-秘密の場所-

私には一人の愛娘が居る。彼女の名は花恋(かれん)。
娘と言っても私の実の子ではなく、ちょっと訳ありなのだ。
私は出会い系サイトで知り合った一人の女性と結婚した。その女性がバツイチの子持ちだったのだ。
対する私は初婚という事もあり、親や親戚からいささか反対の声も聞こえたが、
そんな声も押し切ってでも結婚したいという強い意志があった。
三十路になって尚、会社内や、身内の勧める縁談に大した出会いもなく、
切羽詰まっている状況の自分があったからかもしれない。
それ以上に「自分がようやく見つけたかけがえの無い存在」という方が強かった。
勿論今ではそんな反対も聞かれることはなく、今では上手くやっている。

妻の由紀子は出会った当時27歳。私より年下なのに、既にこんな歳になる娘が居たのだ。
妊娠は高校在学中で、相手は同級生。卒業と同時に結婚。いわゆる”できちゃった婚”であったが、
当時の旦那は俺から言わせればろくでなしの人間であり、
定職に就かず、家では酒に浸り、妻と離婚する頃にはとうとう覚せい剤に手を出していて、今は服役中のようだ。
本人達は堅く口を閉ざしているが、もしかしたら家庭内暴力もあったのかも知れない。
由紀子は暫く一人で稼ぎながら花恋の面倒を見ていたが、生活は当然苦しかった。
気まずくて親にも頼れず、すがる思いで出会い系に登録したらしい。
経済力に乏しいという以上に、寂しかったのかも知れない。

出会って最初のデートでは、由紀子と二人きりであった。
とても子持ちとは思えないほどスタイルもよく、美人というより可愛い風貌の持ち主だった。
キラキラと潤った瞳が印象的な女性。それ以上に、私にべったりと甘えてくる仕草が可愛くて堪らない。
こんな素敵な女性が何故、出会い系サイトに居るのかと不思議に思ったくらいだ。事情を聞いたら納得したが。
でも彼女は本気で、最初から結婚を前提に私と向き合っていたのが分かった。
私はその時に事情を聞いて、次のデートでは是非、花恋も一緒に連れて来てほしいと言った。

初めて見た花恋は、当時8歳という年齢にしてはちょっと幼く見えた。
母親譲りの大きな瞳が印象的で、とても可愛い子だ。
ディズニーランドでは、母子揃いでミニーちゃんの着け耳を着けて歩いた。
私は真ん中で、二人と手を繋いで歩いた。
花恋は最初無表情だったが、徐々に私に慣れてきたのか、やがて笑顔で話をするようになった。
こういうケースでは子供が心を開いてくれる事が一番難しいと思っていたが、
それを難なくクリア出来たのは非常に良かったと思った。
由紀子はしきりに「ホラ、写真撮るからパパと並んで」「パパと半分ずつ食べなさい」等、
私のことをしきりに「パパ」と呼んでいたが、花恋は私をそうは呼ばなかった。
それはそうだろう。彼女はこんなに大きく育つまで、曲がりなりにも「パパ」が一緒に居たのである。
急に現れた私がいきなりパパに置き換わる事など無い。彼女にとってパパはその男だと思った。
私自身もまた、子育てをせずにいきなり子持ちになることにとまどいを覚えていた。

私は、変に不自然になって花恋との間がぎくしゃくすると良くないと思い、
友達のように軽く優しく接するように努めた。
パレードの行われる広場の前で、花恋を肩車して写真を撮った。
片手で風船を掴み、片手で私の頭を掴む花恋。自分の胸元にはぶらんと投げ出された小さなサンダルが見える。
普段小さい子供と接する機会のない私は、こんなに軽いものなのかと驚いた。
花恋自身もまた、肩車は初体験だったのだろうか。とても嬉しそうだった。
あまりにはしゃぐ花恋が可愛く思えたので、肩車のまま少し歩き回った。

その後も三人で色々なところに行った。とても楽しい日々だった。
そして遂に私は二人の住む家に「婿入り」することになった。
入籍する前に、取り敢えず三人で暮らしてみようという事になったのだ。
母子二人で住んでいる部屋は物が少なく、とてもすっきりとしていた。
私一人が入っても、スペース的には何も問題無さそうな状態だ。
しかし、2DKと言ってもほとんどワンルームのような作りで、プライバシーは無い。
花恋もこれから難しい年頃を迎えると思うと、もっと大きな家が必要だろう。
あくまでそこは、新しく家族となる三人の出発点であり、仮の住まいだった。

三人で暮らし始めて間もないある日、私が出張から帰ると、既に学校から帰宅した花恋が居た。
出張は早く終わった。時計を見るとまだ昼の3時過ぎ。
家の鍵を持ち歩き、学校が終わると家の鍵を開け、母親が帰るまでは基本的に留守番の毎日か。
花恋はこんな幼い年頃から鍵っ子をやっているのかと驚いた。
確かに母親が働きに出ている以上、学童か鍵っ子に選択肢が限られてしまうだろう。
「ただいま。」
私は笑顔で花恋に声を掛けた。
「あ、お帰り~。」
「こんな早くからお留守番?」
「うん。お留守番。」
「寂しくないの?…御免、そりゃ寂しいよね。仕方ないよね。」
「ん~ん、さっちゃんのとことか、まーくんのとこに遊びに行く日もあるんだよ。」
どうやら、友達と遊びに行くこともあるようだ。
その日はたまたま友達の都合が悪く、留守番ということか。
私と花恋が初めて二人きりになった時だった。何となく気まずいというか、どう過ごしたら良いのか分からなかった。

「ね~、買い物いこ。」
突然、花恋は私にせがんだ。私も特に用事は無かったので、スーツを脱いで一緒に商店街へと出かけた。
「ね~パパ。肩車、して~。」
花恋はこの時、初めて私をパパと呼んだ。何となく、独身男から急に父親になった気分だった。
でもこの歳になると、普通は肩車をして歩く親子の姿は無くなるのではないだろうか。
私自身、子育てをした事が無いのでよくは分からなかったが、
ちょっと幼く見える花恋には肩車がよく似合っていた。
でもこの時は、以前の花恋よりちょっと重く感じた。
出張帰りで私が疲れていたからなのか、あるいは花恋の成長が早いのか
よくは分からなかった。でも一つはっきりしていることは、
いつか花恋は肩車が出来ないくらい心も体も大きく成長してしまう事だろう。
その日が来るまでは、この貴重な肩車を二人で楽しもうと思った。

「ここ~。」
花恋は、スーパーの前で私を立ち止まらせた。
花恋を降ろし、二人で手をつないで店内を回る。いつも以上にキラキラと輝く花恋の目。
こんな可愛い子と、どう接して良いかとか、適切な距離を置くことに神経を使うくらいなら
いっそ普通の親子以上にべったりと仲良くなってしまおうと思った。

花恋は菓子パンのコーナーに到着すると、気に入ったパンを私の持つ篭に次から次へと放り込んできた。
「うふふ。」
楽しそうな花恋。父子二人の買い物を楽しんでいるのだろうか。
しかしこんなにたくさんのパンは、たった三人の家族では一度に食べきれる量では無い。
でも、「もうやめなさい」と言ってしまえばそれで買い物は終わってしまうし、そうしたくはなかった。
それに、パンならいざとなれば冷凍保存が利く。これからしばらく朝食は菓子パンになるかもしれない。
そう思って、私は花恋の無邪気な行動をじっと見守った。
買い物篭一杯になった菓子パンと、半分くらいスカスカになった菓子パン売り場。
店員もちょっと不思議そうな顔で勘定を進めた。
「3530円です。」
パンだけでこんな金額を支払ったのは生まれて初めてかも知れない。
1個ずつだと軽いスカスカのパンでも、30個以上になるとこんなに思いものかと思った。
10個くらいを小さな袋に入れて花恋の左手に、20個くらいを大きな袋に入れて私の右手に。
そして二人で手を繋いで商店街を引き返し、家へと帰った。

家に帰り着くと、私は汗をぬぐった。そして、花恋の小さな背中やお腹にタオルを入れて拭いてあげた。
夏休みが終わったと言っても、まだ9月で日差しは強く、蒸し暑い毎日だ。
「汗もが出来たら大変だからね。」
「うん。」
薄っぺらい花恋の胸板。服がブカブカで、隙間から簡単にタオルを差し込むことが出来る。
腕なんて本当に細くて、人形みたいに華奢だ。
汗を拭き終わると、花恋はキッチンから1Lパックの牛乳とコップを持ち出し、
先ほど買った沢山のパンを掴んで、私にあとを着いてくるようにというような仕草をした。
行き着いた先は、6畳間にある押入だった。
「パパに花恋の秘密のお部屋、教えてあげる。」
押入の扉を開けると、上は布団、下は衣装ケースとおもちゃ箱でぎっしり。
一見、全く隙間無く乱雑に詰まっているように見えた。
花恋がおもちゃ箱を取り除くと、その奥に空間が見えた。
花恋は這いながらその隙間の中に入っていってしまった。
「ん~?そんな隙間、入れないよ。」
「大丈夫~。」
奥から花恋の声が聞こえる。私は、その隙間に肩を入れた。
比較的小柄な私は、体を横に倒すと意外にもスルリと入ることが出来た。
そして、意外にも中は広かった。衣装ケースが横向きに積まれているのは手前だけで、
このアパート特有のちょっと変わった形状の押入の奥には、大人一人寝転がれるだけのスペースがあった。
奥には古い座布団2・3枚と懐中電灯があった。
「すごいでしょ~。ここ花恋の秘密基地。まだ誰にも教えてないんだから。」
「お母さんも知らないの?」
「うん。知ってるのは花恋とパパだけ。」
私は昔、竹藪の中に自分たちの秘密基地を作ったことを思い出した。
あれを花恋が一人で家の中に作ってしまったとは。
幸い、変な形状で使い切れない中途半端なスペースの押入があった事が恵まれていたのかも知れない。
「凄いけど、暑いね~。ちょっと待って。」
私は、自分の書斎代わりにしていたちゃぶ台から小型のクリップ付き扇風機と蛍光灯の電気スタンドを持ち込み、
延長コードに繋いだ。延長コードは押入の扉の隙間から出し、すぐ近くのコンセントに差し込んだ。
「うわ~!明る~い!涼し~い!」
花恋は笑顔ではしゃいだ。そして、
「ねぇ。パパに、花恋の面白い秘密教えてあげる。」
そう言って、この狭いスペースに先ほどのパンと牛乳を運び込んできた。
そしてムシャムシャと食べ始めた。
最初、私にはその意味が分からなかった。大量のパン、食べ始める花恋、そして面白い秘密。
花恋はパンを1個食べるごとに牛乳を一口飲み込む。
「パンの後に牛乳飲むと、パンがおいしく感じるね。」
私はこの時点でちょっとした不思議を感じていた。
もうじき夕方になる。きっと由紀子が半ば出来合いの食材を買ってきて、夕飯を作ってくれるだろう。
なのに、おやつとしては食べ過ぎではないか?
確かにパンの中身は空気が多く含まれていて、圧縮すれば小さくなるが、それでもせいぜい2つか3つが限度だろう。
小さな花恋は既に6つ目を食べている。かなり速いペースで、殆ど噛まず、
空気も一緒に飲み込んでいるくらいの勢いだ。
私の疑問は見ているうちに不思議に変わり、そして呆然に変わった。
唖然として見守る花恋はどんどんと菓子パンを口の中に流し込んでいき、そのお腹はどんどん膨らんでいく。
「そ、そんなに食べたら夕飯が入らなくなっちゃうよ。」
「大丈夫。今日ママ遅くなるから、ご飯勝手に食べてだって。」
そういえば朝、由紀子がそんな事を言っていたような気がした。
由紀子は普通のパートとかではないので、仕事もやや変則的な事があるという話は知っていたが。
私自身、朝は慣れない出張に神経を注いでいて、あまりよく覚えていなかった。

「パパも、食べないと、ご飯なくなっちゃうよ~。」
私はその中の2つ3つをつまんだが、パンだけだとどうも食がすすまない。
花恋の勧める通り、牛乳を飲んでみた。なるほど確かに、
メロンパンを食べて牛乳を口に含むと、メロンパンの風味が口いっぱいに拡がる。
私が5個程度を食べて腹一杯になった時、花恋はもう15個目を口にしていた。
ペースは落ちていた。小さなお腹は大きく膨らんで、もうパンパンだった。
先ほど汗を拭くために入れたタオルはおろか、ハンカチすらも入らないくらいに
服はぱっつりと張って、丸く張り出した花恋のお腹に緊張感を与えていた。

「もういいかなぁ~。」
花恋はようやく食べるのを止めて、自分のお腹を見下ろした。
「パパ、この中から、プシューって音が聞こえるんだよ~。」
「え?どこから?」
「ここ~。お腹の中~。」
私は耳を澄ました。静寂した秘密基地にただ扇風機の音だけが通過していく。
「よく聞こえないよ。」
「まだみたい。ホラ、お腹に耳をくっつけてみて。」
私はそのお腹に手を添え、耳を着けようとした。
手を添えた瞬間、違和感を覚えた。
先程タオルで触れた時はぽにゃんぽにゃんに柔らかかった筈の花恋のそのお腹は
ぴっちりと予断無く張っていて、硬さすら覚えた。驚きながら耳を着ける。
「コポコポコポ…コロロロロッ…」
空気の音が聞こえるが、プシューというほどではない。

…一体私は何をやっているんだろうか。ふと我に返りかける。
こんな狭いスペースで娘の暴飲暴食を止めずに見守り、
その娘の腹に耳を着けて中の音を聞こうとしているのだ。

…でもそんな事はどうでもいい。世の中の事すべてに道理が通って説明出来るわけではないのだ。
「あ、来そう。もうすぐ、ホラホラ。」
私は花恋の声に呼び戻され、花恋のお腹の中に意識を集中した。
「コポコポゴポ…プッ……ジュルルルルルーー!!」
まるで堰を切ったように、大音量で不思議な音がはとばしった。
「アハハハ。今日はプシューじゃなくてジュルルルだった~。」
花恋は喜んでいる。一体何が起こったのだろうか。
私は医学にも疎いし大食いの経験もないので、花恋のお腹の中が今どうなっているのか全く想像がつかなかった。
ただ1つはっきりしていることは、先ほど買ってきた大量の菓子パンと牛乳とが
この小さなお腹の中に高圧で閉じこめられているという事だけだった。物凄い圧力が想像出来る音だった。
「今の音が鳴るとね、また食べられるようになるんだよ。」
花恋は信じられないことを言う。そして、その信じられないことが事実だと見せつけるように
再び花恋はパンに手を着けた。
最終的にパンは秘密基地内にたった5個だけ残った。1Lあった牛乳も殆ど空っぽになってしまった。

「す、凄いね~花恋。ちっちゃいのに、こんなに入っちゃうんだ。」
「そうだよ~。…秘密だよ。」
何と、ゲームも面白いテレビも無いこの家でひとりぼっちの時の花恋は、
今まで秘密基地の中でこんな事をやっていたのか。
これが彼女なりのストレス解消法だったのだろうか。

私は、疑問と好奇心と嘆きと、色々複雑な心境が渦巻いたまま、
秘密基地の中に寝転がった。寝転がりながら花恋を見上げる。
下方から見上げると、そのお腹はさっき以上に膨らんでもの凄いボリュームに感じる。
いや、実際凄いボリュームだろう。私がどんなにあがいたって、一度に菓子パン20個は不可能だ。
それも牛乳込みだなんて、想像もつかない。
「こんなにお腹が膨らんじゃったら、もう肩車が出来ないね~。」
私は、特に勝負をしたわけではないが、花恋に負けているという悔しさから、
ちょっと意地悪っぽい口調で彼女をからかった。
「えぇ~、何で~?」
「だってそんなお腹だったら、パパの頭につっかえちゃうじゃん。」
「えぇ~、大丈夫だよ~。出来るもん。肩車。」
花恋は、寝ている姿勢の私の肩にそのまま無理矢理またがろうとした。
「あっ!こら、やめ…なさい…」
勿論、寝た状態で肩車の姿勢など出来る筈がない。
私の頭の上に花恋の股間が載り、顔面にはパンパンに張った下腹部が接触した。
「分かった、分かった。肩車は、これからもちゃんとしてあげるから。」
「ホント~?」
花恋は私の顔面からピョンと立ち退く…ように思えた。が、実際には
お腹が相当重たいらしく、天井の低い押入の中でよろけないように
腰を上げ、ゆっくりと隣に移動しようとしていた。
私は、立ち退いてしまうことで急に花恋との距離が遠くなるように感じ、
思わず両腕で花恋を抱き留めた。
「肩車じゃないけど、…今の、気持ち良かったかも。」
「えぇ?」

花恋は既に向きを変えていたので、肩車とは逆で花恋と向かい合う状態になっていた。
そのまま花恋の腕を引っ張り、自分の首元に座らせた。
花恋の汗ばんだ細い両太股が私の顔面を覆った。花恋は脚を閉じて座っていた。
何も見えないが、両手はしっかりと花恋の小さい手と握りあっている。
視界を覆う花恋の太股とスカートの中から、花恋の匂いを目一杯に感じた。
石けんのようないい匂いだった。
花恋は閉じた太股をゆっくりと開けていった。
目の前に現れるのは、ギッチリと詰まって膨らんだ花恋のお腹。
服の下から覗き見えるのはへそから下だけで、へそから上は見えない。
そのお腹の上から覗き込んでいる花恋の笑顔が見えた。
そして目が合うとにっこりと笑い、バクッと太股を閉じる。
少しずつ太股を開けていっては、またバクッと閉じる。
まるで太股で「居ない居ない、バァ~」をされているようだった。
それを何回か繰り返した後、遂に太股をバックリと解放して思い切り前屈みになり、
私の顔面の上にそのお腹をもたれ掛けた。
まるくパンパンに張ったそのお腹はズッシリと重い。初めて肩車をした時の軽さとは対照的なほどだった。
私の両耳は花恋の太股に挟まれ、その太股と顔面を押圧するお腹から花恋の体内の音が聞こえてくる。
「コポコポッ…ジュルルル…コポコポッ…ジュルルル…」
周期的でとても安定した音だった。
「お腹の中から、花恋がパンを溶かしてる音が聞こえるよ。」
「えぇ~。これって、溶かしてる音~、なの~?」
その音を聞いているうちに、何故か私はほっと温かい物に包まれる安心感を覚えた。
花恋は、少し眠そうに見えるような細い目で笑顔を作り、私を見下ろしている。
そして、その小さな手で私の頭をやさしく撫でてくれている。

「あぁ、気持ちいいなぁ。…ここ、凄く居心地が良いよ。」
「秘密基地~?」
「うん。秘密基地もそうだけど、花恋のお腹の下も。なんか、花恋のお腹の中に居る見たいな感じだよ。」
実際それは、まるで胎内にいるような錯覚だった。
こんな小さな娘なのに、そのお腹と太股は私の全てを包み込んでくれる抱擁感を備えていたのだ。

すると花恋は小声でしゃべり始めた。
「これからは、パパがママのことをちゃんと護ってあげてね。パパの事は、花恋がこうやって護ってあげるから。」
この子は、幼い目で一体どこまで見抜いていたんだろうか。
花恋の母親である由紀子は寂しがり屋で、いつも私に甘えている。
私はそんな由紀子をしっかり抱き留めているが、私から由紀子に甘える事は無かった。
私がしっかりしなければ、この一家三人を支えていく事は出来ないと覚悟していたからだ。
考えてみれば私には、もう何年も甘えられる相手が居なかったのだ。
でもそれは単なる強がりだったのかも知れない。
固く閉ざしていた心の扉が、ようやく花恋によって開かれた気がした。

秘密基地から出ると、暑いはずの部屋の中が涼しく感じた。
私は再びタオルを持ち、今度は花恋の服をちゃんとめくり上げて、しっかりと汗を拭いてあげた。
ポッコリと膨らんだお腹周りをやさしく押さえるように拭き、あらためて
お腹と、それから、その中に詰まった菓子パン達に感謝の念を込めた。
「ありがとう。ごちそうさま。」
私は花恋に代わって、花恋のお腹の中に心の中で呼びかけた。

由紀子が帰ってくると、花恋のお腹を見て、
「あぁ、また一杯食べたなぁ~。」
と言い、ポンッと叩いてたしなめた。
「えへっ」と笑う花恋。実に軽いやりとりで終わってしまった。
勿論由紀子は、このお腹の中に菓子パンが20個も詰まっているなどとは思いもしないし、
秘密基地であんな事があったなど気づく筈もなかっただろう。

由紀子とはその後まもなく入籍した。晴れて三人の家族となった後も、
私と花恋は時折その秘密の部屋で秘密の儀式をした。
由紀子が遅くなる日はだいたい1ヶ月に1回くらいだろうか。
私が仕事を早く終えて帰ると、花恋も友達と遊ばず家で私の帰りを待っていた。
花恋は菓子パンが好きだったが、時々それ以外の物も買ってきた。
ある時は、魚屋で鰹などの大きめの魚を一匹裁いて貰い、お刺身にして貰った。
「花恋のお腹の中にお魚がまるごと入っちゃったね。」
と言うと、花恋は「んふふ~!」嬉しそうにお腹をさすりながら見下ろした。
どうやら花恋も、プシューという秘密の音だけでなく、
目の前の凄い量の食べ物を全部食べて征服してしまう事に快感を覚えていたようだった。
私は、花恋の小さな口が好きだった。
その小さな口の中にどんどん放り込まれていく食べ物。ちょっと噛んだあと、
喉が動き、ゴクッと呑み込む音がする。そして次に口を開ける時には、もうその中は空っぽなのだ。
呑み込むたびに、一口ずつ少量の食べ物が徐々にお腹の中へとチャージされていくのが分かる。

花恋のお腹の許容量は、回数を重ねるごとにどんどん増えていった。
菓子パン20個相当の用量が、半年後には30個を超えるくらいにまで達した。
内緒の大食いをする時以外の、普段の朝食や夕食の量もだいぶ増えていた。
途方もない大食いではないが、この小さい体で大人の1.5人前は食べていただろう。
そして花恋の体も、摂取した栄養のおかげでどんどんと成長していった。
最初は年齢の割に幼く見えたその体も、胸板が厚くなり、お腹には脂肪がつき、
太股は私の顔全体を覆い隠すほど太く逞しく、そして柔らかくなっていった。
花恋はいつしか、ポッチャリとした体になっていた。
毎日見ていたのでその過程には気づかなかったが、3ヶ月前や半年前の写真を見た時に、大きな変化に驚かされた。
肩車で乗られた時もズッシリと重く、花恋の存在感をハッキリと感じることが出来るようになっていた。
私はその日、秘密の部屋に入ってすぐにそのお腹をつついてからかった。
「まだ何も食べてないのに、一杯入ってるみたいだね~」
すると花恋はそのまま私の胸元に座り、体を屈めて私の顔面にそのお腹をくっつけた。
「違うよ。ホラ、まだ柔らかいでしょ。」
確かに花恋のお腹は、つきたての大福餅のようにもっちりと柔らかかった。
そして花恋は私に跨ったまま、むしゃむしゃと早食いのように食べ始めた。
ただでさえズッシリと重く感じた花恋の腹がみるみるうちに膨らんでいき、更にじわじわと重くなり始めた。
苦しかったが、花恋の強い生命力に抱かれている感覚はとても快感だった。
自分の全てを幼い花恋の腹に委ね、託している瞬間。
この時はまだ春先の涼しい時期だったが、花恋のお腹は消化活動で熱くなり
汗が太股をつたって私の顔まで流れ落ちて来た。

おそらく満ち足りた栄養のお陰で花恋の新陳代謝が活発になり、体温も高くなっているのだろう。
その匂いは汗だけでなく、少し生々しい匂いが混じっていた。
ふと気づけば、私の鼻先には花恋のパンツがある。
股を広げて夢中になって食べているから、花恋本人は意識していないが、
私の鼻と口のすぐ先にある、薄いパンツの生地の向こうに
花恋の性器が口を開いてこちらを向いていることを悟った。
おそらく、この匂いも花恋のそこから漂って来ているに違いなかった。
私は由紀子とキスをしたり抱いたりする事は勿論あったが、彼女の性器に口づけをするような事は一度も無かった。
『…花恋のこのお腹の中に続く入り口が、すぐそこに…』
私は花恋抱いてしまおうなどという欲望は全く起きなかった。が、そのことを想像して硬直した。

全てを食べ終えた花恋が、いつものように笑顔で私を見下ろす。
いつもならここで花恋が跨るのだが、その日は既に跨っている。
私は衝動的に花恋の体を引き寄せると、そのまま顔面の上に座らせてしまった。
「きゃっ!」
花恋はちょっとびっくりして腰を上げた。さすがに顔面の上に直接座ることには抵抗があったようだ。
「危ないよ~パパ。花恋、こないだ身体測定で測ったら、もう36キロもあったんだから~。」
…ムッチリして重くなったとは思っていたが、まさかそんなに増えているとは思わなかった。
「今は食べたあとだから、40キロくらいあるかも。だから、花恋が乗ったら、パパ死んじゃうよぉ。」
「大丈夫だよ。座ってみてごらん。」
花恋はあくまで、私をやさしく包み込むのが目的だったので、私に痛い思いをさせるかも知れないことに
少々ためらっていたが、少し、少しずつ腰を降ろしていき、私の顔の上に座った。
とうとう私は、花恋の股間にある秘められた口とパンツ越しにディープキスをしてしまった。
顔に掛かる重みはそこから更に増し続ける。
花恋は踏ん張った足首と膝の力を抜き、全体重とお腹の重みまでをも私の顔面に預けようとしていた。
目の前は花恋のお腹で完全に塞がっていたが、その視界の脇で花恋が両足を上げたのが分かった。
40キロという花恋の全てがとうとう私の顔の上に預けられたのだ。
その重みで私は花恋の股の間に開いた口とキスをしている。
このキスによって、花恋とだけでなく、花恋のお腹とも直接仲良くなれた気がした。
私は腕を伸ばし、見えない花恋の太股とお腹を撫でた。
花恋もまた腕を伸ばし、私の頭をやさしく撫でてくれていた。その時。
「ジュルジュル…ジュル…ブシューーー…」
いつも通り、花恋のお腹の中で不思議なアクションが繰り広げられたようだった。
顔面を通じて、骨伝導のようにその音が振動が伝わってきた。

やがて花恋は腰を上げ、よろけながら後ずさりして私の胸元に戻った。
私は花恋の体が少し心配だった。かがんだ中腰の姿勢でよろけ気味の花恋が。
半年間で急激に成長し、重みが増した体に、足腰の成長がまだ追いついていないようだった。
でも考えてみれば、花恋の成長期はこれから。足腰の成長も時間の問題だろう。
まだまだスタイルや女性らしいくびれなどを意識する必要のない年頃であるし、
このくらいの女の子はちょっとくらいポッチャリとしている方が健康そうで何よりだ。
「パパごめんね。息出来なかったでしょ?」
花恋は少し心配そうな顔をしていた。
「うん、…大丈夫だよ。パパは、とっても良い気分だったよ。」
「本当?…じゃあ嬉しい。花恋も、パパの上でお腹の中にちょっとヘンな感じがして、好きだったよ。」
「じゃあまた今度もやってくれる?」
「うん、いいよ。」

私は嬉しかった。なんで自分がそんな事に快感を覚えているのか分からない。
分からないが、ただひたすら目の前に居る愛娘の花恋をこうやって愛したかった。
ぴったりくっついて抱きしめていても、もっと近づきたいと思う衝動的な欲求。
それが、こうすることで抱きしめ合うより少し近づけた気がした。

秘密の部屋を出る時、驚くべきことが起こった。
私が先に部屋を抜け出し、花恋があとを続く。
出入り口の隙間は屈折しており、体を90度横に倒して通り抜けなければならない。
そこを花恋が通ろうとした時、お腹が衣装ケースに突っかかってしまったのだ。
無理に這い出せばそのまま通れるが、お腹が衣装ケースの角でしごかれて変形しているのが見て取れた。
「あはは。くまのプーさんみたいだ~。」
確かに、はちみつを欲張りすぎて木の穴から出られなくなるというストーリーがある。
しかしその隙間は、私なら何でもなく通れるくらい広い。
花恋の食後のお腹は、既に私よりずっと大きくなっていたのだ。少なくとも、厚みにおいては。
見た目の膨らみは凄いと思っていたが、こうもまざまざとその大きさを知らされると衝撃的だ。
驚く私を尻目に、無邪気な花恋にはその様子と感触が面白いらしく、何度も行き来してお腹をしごいて見せた。
その往復運動に合わせて、チャポン…タポン…という大きな音が部屋に響いた。
「大きくなったね~。何センチになったのかな?」
私は、そのお腹の大きさに興味が向いた。
「分かんないよぉ。」
花恋のお腹は、既に服に入りきらず、おへそが丸出しになっている。
私は仕事で使うツールボックスから金属のメジャーを出して来て、花恋のお腹に巻き付けた。
「ひゃっ!冷た~い。」
一周して戻ってきたメジャーは90cmを指していた。後ろ側で弛んでいるんだと思い、引き寄せた。
しかしメジャーは弛んではいなかった。ピッタリと合わせてみると、88cmだった。
食後とはいえ、88という数字はへそ廻りとしては驚異的な数字だった。
いくらぽっちゃりとしている花恋でも、食前は65cmも無いだろう。
小学生で体の幅は狭いので、相当に厚みがある計算になる。
「凄いねぇ。パパのお腹より大きいよ。」
「うん。パパを護ってあげるお腹だもん。パパよりおっきくならないと。」

私は花恋の言葉にぐっと引きつけられた。
この家族では、花恋を母由紀子が守り、由紀子を亭主である私が守り、
私が娘の花恋に守られ、癒される事で保っているのだった。
この歯車がどれか一つでも欠けたら、一家は長く続かなかったであろう。

今では花恋も成長期を迎えて背が伸び、秘密の部屋はだいぶきつくなってきた。
いつしか肩車はしなくなっていたが、秘密の部屋での二人の儀式は続いている。
引っ越し先も決まっているが、花恋はそこでも秘密の場所を作る予定である。

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最終更新:2008年08月05日 01:07