■S1
家に帰った保奈美は、当然の事ながら母親に驚かれる。
「お帰り…保奈美!!どうしたの?そのお腹!」
「うん、ちょっとね。いつものケーキ屋さんで、ケーキ食べ過ぎちゃって。」
「ちょっとじゃないわよ、もう。これから夕飯だっていうのに、どうするの?」
保奈美は一瞬考えてから答えた。
「うーん、…ちょっと上で休んで、食べられそうだったら降りてくるよ。」
「そう?無理しないでよ。それにしても、いくらケーキが美味しいからって、ケーキばっかりでお腹一杯にして…少しは栄養のバランスを考えなさいよ。」
「はぁい。」
保奈美はリビングを出て階段を上がった。階段を一段一段登るのに、保奈美はいつもは感じないお腹の重みを感じた。木造で築20年近く経った西川家の階段は、普段保奈美が登る時よりもギシギシという軋み音が大きくにぎやかになっているように感じる。
『いつもの私の重さの上に、お腹の中のケーキ25個分の重みが加わってるんだ…。』
保奈美は、自分のお腹の重さが階段を踏む脚に掛かっている重量感を味わい、やや高揚感を感じた。身長165cmで体重は46kg。保奈美の体がスリムなのは無理なダイエットをしているからではなく、体質で自然にそうなっているのだ。産まれてから一度も肥満を経験したことはなく、小中学校時代の成長記録も、常に低体重の「やせ気味」をキープしていた。長身なのに、クラスメイトの誰とぶつかっても、跳ね飛ばされたりよろけたりするのはいつも保奈美だった。保奈美は思った。


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