出したんだ?」 京太郎「まぁ…その…まずは一つ謝りたくってですね」 部長の言葉に気まずく返したのは、色々と彼女にも迷惑を掛けてしまっているからだ。 しかも、それが分かっていてどうにかなるものならともかく、今の俺にはどうにもならないものだから質が悪い。 改善出来る方法と言うのは思いついたものの、今すぐ効果を発揮するようなものではないのだ。 お陰でこれからも迷惑をかけるのが目に見えており、それが俺の申し訳なさへと繋がっている。 京太郎「その…麻雀部の空気を悪くしてすみません…」 そう言って、俺は腰を折り曲げるようにして頭を下げた。 しっかりと謝意を示すようなそれは、最近 ―― いや、小蒔が来てからの麻雀部のギクシャクっぷりが原因である。 勿論、小蒔に悪気はないとは言え、俺とばかり会話してばかりだし、そもそもそれはいちゃついていると言っても過言ではないものだ。 お陰で和も拗ねる事が多くなり、咲や優希も何故か機嫌が悪くなっている。 結果、部活の雰囲気は最悪にも近くなっており、部長にも多大な迷惑をかけているのだ。 まこ「うちは別に構わないんじゃが…一応、メールも貰っているし」 一応、それに対しての謝罪と事情の説明は既にしている。 しかし、それで全てが済むかと言えば、話はそう簡単ではない。 これがただの友達の集まりであればともかく、これは部活なのだから。 まこ「じゃが、このまんまじゃぁ秋季大会はボロボロになるじゃろうな」 そう。 もう少しすれば新人戦があり、その先には秋季大会があるのだ。 どちらもインターハイに比べれば、それほど重要ではないとはいえ、次世代の主力が出てくるのである。 来年を見据えれば、出来るだけ勝ち残って各校の主力を見ておくのが一番だろう。 しかし、今の清澄にそれが出来ると言えば…正直、俺の目から見ても厳しいのが現状だった。 まこ「皆が皆、実力を出しきりゃぁ秋季大会優勝もおったしゅぅはないじゃろう。じゃが…」 京太郎「今の状態ではそれも難しい…ですね」 そもそも、今の清澄には全国でも有数の打ち手が揃っているのだ。 俺を除けば誰もがインターハイで活躍出来る選手ばかりである。 しかし、和は本来の実力を出す事が出来ず、また咲や優希も最近は気がそぞろで集中出来ていなかった。 そんな状態では幾ら主力である三年が抜けたとは言え、秋季大会で良い成績を残すのは難しい。 まこ「京太郎からちぃと神代さんに控えるように言えんのんか?」 京太郎「以前に一度、言ったんですけど…」 勿論、俺とて今の状態が正しいだなんて思っちゃいない。 だからこそ、この前、それとなく人前ではあまりベタつかないように伝えた。 小蒔もそれを了承し、理解してくれていたはずなのである。 しかし… ―― 京太郎「…言ってアレなんですよね…」 まこ「む…ぅ」 小蒔も多少は改善してくれている。 清澄に転校してすぐの頃は俺が怪我をしていたのと同じくらいベッタリだったのだ。 それこそトイレと言っても俺の後ろに着いて来るほどのその姿は、クラスメイトにカルガモのヒナに喩えられたくらいである。 その頃から比べれば、今はトイレにも着いてこないし、廊下での待ち合わせにも応じてくれる。 それを思えば小蒔も大分、改めてくれていると言っても良いはずだ。 京太郎「それに小蒔も長野に来たばかりで不安でしょうし…」 石戸さんたちは転校手続きがまだ終了しておらず、長野にいるのは小蒔だけだ。 だからこそ、唯一知っている相手であり、婚約者でもある俺にベッタリなのもある種仕方のないことなのだろう。 そう思うと正直、あんまり強くは言えず、ここまでなあなあで済ませてきてしまった。 その結果、部長たちに多大な迷惑をかけ、関係をギクシャクさせているのは本当に申し訳なく思う。 京太郎「だから、俺、小蒔に友達を作ってやりたいんです」 とは言え、俺が突き放したところで、小蒔を受け止めてくれる人はいない。 そう思った俺が選んだのは小蒔に俺以外の親しい誰かを作る事だった。 勿論、友達が出来たところで決してイチャつきはゼロにならないだろうが、今よりは状況が改善されるだろう。 何より、周り皆と疎遠なままというのは小蒔にとっても寂しすぎる状況なのだ。 幾ら俺が居るとは言え、進級もすれば修学旅行などの行事もある。 そんな中、一人ぼっちで寂しそうにしている小蒔なんて見たくない。 まこ「ふむ…そりゃあうちに神代さんの友達になって欲しいと?」 京太郎「出来れば…なんですけれど」 そして、それはただのクラスメイトではなく、現在進行形でギクシャクしっぱなしな麻雀部に在籍している人が良い。 その条件に一致するのは世界でたった一人しかいなかった。 つまり小蒔のクラスメイトであり、麻雀部部長である染谷まこ、その人である。 だからこそ、俺はこうして小蒔にも内緒で部長を呼び出し、かなり失礼なお願いをしているのだ。 まこ「うちは構わんよ」 京太郎「ほ、本当ですか!?」 思った以上に色良い返事に思わず俺の声が大きくなった。 その勢いのまま一歩踏み出しそうになるんを堪えながら、俺は胸中で小さくガッツポーズする。 正直、今まで迷惑掛けっぱなしであっただけに断られる事だって考えていたのだ。 その場合、何とか友達を作る手伝いだけでもお願いしようと土下座の覚悟まで決めていたのである。 それらが全て無駄になるという嬉しい結果に思わず笑みが浮かびそうになった。 まこ「ただ…神代さんの方がどうゆうかじゃのぉ」 京太郎「え…?」 その瞬間、齎された部長の言葉に俺は思わずマヌケな声を返してしまう。 そんな俺の前で部長は気まずそうな、複雑そうな表情を浮かべ、視線をそっと彷徨わせた。 普段のしっかりとした部長からはあまり結びつかないその顔に嫌な予感を感じる。 まこ「あの容姿と人当たりの良さじゃけぇの。神代さんは転校初日から人気者じゃったよ」 まこ「じゃが、今は積極的に神代さんに話しかけようとするんは殆どおらん。どうしてか分かるか?」 京太郎「俺の所に来てるから…ですよね?」 まるで子犬のようにポヤポヤとしたオーラを出している上に、整った顔までしているとなれば、そりゃ人気者だろう。 皆が皆、放ってはおけず、色々と世話を焼こうとしたはずだ。 しかし、それらはきっと、休み時間の度に俺の元へと駆け出す小蒔の様子に阻まれ、失われていったのだろう。 自らコミュニケーションを絶とうとする相手に対して、積極的にはなるのは至難の業なのだから。 まこ「うむ。それで皆、おおかた、理解した訳じゃの。『この子は友達作りよりも大事なもんがある』と」 「うちもそうじゃ」と付け加える部長に俺は返す言葉もなかった。 何せ、小蒔がそうなってしまったのは他でもない俺の所為なのだから。 俺がもう少し冷静で慎重であれば、小蒔がこんなにも俺に依存することはなかった。 それを思うと自然と頭が重くなり、俯き加減になってしまう。 まこ「それでも一応、部活の仲間としてうちも話しかけちゃぁいるんじゃが、あまり芳しい結果は得らりゃぁせんでな」 京太郎「そう…ですか…」 気まずそうに言う部長への返事も途切れがちになってしまった。 考えても見れば、先代とは違って、真面目で責任感の強い部長が今の小蒔に対して何のアプローチもしていないというのはあり得ない。 『一応』と前置きしてはいるものの、クラスでも孤立しているであろう小蒔にかなり心を砕いてくれているのはその表情から十二分に見て取れた。 まこ「そう落ち込むの。何もやらんゆっとる訳じゃないんじゃ」 まこ「じゃが、今の神代さんじゃぁ取り付く島がなさ過ぎる。まずはそれを何とかせんと…」 京太郎「分かりました。その辺は俺が何とかします」 石戸さんたちがいない今、その辺りの事をどうこうするのは俺しか出来ない事だ。 それを思えば、俯いている場合でも、落ち込んでいる場合でもない。 励ますように言ってくれている部長の為にも、俺が小蒔の意識を変えるしかないだろう。 まこ「あまり力になっちゃれのぉすまんな」 京太郎「気にしないでください。元々は俺の問題ですし…」 謝る部長に、俺は首を振りながらそう答えた。 そもそも俺がもっと小蒔を突き放す事が出来れば、こんな問題は起こっていないのだから。 しかし、そこまで小蒔を依存させてしまったのは俺の能力の所為であり、またそうやって離した小蒔を受け止める人たちがいないのも俺の所為だ。 あくまで原因は俺にあり、小蒔も部長も悪くはない。 小蒔「京太郎様?」 京太郎「え…?」 瞬間、聞こえてきた声に振り返れば、そこには清澄の制服姿の小蒔がいた。 その手で持つバスケットは恐らく俺の昼食を入れてあるものなのだろう。 それを両手で大事そうに抱えながら、小蒔は俺達に向かって首を傾げていた。 京太郎「小蒔、どうしてここに?」 小蒔「部活の時間でしたので、迎えに行ったのですが、ご母堂様がもう学校に行ったと言われたので…」 疑問に答える小蒔の言葉は俺の迂闊さを伝えるものだった。 下手なことは言わない方が良いと思って、小蒔には何も伝えなかったのが裏目に出てしまったのだろう。 結果、一緒に部活に行こうと俺を迎えに来てくれた小蒔に気まずいところを見られてしまい、不審がられてしまった。 京太郎「(どうやって誤魔化そうか…)」 勿論、ここで説明するという選択肢はない。 誰だって自分の知らないところで勝手に友達になってくれないかと頼まれるのは嫌だろう。 それが親でも微妙な気持ちになるというのに、俺はただの他人なのだ。 ここで説明したところで小蒔の気分を害するだけだし、何より、これから仲良くなろうとしてくれる部長に対してフィルターが掛かりかねない。 そうなれば、二人が本当の意味で仲良くなれるのは当分、先になってしまう事だろう。 小蒔「それで…京太郎様と部長さんは…?」 まこ「うちが部活前の買い出しを京太郎に頼んだんじゃ」 小蒔「あ、そうだったんですか」 それは部長も同じ考えだったのだろう。 それっぽく誤魔化すその言葉に小蒔が無垢な顔で頷いた。 完全に部長の言葉を信じきっているその顔に嘘はなく、そもそもそんな腹芸が出来るほど小蒔は器用ではない。 不器用で素直で頑張り屋な小蒔のその表情に、とりあえずの危機が去った事を悟り、俺は内心、ため息を吐く。 小蒔「では、一緒に行きましょうか」 京太郎「えっ」 しかし、次の言葉に俺は自分の頬が引きつるのを感じた。 何せ、一緒に行くと言っても、部長の言葉は嘘なのだから。 小蒔が一緒に着いてきたところで買うものなんて何もない。 頭の中で備品のリストを浮かべてみたが、今は特に足りていないものはなかった。 まこ「じゃあ、うちも御随伴に与ろうかの」 小蒔「部長さんもですか?」 まこ「うむ。大会前だし、折角じゃけぇ、親睦を深めるんも悪ぅはないじゃろう」 小蒔の疑問に答える言葉はとても自然なものだろう。 ついさっきまで部長と話していた俺でさえ、普通に聞こえるものなのだから。 しかし、さっき部長に一つお願いをした俺には分かる。 部長は俺に気を遣って、こんな事を言ってくれたのだ。 京太郎「良いんですか?」 まこ「うむ」 とは言え、未だに俺は小蒔に何も言えてはいない。 その上、特に買い出しをする必要があるものはなく、一緒にいたところで徒労に終わる可能性が高いのだ。 それなのに、部長としてかなり忙しく日々を過ごしている染谷先輩の時間を取って良いのだろうか。 そう思って尋ねた俺に部長は小さく頷いた。 まこ「たまにゃあ部長らしいところを見せないとな」 そう笑うのは小蒔を誤魔化す為か、或いは本心か。 どちらとも思える俺にとって、それは中々に答えづらいものだった。 染谷先輩が先代部長と自分を比較して色々と気に病んでいるのは伝わってくるのだから。 小蒔のことも先代部長ならもっと早く解決出来たと思っていてもおかしくはない。 まこ「勿論、神代さんが良けりゃあ、じゃが」 小蒔「私は構いませんよ」 部長の言葉ににっこりと笑いながら、小蒔は小さく頷いた。 その和やかな様子からは俺に依存と言って良い程にベッタリしている姿は想像も出来ない。 いや、寧ろこちらが小蒔の本当の姿であり、俺の前にいる彼女の方が異常なのだろう。 少なくとも、俺が最初、出会った頃の小蒔は、激しい執着を示すような子ではなかった。 京太郎「(何とか…してやらないとな)」 そうやって女の子 ―― しかも、とびっきりの美少女に頼りにされるのは嬉しい。 しかし、今の小蒔の世界はあまりにも小さく、視野狭窄と言ってもおかしいくらいなのだ。 それは普通の女の子として見て欲しいと言った小蒔の望みを根本から歪めたものだろう。 それに何より… ―― 京太郎「(きっと…皆はこんな小蒔の姿を望んでいた訳じゃないんだ)」 心配する両親の元へ帰らなければいけなくなった俺に泣きつくようにして離れたくないと言った小蒔。 そんな彼女の望みを叶える為に、石戸さんたちは大人たちへと掛け合い、こうして長野行きの許可をもぎ取ってくれたのである。 それはこうして俺にばかり執着を示して欲しいからでは決して無い。 霧島神宮と永水女子という限られた世界だけではなく、もっと色んなものを見て、感じて欲しい。 そう思ったからこそ、石戸さんたちはあんなに必死になってくれていたのだ。 京太郎「(その為にも…ここでとっかかりくらいは作っておかないとな)」 最初こそ焦りを覚えたものの、今のコレは千載一遇の好機である。 何せ、俺を除けば小蒔に一番近い部長と一緒に買物に出かけられるのだから。 共通の体験と言うのは人に親近感を抱かせるものだと聞くし、ここで二人の距離を縮めるのもきっと不可能ではない。 勿論、すぐさまそれが結実する訳ではないだろうが、このチャンスを作ってくれた部長の為にも、ここは… ―― 【少目標:二人の距離を縮めろ】 【攻略条件:小蒔に友人を作れ】 【中庭】 京太郎「とりあえず…近くのスーパーで良いんでしたっけ?」 まこ「そうじゃな。あそこなら大抵、何でも揃うし」 京太郎「最近はスーパーの品揃えって結構、馬鹿にならないですしね」 京太郎「たまにご当地的なアレとかもあって面白いですし」 京太郎「鹿児島に行った時なんかは軽くカルチャーショックでしたね」 まこ「なんじゃ。そんなに色々あったんか?」 京太郎「えぇ。…でも、ショックだった事しか覚えてなくて具体的に何があったかまでは…」メソラシ まこ「ははっ。痴呆が入るにはまだ早いぞ」 京太郎「えーっと…喉元まで出てるんですが……小蒔、何があったっけ?」 小蒔「えっ、わ、私ですか?」 京太郎「あぁ。小蒔なら分かるかなって…ほら、一番最初にスーパー行った時に俺が驚いてた奴…」 小蒔「えっと…黒糖ジュースの事ですか?」 京太郎「あぁ、それだそれ」 まこ「…黒糖のジュース…じゃと…?」 小蒔「はい。鹿児島では結構、人気なんですよ」 まこ「まったく味の想像がつかんぞ…」 小蒔「黒糖って意外と普通のジュースに混ぜられたりしていますし、悪くない味ですよ」 小蒔「大きく黒糖が表示されているだけでメインの味は梅やレモンですし」 まこ「ほぅ…つまり添加物的なサムシングなんか?」 小蒔「そうですね。とは言っても、しっかり黒糖の味はするんですけれど」 小蒔「沖縄辺りではシークワーサーに黒糖を入れたりするみたいです」 まこ「うぅむ…言われても中々、味の想像が出来ん」 小蒔「それじゃ今度、ご馳走しましょうか?」 まこ「ええのか?」 小蒔「えぇ。家庭で作るのもそれほど難しくありませんし」 小蒔「部室の設備があれば、私でもそれなりのを作れるとおもいます」 まこ「なんじゃ。謙遜か?」 小蒔「いえ、知り合いに黒糖に詳しい子が居て…さっきのも殆どその子の受け売りなんです」 小蒔「それに黒糖ジュースを作るのもその子の方がよっぽど上手ですし…」 まこ「ジュースと言えば、ミキサーに掛けるか搾るかしか思いつかんうちからすれば、作れるだけでも凄いと思うんじゃがなぁ」 小蒔「レシピさえ知っていれば、誰にだって作れますよ」 まこ「ほいじゃあ、今度、レシピも教えてもらって構わんか?」 まこ「常連に出したら気に入るかもしれんし」 小蒔「常連?」 まこ「あぁ、言ってなかったか」 まこ「うちは雀荘を経営しとるんじゃよ」 まこ「と言っても小さなもので、大した設備はないがの」 小蒔「雀荘…」ドキドキ 小蒔「…」チラッ 京太郎「あー…今日の帰りにでも一緒に行ってみようか」 小蒔「良いんですか?」 京太郎「良いんだよ。たまにはお袋にも仕事させないと腕が鈍るし」 京太郎「それに小蒔は雀荘初めてだろ?」 小蒔「は、はい。実は…そう言ったところには近づけて貰えなくて」カァ 京太郎「はは、石戸さんたちは過保護だからな」 京太郎「でも、部長のとこはノーレートでお客さんも良心的だ」 京太郎「知り合いが経営してるってなると石戸さんたちも許してくれると思うし…今の内に下見しておこうぜ」 小蒔「はいっ」ニコッ 京太郎「(部長の話の持って行き方は上手いな…)」 京太郎「(多少、援護したとは言え、小蒔を雀荘へと呼びこむ道筋をほぼ一人で作り上げた)」 京太郎「(流石に先代部長みたく口八丁手八丁で誤魔化すタイプではないにせよ…記憶力も思考力も凄い人なんだ)」 京太郎「(元々、小蒔と話す機会があまりなかっただけで、少し腰を落ち着けさせれば、俺の助けがなくてもこれくらい出来たんだろうな)」 京太郎「(しっかり者とおっとり天然系のペアなんだから、相性が悪いって訳じゃないだろうし)」 京太郎「(何にせよ…小蒔が雀荘に興味を向けたのは有難い)」 京太郎「(麻雀の特訓って名目で俺が小蒔を誘う事も出来るし、二人の間で共通の話題も作りやすい)」 京太郎「(忙しい部長の余暇を邪魔しないって辺りもプラスに考えられるな)」 京太郎「(だけど…今、二人の間に生まれたのはあくまでとっかかりだけ)」 京太郎「(まだそれが芽吹くような時ではないし…ここはもうちょっと話題を提供するべきだろう)」 京太郎「(さて…それじゃ…次の話題だけれど…)」 小蒔の好感度【3/20】 【往路】 京太郎「そういや小蒔はこっちでちゃんと勉強についていけてるのか?」 小蒔「だ、大丈夫ですよ」 京太郎「本当か?部長、授業中寝てたりしてません?」 まこ「…ぅーん…言ってええものか悪いもんか…」 小蒔「そ、そんなに寝てませんよ!!」 京太郎「…ってことはちょっとは寝てるのか」 小蒔「う…そ、それは…その…」カァ まこ「まぁ、稀に良く起こされとるのを見るのぉ」 小蒔「だ、だって、京太郎様が…その…」 京太郎「こ、小蒔!?」 まこ「ほぅ…詳しく聞きたいのぅ」キラン 京太郎「ちょ、部長もそこは乗らなくて良いんですってば!?」 まこ「いやーうちも部長として部員が不純異性交遊やってないか気にならん訳じゃないし」 京太郎「(寧ろ、超不純だから困ってるんですってば!!!)」 京太郎「そ、その…小蒔?」 小蒔「そうですよ!聞いて下さい!」 まこ「うむ。この際じゃ、全部言ってしまえ」 小蒔「京太郎様ったら酷いんですよ!私の方が先に寝ちゃダメなのに、ずっと起きてるんです!」 まこ「…ん?」 小蒔「それどころか腕枕や子守唄まで歌って、私を眠らせようとしてくるんですよ!」 まこ「んん?」 小蒔「その上、頭をポンポンって優しく撫でられると…もう…耐えられません…」カァァ 小蒔「大抵、その辺りで私の方が先に寝ちゃって…京太郎様に寝顔を見られちゃうんです…っ」 小蒔「妻たるもの夫より後に寝て、先に起きなければいけないというのに…京太郎様は本当に意地悪で…」モジモジ まこ「…惚気にしか聞こえない訳じゃが?」 京太郎「お、俺に言われても困りますってば…」 まこ「と言うか、何でそこまでして神代さんを眠らせようとするんじゃ?」 京太郎「いや…だって、その…俺より後に寝ようとして目の前でうとうとしても起きようとするんですよ?」 京太郎「我慢し無くて良いって言ってるのに全然、譲りませんし…眠らせるしかなくてですね」 まこ「はいはい。惚気はもうお腹一杯じゃ」 小蒔「そうやって京太郎様が意地悪するから、私も昼間に寝て夜に備えようとするんです!」 京太郎「俺の所為か?」 小蒔「ぅ…」 京太郎「…本当に俺の所為なのか?」 小蒔「うぅぅ…」 京太郎「…小蒔、本当にそれが本心なんだな?」 小蒔「う、嘘です…私が変に意地を張っちゃうから、夜遅くなって授業中に寝ちゃうんです…」 京太郎「よしよし…正直な小蒔にはご褒美をやるぞ」ナデナデ 小蒔「あっ…えへへ…♥」 まこ「(アカン…また置いてけぼりくらい掛けとる…)」 まこ「まぁ、そろそろテストも近いし、わからんところがあるなら教えるぞ」 小蒔「え…でも…」 まこ「うちも復習ついでに色々と見直したいし、神代さんさえ良ければ、勉強会やらんか?」 小蒔「…京太郎様…」チラッ 京太郎「一々、俺に伺いを立てなくても大丈夫だって」 京太郎「小蒔の成績が落ちるのは俺も望むところじゃないし、色々と教えて貰って来い」 京太郎「部長の教え方は上手だから、絶対やってもらった方がお得だから」 まこ「またそうやってハードル上げよる…」 京太郎「さっきのお返しですよ」 小蒔「じゃあ…その…お世話になっても良いでしょうか?」オズオズ まこ「構わん構わん。と言うか、もっと図々しいくらいで良いんじゃぞ」 まこ「うちの部活は我が強いのばっかりじゃし、うちもそれに慣れとるからな」 小蒔「え、えっと、それじゃあ…お、教えろ下さいませ」グッ まこ「…」 京太郎「…」 小蒔「え…あ…だ、ダメでしたか…?」カァァ まこ「京太郎、何処でこんな可愛い子捕まえたんじゃ」 京太郎「鹿児島ですってば。つか、捕まえたとか人聞きの悪い事言わないで下さい」 小蒔「で、でも、私は身も心も京太郎様のモノですから!」グッ 京太郎「はは、そうだな。そういう意味じゃ捕まえたのかもな」 まこ「はいはい。惚気はそこまでじゃ」 まこ「そろそろスーパーじゃし、イチャイチャはほどほどにの」 京太郎「(さて…おまちかねのスーパーなんだけれど…)」 京太郎「(ぶっちゃけ買うものは決まってない)」 京太郎「(行き当たりばったりの状態で来ただけだからなぁ…)」 京太郎「(勿論、無理に買うものをひねり出そうと思ったら出来なくはないんだけれど…)」 京太郎「(二人の話題に繋げられるもの…となると中々、思いつかない)」 京太郎「(さて…どうするべきかな…)」 小蒔の好感度【6/20】 【スーパー】 京太郎「とりあえずスーパーと来たらお菓子とジュースだろ」 まこ「定番じゃな」 京太郎「ふふふ…しかし、今日の俺は一味違いますよ」 京太郎「俺が選ぶのは普通のお菓子じゃない…!こっちの駄菓子コーナーだ!!」ババーン 小蒔「わぁ…充実してますね」 京太郎「ふふふ…五円チョコやよく分かんないゼリー、紐の先についたよく分かんない飴まで完備してあるぜ…」 まこ「毎回思うがここのラインナップは異常やの」 京太郎「俺としてはこういうのを売ってる場所が近くからなくなっちゃったんで嬉しい限りなんですけどね」 小蒔「懐かしい…昔、霞ちゃんと一緒に買い食いしてたのを思い出します…」 まこ「お、神代さんは意外とワルだったんじゃな」 小蒔「えへへ…社会に反抗してみたい年頃だったんです」 まこ「となると…結構、駄菓子に好みとかあったりするんか?」 小蒔「勿論、ありますよ」 小蒔「私はこの小分けになった小さなおもちみたいな奴が好きでした」スッ まこ「あー、食感とかかなりええもんな。ちなみに何味じゃ?」 小蒔「色々と食べましたけど、ソーダ味が一番だと思います」グッ 京太郎「ソーダ味かぁ、俺はコーラ派だったなぁ」 まこ「男の子は意外とコーラ派が多いイメージじゃの」 小蒔「ソーダ味も美味しいのに…」シュン まこ「まぁまぁ。どうせだし、二つとも買ってしまおう」 小蒔「…ちなみに部長さんは何派ですか?」 まこ「うち?結構、色んな味を節操無く食っとったからなぁ…」 まこ「ただ、至高の駄菓子は酢昆布じゃと思う」 まこ「お茶と一緒に食べた時にじわぁっと広がっていく味が最高じゃ」 京太郎「あーそういう食べ方してるの俺だけじゃなかったんですね」 小蒔「え…わ、私、したことありません…」 まこ「ふむ、それじゃついでじゃし、酢昆布も買っていくか」スッ 京太郎「…なんで鷲掴みしてるんですか?」 まこ「だ、だって…こうして駄菓子食べるのとか久しぶりなんじゃもん…」メソラシ 小蒔「ず、ズルいです!それじゃ私も…」スッ まこ「ふふふ…どんどん買っちゃってええぞ。何せ全部、部費で落とすからな!」 京太郎「まぁ、所詮、駄菓子ですし、そこまで高い事にはならないと思いますけど…」 まこ「あ、たこせんじゃ。これは外せんじゃろ」 小蒔「ブタメンさんは三個ですよね。あ、こっちにはよっちゃんイカがある…」 京太郎「……あ、一口サラミあるじゃん。これは束で買うべきだな」 まこ「たらたらしてんじゃねーよはお徳用より小さい奴が美味しいと思う」 小蒔「ヨーグルさ~んっ♪あ、いました」 京太郎「うまい棒は明太味は至高。異論は認める」 ……… …… … レジの子「はい。お会計1988円になりまーす」 まこ「…はい」 レジの子「有難うございましたー。またお越しくださいませ」 京太郎「…あの」 まこ「何も言うな…今は何も言わないどくれ…」 小蒔「…思ったより高くつきましたね」 京太郎「子供の頃とくらべて金銭感覚違ってるからな…」 まこ「調子にのった所為で普段よりも高くついとる…」 京太郎「っていうか、流石にこのサイズの袋二個はちょっと…」ガサッ まこ「すまん…すまん…」 小蒔「ぶ、部長さんは悪くないですよ!?」 京太郎「そ、そうですよ!別に全然、重くないですし」 小蒔「それに調子に乗っちゃったのは私達も同じなので…」 京太郎「部長だけそうやって落ち込まれるとこうこっちも…」 まこ「いや、普段ストッパーを自負しとるのに、これはちょっとって思ってな…」 まこ「大人げないところを見せてすまんな」ペコリ 京太郎「誰だってテンション上がり過ぎちゃう時くらいありますって」 小蒔「それに私も同じようにはしゃいじゃってたんで大人気なかったのは私も同じで…」ズーン まこ「あぁ!す、すまん…!そういう意味じゃ…!!」アセアセ 京太郎「こ、小蒔はそれで良いんだって!そんな小蒔が可愛いんだから!!」 京太郎「(まぁ…そんなトラブルがあったものの…スーパーでの買い物は終わった)」 京太郎「(ちょっと慌ただしかったけれど、まぁ、それも青春ならでわの楽しいイベントだろう)」 京太郎「(それにドタバタしすぎて、駄菓子を買う程度じゃ俺を呼んだりしないって意識が小蒔に芽生えた気配はない)」 京太郎「(どうなる事かと思ったけど…一安心みたいだな)」 京太郎「(さっきも部長に自分から話しかけたりしていたし…少しずつ二人の距離は埋まっているみたいだ)」 京太郎「(思ったより順調だし、とっかかりそのものも増えていってる)」 京太郎「(このまま行けば、二人が友人になれるのも思ったより遠い事じゃないのかもしれない)」 京太郎「(さて…その為にもここを頑張らないとな)」 京太郎「(買い出しイベントの最後…復路だ)」 京太郎「(ここでどんな話題を触れるかで…このイベントの印象が大きく違うぞ)」 京太郎「(出来るだけ二人が仲良くなっている事を印象づけられるような…そんな話題)」 京太郎「(それを振る事が出来れば…もしかしたら…)」 小蒔の好感度【10/20】+お前らの駄菓子ボーナス(6) 【復路】 京太郎「いや…にしても良かったよ」 まこ「何がじゃ?」 京太郎「部長と小蒔が仲が良いっぽくて安心したんですよ」 京太郎「一緒のクラスなのにあんまり部活で会話したりはしませんでしたし」 まこ「そうじゃな。ちょっと部長としては新入部員に対して疎かだったのは否定出来んの」 小蒔「そ、そんな事ありませんよ!」 小蒔「だって…部長さんは良く私に話しかけてくれているじゃないですか」 まこ「それでもちょっとぎくしゃくしとったのはうちの不徳と言う奴じゃろ」 まこ「うちは部長なんやけ、神代さんの事もちゃんと見とかへんかったらいけんのに…出来とらへんからの」 小蒔「部長さん…」 まこ「ただ、折角じゃし、もうちょっと色々仲良くしたいのは事実じゃ」 まこ「部長としてだけやなく…クラスメイトとしても…な」 小蒔「…ごめんなさい」 まこ「いや、別に責めてる訳やないんや」 まこ「恋に一生懸命なのに共感出来るとは言えんでも、理解できない訳やないし」 まこ「ただ、もうちょっとうちの事にも構ってくれると嬉しいと言うか…」カァ 小蒔「あの…良いんですか?」 まこ「ん?」 小蒔「だって、私、今まで部長さんの誘いを断ってばっかりで…」 小蒔「お昼だって一緒に食べた事ないのに…」 まこ「そんなん後でどうとでもなるやろ」 まこ「別に友達やったら満たしてへんかったらあかん条件ってのがある訳やないし」 小蒔「…友達…」 まこ「そ。友達。うちの友達になってくれへん?」 小蒔「…本当に良いんですか?」 まこ「良くなかったらあんな恥ずかしいセリフ言えんって」 まこ「というより…あんな恥ずかしいセリフをうちに言わせたんやから、なってくれへんと困る」 小蒔「…部長さん…」 まこ「部長やなくて、染谷でどうじゃろ?」 まこ「他の皆にはちゃんと部長って呼んで欲しいけど、神代さんだけ特別って事けぇ」ニコッ 小蒔「…京太郎様…」チラッ 京太郎「もう…一々、俺の事なんて気にするなよ」 京太郎「大事なのは…小蒔がどうしたいかだろ」 京太郎「俺は小蒔が友達作ったからって嫉妬するほど狭量な男のつもりはないぞ」 小蒔「…あ…その…えっと…」 まこ「決めらりゃあせんのじゃったら、保留でええよ」 まこ「うちも今すぐどうこうってのを考えとる訳じゃないし」 まこ「神代さんがうちと仲ようなれそうじゃゆぅて思うた時にそう呼んでくれりゃぁ、それでええ」 小蒔「部長さん…」 小蒔「あの…私…友達ってもっと劇的な何かがないとダメだと思って…だから…」 小蒔「わ、私、お友達って言えるような人いないってずっと思ってて…あの…」 小蒔「…もうちょっとだけ…待ってもらえますか?」 小蒔「い、今までそんな事考えたことないから…その…凄い混乱しちゃってて…」 小蒔「嬉しいのは確かなんですけど…でも…あの…」 小蒔「嬉しすぎて夢じゃないかって思ってるくらいで…私…」ジワッ まこ「…京太郎」 京太郎「はい。…小蒔」スッ 小蒔「あ…ぅ」 京太郎「ゆっくりで良いんだよ。小蒔のペースで…小蒔らしい速度で良いんだ」ナデナデ 京太郎「俺も部長も…一々、急かしたりしないさ」 京太郎「だから…一緒に色んな事やって…頑張って行こうぜ」 京太郎「部活も勉強も…友達作りもさ」 小蒔「私に…お友達…作れるんでしょうか…」 京太郎「そんな風に怯えなくても、小蒔なら作れるって」 京太郎「手始めに…他の部活の皆に話しかけてみようぜ」 京太郎「皆、気の良い奴だから、小蒔が話しかけたらきっと応えてくれるさ」 小蒔「…はい…っ」 【System】 少目標を達成し、神代小蒔と染谷まこの距離が縮まりました。 好感度がMAXになり、小蒔の意識が変わって、攻略条件を達成しました。 小蒔の依存度は薄れつつあるようです。 #comment
[[前話>おもち少女7-2]] [[次話>おもち少女9]] 【休み時間】 小蒔「京太郎様~♪」 京太郎「こ、小蒔…次の準備とか大丈夫なのか?」 小蒔「えへ…♪そんな事よりも…私、京太郎様に会いたくって…」 小蒔「ここまで…一生懸命に走ってきちゃいました…っ」グッ 京太郎「つっても会えるのなんて数分もないぞ?」 小蒔「それでも構いません。私は京太郎様のお顔が見れるだけで…また一時間頑張れるようになるんですから」グッ 小蒔「その為ならちょっと走るくらい何でもないです…!」 京太郎「あー…もう…ホント、可愛いな、小蒔は」ナデナデ 京太郎「でも、廊下は走っちゃダメだぞ。危ないからさ」 小蒔「えへ…はぁい…♪」 京太郎「後…そんなに我慢出来ないんなら、俺からも会いに行くから」 小蒔「え…?良い…んですか…?」キュン 京太郎「良いっていうか…まぁ、その…」チラッ モブ男「転校生で童顔巨乳美少女巫女でおっとり天然系お嬢様の神代さんと婚約者になったでは飽きたらず…」ガタッ モブ夫「毎時間、わざわざ二階から会いに来てくれているだと…!!」グッ モブ助「これは教育やろなぁ、ワイは詳しいんや」スブリ 京太郎「…お、俺の命の為にもそうしないと拙いっていうか」 小蒔「???」 京太郎「何でもない。ともあれ…小蒔ばっかりに負担を掛けるのは嫌だから…さ」 小蒔「えへへ…♪嬉しいです…っ」 【昼休み】 小蒔「京太郎様~♪」ガラガラ 京太郎「あぁ、小蒔」 小蒔「お弁当、作って参りましたから一緒に食べましょうっ♪」 京太郎「あぁ。何時も悪いな」ナデナデ 小蒔「いえ…婚約者として当然の事ですから…」テレテレ 小蒔「それに…何れは私の料理が京太郎様の家庭の味になるんです」 小蒔「少しずつ京太郎様の味覚に合わせていかないといけませんし」ニッコリ 京太郎「小蒔は頑張り屋さんだなぁ」ナデナデ 小蒔「京太郎様の為なら…私、一杯、頑張っちゃいます…っ」グッ 京太郎「はは、でも、頑張り過ぎて無理しないようにな」 京太郎「小蒔が無理して倒れたりしたら、俺は石戸さんに顔向け出来ないし」 小蒔「…でも、その時は京太郎様が助けてくださいますよね?」 京太郎「当たり前だろ」 小蒔「えへへ…♪だから…私は大丈夫ですよっ!」 京太郎「まったく…危なっかしくて目が離せないじゃないか」 小蒔「ふふ…♪それならずっと私だけを見ていてくださいね…♥」 小蒔「私の目は何時だって…京太郎様に向いておりますから…♪」 京太郎「んじゃ…ついでに弁当箱と一緒にその手も向けてもらおうかな」ギュッ 小蒔「はい…っ♪」 モブ男「(もう良いからとっとと何時ものトコロ行けよ…)」ナミダメ モブ夫「(何で一々、教室でイチャついてるんだよ、糞が…!!)」ケツルイ モブ助「(ついこの間まで俺らと同じ(モブ)枠だったのに…何でアイツあんなに好かれてるんやろうか…)」サメザメ 【なかにわっ】 京太郎「うっす。お待たせ」 小蒔「お待たせしました~♪」 和「まったく…遅いですよ」 京太郎「悪いな。ちょっと俺が手間取っちゃって」 咲「…どーせ神代さんとイチャついてたんでしょ」ムスー 優希「京太郎はスケベだからな」プクー 京太郎「お前らは俺を何だと思ってるんだ…」 咲「合宿終わった後にいきなり旅に出たと思ったら婚約者連れて帰ってきた変態」ジトー 優希「巫女さん侍らせて、自分の価値が上がったと思って調子にのってるダメ男」ジトー 京太郎「相変わらず対応がセメント過ぎる…」ガクリ 小蒔「…」 和「だ、大丈夫ですよ。アレがあの二人の距離感なんですし」 小蒔「分かってます…分かってますけど…」プクー 小蒔「それでも京太郎様を変態だとか…ダメ男だとか言うのは許せません…」ポツリ 和「…割りと当たってると思うんですけどね」ボソッ 小蒔「え…?」 和「いえ、何でもないですよ」 和「ほら、二人共。須賀君が構ってくれるのが嬉しいからってあんまり弄っちゃダメですよ」 咲「はーい…後で覚えといてね、京ちゃん」 優希「月のある夜ばかりと思うなよ犬…」 京太郎「何でお前らはそう俺に対して風当たりがそんなに強いんだよ…」 和「神代さんに須賀君を取られて拗ねてるんですよ」 咲「す、拗ねてなんかないもん!」 優希「そ、そうだじぇ!そんなオカルトあり得ないですし!!」 和「ふふ…さて、どうでしょうか」 咲「ぅ~…最近、和ちゃんが余裕だよ…」 優希「何か一皮剥けた感があるじぇ…」 和「な、何を言ってるんですか、馬鹿馬鹿しい…」 和「それこそ、そんなオカルトあり得ません」 小蒔「~♪」 咲「でも、最近、良く部活抜けだしたりするよね?」 優希「しかも…京太郎が買い出し言ってる時ばかりなのはどういう事だじぇ?」 和「そ、それは…たまたまです」 和「確かに統計としてそういう偏りがあるかもしれませんが、それは単純にタイミングの問題であって、他にも無視出来ない変数が沢山あり、別に狙ってやっているとかでは…」 咲「…怪しい」ジトー 優希「…怪しいな」ジトー 小蒔「はい、京太郎様♪準備出来ましたよっ」 京太郎「お…今日も美味そうだな」 和「…」 咲「…」 優希「…」 小蒔「今日は何から食べますか?」 京太郎「そうだな…それじゃアスパラのベーコン巻きを頼む」 小蒔「はい♪それじゃ…あーん」 京太郎「あー…ん…んぐんぐ…うん。美味い」 京太郎「この前とはちょい味付け変えたか?」 小蒔「はい。焼く前にベーコンを少し漬け込むようにしてみました」 小蒔「如何でしたか?」 京太郎「こっちの方が俺好みかな」 京太郎「でも、手間掛かってるんじゃないか?もうちょっと手を抜いても良いんだぜ?」 小蒔「京太郎様のお食事を作るのに手を抜くなんて出来ません」 小蒔「それにお料理作るのは嫌いじゃありませんから」 小蒔「特に私が作ったものを京太郎様が食べると思うと…嬉しくなっちゃうんです♪」 京太郎「小蒔…」 小蒔「えへへ…♪」 咲「……相変わらず蚊帳の外…」 優希「ぬぐぐぐ…ぬぐぐぐ…」 和「…ほら、二人共、早く食べないとお昼休み終わってしまいますよ」 咲「ぅ~でも…」チラッ 優希「これじゃ京太郎と一緒に食べている意味が…」シュン 和「それなら混ざりに行けば良いじゃないですか」 咲「でも…あの空間に入るのは凄い勇気がいるし…」 優希「のどちゃんは…気にならない?」 和「私は別に…何とも思ってませんよ」 和「えぇ…別に…ちゃんと約束は護ってくれていますし…」グッ 和「仕方ないことだって分かっていますし…私は…一番ですから…」 和「だから…まったく気にしていませんし、気にする必要がないんです」ニッコリ 優希「の、のどちゃん…?」 咲「」ブルブル 小蒔「あ~んっ♪」 京太郎「はい…あーん…っと…あ、悪い。口に端にソース着いた」 小蒔「…舐めとってくれますか?」 京太郎「こんな事もあろうかと俺はハンカチを準備していてな」 小蒔「残念です…」 京太郎「はは…そういうのはまた今度な」 小蒔「はいっ♪」 和「…」ピシッ 咲「」フルフル 優希「」ブルブル 【放課後】 小蒔「京太郎様~♪」 京太郎「あぁ、迎えに来てくれたのか」 小蒔「はいっ♪入れ違いになったら拙いと思って」 京太郎「走らなかった?」 小蒔「…ちょっと小走りになっちゃいました」 京太郎「小蒔は悪い子だな」フニッ 小蒔「ふにゃぁ…♪」 京太郎「でも、今日の弁当が美味しかったから許してやる」パッ 小蒔「あ…」 京太郎「ん?」 小蒔「も、もうちょっとして欲しいなって…」カァァ 京太郎「弄り過ぎて癖になっちゃったのか」 小蒔「ち、違います。き、京太郎様に触れられると…私は何処でも嬉しくて…ですね…」 小蒔「その…だから…えっと…」チラッ 京太郎「…はいはい」ナデナデ 小蒔「ふあ…ぁ♪」 京太郎「小蒔は甘えん坊だなぁ」 小蒔「京太郎様が素敵なのが悪いんですよ…ぉ♪」 京太郎「俺は小蒔の方が素敵だと思うけどな」 小蒔「京太郎様の方です」 京太郎「いや…小蒔の方が」 モブ一同「良いからとっとと部活行けよ」 【部活後】 まこ「じゃあ、今日はこれくらいにしとこうか」 優希「えー。まだまだ打てるじぇ」 まこ「そろそろ大会も近いし、日が落ちるんもはよぉなってきたしのぉ」 まこ「今は体調管理の方が重要じゃ」 まこ「それに…」チラッ 小蒔「京太郎様、今日は何が食べたいですか?」 京太郎「そうだな…魚系とかが気分かな?」 小蒔「では、ブリの照焼などどうですか?」 小蒔「まだ旬にはまだ足りない感じですけど、それでも脂が乗り始めて美味しいですよ」 京太郎「お、良いな。じゃあ、それで頼む」 小蒔「はいっ♪では、その…」 京太郎「買い物だろ?分かってるって。それくらいやるさ」 小蒔「えへへ…♪有難うございます」 京太郎「気にするなって。つか、最近、お袋も平気で小蒔に料理を押し付けるようになってきたからな…」 京太郎「寧ろ、俺の方が毎日、美味しい飯を作ってくれて有難うって言わなきゃいけない立場だ」 小蒔「でも…私嬉しいですよ」 小蒔「一緒に台所に立って…京太郎様とお料理して…まるで本当の夫婦みたいだなって…嬉しくなっちゃうんです…♪」 小蒔「ご母堂様も多分、それを知っていて…だから…その…あまり悪く思わないであげて下さいね」 京太郎「…」ナデナデ 小蒔「あぅ…」カァァ 京太郎「小蒔は優しいな」 小蒔「えへへ…♪」 咲「…うぅ…」 和「…」グッ まこ「今の状態で部活やろうとしても逆効果になりかねないしの…」 ~ 京太郎 ~ 京太郎「はぁ…どうすっかなぁ…」 そうやって俺が言葉を紡ぐのは学校の中庭だった。 普段は人で一杯になっているそこには今は殆ど人がいない。 それは今が休日で、部活に出る奴以外は青春を謳歌しているという事が主な理由なのだろう。 それが羨ましいと思う気持ちがない訳ではないが、新人戦が近い今の状態で手を抜く訳にはいかなかった。 特に俺は皆と比べて実力が数段劣っている分、努力しなければろくに結果を出せないのは目に見えているのだから。 京太郎「(だけど…時間が少なすぎる)」 漫さんに会いに行くためにバイトを疎かにする訳にはいかず、また和や小蒔の『処理』に付き合わなければいけない。 そんな俺にとって、麻雀と向き合える時間というのはそれほど多くはないものだった。 と言うか、今はほぼ部活でしか打ってない。 それは別に麻雀が嫌になったとか、部活がダルいだとかそんな理由ではなくて… ―― 京太郎「(昔は…休み時間にちょっとアプリ弄ったりしてたんだけどな…)」 だが、ここ最近は俺に会いに来てくれる小蒔の相手で時間が潰れる事が多かった。 勿論、そうやって子犬のように無邪気に、そして健気に尽くしてくれる小蒔を重荷に思ったりはしない。 そんな小蒔と話すのは楽しいし、何より小蒔は可愛いくて癒しオーラ全開なのだから。 小蒔と話しているだけで俺はバイト疲れも消し飛び、活力が湧いてくる。 だが、それでもやっぱりこのままで良いのだろうか、と思う気持ちはなくならなかった。 京太郎「(そもそも…小蒔が長野にいるってのはかなり無理をしている事なんだよな)」 こうして長野に来たと言っても、小蒔の本業は鹿児島の巫女である。 本来ならばそこに拠点を置いて、活動するのが普通なのだろう。 しかし、俺と離れたくないという一念で、小蒔は周囲に無理を押し通し、こうして清澄に転校していた。 結果、三年である石戸さんたちも含め、こちらに転校手続きを取っているらしい。 新人戦の少し後…恐らく秋季大会前後には石戸さんたちもこちらに引っ越してくるとの事だった。 京太郎「(迷惑…掛け過ぎだよなぁ…今のコレって)」 長野に居たいという俺の我儘に引きずられる形で、多くの人に迷惑を掛けている。 特に三年で進路の事だって考えていたであろう石戸さんたちには頭が上がらない。 皆は「姫様のお願いだから」と笑って許してくれたものの、俺はそれで気が済まなかった。 とは言え、俺が石戸さんたちに出来る事なんて殆どなく、歪な今の状態に申し訳なさを感じる事しか出来ない。 京太郎「(だから、せめて小蒔には笑顔でいて欲しいんだけど…)」 石戸さんたちの事がなくても心にあったであろうその言葉。 それに指先に力を込めるものの、俺がそれを護りきれているとは言いづらかった。 確かに小蒔は俺の傍にいる時は大抵、笑っているし、幸せそうにしてくれている。 そんな小蒔の姿に救われたのは一度や二度ではなかった。 しかし、それが決して正常なものかと言えば、決してそうではないのである。 京太郎「(小蒔には…俺しか見えていない)」 休み時間も、昼休みも、放課後も。 まるで自分の時間の全てを費やすようにして、俺に尽くしてくれる小蒔。 それは勿論、嬉しいものの、かと言って普通かと言えば…間違いなく否だ。 和や咲たちと一緒に昼食を摂る時でさえ、小蒔は俺としかほとんど会話していない。 部活の時間も麻雀以外は俺にべったりで、咲たちとはろくにコミュニケーションを取れていなかった。 その上、休み時間の度に、わざわざ俺のところまでやって来れば…クラス内で孤立していてもおかしくはない。 少なくとも、小蒔が転校してきてそれなりに日が経つが、友人らしい人が居るのを見た事がなかった。 まこ「京太郎」 京太郎「染谷せんぱ…部長」 そんな俺に話しかけてきたのは部長だった。 勿論、たまたま見かけて話しかけてきてくれたなんて訳じゃない。 ここは部室のある方角とは違うし、部活の時間にもまだ早いのだから。 それでもこうして俺達がここで会った理由は一つ。 部長が俺のメールに応えて、部活の一時間前に暇を作ってくれたからだ。 まこ「言われた通りに来たが告白でもしてくれるんか?」 京太郎「ははっ、もし、そんな事したら小蒔に殺されちゃいますね」 まこ「なんじゃ。惚気か?」 部長はそう笑ってくれるものの、それは冗談の類じゃない。 普段の人畜無害な小蒔の様子しか知らない部長には分からないだろうが、暴走した時の小蒔の腕力は俺を遥かに超えるのだから。 それこそ片腕で人一人くらい縊り殺すくらいは余裕なはずだ。 勿論、そんなもの抜きでも小蒔を裏切るつもりはないが、もし、そうなった場合、俺は恐らく真っ先に死体へと変えられる事だろう。 まこ「じゃあ、どうしてうちを呼び出したんだ?」 京太郎「まぁ…その…まずは一つ謝りたくってですね」 部長の言葉に気まずく返したのは、色々と彼女にも迷惑を掛けてしまっているからだ。 しかも、それが分かっていてどうにかなるものならともかく、今の俺にはどうにもならないものだから質が悪い。 改善出来る方法と言うのは思いついたものの、今すぐ効果を発揮するようなものではないのだ。 お陰でこれからも迷惑をかけるのが目に見えており、それが俺の申し訳なさへと繋がっている。 京太郎「その…麻雀部の空気を悪くしてすみません…」 そう言って、俺は腰を折り曲げるようにして頭を下げた。 しっかりと謝意を示すようなそれは、最近 ―― いや、小蒔が来てからの麻雀部のギクシャクっぷりが原因である。 勿論、小蒔に悪気はないとは言え、俺とばかり会話してばかりだし、そもそもそれはいちゃついていると言っても過言ではないものだ。 お陰で和も拗ねる事が多くなり、咲や優希も何故か機嫌が悪くなっている。 結果、部活の雰囲気は最悪にも近くなっており、部長にも多大な迷惑をかけているのだ。 まこ「うちは別に構わないんじゃが…一応、メールも貰っているし」 一応、それに対しての謝罪と事情の説明は既にしている。 しかし、それで全てが済むかと言えば、話はそう簡単ではない。 これがただの友達の集まりであればともかく、これは部活なのだから。 まこ「じゃが、このまんまじゃぁ秋季大会はボロボロになるじゃろうな」 そう。 もう少しすれば新人戦があり、その先には秋季大会があるのだ。 どちらもインターハイに比べれば、それほど重要ではないとはいえ、次世代の主力が出てくるのである。 来年を見据えれば、出来るだけ勝ち残って各校の主力を見ておくのが一番だろう。 しかし、今の清澄にそれが出来ると言えば…正直、俺の目から見ても厳しいのが現状だった。 まこ「皆が皆、実力を出しきりゃぁ秋季大会優勝もおったしゅぅはないじゃろう。じゃが…」 京太郎「今の状態ではそれも難しい…ですね」 そもそも、今の清澄には全国でも有数の打ち手が揃っているのだ。 俺を除けば誰もがインターハイで活躍出来る選手ばかりである。 しかし、和は本来の実力を出す事が出来ず、また咲や優希も最近は気がそぞろで集中出来ていなかった。 そんな状態では幾ら主力である三年が抜けたとは言え、秋季大会で良い成績を残すのは難しい。 まこ「京太郎からちぃと神代さんに控えるように言えんのんか?」 京太郎「以前に一度、言ったんですけど…」 勿論、俺とて今の状態が正しいだなんて思っちゃいない。 だからこそ、この前、それとなく人前ではあまりベタつかないように伝えた。 小蒔もそれを了承し、理解してくれていたはずなのである。 しかし… ―― 京太郎「…言ってアレなんですよね…」 まこ「む…ぅ」 小蒔も多少は改善してくれている。 清澄に転校してすぐの頃は俺が怪我をしていたのと同じくらいベッタリだったのだ。 それこそトイレと言っても俺の後ろに着いて来るほどのその姿は、クラスメイトにカルガモのヒナに喩えられたくらいである。 その頃から比べれば、今はトイレにも着いてこないし、廊下での待ち合わせにも応じてくれる。 それを思えば小蒔も大分、改めてくれていると言っても良いはずだ。 京太郎「それに小蒔も長野に来たばかりで不安でしょうし…」 石戸さんたちは転校手続きがまだ終了しておらず、長野にいるのは小蒔だけだ。 だからこそ、唯一知っている相手であり、婚約者でもある俺にベッタリなのもある種仕方のないことなのだろう。 そう思うと正直、あんまり強くは言えず、ここまでなあなあで済ませてきてしまった。 その結果、部長たちに多大な迷惑をかけ、関係をギクシャクさせているのは本当に申し訳なく思う。 京太郎「だから、俺、小蒔に友達を作ってやりたいんです」 とは言え、俺が突き放したところで、小蒔を受け止めてくれる人はいない。 そう思った俺が選んだのは小蒔に俺以外の親しい誰かを作る事だった。 勿論、友達が出来たところで決してイチャつきはゼロにならないだろうが、今よりは状況が改善されるだろう。 何より、周り皆と疎遠なままというのは小蒔にとっても寂しすぎる状況なのだ。 幾ら俺が居るとは言え、進級もすれば修学旅行などの行事もある。 そんな中、一人ぼっちで寂しそうにしている小蒔なんて見たくない。 まこ「ふむ…そりゃあうちに神代さんの友達になって欲しいと?」 京太郎「出来れば…なんですけれど」 そして、それはただのクラスメイトではなく、現在進行形でギクシャクしっぱなしな麻雀部に在籍している人が良い。 その条件に一致するのは世界でたった一人しかいなかった。 つまり小蒔のクラスメイトであり、麻雀部部長である染谷まこ、その人である。 だからこそ、俺はこうして小蒔にも内緒で部長を呼び出し、かなり失礼なお願いをしているのだ。 まこ「うちは構わんよ」 京太郎「ほ、本当ですか!?」 思った以上に色良い返事に思わず俺の声が大きくなった。 その勢いのまま一歩踏み出しそうになるんを堪えながら、俺は胸中で小さくガッツポーズする。 正直、今まで迷惑掛けっぱなしであっただけに断られる事だって考えていたのだ。 その場合、何とか友達を作る手伝いだけでもお願いしようと土下座の覚悟まで決めていたのである。 それらが全て無駄になるという嬉しい結果に思わず笑みが浮かびそうになった。 まこ「ただ…神代さんの方がどうゆうかじゃのぉ」 京太郎「え…?」 その瞬間、齎された部長の言葉に俺は思わずマヌケな声を返してしまう。 そんな俺の前で部長は気まずそうな、複雑そうな表情を浮かべ、視線をそっと彷徨わせた。 普段のしっかりとした部長からはあまり結びつかないその顔に嫌な予感を感じる。 まこ「あの容姿と人当たりの良さじゃけぇの。神代さんは転校初日から人気者じゃったよ」 まこ「じゃが、今は積極的に神代さんに話しかけようとするんは殆どおらん。どうしてか分かるか?」 京太郎「俺の所に来てるから…ですよね?」 まるで子犬のようにポヤポヤとしたオーラを出している上に、整った顔までしているとなれば、そりゃ人気者だろう。 皆が皆、放ってはおけず、色々と世話を焼こうとしたはずだ。 しかし、それらはきっと、休み時間の度に俺の元へと駆け出す小蒔の様子に阻まれ、失われていったのだろう。 自らコミュニケーションを絶とうとする相手に対して、積極的にはなるのは至難の業なのだから。 まこ「うむ。それで皆、おおかた、理解した訳じゃの。『この子は友達作りよりも大事なもんがある』と」 「うちもそうじゃ」と付け加える部長に俺は返す言葉もなかった。 何せ、小蒔がそうなってしまったのは他でもない俺の所為なのだから。 俺がもう少し冷静で慎重であれば、小蒔がこんなにも俺に依存することはなかった。 それを思うと自然と頭が重くなり、俯き加減になってしまう。 まこ「それでも一応、部活の仲間としてうちも話しかけちゃぁいるんじゃが、あまり芳しい結果は得らりゃぁせんでな」 京太郎「そう…ですか…」 気まずそうに言う部長への返事も途切れがちになってしまった。 考えても見れば、先代とは違って、真面目で責任感の強い部長が今の小蒔に対して何のアプローチもしていないというのはあり得ない。 『一応』と前置きしてはいるものの、クラスでも孤立しているであろう小蒔にかなり心を砕いてくれているのはその表情から十二分に見て取れた。 まこ「そう落ち込むの。何もやらんゆっとる訳じゃないんじゃ」 まこ「じゃが、今の神代さんじゃぁ取り付く島がなさ過ぎる。まずはそれを何とかせんと…」 京太郎「分かりました。その辺は俺が何とかします」 石戸さんたちがいない今、その辺りの事をどうこうするのは俺しか出来ない事だ。 それを思えば、俯いている場合でも、落ち込んでいる場合でもない。 励ますように言ってくれている部長の為にも、俺が小蒔の意識を変えるしかないだろう。 まこ「あまり力になっちゃれのぉすまんな」 京太郎「気にしないでください。元々は俺の問題ですし…」 謝る部長に、俺は首を振りながらそう答えた。 そもそも俺がもっと小蒔を突き放す事が出来れば、こんな問題は起こっていないのだから。 しかし、そこまで小蒔を依存させてしまったのは俺の能力の所為であり、またそうやって離した小蒔を受け止める人たちがいないのも俺の所為だ。 あくまで原因は俺にあり、小蒔も部長も悪くはない。 小蒔「京太郎様?」 京太郎「え…?」 瞬間、聞こえてきた声に振り返れば、そこには清澄の制服姿の小蒔がいた。 その手で持つバスケットは恐らく俺の昼食を入れてあるものなのだろう。 それを両手で大事そうに抱えながら、小蒔は俺達に向かって首を傾げていた。 京太郎「小蒔、どうしてここに?」 小蒔「部活の時間でしたので、迎えに行ったのですが、ご母堂様がもう学校に行ったと言われたので…」 疑問に答える小蒔の言葉は俺の迂闊さを伝えるものだった。 下手なことは言わない方が良いと思って、小蒔には何も伝えなかったのが裏目に出てしまったのだろう。 結果、一緒に部活に行こうと俺を迎えに来てくれた小蒔に気まずいところを見られてしまい、不審がられてしまった。 京太郎「(どうやって誤魔化そうか…)」 勿論、ここで説明するという選択肢はない。 誰だって自分の知らないところで勝手に友達になってくれないかと頼まれるのは嫌だろう。 それが親でも微妙な気持ちになるというのに、俺はただの他人なのだ。 ここで説明したところで小蒔の気分を害するだけだし、何より、これから仲良くなろうとしてくれる部長に対してフィルターが掛かりかねない。 そうなれば、二人が本当の意味で仲良くなれるのは当分、先になってしまう事だろう。 小蒔「それで…京太郎様と部長さんは…?」 まこ「うちが部活前の買い出しを京太郎に頼んだんじゃ」 小蒔「あ、そうだったんですか」 それは部長も同じ考えだったのだろう。 それっぽく誤魔化すその言葉に小蒔が無垢な顔で頷いた。 完全に部長の言葉を信じきっているその顔に嘘はなく、そもそもそんな腹芸が出来るほど小蒔は器用ではない。 不器用で素直で頑張り屋な小蒔のその表情に、とりあえずの危機が去った事を悟り、俺は内心、ため息を吐く。 小蒔「では、一緒に行きましょうか」 京太郎「えっ」 しかし、次の言葉に俺は自分の頬が引きつるのを感じた。 何せ、一緒に行くと言っても、部長の言葉は嘘なのだから。 小蒔が一緒に着いてきたところで買うものなんて何もない。 頭の中で備品のリストを浮かべてみたが、今は特に足りていないものはなかった。 まこ「じゃあ、うちも御随伴に与ろうかの」 小蒔「部長さんもですか?」 まこ「うむ。大会前だし、折角じゃけぇ、親睦を深めるんも悪ぅはないじゃろう」 小蒔の疑問に答える言葉はとても自然なものだろう。 ついさっきまで部長と話していた俺でさえ、普通に聞こえるものなのだから。 しかし、さっき部長に一つお願いをした俺には分かる。 部長は俺に気を遣って、こんな事を言ってくれたのだ。 京太郎「良いんですか?」 まこ「うむ」 とは言え、未だに俺は小蒔に何も言えてはいない。 その上、特に買い出しをする必要があるものはなく、一緒にいたところで徒労に終わる可能性が高いのだ。 それなのに、部長としてかなり忙しく日々を過ごしている染谷先輩の時間を取って良いのだろうか。 そう思って尋ねた俺に部長は小さく頷いた。 まこ「たまにゃあ部長らしいところを見せないとな」 そう笑うのは小蒔を誤魔化す為か、或いは本心か。 どちらとも思える俺にとって、それは中々に答えづらいものだった。 染谷先輩が先代部長と自分を比較して色々と気に病んでいるのは伝わってくるのだから。 小蒔のことも先代部長ならもっと早く解決出来たと思っていてもおかしくはない。 まこ「勿論、神代さんが良けりゃあ、じゃが」 小蒔「私は構いませんよ」 部長の言葉ににっこりと笑いながら、小蒔は小さく頷いた。 その和やかな様子からは俺に依存と言って良い程にベッタリしている姿は想像も出来ない。 いや、寧ろこちらが小蒔の本当の姿であり、俺の前にいる彼女の方が異常なのだろう。 少なくとも、俺が最初、出会った頃の小蒔は、激しい執着を示すような子ではなかった。 京太郎「(何とか…してやらないとな)」 そうやって女の子 ―― しかも、とびっきりの美少女に頼りにされるのは嬉しい。 しかし、今の小蒔の世界はあまりにも小さく、視野狭窄と言ってもおかしいくらいなのだ。 それは普通の女の子として見て欲しいと言った小蒔の望みを根本から歪めたものだろう。 それに何より… ―― 京太郎「(きっと…皆はこんな小蒔の姿を望んでいた訳じゃないんだ)」 心配する両親の元へ帰らなければいけなくなった俺に泣きつくようにして離れたくないと言った小蒔。 そんな彼女の望みを叶える為に、石戸さんたちは大人たちへと掛け合い、こうして長野行きの許可をもぎ取ってくれたのである。 それはこうして俺にばかり執着を示して欲しいからでは決して無い。 霧島神宮と永水女子という限られた世界だけではなく、もっと色んなものを見て、感じて欲しい。 そう思ったからこそ、石戸さんたちはあんなに必死になってくれていたのだ。 京太郎「(その為にも…ここでとっかかりくらいは作っておかないとな)」 最初こそ焦りを覚えたものの、今のコレは千載一遇の好機である。 何せ、俺を除けば小蒔に一番近い部長と一緒に買物に出かけられるのだから。 共通の体験と言うのは人に親近感を抱かせるものだと聞くし、ここで二人の距離を縮めるのもきっと不可能ではない。 勿論、すぐさまそれが結実する訳ではないだろうが、このチャンスを作ってくれた部長の為にも、ここは… ―― 【少目標:二人の距離を縮めろ】 【攻略条件:小蒔に友人を作れ】 【中庭】 京太郎「とりあえず…近くのスーパーで良いんでしたっけ?」 まこ「そうじゃな。あそこなら大抵、何でも揃うし」 京太郎「最近はスーパーの品揃えって結構、馬鹿にならないですしね」 京太郎「たまにご当地的なアレとかもあって面白いですし」 京太郎「鹿児島に行った時なんかは軽くカルチャーショックでしたね」 まこ「なんじゃ。そんなに色々あったんか?」 京太郎「えぇ。…でも、ショックだった事しか覚えてなくて具体的に何があったかまでは…」メソラシ まこ「ははっ。痴呆が入るにはまだ早いぞ」 京太郎「えーっと…喉元まで出てるんですが……小蒔、何があったっけ?」 小蒔「えっ、わ、私ですか?」 京太郎「あぁ。小蒔なら分かるかなって…ほら、一番最初にスーパー行った時に俺が驚いてた奴…」 小蒔「えっと…黒糖ジュースの事ですか?」 京太郎「あぁ、それだそれ」 まこ「…黒糖のジュース…じゃと…?」 小蒔「はい。鹿児島では結構、人気なんですよ」 まこ「まったく味の想像がつかんぞ…」 小蒔「黒糖って意外と普通のジュースに混ぜられたりしていますし、悪くない味ですよ」 小蒔「大きく黒糖が表示されているだけでメインの味は梅やレモンですし」 まこ「ほぅ…つまり添加物的なサムシングなんか?」 小蒔「そうですね。とは言っても、しっかり黒糖の味はするんですけれど」 小蒔「沖縄辺りではシークワーサーに黒糖を入れたりするみたいです」 まこ「うぅむ…言われても中々、味の想像が出来ん」 小蒔「それじゃ今度、ご馳走しましょうか?」 まこ「ええのか?」 小蒔「えぇ。家庭で作るのもそれほど難しくありませんし」 小蒔「部室の設備があれば、私でもそれなりのを作れるとおもいます」 まこ「なんじゃ。謙遜か?」 小蒔「いえ、知り合いに黒糖に詳しい子が居て…さっきのも殆どその子の受け売りなんです」 小蒔「それに黒糖ジュースを作るのもその子の方がよっぽど上手ですし…」 まこ「ジュースと言えば、ミキサーに掛けるか搾るかしか思いつかんうちからすれば、作れるだけでも凄いと思うんじゃがなぁ」 小蒔「レシピさえ知っていれば、誰にだって作れますよ」 まこ「ほいじゃあ、今度、レシピも教えてもらって構わんか?」 まこ「常連に出したら気に入るかもしれんし」 小蒔「常連?」 まこ「あぁ、言ってなかったか」 まこ「うちは雀荘を経営しとるんじゃよ」 まこ「と言っても小さなもので、大した設備はないがの」 小蒔「雀荘…」ドキドキ 小蒔「…」チラッ 京太郎「あー…今日の帰りにでも一緒に行ってみようか」 小蒔「良いんですか?」 京太郎「良いんだよ。たまにはお袋にも仕事させないと腕が鈍るし」 京太郎「それに小蒔は雀荘初めてだろ?」 小蒔「は、はい。実は…そう言ったところには近づけて貰えなくて」カァ 京太郎「はは、石戸さんたちは過保護だからな」 京太郎「でも、部長のとこはノーレートでお客さんも良心的だ」 京太郎「知り合いが経営してるってなると石戸さんたちも許してくれると思うし…今の内に下見しておこうぜ」 小蒔「はいっ」ニコッ 京太郎「(部長の話の持って行き方は上手いな…)」 京太郎「(多少、援護したとは言え、小蒔を雀荘へと呼びこむ道筋をほぼ一人で作り上げた)」 京太郎「(流石に先代部長みたく口八丁手八丁で誤魔化すタイプではないにせよ…記憶力も思考力も凄い人なんだ)」 京太郎「(元々、小蒔と話す機会があまりなかっただけで、少し腰を落ち着けさせれば、俺の助けがなくてもこれくらい出来たんだろうな)」 京太郎「(しっかり者とおっとり天然系のペアなんだから、相性が悪いって訳じゃないだろうし)」 京太郎「(何にせよ…小蒔が雀荘に興味を向けたのは有難い)」 京太郎「(麻雀の特訓って名目で俺が小蒔を誘う事も出来るし、二人の間で共通の話題も作りやすい)」 京太郎「(忙しい部長の余暇を邪魔しないって辺りもプラスに考えられるな)」 京太郎「(だけど…今、二人の間に生まれたのはあくまでとっかかりだけ)」 京太郎「(まだそれが芽吹くような時ではないし…ここはもうちょっと話題を提供するべきだろう)」 京太郎「(さて…それじゃ…次の話題だけれど…)」 小蒔の好感度【3/20】 【往路】 京太郎「そういや小蒔はこっちでちゃんと勉強についていけてるのか?」 小蒔「だ、大丈夫ですよ」 京太郎「本当か?部長、授業中寝てたりしてません?」 まこ「…ぅーん…言ってええものか悪いもんか…」 小蒔「そ、そんなに寝てませんよ!!」 京太郎「…ってことはちょっとは寝てるのか」 小蒔「う…そ、それは…その…」カァ まこ「まぁ、稀に良く起こされとるのを見るのぉ」 小蒔「だ、だって、京太郎様が…その…」 京太郎「こ、小蒔!?」 まこ「ほぅ…詳しく聞きたいのぅ」キラン 京太郎「ちょ、部長もそこは乗らなくて良いんですってば!?」 まこ「いやーうちも部長として部員が不純異性交遊やってないか気にならん訳じゃないし」 京太郎「(寧ろ、超不純だから困ってるんですってば!!!)」 京太郎「そ、その…小蒔?」 小蒔「そうですよ!聞いて下さい!」 まこ「うむ。この際じゃ、全部言ってしまえ」 小蒔「京太郎様ったら酷いんですよ!私の方が先に寝ちゃダメなのに、ずっと起きてるんです!」 まこ「…ん?」 小蒔「それどころか腕枕や子守唄まで歌って、私を眠らせようとしてくるんですよ!」 まこ「んん?」 小蒔「その上、頭をポンポンって優しく撫でられると…もう…耐えられません…」カァァ 小蒔「大抵、その辺りで私の方が先に寝ちゃって…京太郎様に寝顔を見られちゃうんです…っ」 小蒔「妻たるもの夫より後に寝て、先に起きなければいけないというのに…京太郎様は本当に意地悪で…」モジモジ まこ「…惚気にしか聞こえない訳じゃが?」 京太郎「お、俺に言われても困りますってば…」 まこ「と言うか、何でそこまでして神代さんを眠らせようとするんじゃ?」 京太郎「いや…だって、その…俺より後に寝ようとして目の前でうとうとしても起きようとするんですよ?」 京太郎「我慢し無くて良いって言ってるのに全然、譲りませんし…眠らせるしかなくてですね」 まこ「はいはい。惚気はもうお腹一杯じゃ」 小蒔「そうやって京太郎様が意地悪するから、私も昼間に寝て夜に備えようとするんです!」 京太郎「俺の所為か?」 小蒔「ぅ…」 京太郎「…本当に俺の所為なのか?」 小蒔「うぅぅ…」 京太郎「…小蒔、本当にそれが本心なんだな?」 小蒔「う、嘘です…私が変に意地を張っちゃうから、夜遅くなって授業中に寝ちゃうんです…」 京太郎「よしよし…正直な小蒔にはご褒美をやるぞ」ナデナデ 小蒔「あっ…えへへ…♥」 まこ「(アカン…また置いてけぼりくらい掛けとる…)」 まこ「まぁ、そろそろテストも近いし、わからんところがあるなら教えるぞ」 小蒔「え…でも…」 まこ「うちも復習ついでに色々と見直したいし、神代さんさえ良ければ、勉強会やらんか?」 小蒔「…京太郎様…」チラッ 京太郎「一々、俺に伺いを立てなくても大丈夫だって」 京太郎「小蒔の成績が落ちるのは俺も望むところじゃないし、色々と教えて貰って来い」 京太郎「部長の教え方は上手だから、絶対やってもらった方がお得だから」 まこ「またそうやってハードル上げよる…」 京太郎「さっきのお返しですよ」 小蒔「じゃあ…その…お世話になっても良いでしょうか?」オズオズ まこ「構わん構わん。と言うか、もっと図々しいくらいで良いんじゃぞ」 まこ「うちの部活は我が強いのばっかりじゃし、うちもそれに慣れとるからな」 小蒔「え、えっと、それじゃあ…お、教えろ下さいませ」グッ まこ「…」 京太郎「…」 小蒔「え…あ…だ、ダメでしたか…?」カァァ まこ「京太郎、何処でこんな可愛い子捕まえたんじゃ」 京太郎「鹿児島ですってば。つか、捕まえたとか人聞きの悪い事言わないで下さい」 小蒔「で、でも、私は身も心も京太郎様のモノですから!」グッ 京太郎「はは、そうだな。そういう意味じゃ捕まえたのかもな」 まこ「はいはい。惚気はそこまでじゃ」 まこ「そろそろスーパーじゃし、イチャイチャはほどほどにの」 京太郎「(さて…おまちかねのスーパーなんだけれど…)」 京太郎「(ぶっちゃけ買うものは決まってない)」 京太郎「(行き当たりばったりの状態で来ただけだからなぁ…)」 京太郎「(勿論、無理に買うものをひねり出そうと思ったら出来なくはないんだけれど…)」 京太郎「(二人の話題に繋げられるもの…となると中々、思いつかない)」 京太郎「(さて…どうするべきかな…)」 小蒔の好感度【6/20】 【スーパー】 京太郎「とりあえずスーパーと来たらお菓子とジュースだろ」 まこ「定番じゃな」 京太郎「ふふふ…しかし、今日の俺は一味違いますよ」 京太郎「俺が選ぶのは普通のお菓子じゃない…!こっちの駄菓子コーナーだ!!」ババーン 小蒔「わぁ…充実してますね」 京太郎「ふふふ…五円チョコやよく分かんないゼリー、紐の先についたよく分かんない飴まで完備してあるぜ…」 まこ「毎回思うがここのラインナップは異常やの」 京太郎「俺としてはこういうのを売ってる場所が近くからなくなっちゃったんで嬉しい限りなんですけどね」 小蒔「懐かしい…昔、霞ちゃんと一緒に買い食いしてたのを思い出します…」 まこ「お、神代さんは意外とワルだったんじゃな」 小蒔「えへへ…社会に反抗してみたい年頃だったんです」 まこ「となると…結構、駄菓子に好みとかあったりするんか?」 小蒔「勿論、ありますよ」 小蒔「私はこの小分けになった小さなおもちみたいな奴が好きでした」スッ まこ「あー、食感とかかなりええもんな。ちなみに何味じゃ?」 小蒔「色々と食べましたけど、ソーダ味が一番だと思います」グッ 京太郎「ソーダ味かぁ、俺はコーラ派だったなぁ」 まこ「男の子は意外とコーラ派が多いイメージじゃの」 小蒔「ソーダ味も美味しいのに…」シュン まこ「まぁまぁ。どうせだし、二つとも買ってしまおう」 小蒔「…ちなみに部長さんは何派ですか?」 まこ「うち?結構、色んな味を節操無く食っとったからなぁ…」 まこ「ただ、至高の駄菓子は酢昆布じゃと思う」 まこ「お茶と一緒に食べた時にじわぁっと広がっていく味が最高じゃ」 京太郎「あーそういう食べ方してるの俺だけじゃなかったんですね」 小蒔「え…わ、私、したことありません…」 まこ「ふむ、それじゃついでじゃし、酢昆布も買っていくか」スッ 京太郎「…なんで鷲掴みしてるんですか?」 まこ「だ、だって…こうして駄菓子食べるのとか久しぶりなんじゃもん…」メソラシ 小蒔「ず、ズルいです!それじゃ私も…」スッ まこ「ふふふ…どんどん買っちゃってええぞ。何せ全部、部費で落とすからな!」 京太郎「まぁ、所詮、駄菓子ですし、そこまで高い事にはならないと思いますけど…」 まこ「あ、たこせんじゃ。これは外せんじゃろ」 小蒔「ブタメンさんは三個ですよね。あ、こっちにはよっちゃんイカがある…」 京太郎「……あ、一口サラミあるじゃん。これは束で買うべきだな」 まこ「たらたらしてんじゃねーよはお徳用より小さい奴が美味しいと思う」 小蒔「ヨーグルさ~んっ♪あ、いました」 京太郎「うまい棒は明太味は至高。異論は認める」 ……… …… … レジの子「はい。お会計1988円になりまーす」 まこ「…はい」 レジの子「有難うございましたー。またお越しくださいませ」 京太郎「…あの」 まこ「何も言うな…今は何も言わないどくれ…」 小蒔「…思ったより高くつきましたね」 京太郎「子供の頃とくらべて金銭感覚違ってるからな…」 まこ「調子にのった所為で普段よりも高くついとる…」 京太郎「っていうか、流石にこのサイズの袋二個はちょっと…」ガサッ まこ「すまん…すまん…」 小蒔「ぶ、部長さんは悪くないですよ!?」 京太郎「そ、そうですよ!別に全然、重くないですし」 小蒔「それに調子に乗っちゃったのは私達も同じなので…」 京太郎「部長だけそうやって落ち込まれるとこうこっちも…」 まこ「いや、普段ストッパーを自負しとるのに、これはちょっとって思ってな…」 まこ「大人げないところを見せてすまんな」ペコリ 京太郎「誰だってテンション上がり過ぎちゃう時くらいありますって」 小蒔「それに私も同じようにはしゃいじゃってたんで大人気なかったのは私も同じで…」ズーン まこ「あぁ!す、すまん…!そういう意味じゃ…!!」アセアセ 京太郎「こ、小蒔はそれで良いんだって!そんな小蒔が可愛いんだから!!」 京太郎「(まぁ…そんなトラブルがあったものの…スーパーでの買い物は終わった)」 京太郎「(ちょっと慌ただしかったけれど、まぁ、それも青春ならでわの楽しいイベントだろう)」 京太郎「(それにドタバタしすぎて、駄菓子を買う程度じゃ俺を呼んだりしないって意識が小蒔に芽生えた気配はない)」 京太郎「(どうなる事かと思ったけど…一安心みたいだな)」 京太郎「(さっきも部長に自分から話しかけたりしていたし…少しずつ二人の距離は埋まっているみたいだ)」 京太郎「(思ったより順調だし、とっかかりそのものも増えていってる)」 京太郎「(このまま行けば、二人が友人になれるのも思ったより遠い事じゃないのかもしれない)」 京太郎「(さて…その為にもここを頑張らないとな)」 京太郎「(買い出しイベントの最後…復路だ)」 京太郎「(ここでどんな話題を触れるかで…このイベントの印象が大きく違うぞ)」 京太郎「(出来るだけ二人が仲良くなっている事を印象づけられるような…そんな話題)」 京太郎「(それを振る事が出来れば…もしかしたら…)」 小蒔の好感度【10/20】+お前らの駄菓子ボーナス(6) 【復路】 京太郎「いや…にしても良かったよ」 まこ「何がじゃ?」 京太郎「部長と小蒔が仲が良いっぽくて安心したんですよ」 京太郎「一緒のクラスなのにあんまり部活で会話したりはしませんでしたし」 まこ「そうじゃな。ちょっと部長としては新入部員に対して疎かだったのは否定出来んの」 小蒔「そ、そんな事ありませんよ!」 小蒔「だって…部長さんは良く私に話しかけてくれているじゃないですか」 まこ「それでもちょっとぎくしゃくしとったのはうちの不徳と言う奴じゃろ」 まこ「うちは部長なんやけ、神代さんの事もちゃんと見とかへんかったらいけんのに…出来とらへんからの」 小蒔「部長さん…」 まこ「ただ、折角じゃし、もうちょっと色々仲良くしたいのは事実じゃ」 まこ「部長としてだけやなく…クラスメイトとしても…な」 小蒔「…ごめんなさい」 まこ「いや、別に責めてる訳やないんや」 まこ「恋に一生懸命なのに共感出来るとは言えんでも、理解できない訳やないし」 まこ「ただ、もうちょっとうちの事にも構ってくれると嬉しいと言うか…」カァ 小蒔「あの…良いんですか?」 まこ「ん?」 小蒔「だって、私、今まで部長さんの誘いを断ってばっかりで…」 小蒔「お昼だって一緒に食べた事ないのに…」 まこ「そんなん後でどうとでもなるやろ」 まこ「別に友達やったら満たしてへんかったらあかん条件ってのがある訳やないし」 小蒔「…友達…」 まこ「そ。友達。うちの友達になってくれへん?」 小蒔「…本当に良いんですか?」 まこ「良くなかったらあんな恥ずかしいセリフ言えんって」 まこ「というより…あんな恥ずかしいセリフをうちに言わせたんやから、なってくれへんと困る」 小蒔「…部長さん…」 まこ「部長やなくて、染谷でどうじゃろ?」 まこ「他の皆にはちゃんと部長って呼んで欲しいけど、神代さんだけ特別って事けぇ」ニコッ 小蒔「…京太郎様…」チラッ 京太郎「もう…一々、俺の事なんて気にするなよ」 京太郎「大事なのは…小蒔がどうしたいかだろ」 京太郎「俺は小蒔が友達作ったからって嫉妬するほど狭量な男のつもりはないぞ」 小蒔「…あ…その…えっと…」 まこ「決めらりゃあせんのじゃったら、保留でええよ」 まこ「うちも今すぐどうこうってのを考えとる訳じゃないし」 まこ「神代さんがうちと仲ようなれそうじゃゆぅて思うた時にそう呼んでくれりゃぁ、それでええ」 小蒔「部長さん…」 小蒔「あの…私…友達ってもっと劇的な何かがないとダメだと思って…だから…」 小蒔「わ、私、お友達って言えるような人いないってずっと思ってて…あの…」 小蒔「…もうちょっとだけ…待ってもらえますか?」 小蒔「い、今までそんな事考えたことないから…その…凄い混乱しちゃってて…」 小蒔「嬉しいのは確かなんですけど…でも…あの…」 小蒔「嬉しすぎて夢じゃないかって思ってるくらいで…私…」ジワッ まこ「…京太郎」 京太郎「はい。…小蒔」スッ 小蒔「あ…ぅ」 京太郎「ゆっくりで良いんだよ。小蒔のペースで…小蒔らしい速度で良いんだ」ナデナデ 京太郎「俺も部長も…一々、急かしたりしないさ」 京太郎「だから…一緒に色んな事やって…頑張って行こうぜ」 京太郎「部活も勉強も…友達作りもさ」 小蒔「私に…お友達…作れるんでしょうか…」 京太郎「そんな風に怯えなくても、小蒔なら作れるって」 京太郎「手始めに…他の部活の皆に話しかけてみようぜ」 京太郎「皆、気の良い奴だから、小蒔が話しかけたらきっと応えてくれるさ」 小蒔「…はい…っ」 【System】 少目標を達成し、神代小蒔と染谷まこの距離が縮まりました。 好感度がMAXになり、小蒔の意識が変わって、攻略条件を達成しました。 小蒔の依存度は薄れつつあるようです。 [[前話>おもち少女7-2]] [[次話>おもち少女9]] #comment

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