大食い部

夕暮れで暗くなりつつある校舎の階段をスルスルと足早に降り、倉田由佳は新校舎へと続く廊下を小走りに通り抜けて行く。こんな時間、ましてや昇降口から遠ざかる方向の廊下などは静まり返っていて人の気配すら無い。由佳が走り去った廊下は静寂が包み込む。…しかし暫くしてまた人影が一つ。由佳と少し間合いを置いて、気づかれないように追いかける今野隼人の姿があった。

隼人は由佳のクラスメイトであり、由佳に密かに思いを寄せていた。高1の時は別々のクラスだったが、高2で同じクラスになった。隼人の好みはおしとやかで品の良い、母性を感じさせるタイプの女の子であり、あらためて同じクラスになった由佳はまさにそんなタイプの女性であると思ったのだ。

その由佳が、放課後、時折不可解な行動を取っている事に隼人は早々に気が付いたのだ。ほかのクラスメイトと一緒に下校したと思ったのに、1時間ほどして学校に戻っていくのである。隼人の家は学校の向かいの通りであるから、自分の部屋から登下校する生徒の様子が見えるのである。隼人がいつも通り机に勉強道具を広げ、部屋の窓から校門のほうをボーっと眺めていた金曜日。由佳とおぼしき女の子の後姿が目に写ったのである。部屋の窓から校門までは20mほどあったが、最近常に意識して見ている後姿なので、隼人にはその背格好や歩き方から一目で由佳と分かった。しかも手ぶら。忘れ物を取りに来たにしては、あまりに不自然だった。

それから隼人の観察は始まった。特に所属する部活も無く、たまに友人と遊びに行く以外は家でゲームか勉強しかなかった隼人は、由佳の行動が気になり、自分の部屋を利用して、ある意味張り込みに近いことを始めたのだ。由佳は決まって金曜日の夕方に再登校する。少なくとも3週間は、それ以外の日には現れなかった。手ぶらの日もあれば、随分大きなリュックを背負っている日もあった。そして再登校してから辺りが真っ暗闇に包まれるまでの1時間程度の間には、少なくとも由佳は学校から出てくる事は無かった。

そしてその日は4週目の金曜日。隼人は制服を脱がずに自分の部屋で待ち伏せた。案の定、由佳は現れた。その日は手ぶらではなくリュックの日だった。隼人は「ちょっと出かけてくる」とリビングに向かって声を掛け、自分の部屋から階段を伝って玄関から外を出て、小さくなった由佳の後姿を追いかけた。

渡り廊下を抜けて新校舎に着くと、由佳は階段をゆっくり上り、家庭科室の方へ向かった。そこからは何と、廊下に明かりと話し声が漏れていたのである。由佳が家庭科室のドアを開けると、「ヤッホー由佳」「待ってたよ」などという声が聞こえて来て、ドアが閉められた。

この学校には文科系の部はあるが、家庭科に関連する部は無い。中からワイワイガヤガヤと声が聞こえてくるが、確認できるのは女の声だけだった。一体何のために女子集団が家庭科室に集まっているのだろうか。隼人はそれが気になり、いつしか階段の脇から家庭科室のドアの前に移動していた。家庭科室の前に立つと、話し声はより鮮明に聞こえる。普段クラスで聞こえるたわいもない会話と共に、料理屋のようないい匂いが漂ってくる。会話に交じって、「…砂糖入れすぎかな?」「もっと火を強くしなきゃ」などという声も聞こえる。

どうやら家庭科室の中で料理をしている事は確かだった。しかし誰が何のために。新しく料理部でも出来たのか?…隼人は中を確認したかったが、まさか呼ばれてもいないのに突然家庭科室のドアを開ける訳にもいかない。気づかれないようにドアを少しだけ開け、覗き込もうとした。しかし、何とドアは中から鍵が掛けられている。どういう事だろうか。放課後の家庭科室。中からは女子の集団の声。料理。そして入口には鍵。ますます気になった。

隼人は家庭科室の手前のトイレに行った。隼人はトイレの天井には天井裏に上る為のメンテナンスホールがある事を知っていた。勿論、入ったことは無かったが。隼人は個室の仕切りを使ってよじ登り、メンテナンスホールの蓋を開けた。中は真っ暗で配管があり、簡単に中を進むことは出来ないと思ったが、天井裏は幸運にも家庭科室と繋がっており、そちらの方から明りが漏れていた。2、3分すると目も慣れてきて、隼人は難なく家庭科室の天井裏に辿り着いた。

隙間から覗いた光景は、目を疑うものだった。実験机の上に大量の食材。その横には、給食センター用か、あるいは炊き出し用かと思うほどの大なべが火に掛けられ、見たことのある女子がかき混ぜていた、そしてもう一つ驚いたのは、その女子は学校制定の水着姿なのだ。穴から見える範囲は2.5m四方。その中に由佳の姿は見えていなかった。隼人はかじりつくようにして、その穴から奇妙な光景の観察を続けた。

--家庭科室の中で行われている活動は、実は何と「大食い部」だったのだ。当然公式ではなく、大食いが趣味、あるいは周囲の人を気にせず一杯食べたい女の子達が有志で結成した水面下の活動であり、由佳は1年の冬からの参加で、比較的新しいメンバーだった。メンバーの家ではそれぞれ体育会系の部活という事になっており、部費として集められたお金で食材を集め、毎週金曜日から土曜日に掛けては「合宿」という事で泊りがけの活動になっている。合宿にしている理由は。お腹がふくれた状態で帰宅したら明らかに怪しまれるためである。メンバーは金曜日の夜、この家庭科室で自分たちで調理した大量の食べ物を食べ、寝泊まりし、土曜日の昼頃までに消化し切ってお腹を平らにしてから帰宅するのである。つまり部員には、大量の食べ物を食べる能力のほか、それを短時間のうちに消化し切る事も要求される。長い目で見れば更に、太らないという事も必要かも知れないが。

その日調理されていたのは、うどんだった。その量はざっと200人前。その日集まったメンバー10人では一人平均8kg、スープも入れると10kgの割り当てになる。勿論そんな大きなどんぶりは無い。大なべから何杯もお代わりするのだ。メンバーのキャパシティには個人差があり、10kg食べる子も居ればまだ5kgくらいが限界の子も居る。キャパシティだけでなく、早食いの要素もあるので、例えば11kg食べられる子でもゆっくり食べていると、8kgくらい食べたところで鍋が空っぽになってしまう事もある。調理の旨いメンバーのお陰で、作られるメニューはいつもおいしい。まさに食い意地の張った女の子達の、食べ物の取り合いとなるのだ。

 その日は大食い部としても初の試みが為されていた。それは先ほどの隼人が見た光景の中にも写っていた通り、スクール水着での大食い挑戦だった。これは部長の提案だった。春から夏に向けてだんだん温かくなってきた時期。大食いをすると体温も上昇するし、食べ物から吸収する水分の影響もあって、とにかく汗をかく。かと言って、さすがに裸で大食いは恥ずかしい。水着は吸水性にも優れており、まさにうってつけの素材だ。また、服装に水着を選んだもう一つの目的は、締め付けの効果であった。

 最近のメンバーの胃袋の容量は増えて来ており、次の日の昼になっても消化が終わらずなかなか帰宅出来ないメンバーがちらほら出て来ていた。つまり、急激な胃袋の容量増加に対して消化能力が追従し切れていないのであった(メンバーの中にはその状態で帰宅しても構わないという子も居たが)。それで無いにしても、部費として捻出して貰っている食費には財力に限界があるので量を増やすには質を落とさなければならないが、味が楽しみで食べに来ているメンバーにとってそれは本末転倒である。そこで部長は、胃袋の容量にある程度のレギュレーションを設けるために、適度な締め付けを与える事が良いと思ったのだ。とはいえ部長自身もかなりの大食いだったので、自分自身が水着の締め付けにどれだけ打ち勝って大食いが出来るのか、という個人的な興味もあったようだ。

由佳は友達にもばれないように、一旦友達と帰宅したように見せかけた後、その日は駅のトイレで下に水着を着用し、学校に引き返したのだった。由佳が部屋に入ったのはメンバーの中で一番最後だったので、その頃にはもう他のメンバーは全員水着姿でうどんを茹でたり、具の調理をしていた。由佳も部屋に入るとすぐに制服を脱ぎ捨て、準備に入った。

「いただきます。」
全員が一つの大テーブルを囲んで座り、食事が始まった。テーブルの横に置かれた大なべ。大きすぎてテーブルの上に置けないサイズだ。お代わりは自由。うどんなのでご飯物と比べて喉を通りやすく、すごいペースで呑み込んでいく。普通に噛みながら食べている子も居れば、ほとんど丸呑みで味わう事よりも胃袋に入れる事が目的なんじゃないかと思うくらいの勢いで流し込んでいる子も居た。学年が上の子ほど能力が高い訳でも無く、3年生で5、6kgしか食べられない比較的小食の子も居れば、1年生なのに、日によってはその倍の12kgも食べてしまうようなモンスター級のルーキーも居る。森川さんだ。それなのに身長は160cm前後で、若干胴長な日本人体型だが太めではなく、顔は美形のおちょぼ口で性格もおしとやか。大食い部のメンバー以外はまさか森川さんがそんな口が12kgもの食べ物を呑み込んでいるなどという事は全く知らないのである。

隼人の潜む天井裏の穴からは、この食卓の様子がギリギリ見えなかった。見えるのは鍋半分くらいまでで、あとはメンをズルズルとすする威勢の良い音と、「おいしいね」「あ、跳ねて水着についちゃった」「水着だから汚れても安心だね~」など時々聞こえる会話と、時々おかわりを掬いに来る子の姿がちらっと見えるだけだった。その中に、由佳の姿も時々見えたようだった。

鍋に残るうどんの量が半分近くに減ってきた。会話も「あ、もう張ってきた、水着が。」「ホントだよね」「水着に負けないくらいの勢いで頑張ろうね」などの内容に変わって来た。隼人はその様子が見たくてたまらなかった。由佳の声も聞こえる。「恥ずかしい。もう外歩けないよね~。」という声と共に、トントンというお腹を叩いているらしき音。一体部屋の中の光景はどうなっているのだろうか…隼人の頭の中はそんな好奇心と興奮で一杯だった。

--ミシミシ…ガタン!家庭科室の中、うどんを頬張る輪の外から、突如大きな音が聞こえてきた。天井のパネルが一枚剥がれて、床に落ちてしまったのだ。元々外れかけて隙間が空いていたような所に、更に人が乗ったのだから割れて無理もなかった。パネルが抜けた天井の穴からは、一人の男子高校生がぶら下がっているのが見えた。

普通の公式な部だったら、そんな覗き魔は即職員室に連行されて処分だろう。盗撮などが目的の場合は、警察への通報も考えられる。しかし如何せんこの部は非公式だ。騒ぎを起こす事自体がタブーだった。隼人はすぐに天井裏から引きずりおろされ、身辺をチェックされた。携帯のカメラなどで盗撮が行われていないことだけチェックされたが、その後どこかに連れて行かれることは無かった。隼人は興味本位で由佳の後を追ってここまで辿り着いた事を正直に話した。由佳の顔は少し赤みがかっていた。そして部長は大食い部の大まかな説明をした後、今日ここで知ったこと、起こったことは誰にも言わないように約束させられた。隼人は「勿論」と答えた。秘密を守ることは、お互いにとってメリットのある事だった。隼人自身、これからこの部屋で行われる事に対して非常に興味があり、途中で抜けるのは勿体無いと感じた。隼人は家に電話をし、成り行きで友達の家に泊まることになったと嘘を伝えて電話を切った。

隼人はテーブルから少し離れた所に座った。「そんなに見たいのなら見せてあげるから」と、追い返されずそのまま見学をさせて貰う事になった。秘密を守るという約束があるとはいえ、仮にも男子生徒の居る前で彼女たちのその大胆な行動は何の躊躇も無く再開された。隼人が落ちた時、もう部員のお腹は皆膨らみかけていたのだが、一時的に中断された反動か、彼女たちの食欲は更に加速して再開された。その光景は天井の穴から想像していた以上であった。「ゴクッ…ゴクッ…」隼人からはちょうど真横を向けて座っていたクラスメイトの永山さんは、どんぶりのつゆを勢いよく飲んでいく。その音に合わせて喉が大きく動き、それと同時にスクール水着に締め付けられたお腹が徐々に膨らんでいくのがはっきりと伺い知れた。隼人の視線はそのお腹に釘づけだった。

部員は10名。1年生から3年生まで、色々な体型の女子が集っていた。スクール水着は良くも悪くも体型をあらわにしてしまう。とりわけ大柄な子は居なかったが、小柄な子から中柄な子、少しぽっちゃりから痩せ気味の子まで様々だった。隼人のクラスメイトの永山は上半身は細いもののよく見るとお尻や太股が立派で、普段制服姿しか見なかった隼人にとっては意外だった。『隠れたところでこんなに大食いして、取りすぎた栄養をこんな見えないところにため込んでいたのか…』立ち上がって鍋にお代わりを掬いに来た1年生の林は手足も細く、お尻も小さかった。大きく堂々と膨らんだお腹と、小さくすぼんだようなお尻とのコントラストは印象的であった。細い脚からも伺えるように体力は弱い。林さんはお腹の重みで少しよろけながら、上半身を後ろに反らせてバランスを取りながらヨロヨロとテーブルに戻っていった。こんな体型と仕草、普通は妊婦以外に考えられないだろう。

由佳の食べっぷりも他の部員に全く引けを取っていなかった。由佳の食べ方の特徴は、ゲップと熊落としだった。隼人のイメージの中ではしとやかな筈だったあの由佳が物凄い勢いでうどんをすすり、呑み込んでしまった空気を「ボアァ!」という大きなゲップで抜いている。ゲップをする子は他にも2、3人居たが、由佳のゲップが一番激しくて獰猛だった。そして中盤から始まった熊落とし。腰を浮かしてドスンと座る、大食い企画モノのTV番組でも有名なあの技だった。「ドスン、ドスン」スクール水着のお腹がバウンドしているのがよく分かった。由佳のほかに早くから熊落としをしていたのはルーキーの森川さんだった。パンパンに膨らんだ長い胴体は重量感があり、由佳よりもずっと迫力のある熊落としだった。「…ズダン!…ズダン!」森川さんが座っていたのは華奢な丸椅子だったが、椅子の足が折れてしまうのではないかと心配になるくらい力強い熊落としだった。

やがてラストスパートに入り、何と部員の殆どが熊落としモードに入った。「ドン…ドン、ズダン!」椅子をお尻で叩き割るような熊落としの大合唱が始まった。林はプルプルと震え、その華奢な足腰で大きく膨らんだお腹を持ち上げるのは辛そうだった。それでも落下する時の衝撃は見るからに凄そうだ。その中には最低でも4~5kgのうどんが入っているのだから当然だ。大食い部の練習として熊落としは最低10回はやるように、そして熊落としの後に食べられる量を増やすように、という部員目標が掲げられていたのだ。10人もの集団で行われる熊落としは、それはそれはすごい迫力だった。隼人が座っている椅子のあたりまで床が振動しているのが体に伝わってくる。勿論、隼人は熊落としを生で見るのは初めてだった。しかも、憧れの由佳までも。しかし、幻滅はしなかった。むしろ、あの野蛮なゲップと相まって、自分の知らない由佳の姿を一度に見ることになり、感動と好奇心に満ちていた。

「ごちそうさま~!!」
部員全員が食べ終わり、挨拶をした。隼人が慌てて駆け寄ると、食事が始まるまで一杯だった大鍋が完全に空っぽになっているのが見えた。自分の体は余裕で中に入れそうなくらいの、大鍋である。この中身は一体どこへ…と考える余地も無く、部員のお腹の中に分割され、移動したのである。隼人はおそるおそるその視線を鍋から彼女たちのお腹へと移した。『…!!』「お、お腹が…大丈夫なのか!?破裂しそうだぞ!?」「…アハハ。初めて見る人にはやっぱそう見えるんだ~。確かに今日はちょっと水着の締め付けがあって苦しいけど、まだまだ。ねぇ泉、水着そんなに効果無かったねぇ。」「ごめんごめん。でも服が汗ビチョになるよりマシでしょ。」…例えるならば、臨月を迎える女子高生の妊婦が無理矢理スクール水着にそのお腹を押し込めたよう。隼人の目の前に広がっていたのは、それが10人も終結しているような、極めて謎めいた光景だった。

へそ周りのサイズにして80cm~90cmにまで膨らんだ少女たちの貪欲な腹を、濃紺の生地がしっとりと覆う。競泳水着の生地はそんなに伸びるものなのかと思うかもしれないが、よく見るとお腹のあたりだけは生地が伸びすぎて生地が薄く透けてしまっている。今の彼女たちは、水着の設計者が想定した以上のお腹である事は間違いなかった。大鍋を完食した少女たちは、暫くは殆どその場から動かなかった。というより、動けなかったというのが正しいかもしれない。両足はだらんと前に投げ出して浅く腰掛け、両手は座面の脇につけて椅子からずり落ちるのを防いだり、時々片手でお腹を優しく撫でて満腹感を堪能している少女も居た。

「プゥ~!」…突然、甲高い音が部屋に響いた。「あ、一番鶏が鳴いた。今日の一番鶏は美奈ちゃんでした。」音のすぐ後に部長が皆に報告する。部長の鈴木紗枝と同じ3年生の中島美奈が、食後のオナラをしたようだった。部員皆から乾いた拍手が起こった。しかしすぐ後に、どこからともなく「プィ~ッ!」「ブブブブブブ…」と、高音低音入り混じった音が次々に沸き起こった。隼人には何が起きているのか一瞬分からなかったが、すぐに部長からの解説が入る。「一杯食べるとお腹の圧力が高まって、腸に溜まってたガスが押し出されちゃうんだよ。こんなの、実際に大食いしてみないと分かんないよね~?」とのこと。隼人は思わず立ち上がって椅子の輪の外を一周した。それまで圧倒的な迫力により金縛りで縛り付けられていたように椅子から動けなかった隼人は、部長に言葉を掛けて貰った事で体の束縛がようやく解け、動き出すことができたようだった。

スクール水着越しであるし、オナラは気体なので見えないが、隼人にはその音と臭いからオナラの出所を十分に確認する事が出来た。由佳の後ろに立つと、あの由佳も甲高い音を立ててオナラを出していた。横から顔を覗き込むと、やはり少し恥ずかしそうだ。「…秘密だからね。」と、ちょっと目を合わせただけですぐに視線をそらしてしまった。由佳の小さいお尻から発せられる気体。周囲のメンバーのオナラとも混じって、テーブルの周囲の空気はうどんのダシの臭いから、少し卵の腐った臭いが混じったような臭いに変わっていた。しかし鼻が曲がるという程の臭いではなかった。大食いによってメンバー全員の腸内の活動が活発化している為、悪臭を放つような原因物質が出来ないのである。隼人はあらためて由佳の後姿を見る。スカスカの椅子の背もたれの隙間から見える小さなお尻と少し猫背気味に丸まった細い背中。しかし、後ろからも膨らんだお腹の両脇が見えている後ろ姿からお腹の凄い出っ張り具合が容易に想像できるような、そんな状態だった。水着の生地も前方の膨らみに強引に持って行かれる形となっており、背中側には肩甲骨の下とお尻の上あたりからお腹側へと走る線状の細かい皺が幾重にも出来ていた。見渡すと、どの子の水着にも同じような皺が出来ていた。

数分後、オナラの大合唱はまばらになりながらもまだ続いていた。ゴリラの群れは森の草葉を1頭当たり毎日30kgも食べ、食後のオナラの大合唱が行われる。隼人自身、そんな様子をテレビで見たことがあったが、目の前に居るのは人間である。しかも「首から上」が顔見知りの子達の集まりである事が、隼人にとってとても異様だった。まるで「首から下」は濃紺のコスチュームに身を包んだ別の生き物の集まりのように感じた。

オナラの合唱が終わると体重測定の時間が訪れた。部長がテーブルの引き出しから体重計を出そうとした。部長の鈴木はメンバーの中でも一番活発にしゃべったり動いたりしていたが、そんな部長でも前に屈むことは少し辛い様子だった。「あ、今野君が居るじゃない。せっかくだから手伝ってよ。」隼人は言われるがままに体重計とノートを取出し、床にセットした。今流行の体脂肪計付きのような電子式ではなく、乗った重さに合わせて数字盤がカチャカチャと回るタイプのアナログ式だった。

「じゃあまず私から行きます。…えーっと、56だから、食べた量は8kgでした。次乗りたい人~!」メンバーは食べる前に測定をしており、食後の体重からそれを差し引いて食べた量を記録、比較していたようだった。ノートにはメンバーの記録がズラッと並んでいるが、一番左の列には名前も苗字も一切書かれていない。カタカナやひらがな、英数字の暗号が並んでいるだけだった。「次はやっぱり、ジェシーかな?」「はーいジェシー行きます!」ルーキーの森川が体重計に乗った。「…すごい、62!今日は12kg食べました!」隼人は、12という数字にも、元の62という数字にも驚かされた。隼人の体重は60kgあるかないかだったので、隼人にしてみれば『今の森川さんは自分より確実に重い』という事になる。元は50kgしか無いのに。隼人があらためて森川の体を見ると、その腹部は実に堂々としており、みぞおちから股間まで釣鐘上に膨らんだ伸びやかなボディは、まさに「大食いをするために産まれてきた体です」と自己主張をしているかのような、王者の風格だった。

永山は何とそれを上回る64kgだったが、元の体重が57.5kgなので食べた量は6.5kgだった。やはりお腹だけでなくお尻や太股が立派で、大食い後の彼女はものすごく貫禄があり、元の体重から重いのも納得だった。永山のあだ名はどうやら「マギー」だった。隼人がこっそり帳面を捲ると、去年の同時期のマギーは50kg→55kg(+5kg)と書いてある。大食いでどんどん基礎体重が増えてきている子とそうでない子が帳簿上から歴然と分かってしまう状態だった。隼人は、帳面の情報が流出した時に個人を特定出来ないようにコードネームを使っているのだと悟ったが、その直後に部長の鈴木が補足した。「あ、ちなみにここに書いてある名前は、みんなの胃袋の名前だよ。」

何と、部員のニックネームではなくその胃袋に名前が付けられているのだった。部員は入部と同時に、その胃袋に一人一人異なるニックネームを付けられる。それは自称だったり公募だったりである。ちなみに部長の胃袋は「ギャラクシー」だった。使い方にも補足が入る。「ホラ。例えばあたしの場合、顔を見て私自身の事を呼ぶときは鈴木さん、とか部長、で良いけど、お腹に話しかけるときはちゃんとギャラクシーって呼ぶんだよ。ホラ、ギャラ君。今野君に挨拶して。」部長はお腹を突き出した。「あ…どうも。えーと、ギャラクシーさん」。突然の展開に意味が分からずとまどい、あいまいな返事をする隼人。どうやら鈴木の胃袋は君付けで呼ばれているので、男性人格として扱われているようだった。

由佳の胃袋のコードネームは「ヴィーナス」だった。その名の通りお腹の膨らみは美しく、女性人格なので隼人も取り敢えず安心した。気になる体重は57kgで、元が47kgなので、ヴィーナスは実にうどん10kgを内に秘めたという計算になる。「こ、この中にじゅ、10kgも!?」「この中じゃないでしょ?ヴィーナスちゃん。」由佳が少し恥じらいながら隼人の発言を訂正する。「あら、ヴィーナスは記録更新だね。」「いよいよ水着の締め付けの効果なんて無かった訳だね~。」「締め付けに耐えてよく頑張った。感動した!」そう言いながら永山と部長は由佳、もといヴィーナスを優しく撫でた。由佳は少し体をくねらせ、嬉しそうな表情を見せた。

「ね、…ねぇ、その…ヴィーナスに触っていい?」たまらなくなった隼人はついに由佳に願い出た。「うん、いいよ。」答えはあっさりしていた。由佳はよっこらしょと言わんばかりに何ステップかで体の方向を変え、隼人の方にその膨らんだ水着のお腹を差し出した。皮下脂肪でも内臓脂肪でもなく、単純に胃の内容物の要因で膨らんでいるそのお腹はまるでバレーボールやバスケットボールのように、指先の圧力程度では窪む要素も無いくらいカチカチに張っていた。それに熱い!アツアツのうどんを短時間で大量に取り込んだためだろうか。そのお腹は普通の体温よりだいぶ高温になっている事が、水着越しに感じられた。「熱いでしょ?」「うん、びっくりした。でもうどんが熱かったんだから当然だよね。こんなに熱くて、低温ヤケドにならない?」「大丈夫だよ。それに、冷たい冷やし中華を食べると、食べた直後は確かに冷たいけど、だんだん消化活動が活発になってくると同じように熱くなるんだよ。不思議でしょ?」由佳は隼人の手首を掴み、ヴィーナスを優しくゆっくりと、繰り返し撫でさせた。隼人の手のひらに嫌でも伝わってくる硬さと温かさ、水着の生地の細かいザラザラ感、それと汗によるしっとり感。隼人には、由佳の水着の中が汗で若干蒸れているのが伝わった。

「あぁ、確かに暑いよね~。」「みんな今日みたいに一杯食べた後は内臓温度に合わせて体温が高くなっちゃうから、寝る時はいつも薄着なの。今日は水着だから丁度良いかも。」隼人に説明する部長。「あーこのままシャワー浴びたい。でも明日の朝まで我慢。」メンバーは椅子に座ったまま手のひらを団扇のようにしてお腹を仰ぎ、口々に言う。「シャワーはいいけど、なんだかオシッコしたくなって来ちゃった。あたしちょっと行って来ます。」立ち上がるのは森川。「見つからないように気を付けてね。」

隼人が壁をよじ登ったトイレは隣。数分後、森川は戻って来た。他のメンバーとの会話が始まる。「ハァ、大変だった。」「おかえり。ジェシーがどうかしたの?」「いやね、いつもなら水着を脱いでするんですけど、今脱いだら二度と着れない気がして。ジェシーがおっきくなっちゃってるから。」「確かに。一度脱いだら自力じゃ着らんないよね。で、ずらしたの?(笑)」「股の所ちょっと横にずらそうとしたんだけど、生地が張っちゃってて。。。それとあと、ジェシーが邪魔で下が見えないからうまく出来なくて、ちょっと汚しちゃいました。」「うっわ!」「大丈夫ですよ。ちゃんと洗ったので。」確かに森川の水着は股間のところだけ明らかに濡れていてパッと見かなりエッチな様相になっていた。「…どうせ他のみんなも同じ目に遭いますから、いいですよ。」

ちょっとふてくされた森川。他のメンバーも立ち上がって森川に近づいていた。そして森川が椅子に戻ろうとしたとき、森川のジェシーと永山のマギーとが接触した。「…シュルッ」伸びきった水着の、網目のような生地同士が強く擦れ、小さいながらも皆の耳にはっきりと聞こえる程の音を立てた。「あっ…」接触した本人たちも声を上げた。「今の…気持ちよかったですよね?」「う、うん。」ジェシーとマギーはもう一度向かい合い、今度は互いに、意図的にへその辺りを目がけてお腹をぶつけ合った。「チャプン!」という音と共に、両者のお腹が力強く弾き合った。大食いの女の子のお腹同士がぶつかり合うと何が起こるのか。今まさに、本人たちも未知の領域に突入し、模索している。隼人はここぞとばかりに、その光景に食い入った。

「すごい、なんか衝撃が遅れて伝わってくる感じ。」どうやらお腹同士がぶつかる瞬間よりも、それによって胃の中身が動き「チャプン」と音を立てる瞬間に本人たちは何かを感じている様子だった。濃紺の巨大なお腹同氏は何度か優しくぶつかり合った後、今度はくっついた状態で横に擦れ合った。「シュル…シュル…」再び水着の生地が激しく擦れ合う音。セメント袋のように内容物を湛えた重厚なお腹同士は、互いに激しく求め合うように、まるで何かの動物の求愛行動のようにじゃれ合っていた。水着の生地が擦れ合う微振動がお腹に伝わって居るのだろうか。本人たちは、「あぁこれ。気持ちいい。」と目をつぶり、恍惚の表情をしていた。

「私も。」「じゃあ私とやろ。」メンバーは次々に立ち上がり、お互いのお腹をぶつけ合ったり、擦り合ったりが始まった。2人同士や、3人のグループも出来た。さっきまでオナラの大合唱であった家庭科室は、今はチャプンチャプンという胃の中から響く静かな合唱に変わった。3人のグループは全員が隣同士の2つのお腹同士をくっつけようとしても、なかなか上手くくっつけ合う事が出来ない。真ん中にいびつな三角形の隙間が出来てしまう。「何かこの真ん中の隙間を埋めたいんだけど。あ、そうだ。こんな時こそ今野君。」隼人は呼ばれ、そこにしゃがむように指示された。言われるがままにしゃがむ隼人。この後自分がどんな目に遭うかは容易に想像が着いたが、隼人はもはやそれに巻き込まれたいという妙な好奇心で一杯だった。隼人の頭を取り囲む3人のお腹。そしてそれらは3方向から同時に攻めてくる。顔面と右後頭部、左後頭部とほぼ同じタイミングで、温かく湿ったスクール水着の腹がどついて来る。顔面にぶつかったのは部長のギャラクシーだったが、由佳のヴィーナスほど硬くは無かった。それはしたたかに変形し、ゴム毬のように優しく隼人の顔面を包み込んだ。後頭部のそれらも迫ってきて、隼人の頭部の存在を揉み消すかのようにグリグリと左右に揺さぶられた。隼人の頭は完全に3人のお腹の動きの為すがままに左右した。そして、埋もれてしまった為に真上からは殆ど見えなくなった。

「ぐわわ、あ…」「あ、なんか頭だとお腹同士とはまた違った感触。くすぐったい」「あーあ。今野君埋まっちゃったよ。アハ。」隼人の頭部は3方向からの熱気で一気に温められ、汗まみれになった。隼人の両耳には、双方から密着している別々のお腹から、「ゴポッ!」「ゴボボボ」という音が左右独立に聞こえて来ていた。「ほーら二人とも、あんまりくっつけ過ぎると、今野君が窒息しちゃうよ。」顔面に密着しているギャラクシーが一旦離れると真っ暗だった視界が確保され、見上げるとクスクスいたずらっ子のような笑みを浮かべたショートヘアの鈴木部長の顔が。そして隼人がようやく深い息継ぎをした後、ギャラクシーはまた勢いをつけて迫ってきて、隼人の顔面を覆う。こんな遊戯、というよりもいじめが数回繰り返された後、隼人はようやく魔の三角形から解放された。10対1ということで、隼人の立場は基本的に弱かった。大食い部員の集団効果もあったようだ。

「…大丈夫?今野君」心配して駆け寄って来たのは由佳だった。「うん全然平気。俺は結構頑丈に出来てるから。それより倉田さん、さっきの熊落とし、凄かったね。」「え?あぁ、あれね。だってまだまだ美味しいモノ食べたいのに、この子がもう入らないって言うからやり始めたんだけど、ついつい癖になって。でもあらためて言われるとなんか恥ずかしい。」「ちょっと、もう一度見せてくれる?」「うん、いいけど。」そう言うと由佳は席に戻り、ゆっくりと腰を上げると勢いよくドスンと下ろした。隼人は由佳の前に回り、その濃紺の塊となったお腹が形を保ったまま勢いよくバウンドするのをよく観察した。「凄いね。形がぜんぜん崩れてない」「大きさではジェシーに負けるけど、硬さではこの中ではいつもヴィーナスが一番硬いんだよ。」「それに下に落ちた時の衝撃も凄い。やっぱり57kgもあると凄いんだね。」「いやだ覚えてたの?…もう、お仕置だよ!」由佳は小さい拳を振り上げた。「それなら、俺の膝の上で熊落としをしてくれないかな?」「えぇ?…危ないよ。そんな事して、足折れちゃっても知らないよ。」隼人は、ヴィーナス以外に武器も道具も何も持っていない体一つの由佳に「危ない」と言われ、奇妙な興奮を覚えた。熊落としに打ち勝ってみたいという欲望が更に強まった。

隼人は一段低い丸椅子に座った。「いくよ。」着座している隼人のすぐ前で背を向けて立ち、顔だけ横を向いた由佳。「うん。加減しなくていいよ。」「じゃあ、…それっ。」…ズンッ!!可愛い声とは裏腹に、鈍く重い衝撃が容赦なく隼人の太股を襲った。確かに痛いが、耐えられないほどの衝撃では無かった。隼人はそのままヴィーナスを抱きしめたが、普通の体型の女の子を抱きしめようと思って腕を伸ばすと、お腹が予想以上に大きくて手が届かない。樽のように大きく丸く重い由佳のお腹、しかも普段絶対に見ることの出来ない秘密のお腹を堪能し、隼人はかなり満足気だった。

「あらぁそこの二人、随分アツアツじゃないの。」そう言いながら近づいて来たのは永山だった。「今野君、そんなに熊落としを堪能したいのなら、あたしのはどう?」「あ…うあ…。えっと、その…」「ふふん。ひょっとして、あたしの重みには耐えられないかもって、ビビってるんでしょ?…大丈夫よ。あたし、由佳よりちょっと重いだけでそんなに差は無いから。」…ちょっとという言葉でごまかそうとしたが、隼人は今の永山がしっかり64kgあることも覚えていた。「わ、分かったよ。」「じゃあ由佳どいて。今度はあたしの番なんだから。」そう言って由佳を引っ張り上げ、隼人の前に立ちはだかる永山。よく見ると、永山の体は上半身がとても華奢で、鎖骨が浮き、水着の肩紐との間に空間が出来ていた。胸も少ししかふくらみが無く胸板も薄っぺら。おそらく水着を脱ぐと肋骨は洗濯板のようになっているに違いない。…しかしこれまたみぞおちから下の迫力が上と対照的で、どっしりとした佇まいの太股と大きな骨盤が、樽のようなマギーをびくともせずに支えていた。

「いくよ!」永山が振り返り、巨大なヒップを隼人に向けると、マギーをどっしりとした足腰もろとも、隼人の太股の上に容赦なく打ち下ろした。…ズンッ!!隼人は一瞬骨折を覚悟をして精一杯力んだが、その衝撃は不思議とそれほどでもなかった。よく見ると永山の豊満なヒップや太股がクッションの働きをしており、硬く力んだ隼人の太股の上でムニュッと潰れる事で衝撃を和らげていたのだ。柔らかく潰れた永山の下半身の肉は、そのまま隼人の下半身をまるで包み込むのように覆い被さっていた。永山の体はお腹だけでなく、太股もお尻も熱気に満ちていた。実は永山は密かに隼人に思いを寄せていたのだった。永山は言葉では強気だったが、強引な展開を装って隼人の体と密着できることを望み、実現の際には内的興奮が高まっていたのだ。

衝撃をかわしたとはいえ、その重みは地味に隼人を支配していた。隼人が立ち上がろうとしても、到底出来るような重みではない。「どうしたの今野君。…由佳の時みたいにマギーを抱きしめてよ。」永山は隼人の太股の上で少し腰を動かし、催促した。隼人は同様に腕を回した。確かに6kg程度しか中身の詰まっていないマギーはヴィーナスほど硬くは無かった。隼人はそのままさり気なく腕を下に下ろしていく。隼人の内肘は永山の腰に、指先は太股の両脇にくっついた。『これが、大食いの栄養で立派に育った永山さんの太股か…。』自分を大幅に上回る立派な永山の下半身を堪能する永山。大食いメンバー10人居るとしても、その食べ方や体つきは十人十色で、永山の醍醐味は一年間で立派に成長したこの下半身であると決め打ちしていた。永山自身も、隼人の興味の対象がマギーから移っていた事に気づいていたが、あえてそれは指摘せず、隼人の上に座ったまま目を閉じ、リラックスしていた。

さて、そんな三角関係はさておき、この後、残る8人のメンバーで隼人の膝の取り合いになった。そのあとは大食い部お決まりのトランプゲームが開催され、これは隼人も参加する形で行われた模様。場面は少し進み、いよいよ寝る時間が来た。部員は準備室の奥から厚手のマットを出してきた。部員はその上にバスタオルを何重にも敷き詰める。これを布団の代わりにして寝るのだが、どう見ても10人が寝るには狭すぎる。何と大食い部のメンバーはわずか3~4畳のマットの上で、お腹同士をくっつけ合うようにして雑魚寝をするのが習慣だった。隼人は床で寝かされるのかと思いきや、真ん中で寝て良いと言われた。「でも真ん中はみんなのお腹が一番密集するから、窒息しても知らないよぉ。」部長がギャラクシーを拳で圧迫し、ブルンブルン動かして隼人を脅かす。「大丈夫。私が隼人君の隣で寝るから。私のお腹は硬いから、多分隼人君のお口や鼻が埋まることは無いでしょ?」そう申し出たのは由佳だった。

部員は寝る前にトイレに行った。このタイミングは食事後4時間程度経過している為、消化と水分の吸収はある程度進んでおり、ここで体の余分な水分が結構抜けて体重の増加分はほぼ半減するとのこと。確かにメンバーの殆どはだいぶしぼんでいた。皆、森川の思惑とは違って水着を汚すことなくトイレを済ませられたようだった。由佳のヴィーナスも少し小さくなっており、当初の硬さは無くなっていた。「大丈夫かなぁ?これじゃ隼人君を窒息させちゃうかも…。」そう言って心配げな顔をする由佳が可愛いく思えた隼人は、「大丈夫だよ」と言って由佳を抱きしめ、そのままマットに寝転がった。

多くのメンバーが寝静まった深夜。メンバーの消化器官が発する熱で掛け布団は全く不要だった。そしてその中心部で由佳のお腹にくっついていたのは隼人の口や鼻ではなく、耳だった。隼人の耳には、由佳のヴィーナスが繰り返し繰り返し、うどんを下流に送り込むまでひっきりなしに蠕動運動を繰り返す胃袋や小腸の音が聞こえていた。隼人にはそのヴィーナスが奏でる音が幸せそうで心地よく聞こえた。由佳は時々微睡から醒めては、自分のお腹にくっついている隼人の頭をやさしく撫で、そしてまた微睡に戻る事を何度か繰り返した。男を自分のモノにするコツはよく「胃袋を掴む」と言われているが、由佳は隼人の心を「胃袋で掴」んだのであった。

大食い部の朝は素っ気なかった。今回は消化に有利なうどんという事もあって、起床する頃には全てのメンバーのお腹は殆ど元の状態に戻っており、メンバーは片づけをしてシャワーを浴び、着替えて解散していった。
隼人はそれ以来二度と大食い部には行かなかった。由佳と交際を始めた為である。その変わり、隼人は由佳と食べ放題デートをよくするようになったのであった。

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