-留守番-

 俺がまだ子供だった頃、両親が遠いところに住む知人の通夜に出かけたことがあった。
俺達を残して金曜日の昼頃に旅立ち、次の土曜日の朝に戻るという予定だった。

俺はあの時確か小学5年生だった。妹の真衣は2つ下なので、まだ3年生だったという事になる。
当時の俺は、いつも真衣をいじめていた。
基本的には仲良く過ごしていたのだが、事ある毎にケンカになった。
俺も今思えばつまらないことでいちいち腹を立てたものだった。
妹が俺の真似をしたり、俺のおもちゃで勝手に遊んだり。
歳が近いせいもあってか、妹も俺に張り合おうとする。
だが、2歳も年上の兄に腕力でかなうはずもなく、
ケンカと言うよりは俺の一方的な勝利で終わるのが常だった。
顔をつねったり、腕で払い倒したり。
生意気に刃向かって来た妹を泣かしたときの泣き顔は、腹癒せとしては十分だった。
そんな事ばかりやられていたから、妹も悔しかったのだろう。

「二人ともケンカするんじゃないよ。夕ご飯は冷蔵庫にあるから、電子レンジであっためて食べなさい。
鍵は郵便ポストの裏に隠してあるからね。夜はちゃんと戸締まりするんだよ。
何かあったら裏のおばあちゃんに言うんだよ。お母さんもお願いしておくから。」
学校に行く前、母は俺達に色々と言って聞かせた。
俺はまだ料理は出来なかったが、電子レンジくらいは使えた。
それに、いざとなれば戸棚の中にせんべいやらクッキーやらがある。
心配なのは、夜妹が寂しくてワアワアわめかないかどうかだけだった。

学校から帰ると、妹が先に帰っていた。
「お兄ちゃんお帰り。」
いつもは母親が居る居間に、妹が一人。
妹は戸棚の中にあったせんべいを出し、勝手に食べていた。
勝手な事をしている妹に若干苛っとしたが、
俺は友達と遊ぶ約束をしていたので、鞄を家に放り投げ、すぐに家を出た。

日没ギリギリまで遊び、疲れて腹も減った俺は家に帰った。
冷蔵庫にある飯は何だろうか。家に入り、台所に着いたところで
俺は異様な光景を目にしてしまった。
にんまりとした笑顔で俺を見る妹。妹が座るテーブルの上には
空いた皿、タッパー、お菓子の空き袋…。
俺はとっさに冷蔵庫を開けると、当然そこにある筈の料理は無かった。
「あれ、真衣。ご飯は…」
「エヘヘ。全部真衣のおなかの中だよ。」
見ると、黄色いワンピースの上から真衣の腹がぷっくり膨らんでいるのが見えた。
慌てて台所を見渡す。戸棚の中のせんべいもクッキーも無い。食べ物という食べ物が無いのだった。
しまった!と思った。完全に真衣に先手を打たれている。
「ウフフフ。もう食べもの残ってないよ。」
…そんな馬鹿な!しかしゴミ箱の中を見ても、スイカの皮やラップは捨ててあるが
食べ物自体は全く捨てられて居なかった。

すべての状況を理解した俺は怒りが込み上げ、真衣に向かってげんこつを振り上げた。
真衣は『殴れるものなら殴ってみれば?』と言わんばかりの挑戦的な表情だ。
確かに、俺が今更ここで真衣を殴ったところで何も解決しない。
完全にやられてしまった敗北を認めたようなものだ。
「別に俺、あんま腹減ってないし。」
俺は強がりを言ってごまかした。
空腹感に苛まれながら、あらためて真衣の腹を見下ろす。
真衣の腹は、その小さな体ではこれ以上無理だという位までパンパンに膨れ上がっている。
メロンか、小玉スイカか、はたまたバレーボールか…。
真衣はその腹を俺に自慢げに見せつけ、両脇腹に手をあててぎゅっと前にしごいて見せた。
「まだもうちょっと入りそう。」
なんて事だ。苦しくないのか?一体いつの間にこんな能力を身につけたんだろうか。
俺は未練がましくその腹にすがりつき、さすってみた。
パンパンに張ったその腹はぎっしりと中身が詰まって、重みすら感じた。
軽く押してみた。今度は少し強めにぎゅっと。
さすがに真衣が吐いたものを食べようとは思わないが、
この程度で吐くなら吐かせてしまおうかと思った。
しかしその腹は強い反発力を持って凹み、中からかすかに「チャポンチャポン」と聞こえる。
「やだ、お兄ちゃん。くすぐったい。」
真衣の顔は満腹感によるおだやかな笑顔が歪むことすらなかった。


俺は二人でテレビを見ている時も、真衣の腹が気になって仕方がなかった。
気が遠くなりそうな空腹感によって、横目にも過剰なほど膨らんで見える真衣の腹は
常に意識を呼び起こさせ、疑問と僅かな興奮とで俺の頭の中を一杯にした。
「グウゥウウゥゥ…」
その前から少しずつ鳴ってはいたが、とうとう俺の腹の音が居間の中に響いてしまった。
「あ。お兄ちゃん、お腹鳴ってるよぉ~。」
真衣は勝ち誇った笑顔で俺の方を見た。もう俺は完全に負けたと思った。
俺は、自分の食べ物を妹に全部取られたという敗北感と、
妹の腹の容量に負けたという不思議な敗北感とを感じた。
特に後者は不思議な感覚だった。
例え逆の立場だったとしても、俺はそんなに短時間にこの家の食料を食べ尽くす事が出来るだろうか?
いや、とても出来そうにない。
きっとこれは妹の執念による逆襲だ。俺はそう思った。
あらためて思い返してみる。
冷蔵庫の中には、俺達の夕食2人前と、あの弁当箱くらいの大きさのタッパーのに入っていた何か。
それにスイカ1/6切は最低でも入っていた筈だ。
それと、戸棚の中のクッキーとせんべいが1袋ずつ。その他にも何か入っていたに違いない。
到底自分には無理な量だ。それをあの真衣が…全部腹の中に入れてしまって、
しかも「もうちょっと入りそう」とはどういう事だ!?
真衣の体は柔らかく、ほっぺたもその他の皮膚も、つねれば比較的よく伸びる事を知っている。
それにしたって、そんな量をあの小さな喉の奥に流し込むのは凄いことだ。

一体、真衣の腹はどうなっているんだ?
そんな疑問が頭の中を更に掻き回す。そして1つのひらめきに到達した。
「真衣、そろそろお風呂を湧かそうか。」
「うん。」
俺は風呂に水を張り、湯沸かし器をつけた。
俺達は大抵一緒に風呂に入っている。その日だって例外ではなかった。
湯船の中でなら、真衣の腹を思う存分確かめることが出来る…。
いつしか俺は興奮していた。興奮しすぎて勃起してしまっていた。
勿論、普段は妹に対してこんな感情を抱く事はなかった。
俺はそれを真衣に気づかれるのが嫌で、素早く着替えて先に湯船に飛び込んだ。
間もなくして、真衣がガラス戸を開けて入ってくる。
予想通り、…いや予想以上に堂々とした腹だった!
真衣本人はやはり張りが気になっているのか、体を流している間も片手でしきりに腹をさすっている。
胸はポチッと点が2つで膨らみは全く無いのに、みぞおちから下がぼっこりと突出して
股間に至るまでギューンと前に突出している。へそ周りを流れるお湯で、そのまるい腹が光沢を放ち、
更に凄味を帯びて俺の目に飛び込んでくる。
「お兄ちゃん、入れてぇ。」
無邪気な真衣はそのまま俺の浸かっている湯船に入って来る。お湯の量は二人が同時に入るにはやや多い。
その腹が湯船に浸かるところで、明らかにいつもより勢いよく溢れ出すお湯。
「アハハ。真衣のオナカのせいで、一杯溢れちゃったね。」
…やはり真衣は、ただ大量に食べただけでなく、その腹のでかさを意識している。
「ふぅ。あ、軽くなった!お兄ちゃん、お湯にはいると体が軽くなるね。」
真衣は湯船で浮力に気づいたようだ。再びすぐに立ち上がり、
「あ~、やっぱり重~い。」
湯船で立ち上がった真衣の腹は、俺の目前20cmの所で堂々たる姿を呈していた。
俺はその腹を、微動をだにせず凝視した。まるでヘビに睨まれたカエルのように。

「ゲフッ。ゲゲーー。」
しばらく肩まで湯船につかっていた真衣はゲップをした。湯船で腹が暖められ、
ガス圧が上がったのだろうか。真衣の口から匂いが伝わってきた。
「あ、真衣のゲップ、ハンバーグの匂いがする…」
「アハハハ。当たり~。よく分かったね~。」
真衣は口を大きく開けて俺の鼻に息を吹きかけた。
俺はその口の中を覗いた。ハンバーグはおろか、せんべいの小さなかけら一つ見えない。
ただその奥から漏れてくる匂いだけが、後の祭だという事を雄弁に語っていた。
俺は真衣の脇の下に手を入れて再び立たせ、その腹に頬ずりをした。
「あぁ、俺もこの中にあるハンバーグ食べたかったよ。」
もう兄としてのプライドなどどうでも良くなっていた。その時の俺は、妹の真衣に完全に降伏していた。
「お兄ちゃん、またオナカ鳴ってる~。そんなに食べたい~?ホラ、食べて良いよ。」
真衣はそのまま腹を突き出した。
俺は真衣の腰に両手を回してその腹を抱きしめたまま、
わざと湯船の中で頭をコーナーの方に移動し、自らを追い詰めた。
後頭部は浴槽の角にホールドされ、顔面は真衣のパンパンに張った腹に押されている。
空腹で苦しむ俺の顔面に押し付けられた真衣の腹。この表面から5cmと離れていない中は
食べ物がパンパンに詰まっているのに、どうしてもありつけない。それは、食べられない果実。
「どうしたのお兄ちゃん。食べないのぉ?」
気づくと、俺がもう真衣の腰の後ろに回した腕をほどいているのに、
真衣は自ら体重を掛けて寄りかかり、腹を俺の顔面に押し付けている。
「うぐっ…そんな…したら、お兄ちゃん…息…出来ないよ」
俺は半分お湯に浸かっている口で、真衣に聞こえるように呻いた。
これが真衣の仕返しなのだろうか…。それにしては、真衣もその状況を楽しんでいるようだった。

その夜、俺の心は完全に妹に媚びてしまっていた。
先程諦めたプライドなど、まるで無かったかのように。
俺の中の欲求がそうさせていた。
それまで何でも自分より劣ると思っていた妹に消化能力で完全に負けたことで、
真衣に対するコンプレックスのような物を抱いていた。
普段は2段ベッドの上に寝ていた俺だったが、その夜は下の真衣の隣りに寝る事を提案した。
真衣も母親が居なくて寂しさを感じたのか、それに応じた。普段ではあり得ない事だった。
俺は、パジャマに着替えてベッドに来た真衣をつついてちょっかいを出した。
妹はキャッキャと嬉しそうに体をよじらせ、俺の体を跨ぐようにして馬乗りに座った。
「キャハハ。…今日の真衣、いつもより重いでしょ~。」
「俺、今日は腹減ってるから真衣に敵わないかも。」
俺は両手を伸ばし、その腹を軽く押し返して真衣を挑発した。
真衣は俺の挑発通りその腕力に抵抗するかのようにぐいぐいと
俺の腹の上から胸元、首元まで近寄り、体を前に倒した。
俺の顔面には真衣の腹の弾力とズッシリとした重みが乗り、本当に息が止められてしまった。
真衣は時々俺の顔から腹を持ち上げ、「プハァ!ハア…ハア」と息継ぎする俺を
楽しそうに見下ろして、また顔を載せる。

二人きりの兄妹は、こんな禁断の遊びを思う存分楽しんだ。
明け方には真衣の腹も夜よりはだいぶ凹んで目立たなくなっていた。
トイレに行った後は更に凹んで、いつもよりちょっと出ている程度。
そこに両親が朝食を買って帰り着き、二人の秘密の時間は終了した。
その後はもうこんな事件は無かったが、
それ以来、俺は妹をいじめる事は無くなった。

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