613 :543@ネカフェ:2007/06/30(土) 20:49:50 ID:u3vdjiFC0
honestry 1話

俺は住友拓。とある学園……って、隠す必要もないか。大杯学園の高等部に通っている。
大杯学園は設備・環境、ありとあらゆる意味で最高の条件を備えており、かわいい女の子もよりどりみどりと、学生生活をエンジョイするにはこれ以上ない場所だ……一点を除いて。
中等部に入った時からずっと同じクラスで、あろうことか席もずっと隣の女子、白樺智莉。何かにつけてつっかかってくるこいつが鬱陶しくてしょうがない。
今日から俺も2年生。予定通りというか案の定というか、白樺と同じクラス、隣の席になってしまった。
「あ~あ、またお前の隣かよ。いい加減にして欲しいぜ」
「それはこっちのセリフよ!あぁもう、頭がおかしくなりそう……」
「元からおかしい癖に」
「なんですって!!」
こんな感じのやり取りも何度目だろう。
それでも友人に言わせると俺ほどの幸せ者はいないらしい。
「だってよ、あのバカでかい胸を見放題なんだろ。うらやましすぎるぜ」
と、こっちの気も知らずに勝手なことを言いやがる。……つっても、確かにそれは役得かもしれない。
中等部に入学した時から、白樺の胸は目だって大きかった。そして順調に成長していったようで、制服の胸元は徐々に盛り上がっていき、低い背丈もあいまり、目をひきつけてやまなかった。
高等部に入るとさらに成長は加速したようで、新しくしつらえた制服は既に悲鳴を上げており、今じゃそんじょそこらのグラビアアイドルとかじゃお呼びもつかない大きさだ。
……関係ないが、白樺は下半身も相当発育しており、体育の時間にはこれでもかと尻に食い込んだブルマの上から、明らかにサイズの合っていない下着の線が透けて見えたりする。
……って何を言ってるんだ俺は。


614 :543@ネカフェ:2007/06/30(土) 20:52:12 ID:u3vdjiFC0
こんな説明をしている間にホームルームが終わったようだ。
「あ~、終わったか」
「ぼけーっとしてるだけで1日が終わる人はいいわねぇ。うらやましいわ」
早速白樺の嫌味が飛んできた。
「なんだよ、どうせお前もこれから暇なんだろ?」
少しむっとして言い返すと、なぜか白樺はひとつ息をつく。それに合わせてたゆんと揺れる。
「おあいにくさま。あたしはこれから行くとこがあるの。あんたみたいな能天気と一緒にしないでよ」
そう言って、イーーッだ!とでも擬音が起こりそうな勢いで俺に向けて舌を出し、白樺はさっと教室を出ていってしまった。
……なんじゃありゃ。まあいい、俺も帰るとしよう。
ほとんど新しい教科書だけの重さの鞄を持って、俺も席を立った。
また一年かったりー日々が続くのかと思うと、ほんとかったりい。



615 :543@ネカフェ:2007/06/30(土) 20:54:49 ID:u3vdjiFC0
寮に戻りベッドに鞄を放り投げ、着替えを済ませて再び外に出る。
白樺のヤロウはあんなことを言っていたが、俺だって用事くらいはある。
電車で15分ほど揺られ、隣町のCDショップに向かう。あまり知られてはいないが、メジャーデビューした時からファンになったバンドのアルバムが発売したのだ。
会計を済ませて店内をもう一回りぶらぶらしていると、ドレッドヘアーがトレードマークの店長と出くわした。
「あら拓ちゃん。……そうか、今日はリップスファンキーの新譜ね」
「やあボブ。ちゃんとお買い上げしましたぜ」
そう言うとボブの野郎はうんうんと頷く。
カマっぽいし変人だし超能力使いのボブの野郎だが、俺はこいつを気に入っている。向こうも俺のことを気に入ってくれえいるのか(変な意味ではない)、何かと良くしてくれる。
「……?なんだい、ボブ。俺のこと見つめてたっていいことないぜ」
「う~~ん……拓ちゃん、ちょっと待ってて」
「?」
そう言ってボブの野郎は床から2センチほど浮き上がり、事務所のほうへ行ってしまった。
(相変わらず読めない奴……)
こんなことに慣れてしまった自分が少し嫌だ。


616 :543@ネカフェ:2007/06/30(土) 21:00:20 ID:u3vdjiFC0
頭の中で島唄の一番を歌い終えたころ、ようやくボブの野郎が戻ってきた。
「はいこれ、あげる」
と、妙にファンシーな柄の小さな封筒を手渡される。
「なんだい、これ?」
「んふふ内緒~。そうね……拓ちゃんの運命を変えるかもしれないもの、とだけ言っておくわ」
「なんじゃそりゃ」
「ま、いいからもらっておきなさい。損はしないと思うから」
「……わかった。ありがたくもらっとく」
ボブの野郎がこう言うんだから何かいいものなんだろう。俺は大人しくそいつを尻のポケットにしまった。
「それじゃボブ、また」
「ええ、頑張ってね」
何を?


617 :543@ネカフェ:2007/06/30(土) 21:02:50 ID:u3vdjiFC0
店を出たところで俺は腹が減っていることに気がついた。そういや朝から何も食べてない。そうでなくてもボブの野郎の相手は疲れるのだ。
駅とは反対方向に向かい、食べ放題の店“窓際族トットちゃん“に向かう。ここは値段も手頃で味も比較的よく、俺らのような学生ががっつり食べたい時にはもってこいだ。こっちに来ないといけないのが欠点といえば欠点か。
入り口のカウンターで1200円払い、ずずっと店内に入っていく。適当な席に荷物(CD一枚)を置き、食い物を取りに向かう。
皿を取り、さてなんにすっかなーと考えていた時。
「あーーーっ!!!」
と向かいから声がして驚いて顔を上げると、さらにびっくり。
「…………白樺?」
向かいにいたのは誰あろう、1時間半前に別れた白樺智莉だった。
「えっ、えっ、なんでここにいるの……?」
「なんだよ、俺がここにいちゃ悪いか?」
「えっ、いや、その……そんなこと、ないけど……」
「……まあいいや、せっかくだし一緒に食おうぜ。ちょっと待ってろ」
「あっ、えと……」
何か言いたそうな白樺を無視して俺は荷物(CD一枚)を取ってくる。
「うし、じゃあ俺は……っと」
「……」
適当に自分の餌をトレイに乗せる。ふと白樺の手元を見ると、一番大きなトレイにいくつもの器が乗っており、しかも全てがいわゆる特盛クラスの量がよそってあった。少なく見ても俺の3倍はある。
「何お前、そんな食うの?すげーな」
「う~~~~…………」
「なに唸ってんだバカ。お前のテーブルは……あそこか」
「あっ、待ってよー」
妙に大人しい白樺はほっといて、先に行くことにする。その後を白樺がトコトコと後をついてくる。
が、白樺のテーブルを近くで見た途端に足が止まった。


618 :543@ネカフェ:2007/06/30(土) 21:05:07 ID:u3vdjiFC0
「……なにこれ」
「はうぅぅぅ~~~」
テーブルの上にはいくつもの空の食器があった。10……いや、20くらいか?綺麗に積み重なってて正確な数はわからないが。
「……これ、お前が食ったの?」
振り返って白樺に聞く。白樺は顔を真っ赤にして俯いていたが、やがて小さく頷いて口を開いた。
多分、今の俺ほど間抜けな顔もないだろう。びっくりしたとか驚いたとかそんなレベルじゃない。思考が完全停止して何も考えられなかった。
さすがに一瞬嘘だと思ったが、椅子に置いてあるのは間違いなく白樺の鞄だ。制服姿のところを見ると学校終わってすぐここに来たのだろうか。ようやくそれだけ考えられるようになった。
それにアホみたいな胸のせいで目立たないが、よく見ると白樺の腹のところがぽっこりと膨らんでいる。
「……………………」
ぽかーんと口を開いたままの俺の脇を抜けて白樺はトレイをテーブルに置き、ぱっと座ってしまう。
「……いつまで立ってんのよ。……さっさと座ったら?」
少しぎこちないがいつもの調子の白樺の言葉で、ようやく俺は現世に戻ってきた。
「ああ…………悪い」
「さ……食べよ?」
「……そうだな」
そういえば俺は腹が減っていたんだった。



619 :543@ネカフェ:2007/06/30(土) 21:07:21 ID:u3vdjiFC0
あぐ……うん、おいし」
「…………すげぇ」
自分の分をさっさと食べ終え、白樺が食べてるのを見ているのだが……なんつーか、すげぇとしか言えない。
まずクリームシチューをあっさりと平らげ、山盛りの明太子スパとペペロンチーノを交互に胃に収め(ちなみにここまででピッチャー1杯のウーロン茶を飲んでいる)、今は八宝菜と生姜焼きをおかずに丼飯を食べている。
「……なあ、白樺」
「ん…ふぁに?」
「とりあえず飲み込め馬鹿」
「っ、んんっ……馬鹿で悪かったわね。で、何?」
「なんでラーメンの丼なんだ?」
「なんでって……いちいち取りに行くのも面倒じゃない?」
「そういう問題なのか?」
「そういう問題なの!」
こいつアホだと思ったが、口には出さないでおく。
ぷーっと膨れ面を見せ、白樺はまた食べ始める。その不機嫌そうな顔が、食べ始まると途端に笑顔になる。
(こいつって、笑うと目がなくなっちゃうんだな)
と、ひとつ発見。2へぇ。
「はい、おわりっ」
三つとも食べ終え、器を脇に重ねる白樺。回転寿司なら“ちょっと大食い“のレベルの枚数だ。
「それで終わりか?」
トレイに残ったソーセージと白樺謹製唐揚げとフライドポテトの盛り合わせを指差して聞いてみる。
「んーーーとね……」
悩むんかい。
白樺は背もたれに寄りかかって確かめるように腹を撫でる。テーブルに隠れてよく見えないが、手の動きから察するに小玉スイカくらいに腹が膨らんでいるのが分かる。
「まだ足りないなぁ……」
等とほざく。
「……取ってこようか?」
「えっ、いいの?」
「いいって。気にすんな」
「じゃあ、お願いします」
何でもいいから、と白樺はつけ加え、唐揚げをつまむ。
……こいつ何者だよ……。


620 :543@ネカフェ:2007/06/30(土) 21:10:02 ID:u3vdjiFC0
「おっしゃ、これでどうだ」
半分嫌がらせのつもりで、トレイに乗るだけ乗せて白樺のところに戻る。白樺の苦しむところが見られるチャンスなんて滅多にないからな、これも作戦だ。
「あっ、ありがとー。」
「こんなんでよかったか?」
わざとらしく聞いてみる。
「うーん……ちょっと多いかな。でも余裕だけど」
作戦失敗。
「よし、ラスト行きますか」
いつの間にか空になっていた謹製(略)を脇に積み、トレイを手元に引き寄せる白樺。
鶏肉のカシューナッツ炒めをあんぐと言いながら頬張り、噛んで噛んで噛んで噛んで飲み込む。
「ここってさあ、本当に値段の割には美味しいよね」
「そう……だな」
「あたしとか、ここがなかったら死んでるかも」
ふふっと笑い、最後のひとつを口に運ぶ。
次に手にしたのは麻婆春雨と丼飯。ご飯を麻婆春雨の皿に少し乗せ、擬似麻婆丼みたいにしてスプーンで掬う。
麻婆は唐辛子が効いているのか、赤みが強い。それとご飯の白が混じり、白樺のピンクの口に吸い込まれていく光景は何かエロチックを感じさせる。
「ん?……どうしたの?」
白樺が首を傾げて尋ねる。気づかないうちにじっと見てしまっていたようだ。
「あ、いや……うまそうだなと思って」
「あー、食べたいんだ?……はい、どうぞ」
「いや、いいって」
「遠慮しなくていいのに。はい、あーん」
「ったく、あーー……ん……うん、割とイケるな」
「でしょ?拓結構いいセンスしてるよ」
「嬉しくねー」
「まーたそんなこと言っちゃってー。ほんと、素直じゃないんだから」
いつもの憎まれ口だが、口調は優しい。いつもこうだったらいいのに。
ふと浮かんだ下らない考えを必死で振り払う。落ち着け、俺。おかしいのはこいつの方なんだから。
「ねぇ、もっといる?」


621 :543@ネカフェ:2007/06/30(土) 21:12:24 ID:u3vdjiFC0
「をあ……いや、いい」
「そう。じゃあ全部あたし食べちゃっていい?」
「ご自由に」
「うんっ」
そして白樺はパク、パクとテンポ良く食べ続け、ペロリと平らげてしまった。
「次は……っと、そろそろこれ行こうかな」
フカヒレ雑炊だ。丼を持ち上げ、はふはふ言いながらすすりこむ。最後は丼に直接口をつけ、こくこくと喉を鳴らしながら汁を飲み干していく。
「ぷはぁ……こういうあっさりしたのも、たまにはいいね」
「普段は何食ってんだ?」
「何ってないけど……だいたいはお腹に溜まるものかなぁ。あたしすぐお腹空いちゃうから」
「そうなんか?普段はそう見えないけど?」
「あ、うん……必死で抑えてるからね。……うん、」
と、言葉に詰まり、白樺は餃子をつまんでいる箸を止める。
「どうした?」
「えとね……その、あたしさ、お腹空いてるとすぐイライラしちゃって……一いっつも住友君にきついことばっかり言ってて……その、悪いなぁって……」
「…………」
「その……ごめんね?」
「……気にしてねえよ。それに」
「それに?」
「……なんでもねえ」
「なに?気になるなぁ」
「なんでもねえっての」
「わかった、そういう事にしといたげる」
「偉そうに」
「それはお互い様でしょ?」
それはごもっとも。
少し照れた素振りを見せて白樺は箸を取り、残った餃子をぱくつく。酢醤油を直接かけるのではなく、律儀に小皿につけてるあたりはやっぱりこいつも女だということか。


622 :543@ネカフェ:2007/06/30(土) 21:15:09 ID:u3vdjiFC0
さって、これでおしまいね」
最後にトレイに残ったエビピラフを手元に引き寄せ、軽く椅子を引く。臨戦態勢ってやつだろうか。
一番大きな皿に山盛りに乗せてきたピラフは、水の入ってるグラスと同じ高さほどあり、半分嫌がらせでつけた5個のハンバーグが添えてある。これひとつでも大の男が悲鳴を上げそうな量だ。
「いけるか?」
「あ、余裕余裕。まあ見ててって」
ペチペチと軽く腹を叩く白樺。テーブルに隠れてよく見えないが、その手は胴体に対してほぼ垂直になっている。
あの中に一体どれだけの食べ物が入っているんだろうか。聞きたいけど、それはさすがに憚れる。
スプーンを手に、猛烈な勢いでピラフを口に運ぶ。小さく切ったハンバーグで口直し(?)をしながら、これまでのが手抜きに思えるような滅茶苦茶早いペースで皿の上は空にしていく。
これだけのペースでありながら、しっかりと噛んでいるのもなんとなくだがわかる。
そんな、流れるような手つきに思わず見とれてしまう自分がいた。
まだ熱さが残るのか、ほふほふ言いながらピラフをかっ込む白樺の額に大粒の汗が浮かぶ。単に熱いのか、それとも苦しいのか、俺にはわからない。
と、白樺はナプキンで額を拭き、小さく笑顔を浮かべて「ちょっときついね」と呟く。
「無理しなくていいんだぞ」
「あ~、そうじゃなくて……あたし熱いの苦手なんだよね」
そして再びピラフに取り組む。相変わらずペースは落ちず、切り崩された山はもうすぐ影も形も消えうせようとしていた。
「じゃ、これでおしまい」
最後のひと掬いを口に持って行き、丁寧に咀嚼し、ゆっくりと飲み込む。一瞬遅れて、喉がくくっと動く。



623 :543@ネカフェ:2007/06/30(土) 21:17:33 ID:u3vdjiFC0
「はぁ、ごちそうさま」
やっとのことで終了宣言をし、白樺は丁寧に口元を拭く。
「おつかれ、なのか?……いいもん見させてもらったよ」
横目でチラリと積み重なった器を見て、俺は労いの言葉をかけてやる。
「あたしは見世物じゃないって……まさかこんなとこで誰かに会うとは思わなかったけどね」
「邪魔だったか?」
「ううん、そんなことない。誰かと一緒のほうが楽しいし」
「そいつはどうも。お前の意外な面も見れたし、俺のほうも悪くなかったぜ」
「ありがと。……意外な面って、何?」
「知らね」
「またそんな事言うんだから。あ、そうそう」
グラスのウーロン茶に口をつけ、白樺は続ける。
「あたしがこんな大食いだって事、他の人には……言わないでね」
「あ?ああ、分かった」
元からそんなつもりはないが同意しておく。
さて、そんじゃそろそろ帰りますか。
白樺も察したのか、鞄に手を伸ばす。
「あらーとーござーしたー」
やる気のなさそうな店員の声を背中に、俺たちは店を出た。



624 :543@ネカフェ:2007/06/30(土) 21:19:46 ID:u3vdjiFC0
言うまでもないが俺たちの帰る場所は同じなので、白樺とふたりで駅へと向かう。おそらく、その間俺たちは下らない会話をしていたのだろう。よく覚えていないが。
隣を歩く白樺は俺より頭ひとつ分くらい背が低く、ちょうど頭が俺の肩の辺りに来る。白樺はいつものようにまっすぐに俺のほうを見て話かけてくる。
少し目を下ろすと、体の厚み以上に突き出た胸が歩くのに合わせてゆさゆさと揺れていて、そこから制服のラインがウエストに向かって真っ直ぐ……ではなく、重そうに膨らんでだお腹が凸になっていて、緩やかな鈍角を描いている。
(ツンツンしたとこさえなき普通に可愛いんだよな、こいつ……)
認めたくないが、正直見とれてしまっていた。ちくしょう、なんか悔しい。
電車の中でも白樺は男共の視線を一点に集めていた。そしてやがて寮に着く。
「じゃ、またな」
「うん、今日はありがと」
そう言って別れようとしたとき、俺の頭の右側にに何かが猛烈な勢いでぶつかり、思わずよろめいてしまう。
「っっってーーーー!!なんだぁ!?」
見てみると、サッカーボールがテンテンと転がっていた。部活の練習で飛んできたのだろうか。
「すいません、大丈夫ですか!?」
ユニフォームに身を包んだ女の子が駆け寄ってきて、ひたすら俺に謝る。
「いや、いいって。大した事ないし」
「そうですか……それなら良かったです。ほんと、すいませんでした!」
ボールを拾い、女の子は走って行った。


625 :543@ネカフェ:2007/06/30(土) 21:21:44 ID:u3vdjiFC0
「災難だったね。……大丈夫?」
「正直まだちょっとくらくらする」
「えっ!?……ちょっと見せて。……うわあ、赤くなっちゃってる」
「平気だって、こんくらい」
「病院行けって言っても聞かないよね。じゃあせめて大人しくしてなきゃ駄目だよ?」
「へーへー、わかりやした」
「よろしい」
頭を撫でるな馬鹿。
「んじゃあ、これで」
「うん、お大事に」
「ああそうだ。……白樺」
「ん?何?」
「今年もよろしくな」
「えっ!?……ううん、こっちこそ、よろしく」
なんつーかすげー不自然な言葉を交わして、俺はさっさと自分の部屋に戻ることにする。とりあえず冷やすか。



626 :543@ネカフェ:2007/06/30(土) 21:27:58 ID:u3vdjiFC0
住友が寮に戻るのを見届けて智莉が自分の部屋に戻ろうとしたとき、足元に小さな封筒が落ちているのを見つけた。
「あれ、住友君が落としたのかな?」
まああれだけの衝撃だし、ポケットの物が落ちても不思議じゃない。
口の留まってない封筒からは何かのチケットのような物ががちらりと顔を見せている。
「なんだろ、これ……」
悪いな、と思いながらも智莉はそれを出してみる。
「あーっ!いいなぁ、これ……」
それはこの辺りでは評判の焼肉屋の無料招待券だった。しかも二枚。
「いいなぁー、なんでこんなの持ってるんだろ。……ま、いいや。明日返せばいいよね」
そう言って、鞄の中に封筒をしまう。そして自分の部屋に向かうのだった。
智莉の中で、わくわくするような、嬉しい予感が芽生え始めていた。

さてこのとき、誰も知らないところで、誰も知らないフラグが立っていた。
ただ一人、ボブの野郎だけは全てを見ていた。
「うふふ……、拓ちゃん、うまくやってよね」
焼酎のタバスコ割りを片手に、暗闇の中、ボブの野郎は呟いた。

|