■S3

保奈美は弟に気づかれないようにそそくさと自分の部屋に戻ると、ブラウスを脱いで着替え始めた。そこで初めて、ボタンがいつの間にか1つ無くなっていることに気づいて、やや恥ずかしくなった。ボタンを全部外すと、それまで感じていた圧迫感がフッと急に楽になり、お腹が自重で垂下しようとする重みだけを感じるようになった。そのお腹を両手で下から持ち上げると、みぞおちのあたりまでが全体的に持ち上がり、鈍く変形する。非常に重い。そして手を放すと、重力にまかせて勢いよくズンッと垂下する。未だかつて、肥満で「お腹が出た」という体験をしたことが無い保奈美にはこれは不思議な感覚だった。便秘でやや下腹部が張ることはあっても、こんなに胴体の中心部に重みを感じることは無かったのだ。保奈美はしばらくうっとりと自分のお腹を見下ろしながらさすっていたが、夕方のことを思い出して少々怖くなった。未だかつて、食べ過ぎて失神したことなど勿論無かった。今はだいぶ苦しさは治まっているが、お腹はかつて無いほどに膨らんだままだ。この後、寝たままお腹の中で大量のケーキがどこかに詰まって死んでしまうかも知れない…。保奈美は、一緒に大食いをしていながら平然としていたクルミの事がふと気になった。平然としていたということは、過去にも同じように凄い量を食べた事があるか、むしろいつもの習慣になっているに違いない。


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