□八代めぐみの名案


八代めぐみ(やしろ・めぐみ)

学年:高等部2-2
部活:バスケットボール部
趣味:ジグソーパズル
特技:体が軟らかい
制服:ブレザータイプ(グリーン)

身長:163.1cm
体重:55.8kg
バスト:107.9cm(L-70)
ウエスト:60.2cm
ヒップ:86.3cm
太もも:49.1cm

学園の体育館は敷地の西端にあり、東端にある寮から見てグラウンドを挟んで対極の位置になる。
陽が落ち始める午後5時半くらいになると、部活を終えた生徒達の姿がちらほらと見えてくる。やがてそんな流れも落ち着き、水銀灯の明かりが眩しく辺りを照らす頃には空気はしんと静まり、人気もまるで感じられなくなくなる。
そんな静寂の中、バスケットボール部のコートから音が聞こえてくる。そこで一人シュートの練習に励んでいるのが、今回の主役の八代めぐみである。

サイドラインぎりぎりに立ち、軽くタメを作ってジャンプ。と同時に手首のスナップが利いたボールが放物線を描いて飛んで行く。そしてそのままボールはリングの中央に吸い込まれていく。
今度はセンターラインの位置から同様にシュート。これまたボールは綺麗にリングへと吸い込まれて行く。
めぐみはいわゆる3ポイントシューターである。どんな位置からでも的確にシュートを決め、王拝バスケ部の大きな得点源として地区では有名な存在だ。シュートの姿勢は形容するのが面倒臭いくらいに美しく、着地の際に大きく揺れる胸も非常に目立つ。そんなめぐみを撮影しようと観戦に訪れるマニアも多いのだが、それはまた別の話。
「さてと、今日はこのくらいにしよっかな」
ボールを籠に投げ入れ、てきぱきと後片付けをするめぐみの体からはうっすらと湯気が立ち上っている。更衣室へ向かい制服とタオルを取り出し、シャワールームへと足を向ける。
体操服を脱ぐとサラシに包まれた大きな膨らみが姿を現す。なぜサラシなんて巻いているのかというと、これだけ胸が大きいとブラジャーでは揺れを押さえきれずにはみだしてしまうからだ。一糸まとわぬ姿になっためぐみの体は水を全て弾きそうな張りのある肌に覆われ、無駄な肉の全く無い(?)見事なプロポーションである。
ボックスに入り、鍵をかける。めぐみは誰もいない夜のシャワールームが好きだった。誰にも邪魔されない自由な空間―バスケ部のアイドル的存在であるめぐみにとって、そこは数少ない、一人になれる場所だった。
コックを捻る。冷たい水が、やがて温かくめぐみを包んでいく。

それからひと月…

秋期大会の地区予選があと2ヶ月と迫ってきた。いつものように練習に精が出るめぐみをコーチが呼び出した。
「コーチ、お話とのことですが」
「うむ。まあ、そこに座れ」
「はい」
「実はな、今度の秋期大会のことなんだが、」
「はい」
コーチは一旦言葉を切る。
「…お前の代わりに田崎をスタメンに入れようかと思っている」
「え…」
その言葉を聞いて、めぐみはショックを隠せなかった。
しかしそれも無理はない。高等部に入学してすぐ、入部したと同時にレギュラー入りをし、「王拝の八代」として名を馳せてきためぐみにとっては正に寝耳に水の発言だ。
「ど、どうしてですか!?」
動揺しコーチに詰め寄るめぐみ。
「確かに八代のロングシュート、これは素晴らしいものだ。インターハイにも八代程の実力を持ったシューターはそうそういないだろう」
「だったら何で!」
「シュート自体は申し分ない。シュート自体はな。ただお前にはそれ以上のウィークポイントがある」
「それって…」
「うむ…」
ポケットから煙草を取り出し、ひとつ大きく吸い込む。
「それはな、ボールのキープ力だ。あまりにもトレースに弱い。相手がお前をマークすると、途端に何も…隙をついてのパスすら満足に出来ない。それじゃ、正直スタメンとしては使っていけない。これが理由だ」
「……」
図星だった。
確かにめぐみ自身、相手にすぐボールを奪われるということは自覚していた。しかしそれは自分のシューターとして果たしている役割を考えると帳消しになるものだと思っていた。それが、まさか…。
「代わりには長瀬を入れようかと考えている。あいつはシューターとしては八代に劣るが、フィールディングはなかなかのものだ」
「長瀬さんが…」
長瀬は1年生の中でも群を抜いたプレイヤーである。
「とは言え、まだ代えると決めた訳じゃない。ひと月後に二人をテストする。その時にどっちがスタメンかを決める」
「……はい」
「話はそれだけだ。練習に戻れ」
そう言い切り、灰皿に煙草を押しつける。紫煙がうっすらと立ち上り、消えていく。
「……はい。失礼します」
めぐみは黙って従うしかなかった。

しかしその日、そして次の日とコートにめぐみの姿はなかった。
コーチの言葉は彼の想像以上にめぐみにはショックだった。練習なんてする気にもなれないめぐみは、授業が終わるとすぐに寮へと戻りふて腐れていた。
(何よ!コーチなんて…見る目がない!)
そして部活という行き場を失ったエネルギーは食べる事に向けられた。毎日の練習で消費されるエネルギーはかなりのものであり、元々大食の素容のあるめぐみだったが、そんな事を本人が意識しているわけでもなく、大の男が5人がかりでも食べきれない程の量を毎食食べていたのだ。
(もう、部活なんて…辞めてやる…!)
本能の任せるままに食べ続けるめぐみの頬を一筋の涙がつたうが、誰もそれに気付くことはなかった。

それからというものの毎日めぐみは朝・昼・夜の三食を限界まで食べ、合間合間にはたっぷりの間食を欠かさない。それと共に、元々大きな胃がどんどん容量を増していく。制服のウエストは全く入らず、2サイズ上のものをホックを外して履いている。胸より先にウエストがきつくなるというのはもちろん想定外の事だ。
余裕さえあれば何か食べているので、お腹は常にパンパンに膨れ上がっている。そんな自分のお腹を撫でる目はとても満足気だ。そんなめぐみの姿を知らない人が見たら、臨月の妊婦だと勘違いしてもおかしくないだろう。
めぐみは既に食べる事の虜になっていた。
そして部活に出なくなってから10日。その日は日曜だった。

その日の朝、クローゼットの中をごそごそと探しものをしているめぐみの姿があった。や特大のオーバーオールを取り出し、それに着替える。巨乳にコンプレックスを感じていた中等部の頃、少しでも体型を隠すために着ていたものだ。もちろん今日これを着るのは胸を隠すためではなく、お腹を圧迫しないためだが。
うっすらと化粧をし、立ち上がった所でぐぅとお腹が鳴った。我慢出来ず食堂へ行き、準備運動代わりとスパゲティを5皿平らげる。最早この程度、今のめぐみにとっては何も食べてないのも同然だ。
「さってと、それじゃ、今日は食べて食べて、食べまくるぞ~!」
おーと拳を上げて学園を後にする。
街中へと向かうめぐみを行き交う男が振り返る。今まで書く機会がなかったが、めぐみは…というより王拝学園の生徒達は皆、かなりの美少女なのである。とにかくそう決めた。

めぐみが向かったのは、駅東の商店街を少し外れたところにあるカレーショップ「カレーとターバン、これであなたもインド人」だ。本場のインドカレーが手軽な値段で楽しめるこの店は王拝の生徒のみならず、奥様方の歓談所としても人気である。そしてこの店にはお品書きにない裏メニューがあった。
「ニコニコカレー、お願いしまーす!」
店に入るなり、めぐみは迷うことなくそれを注文する。それから15分ほどして、めぐみの前に巨大なお皿が運ばれてきた。これこそニコニコカレーだが、その名に反し小山のように凶悪なサイズである。その量、ライスとルーが共に2.5キロ。これでニコニコである。ちなみに1時間以内に食べきれば無料である。
「前から食べてみたかったんだよね~、これ」
瞳を輝かせて、スプーンを片手にめぐみは突撃していった。その横では店員がストップウォッチを構えている。
「では、はい、スタート!」

「いただきま~す」
お皿は4人掛けのテーブルの3分の1近くの面積がある。そしてその皿にてんこもりにライスが、ルーが盛られている。ライスが崩れないように、めぐみは山の頂上から食べていくことにした。スプーンが、まずは一往復。
「ん、おいっし~!」
口にした途端、この店の売りである20種類のスパイスが使われているピリッとした、それでいて後をひかない辛味が広がる。
最初の一口をじっくりと味わい少し水を口に含むと、辛味は既になくなっている。
一息つけ、めぐみは再び食べ始める。手の動きは普通の速さなのだが、それは少しも止まることはない。次の一口が運ばれる時には既に口の中の物は飲み込まれ、胃袋に流れているのだ。
20分くらいで皿の上の物はその半分が姿を消していた。ここで再び一息つけグラスの水を飲み干し、更にもう一杯、今度はゆっくりとごくごくと飲む。そんなめぐみは周りの注目の的だった。他の客は爆乳美少女の見事な食べっぷりと挑戦の行方をわくわくしながら見守っている。
(よし、ちょっと頑張っちゃおうかなぁ)
ぷくっと膨らんだお腹をさすり自分に言い聞かせると、さっきまでの速さを上回る勢いで食べ始める。胃袋の重さが増して行く度に周りの目が熱を帯びるのを、自分の中で何かが少しずつ満たされていくのをめぐみは感じていた。バスケをしている時とは違う喜び、食べる楽しみというものだ。
そして最後の一口を名残惜しそうにはむっと頬張る。既に慣れた、しかし飽きない味だ。また食べに来ようと思いながら飲み込む。
「ごちそうさまでした~!」
スプーンを置き、満足しきった笑みを振り撒く。同時に大きな拍手が起こる。
「記録…44分25秒!」
店員がタイムを読みあげると拍手は更に大きくなる。めぐみは笑顔でそれに応える。
「おめでとうございます。こちらが賞金になります」
金一封と書かれた封筒を受け取り写真を撮ってもらい壁に掛けられた時計を見ると、丁度昼飯時だった。
(さーて、次は何を食べよっかなぁ)
めぐみはそんな事を考えていた。

次に入る店を探していためぐみは、パンパンに膨らんだお腹がシャツを捲り上げている事に気がついた。近くのデパートのトイレに入り何とか下ろそうと試みるが、一歩でも歩いた途端にずり上がる。
仕方がないので新しいシャツを買いに行くことにした。LLサイズ専門店でフリーサイズのシャツを買うと今度は胸が少しきつかったが、わがままは言っていられない。どうせ今日だけの辛抱で、明日特注すればいいだけの話なのだ。
そんなこんなで一時間程歩いている内に、めぐみはまた何か食べたくなってきた。とりあえず目についたミスドに入る。
「んーと、これとこれと…あと(ry」
20個近くのドーナツを買って席で食べ始める。そういえばドーナツは久しぶりだ。
「ん、新しいこれ、おいしーっ!」
レモンスカッシュと交互に味わうめぐみ。そんな彼女の耳に聞き覚えのある声が飛び込んできた。
「最近、八代先輩全然部活に出てこないよねー」
部活の後輩達だ。どうやら後ろの席にいるらしく、向こうはこっちに気がついてないらしい。めぐみは食べる手を休め、耳を澄ませてみることにした。
「ほんとだねー。こないだちらっと見かけたんだけど、なんかすっごいお腹でさー。あのまんまじゃブクブク太ってくよ」
「そうそう、脚とか前みたいにスラッとしてないしー」
慌ててめぐみは自分の脚を見ようとするが、前よりも一回り大きくなった胸と、それ以上に突き出したお腹に遮られて全然見えない。仕方なく太ももを触ってみると、覚えのない贅肉の感触。
「でも広瀬はよかったじゃん、おかげでレギュラー確実だしさ」
(広瀬さん……!)
めぐみは再び聞き耳を立てる。
「ほんとだよねー、ラッキーじゃん」
(そっか、そうだよね……そりゃそうなるよね……)
複雑な思いに捕われ、めぐみは席を立とうとする。
「でも……」
広瀬の声だ。
「でもあたしは……そんなの嫌。あたしは八代先輩に憧れてバスケ部に入ったんだし……」
(……!?)
「やっぱりレギュラー取るなら、先輩に勝って、その方が良かったよ……」
(……)
それを聞いて、めぐみは少し黙って考え、店を出た。そして真っ直ぐ寮に戻るのだった。

その日、めぐみは夜が明けるまで考えた。自分がこのままでいいのかどうかを。
ふと気がつくと太陽は中天に昇っていた。時計を見ると昼の1時。どうやら眠ってしまったらしい。
学校をサボってしまったが、仕方ない。ひどくお腹が空いている。しかしその前に、ボヤッとした頭を覚ますためにシャワーを浴びることにした。
「え……」
脱衣所でめぐみは思わず声をあげた。服を脱ぎ、姿見に写った自分の下着姿。胸はぴったりだったはずのブラから溢れ出ており、二の腕や太ももにはこれまで無縁だったはずの脂肪が着き、お腹の肉は下着にぷにっと乗っている。
「これが……私」
恐る恐る体重計に乗ると、記憶よりも11キロ多い数字を示した。血の気が引き、めぐみは倒れそうになるのを必死で我慢した。
「これじゃ、ダメだよね……」
めぐみの肩が震えている。その動きに合わせ、憎き脂肪もぷるぷると揺れている。
一頻り泣き、めぐみはシャワーを浴び始めた。その目には固い決意があった。
一時間後、バスケ部のコートにめぐみはいた。ユニフォームはピチピチで、かつての王拝のアイドルはそこにはいなかった。チームメイトはそんなめぐみを陰で笑ったが、そんな事を気にしている暇はなかった。
もっとも、寝ても覚めても練習に励むめぐみの姿を見ている内にそんな陰口も消えていったのだが。

そしてコーチに宣告されたテストの2日前、以前の体重……とはいかないが、めぐみは大分元のスリムな体型に戻ってきた。
そして、めぐみは悩んでいた。
(ダメ……こんなんじゃ、広瀬さんに……負ける……)
ようやく動きも元に戻ったのだが、それは単に前と同じ状態に戻ったにすぎない。相変わらず相手にマークされた時の弱さは健在だった。
(今からじゃ間に合わないし……どうしよう……)
2時間ほど動きっぱなしだったので、休憩しながら考える。
椅子に座り、飴をひとつ口に入れる。疲れた体にエネルギーが染み渡っていく。
「しかも胸は前より大きくなってるし、どうしたもんかな……」
しばらく考えている内に、お腹がぐぅ~と鳴った。
(お腹も空いてきたし、なんか最悪……)
空腹をまぎらわすためにもうひとつ飴を舐める。そしてあの時の自分の体を思い返す。欲望に任せ食べ、見苦しく膨れたお腹を思い返す事でここ2週間、めぐみは空腹を我慢してきた。
(ていうかあの時のあたし、胸が3つあるみたいだったよね)
思い出してくすりとする。
(……!?)
その時、めぐみの頭にある事が浮かんだ。
「もしかして、この方法なら……」
試しにやってみると、中々の感触である。
「よし、いけそう!」

秘策が効を奏し、めぐみはスタメンに選ばれた。
王拝は順調に勝ち進み、地区大会を優勝で飾った。

「……というわけで次は県大会だ。みんな良く頑張った。今日は練習を忘れて、遠慮なく騒いでくれ」
焼き肉屋「骨まで愛して」では王拝バスケ部の祝勝会が行われていた。この日はめぐみも満足するまで食べるつもりだった。MVPであるめぐみのところに他のテーブルで焼いた肉も次々と集まってくる。めぐみは満面の笑みでそれを片っ端からお腹に入れていく。
「それにしてもめぐみ、ほんと凄かったよね」
「ねー、よくがんばった!えらいえらい」
「そんなことないよ~」
めぐみはひたすら照れている。
「そんなことあるっつうの、このおっぱい女!」
「観戦してる男ども、みーんなアンタの胸ばっか見てたんだよ、絶対!」
隣にいた真子がめぐみの胸に手を伸ばす。
「やーめーて、食べづらいったらぁ」
「これじゃ共食いだ。可哀想に……」
「ぁ、揉ま……ないでょぅ……」
「揉むなと言われて揉まないやつがいるかぁ~」
「もう~、本当酒癖悪いんだからぁ~」
「ていうかめぐみも飲みなって」
目の前にビールが注がれたジョッキを出される。
「そだね。食べてばっかなのもなんだし」
ジョッキを受け取り、ぐいっと一気に飲み干す。
「よっ、いい飲みっぷり」
「はーい、お代わりだよー」
「肉焼けたよー」
新しいジョッキと山盛りの皿がめぐみの前に並ぶ。
「ありがと~」
「そだ、胸よりもこのお腹どうなってんだろ」
真子の手が下に動き、めぐみのお腹を撫で回す。
「へへ、まだまだ食べられるよ~」
ポンっと軽くお腹を叩き、ジョッキ片手に休むことなく肉を口に運んでいく。
5杯目のジョッキを空けた時、ブツッと音を立ててスカートのホックが弾けとんだ。
ちょっとだけ照れて、めぐみはお腹を愛おしそうにさする。引き伸ばされたシャツのボタンホールから、白いお腹がチラリと覗いている。
「うん、あたしのお腹、今日も元気!おかわり!」



え?めぐみの秘策って何だったのかって?
それは、乙女の秘密なのです。



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