日本航空ボーイング747型機墜落事故最終調査報告要旨 (読売新聞87年6月20日) 


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日本航空ボーイング747型機墜落事故最終調査報告要旨 (読売新聞87年6月20日) 

「事故調査の経緯」を除き抜粋

事実を認定した理由

【後部圧力障壁破壊のための解析のための試験実験】

 後部圧力隔壁のL18接続部には、電子顕微鏡による観察によって、多数のリベット孔縁より疲労亀裂が発生しているのが認められた。L18接続部は、大阪国際空港事故(五十三年六月二日)による損傷修理の際、新旧の圧力隔壁構成品を結合した。この結合部分は、二列リベットによる結合と、一列リベットによる結合の二種類の結合方法になっていた。(図1、2)
 この結合方法の異なる両者の疲労亀裂群の進展を解析により比較検討。解析においては、与圧装置の最大運用客室差圧設定値八・九PSiが一飛行に一回付加されるとして計算した。(一PSi=一平方㌢・㍍当たり0.0七㌔・㌘の圧力)
 疲労亀裂の進展のみに注目すれば、一列リベットの場合の疲労亀裂は二列リベットの場合と比較し、二倍強の速さで進展する(別の解析個所では、本来の接続方法に比べて強度が70㌫に低下した、と指摘)。

【破壊順序の推定】

 疲労亀裂の解析結果など並びに残がいの破壊の様相から、後部圧力隔壁の破壊順序は次のように推定される。
 (一)ベイ2とベイ3は一列リベット結合であったため、大阪国際空港の損傷修理後、比較的早い時期にリベット孔に疲労亀裂が発生し進展を始めた。また、第一ストラップ、第二ストラップ及び、第三ストラップに重なる部分のウェブにあっても、そのリベット孔に疲労亀裂が発生した。(ベイ・ストラップとスティフナで囲まれた区域)
 (二)ベイ2とベイ3におけるリベット孔からの疲労亀裂進展に伴い、二列リベット結合であるベイ1とベイ4においても、二列打鋲(だびょう)の上側に位置するリベット孔縁に疲労亀裂が発生・進展した。
 (三)疲労亀裂を有するベイ2が、推定客室差圧八・六六PSiを受けて破断。
 (四)ベイ3は疲労亀裂が集中している外航側部分から破断が始まり前面破断。
 (五)第二ストラップが破断し、続いてベイ1、及びベイ4が破断。次に第一ストラップ、第三ストラップ、第四ストラップ、ベイ5及びL18スティフナも破断。すなわちL18接続部は前面に渡って破断した。
 (六)L18接続部が上下に分離すると、コレクタ・リングと結合している部分の上側ウェブが破断し、この破断はR6スティフナ、及びL2スティフナに沿って進行した。一方外舷側Yコード(固定金具)と結合している部分の上側ウェブも破断し、後部圧力隔壁の上部が部分開口した。

【目視点検による亀裂の発見について】

 事故機の後部圧力隔壁L18接続部のリベット孔縁の疲労亀裂に対する点検整備時の目視点検でどの程度の長さの亀裂まで発見できるかについては、亀裂の長さ・形状と発生部位、点検のための接近性の程度、塗装/汚れの有無、点検従事者の経験と能力と種々の要因が関与する。L18接続部の疲労亀裂データから、本事故前の五十九年度十二月のC整備時の疲労亀裂は、長いものでは、リベット孔両側平均で10㍉・㍍程度であったと推定される。可視亀裂長さ10㍉・㍍程度の一つの疲労亀裂の発見確率は、10%程度と計算された。L18接続部で進展していた多数の疲労亀裂のうち、少なくとも一つを発見できる確率は 14~60%程度と計算された。

【L18接続部の疲労亀裂の進展】

 L18接続部のリベット孔縁には、疲労亀裂が多数発見された。電子顕微鏡による観察から、これらの疲労亀裂進展に要する内圧の負荷回数は一万回程度と推定され、これは、五十三年に行われた後部圧力隔壁の修理後の飛行回数一万二千三百十九回とほぼ一致する。このことから、L18接続部の疲労亀裂は隔壁の修理直後から発生し始め、事故直前には約半数のリベット孔縁に、累計長さ約二百八十㍉・㍍に達していたと推定される。L18接続部の破断の結果生じた後部圧力隔壁の開口面積は二~三平方㍍程度と推定される。
【APU防火壁を含む尾部胴体の損壊】
 客室与圧空気は、後部圧力隔壁の開口部分から後部胴体内に衝撃波を伴って流出したと考えられている。(APU=補助動力装置)
 (一)プレッシャー・リリーフ・ドア
このドアは墜落現場付近で発見された。ドアは、差圧一・〇~一・五PSiで開口するように設計されており、またドアの損傷状態からも開口した可能性が高いと推定される。このドアが開口したとしても、その開口面積は後部圧力隔壁推定開口部からの流出空気を機外に放出するに十分な面積ではなく、尾部胴体内の圧力は急激に上昇したと考えられる。
 (二)APU防火壁付近の損壊
尾部胴体内の急激な圧力の上昇により、APU防火壁はその後方に位置するAPU本体を含む構造とともに脱落したものと推定される。

【垂直尾翼の損壊】

 プレッシャー・リリーフ・ドアが開口し、APU防火壁が破れて尾部胴体後部から外部へ空気が流出しても、なお尾部胴体前部及びこれと通じている垂直尾翼の内部の圧力は上昇し、圧力が四PSi程度上昇したときに垂直尾翼の破壊が始まったと推定される。引き続いて主要構造部材の破壊、方向舵(だ)の脱落などが生じたと考えられるが、その破壊過程の詳細を特定することはできなかった。

【操縦系統油圧配管の損壊】

操縦系統油圧配管の方向舵への配管は、(後部)胴体から垂直尾翼内の後面に沿って垂直安定板の上方へ配管されていることから、異常事態発生後の主要構造部材の倒壊及び上下方向舵の脱落に伴って四系統の油圧配管は破断し、作動液が失われたと考えられる。
【事故機のフェール・セーフ性についての解析】
ボーイング747型機においては、前脚を除くすべての主要構造部分はフェール・セーフの考えを適用して設計されている。事故機では、五十三年に行われた修理の際、後部圧力隔壁ウェブ結合部の一部が一列リベットで結合されているという、指示とは異なった不適切な作業が行われた。このような事故機のフェール・セーフ性について検証する。
▽後部圧力隔壁のフェール・セーフ性の検討
 (一)後部圧力隔壁は、いわゆる1ベイ・フェール・セーフという概念で設計されている。これはウェブに亀裂が発生しても、亀裂の進展が1ベイの中にある間に発見でき、修理することを前提とした設計である。1ベイ・フェール・セーフの概念では、いくつかのベイで亀裂が同時発生し進展する場合は想定していない。同機の隔壁設計においては、1ベイにわたる亀裂がウェブにある場合について、予想される最大客室与圧(九・四PSi)をフェール・セーフ荷重として受け止めるものと考え、解析によって残留強度を確認している。
 (二)事故機では、大阪国際空港事故の損傷修理後の運航によって、一列リベットで結合されたL18接続のベイ2ベイ3を中心にして疲労亀裂が多数発生し進展した。このような状況は、前述したように1ベイ・フェール・セーフという設計概念では想定していないものであった。事故機の疲労亀裂は小さく、また、ウェブの重なったところのリベット孔をつなぐ形で進展していたために、目視点検や空気漏れでは発見しにくく、亀裂が1ベイにあるうちに発見して修理するという1ベイ・フェール・セーフ概念の前提が崩れることになったと考えられる。
▽尾部胴体構造及び垂直尾翼のフェールセーフ性の検証
 (一)後部圧力隔壁の一部が損壊し与圧空気が流出すると、尾部胴体前部及び、垂直尾翼の内部の差圧が一・〇~一・五PSi以上に上昇することがないようにプレッシャー・リリーフ・ドアが自動的に開き、空気を放出することによってフェール・セーフ性を確保する設計となっている。このリリーフ・ドアの開口面積(約〇・四九平方㍍)は、後部圧力隔壁の1ベイの区画全体(最大約〇・一四平方㍍)が開口しそこから与圧空気が流出しても、差圧が一・五PSi以上には上昇しないために必要な面積になっている。
 (二)しかし、事故機では後部圧力隔壁が二~三平方㍍程度開口したと推定され、前述したリリーフ・ドアが開いても後部胴体前部及び垂直尾翼の内部の圧力はフェール・セーフ設計で考慮した圧力以上に上昇し、APU防火壁及び垂直尾翼の破壊に至ったものと考えられる。
▽操縦系統の検証
 飛行中の異常事態発生後間もなく油圧四系統すべてが機能を停止し、すべての操縦系統も不作動となった。これは、方向舵を含む垂直尾翼の大半の損壊・脱落によって油圧四系統の配管が破断し、作動液が流出したためと考えられるが、このような、損壊・脱落はフェール・セーフ性の設計においては考慮外のものであったと考えられる。
▽ボーイング747型機のフェール・セーフ性について
 ボーイング747型機の構造のフェールセーフ設計は当時の米国連邦空港局の輸送機の耐空性に関する基準のうちの疲労に関する規定に従って設計されている。
 事故機においては後部圧力隔壁の二つのベイにわたって疲労亀裂が著しく進展したために、同隔壁の損傷、尾部胴体及び垂直尾翼の損壊、操縦系統の油圧配管四系統すべての破断、すべての操縦機能の喪失というように耐久性を大きく損なう損壊が連鎖的に進行した。
 このように本事故において損壊が連鎖的に進行したことは、同機の開発当時のフェール・セーフ設計とその後の運用実績を取り入れた点検整備とは規定に適合した妥当なものであったとはいえかかる事態の発生を阻止するためのまではなされていなかったためと考えられる。

【異常事態における運航乗務員の対応】

 運航乗務員が異常事態発生後、帰還空港として目的地の大阪国際空港や予定飛行経路から比較的近い名古屋空港ではなく、東京国際空港を選んだことは、空港の規模滑走路長及びその他の施設環境から見て妥当な選択と考えられる。

【乗客・乗務員の死傷についての解析】

▽前部胴体内の乗客・乗組員
 前方の前部胴体内にいた乗客・乗組員は墜落地点への衝突時の数百Gと考えられる強い衝撃及びその時点での前部胴体構造の全面的な破壊によって、即死したものと考えられる。
▽後部胴体内の乗客・乗組員
 後部胴体内にいた乗客・乗組員のうち、前方座席の者は、墜落地点への衝撃時に百Gを超える強い衝撃を受けた可能性もあり、ほとんどが即死に近い状況だったと考えられる。本事故の生存者は四人ともいずれも後部胴体の後方に着座しており、数十G程度の衝撃を受けたものと考えられるが、衝撃時の着座姿勢、ベルトの締め方、座席の損壊、人体に接した周囲の物体の状況等がたまたま衝撃を和らげる状況であったために、また、床、座席等の胴体内部の飛散物との衝突という災害を受けることが少なかったこともあって、奇跡的に生還し得た物と考えられる。

結論

【大阪国際航空における事故による損傷の修理】

 修理計画に従って、事故によって変形した後部圧力隔壁下半部を機体から取り外し、新規の後部圧力隔壁下半部の取り付け作業を進めたところ、隔壁の上半部と下半部のウェブ合わせ面(L18接続部)において、リベット孔周りのエッジ・マージン(板端までの幅)が不足する個所のあることが発見された。これに対して後部圧力隔壁上半部と下半部の間にスプライス・プレート(補佐板)を一枚挟んで接続するという適切と考えられる修正措置がとられることになったが、実際の修正作業では、一枚のスプライス・プレートのかわりに修正指示より幅の狭い一枚のスプライス・プレートと一枚のフィラ(アルミ板)が用いられ、前述の修正措置とは異なった不適切な作業となった。
 修理作業の際の検査及び修理後の検査では、前期の不適切な作業部分を目視検査で見出すことはできなかった。今回の修理作業では、工程における検査を含む作業管理方法の一部に適切さに欠ける点があったと考えられる。
【事故機の運航及び整備の状況】
五十三年六月の大阪国際空港における損傷の修理後、同機について六回のC整備(三千時間毎の整備)が行われ、その際に後部圧力隔壁の目視点検も行われたが、L18接続部の疲労亀裂は発見されなかった。後部圧力隔壁のC整備時の点検方法は、隔壁が正規に製作されている場合、また、その修理が適正に行われた場合には、妥当な点検方法であると考えられる。しかしながら今回のように不適切な修理結果ではあるが、後部圧力隔壁の損壊に至るような疲労亀裂が発見されなかったということは、点検方法に十分とはいえない点があったためと考えられている。

【異常事態の概要】

 事故機に生じた異常事態の状況は、以下のようなものであったと考えられる。
 (一)18時24分35秒ごろ、同機が高度24000フィートまで上昇した際に、後部圧力隔壁のL18接続部が破断したものと推定される
 (二)このように破断が進行した結果、後部圧力隔壁の上半部のウェブの一部が開口。開口面積は2~3平方メートル程度と推定される。
 (三)後部圧力隔壁から流出した客室与圧空気によってAPU防火壁とAPU本体を含む胴体尾部構造の一部の破壊・脱落が生じたものと考えられる。
 (四)APU防火壁の破壊の直後又はその破壊とほぼ同時に垂直尾翼の破壊が始まったと考えられる。
 (五)垂直尾翼が損壊したため方向舵は脱落し、また四系統の方向舵操縦系統油圧配管もすべて破断したものと推定される。
 (六)このような同機の破壊は、数秒程度の短期間のうちに進行したものと推定される。
 (七)後部圧力隔壁が開口したため、操縦室を含む客室与圧は数秒間で大気圧まで減圧したものと推定される。
 (八)前述した機体の破壊によって、方向舵・昇降舵による操縦機能、水平安定板のトリム変更機能は異常事態発生直後に失われたものと推定される。また、補助翼、スポイラによる操作機能及び油圧によるフラップと脚の操作機能は異常事態発生直後1,,0~1,5分の間に失われたものと推定される。(九)(十)略
 (十一)同機は不安定な状態での飛行はできたが、機長の意図どおり飛行させるのは困難で、安全に着陸・着水することはほとんど不可能な状態であったものと考えられる。
【異常事態発生直後の事故機の飛行と運航乗務員の対応】

 何かしらの異常発生を運航乗務員は直ちに知ったが、垂直尾翼の損壊、方向舵の脱落というような損壊の詳細については、その後も知り得なかったと推定される。異常事態発生後間もなく運航乗務員は機内の減圧を知り得たと考えられる。運航乗務員は最後まで酸素マスクを着用しなかったものと推定されるが、その理由を明らかにすることはできなかった。この間の運航乗務員は低酸素症にかかり、知的作業能力、行動能力がある程度低下したものと考えられる。

【捜査・救難活動】

 墜落地点は登山口がなく、落石の危険が多い山岳地域であり、夜間の捜索ということもあったため、気体の発見及び墜落地点の確認までに時間を要したのはやむをえなかったと考えられる。救出活動は困難を極めたが、活動に参加した各機関の協力によって最善を尽くして行われたものと認められる。

【原因】

 本事故は、事故機の後部圧力隔壁が損壊し、引き続いて尾部胴体・垂直尾翼・操縦系統の損傷が生じ、飛行性の低下と、主操作機能の喪失をきたしたために生じたものと推定される。飛行中に後部圧力隔壁が損壊したのは、同隔壁ウェブ接続部で進展していた疲労亀裂によって同隔壁の強度が低下し、飛行中の客室与圧に耐えられなくなったことによるものと推定される。疲労亀裂の発生、進展は、五十三年に行われた同隔壁の不適切な修理に起因しており、それが同隔壁の損壊に至るまでに進展したことは同亀裂が点検整備で発見されなかったことも関与している。


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http://araic.assistmicro.co.jp/aircraft/download/bunkatsu.html#5
http://araic.assistmicro.co.jp/aircraft/download/bunkatsu.html#5-2

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