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草木堂書店 WEB版「泥花-でいか」へ、ようこそ

この頁に、過去に「泥花」を始め、各誌に掲載したコラムを集めてみました。

【泥花コラム】バックナンバー
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趣味の古本屋


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 開店当初、先輩の古本屋さんに、どんな店にしたいのか聞かれ、「いつも花を絶やさない店にしたい」と答え、笑われた事があった。
「そういう時は、社会科学中心にとか、文芸書ですとか、美術を、とか答えるものだよ」 しかし今思えば、この先輩の次の一言で、当店の方向は運命づけられたようなものだ。
「この店は造りが粋だから、(私の入る前はブティックだった)趣味本を集めたら、きっとお客が付くよ」
『趣味の古本屋』何と心地良い響きであろうか。ああ、しかし、店主の思いは空回り、草木堂は今だに冴えない「街の雑本屋」。企業努力の欠如!分かっているんです。

 満員電車と混んだ銭湯が嫌いで古本屋になった、という不純な動機を持つ私だから、市場から展覧会へ、そして郊外を回っての
セドリと、身を粉にして働く訳もない。朝は陽が高くなってから起き出し、FM放送を聞きながら[ブランチ]をとる。要するに一食浮かす。店に出たら出たで、本や雑誌を整理と称して読み耽って、一人悦に入っている。こんな自由で快適な事をしていて、お金が入る訳ないね。

 先日、岩波書店の「図書」の1月号を「整理の為」めくっていて、芳雅堂、出久根達郎さんがエッセイを書いておられるのを見つけた。
 いつもながらの薀蓄は「饅頭本」についてであった。和菓子の「塩瀬」の先祖が奈良時代に出版したという「饅頭屋本」ではなく、亡くなった方を追悼して出版される本の由。小部数自費出版のこの種の本を、古本屋の符丁で何故かマンジュウという。まあ通常身内以外には意味ない本だ。
 ところが、この饅頭本に、意外な作家が序文を書いていたり、故人の日記に著名人が登場したり、案外資料的価値が有るものがあるという。出久根さんの書物の細微にこだわる姿勢にプロの凄みを見た。

 よし、いい事を聞いた、これからは注意を払っていくぞ、と意気込んでいたら、何と同じ日に、馴染みのチリ紙交換の人が車一杯本を持ち込んできた。ほとんどが、参考書やマンガ、文庫の値にならないクズ本だったが、その中に何冊も件の饅頭本が入っていたのである。何という偶然、何たる奇縁。普段なら見過ごしているのだが、「図書」の記事にすっかり影響されて、勇んで買ってみた。
 捌きながら本の背を見ていて唖然とした。事もあろうに「小野教授饅頭」という饅頭本があるではないか!粋と言おうか、不遜な弟子共と言うべきか。いやはや愉快だ、珍本発見だと、一人ほくそ笑みながら、函から本を出して見返しをめくったら、達筆な題字は「小野教授餘韻(よいん)」。
 本の背に金文字の書名は、崩し字で印刷されていて、思い込みの激しい私は[餘韻]が[饅頭]に読めてしまったのだった。

 今年になって、やっとワープロや編集に慣れて自家目録も軌道に乗りかかってきた。どうせなら店の在庫も「泥花」に載せられるもの、という事になってきて、マンガや月遅れの雑誌などは扱わない事にした。その代わり、古い旅行案内や絵葉書、千代紙などを置き始めた。初心に帰り「趣味の古本屋」に向けてスタートを切ったのである。

 そんな意気込みのせいか、業界内でも、当店は「趣味の古本屋」と言われ始めているらしい。すっかり嬉しくなって、親しい本屋さんに話したら、
「馬鹿!遊び半分でやっている古本屋だって、言われてるんだよ。趣味の本を扱う本屋じゃなくて、趣味でやっている本屋って意味だよ。」
 冗談じゃない!真剣にやっているんだ、という証拠に最新の「泥花」を見せた。
「頑張ってるじゃないか」という感想を期待していたが、ざっと目を通して彼は言った。

「趣味の目録だね」                餘韻・・・・・
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孤狼(古老)の市場綺譚(序)
雪隠聞書 [ゆきがくれ ききがき]

■序章=夜飲の歓談(やいんのかんだん)


 私が古書組合に入りました折には、翁はすでに雪深い地方都市に隠遁されておりました。駆け出しの私が、「市場の孤狼」と異名とる、伝説の「経営員」の翁の元に度々訪れ、後世に残すべき翁の遺訓をこうして記録するに至ったのは、もう四年前にもなりましょうか、ある市会の大市の打ち上げ慰労会に袖がテカテカに光ったジャカパーを身に纏った、痩躯の老人が紛れ込んできた事に端を発しているのであります。

「現在の市会の会長の同期」という紹介があり、壇に立たれたのが、その御老体で、尾羽打ち枯らした姿に、誰も憐憫の情を持ちこそすれ、尊敬の念を抱くといった雰囲気には到底なれませんでした。翁は「会長の召喚により、いささか市場の経営員(市場を運営する係)の心構えや、古本屋としてのあるべき姿などの指針を話しに参った」と前置きし、30分程話された。

 私にとっては幾つかの膝を打つ箴言を伺う事ができたと感激したのだが、回りの同僚若手からは、「時代が違うんだよな」とか「年寄りの自慢話かよ」、挙句は「あいつ、まだ生きてたのかよ」
などというひそひそ話が聞こえてきた。確かに翁の全盛の時代は高度成長期からバブル期の頃で、その頃の市場の規律や問題点、そのなすべき行動規範を現在にそのまま敷衍されたのですから、古本屋の存在の危機とまで囁かれている昨今、、日々どん詰まりのような売上の中でもがいている若手には(何せ本が売れた時代を知らないのですから)反発しか起こってこないのも、当然であったかも知れません。

 宴が終わり、翁が席を立たれる際、私はお側に近づき、貴重な訓話に対して感謝の意をお伝えし、心ない同僚の陰口をも詫びました。翁は歯のない口を開けて、快活に笑われ、「もう二度と皆さんの前には現れないだろうよ」とおっしゃられ、
 「今は古書の氷河期、人類の開闢以来の知的財産、先人の熱い思いも白く冷たい雪に覆われ隠されている。しかし、書物、「知」が無くなった訳ではない。わしの拙い経験から導き出された規範も純白の真実である。その白さの故、皆には見えないのであろうが、いつか雪が溶ける日もあろう。その時、きっと白い真理が知の平原に光輝くであろうよ」
 といった意味の事(勿論訥々と語られたのではありますが)を語られました。

 私は会長が翁を遠路東京まで呼び寄せ、我々に理解させたかった中身をもう少し知りたくなり、実家が丁度、翁の移住された町、という奇縁もあり、菓子折など持参して翁を訪ねる事にしたのである。

 翁は実は、出家され、廃寺のような崩落寸前の山寺に住んでおられた。さすがに元古本屋で、庫裏には背丈を越す書物が積まれ、その山脈のむこうから、私の訪問を大変喜んでくだすった。
 歯の不自由な翁にはいいだろうと持参した、生シュークリームをお渡しすると、「女子供の食する西洋菓子か。まあ寺に近所の子供らも来るから、あれらに食べさせようか。みやげなど気を使うな、まあ今度は酒の一本でも下げて参れ、一献酌み交わそう」とおっしゃられ、私は赤面の至りだった。

 しかし、翁の古書市場や経営員の心得などの聞書をしてみたいと、お伝えすると、「講演などで、分かって貰おうというのがどだい無理じゃな。文字に書き残しておくのは、あながち無意味な事ではないかも知れないな」受け入れて下さったのでした。
 その第一回は、古本屋必携四請願と後に呼ばれる、次の4つの心得だったのであります。

一、古本道に於いて、おくれ取り申すまじき事。
一、読書子、研究者の御用に立つべき事
一、諸先輩、親に孝行仕るべき事
一、大慈悲を起こし、周圍の人、後の人の為になるべき事

明日は無き身と覚悟し、日々この四請願を心に念じ、一歩一歩尺取虫のように、先ににじり進むべきものが、古本屋である。と申されました。
 この度不肖わたくし、翁の「遺訓」に 【雪隠】という名を冠し、長く後世に伝えんとするものであります。

次回から、具体的な生き方についての道話を記して参る積りです。拙い文章にて、正確に翁のご意思を伝える事ができますか、不安もありますが、翁の人柄も併せて記して、人間味溢れる聞書になればと念じております。是非ご一読くださいますよう、伏してお願い申し上げます。

 追記。最初の訪問日、今にも振りそうな空模様で、折り畳み傘を持参していたのを翁の居間に忘れ、山門から引き返して、玄関でその旨声をかけましたら、翁は親切にも傘を持って出て来られました。その時、翁の口の回りには、白いクリームがべったりと付いておりました。
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◆返品について:
商品説明になき、痛み・落丁等こざいましたら、御返送下さいませ。美醜に関しましては、個人差もあり、出来うるかぎり詳細に記載いたしますので、どうか御容赦下さいますように。
◆コンディションは(3000円以上の古書に関しましては)
●極美-美[上-中-下]-並[上-中-下]-[やや難あり]-[難あり]の9段階に設定しております。
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