『次は――駅、――駅』 「んぁ……」 どこかの駅に着くのかスピーカーから声が聞こえてくる。 その声に起され京太郎は目を覚ました。 手を上に上げぐぐーと伸ばすと一息つく、辺りを見渡すが自分以外の客はいなかった。 どのぐらい寝ていたのだろうか。 (ここどこだろう) (その前になんで俺は電車に乗っているだろう) とりあえず次の駅に着いたら降りてみよう。 そう思い忘れ物が無いかを確認し扉が開いたのと同時に降りた。 「……大阪?」 目の前の景色はテレビなどでよく見かける大阪の風景だった。 はて……何時の間に自分は大阪に住んでいたのだろうと首を傾げる。 思い出そうとするも何故か思い出せない。 暫く考え、電車で寝過ごして大阪に居るのだから大阪に住んでいるのだろうと 結論にたどり着き大阪の街へと足を進めた。 -少年移動中- 誰も居ない街を歩いていると目の前に行き倒れている少女に出会った。 しゃがみ込み顔を覗くと目が合う。 「最初に出会った住人が行き倒れってどうなんだろうな」 『……出来れば助けて欲しいんやけど』 「それもそうだな」 京太郎は少女を抱きかかえると近くのベンチへと連れて行く。 相変わらず人はいなかった。 「はぁー助かった、ありがとな」 「いえいえ、どういたしまして」 ベンチに寝かせ近くにあった自販機で水を購入し少女に与える。 ごくごくと美味しそうに水を飲み干した。 よほど喉が渇いていたのだろう。 「遅れたけど私は園城寺 怜や」 「須賀 京太郎です、園城寺さん」 どうやら少女の名前は園城寺 怜 というらしい。 どこかで聞いた名前だなと思うがやはり思い出せなかった。 ただ…… 「かっこいい名前ですね」 「よー言われるわ」 あと怜でええよとそう言って彼女は笑った。 笑った顔はひまわりを連想するような綺麗な笑顔で暫くの間見惚れてしまった。 「それにしてもここは何処何やろな」 「……大阪じゃないんですか?」 「こないな大阪見たことないで」 自分より大阪人ぽい彼女が言うのだからここは大阪ではないのだろう。 それでは何処なのだろうかと二人揃って首を傾げた。 「とりあえず移動しますか」 「それがええな」 そう言って京太郎は立ち上がったが怜は何故か立たなかった。 不思議そうに怜を見つめると、んっと言って両手を差し出してくる。 暫く手を見つめていた京太郎だったが怜の意図に気づき苦笑した。 しょうがないので怜に背中を向ける。 その動作を待ってましたとばかりに怜は背中へとおぶさる。 「誰も居らんなー」 「んー俺たち以外に居ないってのは異常ですね」 怜をおんぶしながら街を練り歩くも異様な静けさを保ちながら人っ子一人いない。 本当に自分達以外に人が居ない様だ。 「何か思い当たる事ありませんか?」 「そやなー」 怜は京太郎の背中でのんびりしながら考え出した。 その間も京太郎は歩き続ける。 5分ぐらい経った時だったろうか。 怜があっと声をだした。 「何か思い出しましたか?」 「そういえば電車乗ってたなーと」 「怜さんも?」 「京君も?」 ピタリと立ち止まりお互いに顔を見合わせる。 おんぶしながらの為、顔の位置は近い物になった。 暫く見詰め合ってた2人だったがお互いに顔を赤くして視線をそらす。 「え、駅に行ってみましょう」 「GOや!京君」 「……自分では歩かないのね」 2人が駅にたどり着くとそこに電車が止まっている。 京太郎が乗ってきた物だろうか。 2人がそれに乗ると… 『次は―白糸台―白糸台』 アナウンスが流れ電車が動き出す。 「どうなってるんだ(や)」 唖然とする2人を他所に電車はぐんぐんと速度を上げていった。 カンッ!