僕は真奈美ちゃんがバッグから出した鍵を受け取るとそれを指に引っ掛け、助手席の座面と背もたれの間から手を突っ込んで、真奈美ちゃん全体を抱え込むようにして抱き上げた。……重い!!確かに、真奈美ちゃんは重かった。その途方もない重さから、ゆうに60kgを超えている事は窺い知れた。これで階段を上るなんて。でもこの状況で「やっぱり無理」といえば男としての自分が台無しだし、他に術が無いので歯を食いしばった。「やっぱり重いですよね。…頑張って下さい。」僕の腕の上から不安そうに見つめる真奈美ちゃん。目がキラキラと潤っていて可愛い。でも、重い!とにかく重さに耐えながら、ようやく階段を上り切り、2階の真奈美ちゃんの部屋に辿り着いた。そして真奈美ちゃんを抱っこした姿勢のまま指先に引っ掛けた鍵を鍵穴に突っ込み、L字のレバーを引いて玄関ドアを引き開けた。玄関では僕だけ靴を脱ぎ、靴を履いたままの真奈美ちゃんを玄関先のトイレ前に下ろす。「有り難うございました。あぁ、やばいかも!」真奈美ちゃんは焦った様子でそのままトイレに駆け込み、ドアを閉める。しばらくして、かすかな音が聞こえ始めた。こんな音に聞き入ってしまう僕は変態かも知れないと思いながら、他にする事もないので黙ってじっと待った。その音はなかなか止まなかった。真奈美ちゃんはそんなに溜まる程飲んだだろうかと、僕は思い返した。開始前の1杯のほか、…ホットドッグ以降は水を何杯かチョコチョコと。確かに合計すれば1リットルは超えていそうだ。1分ほど経っただろうか。僕には3分以上経った気がした程長く感じたが、その音はようやく止んだ。そして水を流す音が聞こえ、真奈美ちゃんが出てくる。やはり、見た目には全く変わらず、下腹部を中心にとてつもなく突出したお腹だった。

 僕は一旦車に戻って賞品やバッグを取り、車の施錠をして戻った。真奈美ちゃんはすっかり落ち着いた様子で、部屋のベッドに腰掛け「有り難うございました。とても助かりました。」と僕に感謝の言葉を告げた。僕は「いやいや、大したことしてないよ。」と笑顔で応えた。「大したことをやり遂げたのは真奈美ちゃんの方だよ。…それにしても凄いお腹だね。」僕の視線は、真奈美ちゃんのお腹の方に行っていた。真奈美ちゃんは「そうですよね。…醜いですよね。ごめんなさい。」とうつむいてしまった。「いや、醜いなんてとんでもない。むしろ逆だよ。僕は、美しいと思うよ。」鳩尾から太股の付け根まで、ゆったりと丸く膨らんだ胴体。食べる前の時にはあった大らかなくびれのラインは無くなっていたが、そのボディは中に沢山の美味しい食べ物を蓄えて、大らかな優しさに満ちていた。「そんな分かり易いお世辞なんて止めて下さい。私、太ってるし、お尻も大きいし、お腹も出てるし、おまけに今はこんなおっきいお腹だし、良い所なんて無いんですから。」「それはみんな真奈美ちゃんの個性だよ。僕は、誰にも似ていないそんな真奈美ちゃんの全てが好きだよ。」…!!…自分の心を閉ざし、塞ぎ込もうとする真奈美ちゃんに対して、僕は必死にそれを否定するつもりが、勢い余って告白になってしまった。

 真奈美ちゃんの顔は真っ赤になってしまった。それは、あのステージの上よりもずっと凄かった。二人だけの部屋に少しだけ沈黙が続いたのち、「こんな私のこと、好きでいてくれるんですか?」と真奈美ちゃん。僕は大きく頷いた。「僕は真奈美ちゃんの、変な飾りっ気のない、素朴な感じが好き。健康的で良いと思うよ。」真奈美ちゃんの表情は一瞬華やいだが、すぐまた曇った表情になった。「すごく嬉しいです。私も高瀬さんの事が好きです!…でも、今まで、そんな風に言って貰った事が無いので…。」僕は真奈美ちゃんの手を取り、目を見つめた。「他の誰でもない、真奈美ちゃんが好きだよ。付き合ってください。」「…ハイ。」僕は飛び上がるほど嬉しくなった。真奈美ちゃんは、たった今僕の彼女になってくれたのだ。僕は嬉しくて、そのまま真奈美ちゃんを抱きしめてベッドに転がった。僕の体の上に、向かい合わさるようにして真奈美ちゃんの体が被さった。真奈美ちゃんの、砲弾型に膨れあがったお腹が僕の腹部を圧迫する。「キャッ!!…大丈夫ですか?…高瀬さん、潰れちゃいますよ。」真奈美ちゃんの驚きは、自分が抱きしめられて倒された事よりも、自分の体の下敷きになった僕の安否のことを心配していた。「大丈夫だよ。僕の大好きな真奈美ちゃんの重みだもん。このお腹だって、大好きだよ。」僕はその寝た状態のまま真奈美ちゃんの体を上方へスライドさせ、自分の顔をそのお腹の下へと滑らせた。真奈美ちゃんのお腹は熱く、柔らかく、偉大だった。耳をくっつけると、その中からは「トクトクトクトク…」という、とても早い心臓の鼓動が聞こえてくる。顔を見上げると、真奈美ちゃんと目があった。真奈美ちゃんは幸せそうな笑顔で見下ろしていた。幸福感と、未知の体験に対する興奮で一杯なのだろう。僕も同じ気持ちだった。

 「幸せ。なんだか高瀬さんがあたしのお腹の中に居るみたい。」真奈美ちゃんは、手足をベッドに着いてその体を少し揺らした。ベッドとそのお腹に挟まれた僕の頭はその動きに倣って揺さぶられた。ゴム鞠のような感触と重厚感。おそらくこの柔らかさは、真奈美ちゃんのお腹周りに着いている皮下脂肪のせいだろう。とても質感の良い柔らかさだ。そして、腹膜の中は食べ物でパンパンに張っている。つまり、柔らかいのは表層の2、3cmくらいで、その奥には確実に何かが堅く詰まっている感触なのだ。その「何か」は、先ほどの食べ物達に間違い無かった。そして、その柔らかい部分が絶妙な感触で僕の顔を優しく包み込んでいた。僕もまた、真奈美ちゃんのお腹の中に居るような錯覚を覚えた。

 僕は急に、自分が空腹である事に気づいた。そう言えば自分は食べさせる役をやっていただけで何も口にしておらず、おまけに打ち上げにも参加せずに直接真奈美ちゃんの家まで来てしまっていたからだ。その一方で、目の前にあって、自分の顔を圧迫しているそのお腹の中には、十数人の腹を満腹にする程の沢山の食べ物が詰まっている。僕は真奈美ちゃんのお腹の下から抜け出て起きあがった。真奈美ちゃんはきょとんとして、「苦しかった?ごめんなさい。」と言った。「ううん、違うんだ。何だかお腹が空いちゃって。」「あぁ、そうですよね。ごめんなさい、気づかなくて。私一人お腹一杯にして。」僕は真奈美ちゃんのお腹を撫でながら冗談っぽく言った。「ねえ、この中には沢山の食べ物が入ってるんでしょ?少し分けてよ。」「無理です!ケーキとかやきそばとか全部混ざっちゃってるし、とても食べられる状態じゃ無いと思います。それに、多分酸っぱいですよ。」「え?酸っぱいの?何で?」僕は分かっていながら意地悪っぽく聞いてみた。「それは…胃酸が…えーと…混じって…」真奈美ちゃんは自分のお腹を見下ろしながら小声になった。どうやら自分のお腹の中で行われているであろう過酷な消化活動を口頭で僕に伝えるのが恥ずかしいらしい。真奈美ちゃんらしい反応だ。それにしても、チャーハン5杯だけを考えてもとてつもない量がある筈なのに、それ全体を酸っぱくさせるには相当な量の胃液が分泌されている筈だ。しかも、かなり丹念に捏ねなければならない。一升のご飯から酢飯を作るのだって、たらいの上でお酢を振り掛けた後、均一に混ぜ合わせるためにはかなりの労力を必要とする。以前、親の手伝いをした翌日に腕が筋肉痛になった事を思い出す。果たしてこんなにか弱そうな女の子の体内でそんな力強い行いが出来るのだろうか…。いろんな思考が僕の頭を巡る。「そうだよね。食べ終わってからもう1時間以上経ってるもんね。とっくに消化されちゃってるよね。」「いえ、私消化は遅い方なのでそんなに早くないと思います。まだ、最中じゃないかと…。」「じゃあ、もし僕と真奈美ちゃんが今、この状態で無人島に漂着して、しかも食べ物が無くて僕が飢え死にしそうになったとしたら、酸っぱくてもいいから分けてくれる?」「その時は何でもします!高瀬さんが生きてくれるなら…。」僕は真奈美ちゃんの”何でもします”という言葉がとても嬉しかった。

 「まぁ、とりあえず今日はそれはいいや。当たり前だよね。それより、このカップヌードルを1つ貰ってもいいかな?」「どうぞどうぞ。私、インスタント系はそんなに食べませんから。」…真奈美ちゃんは一人暮らしなのにちゃんと自炊で毎日きちんと食べているのだろうか。僕はキッチンを借りて、薬缶でお湯を沸かした。お湯もわき上がり、カップのふたを開けてお湯を注ごうとしたとき、僕は冗談のつもりで言った「1人だけ食べるのは申し訳ないし、ちょっと寂しいなぁ。」すると真奈美ちゃんは「…じゃあ、あたしも食べます。」と言ったのだ。「ええっ!大丈夫なの?」「ハイ。さっきトイレに行ったら少し楽になったし、こんなちっちゃなカップ麺一杯ぐらいだったら余裕ですよ。」「余裕って…見た目には、少しも楽に見えないんだけど。でも、本当に苦しくないんだね。」「ハイ。お腹一杯食べるのは結構慣れてますから。」…!!。何と、真奈美ちゃんは家ではしょっちゅうこんなお腹になっているというのだろうか。僕はカップ麺をもう1つ取り出し、お湯を注いだ。3分後が待ち遠しい。

 「ところで、何でお腹一杯にするのが慣れてるの?会社では真奈美ちゃんがそんなにお腹が膨らんだ姿なんて、見たこと無いよ。」「それはそうですよ。だって、休日に家でしかやってないですから。」話によると、今まで彼氏も居なかった真奈美ちゃんは、休日は家で過ごすことが多く、レンタルDVDなどを沢山借りて映画を見ているようだ。そして、独りで居る時に空腹を感じるのがとても嫌で、それを紛らわす為に毎朝どっさりのご飯を作ってそれをお腹に詰め込み、それを座った姿勢で1日掛けてじっくり消化しながら映画を見るようだ。東京に来た最初の頃は2、3人前の量だったのに、それを毎週続けているうちにどんどん足りなく感じるようになり、今では10人前程度にまで達してしまったというのだ。「それにしても、よくそんなに入るね。」「あたし、胃下垂みたいなんです。」…やっぱり、と僕は思った。「…お腹が空いてる時、最初に熱い物を食べると、その熱い感覚が胸の中を通ってずっと下に降りていって、ここの辺に溜まるのを感じるんです。」真奈美ちゃんはドーム状に張り出したおへその下あたりの、今は逆傾斜面になっている膀胱のあるあたりをさすった。「そんなに下まで行っちゃうんだ…。」「ハイ。それで、どんどん食べていくとその感覚が上の方に移動していくんです。」少なくとも僕はそんな感覚を体感したことはない。なんとも魅惑の体だった。そして、ジーンズなどを穿いた時には2人前を食べきる前に苦しくなり、ボタンとチャックを外してしまうそうだった。宅配便など意外は誰も来ないのでその状態で昼間を過ごし、再びチャックを閉められるようになるのはいつも夕方くらいとのことだった。

 やさしい真奈美ちゃんは両親の愛を一杯に受けて優しく育ったという感じがひしひしと伝わってきていたが、このような習慣があることはまだ長崎に居る両親にも伝えていないらしかった。そして、これを繰り返しているうちに、消化器官のキャパシティが増えただけでなく、その食べ物から吸収した栄養分のお陰で、今は少しずつ太って来ているようだった。…とすれば、今日食べたあのとてつもない量の食べ物や、今から食べるカップヌードルからも栄養を吸収して、真奈美ちゃんの柔らかい体を形成する一部に作り替えられるのだろうか。僕は、”ちょっとだけぽっちゃりして見える女の子”が実は近づいてみれば予想以上に凄いボリュームを持っているという事に今日気づかされた。恥ずかしい話だが、僕自身もまた真奈美ちゃんと大して変わらず、異性との恋愛経験は無いに等しかったのだ。僕は、真奈美ちゃんにTシャツを捲ってもらい、その生腹を少しだけ見せて貰った。真っ白くきめ細かい肌はぴっちりと張っていて、栄養がきっちりと行き渡っている感じを受けた。僕だって、そんなにガリガリに痩せている訳ではない。体重だって55kgはある。しかしベッドの縁に二人並んで座ると、まるで大人と子供だった。お腹も太股も、僕のは貧弱と言えるくら粗末な印象だった。真奈美ちゃんの太股はムッチリとしていて、座った時に平たくつぶれて更に大きく見える。その幅だけ比較すれば、僕の太股の1.2倍強はある感じだった。まさか恥ずかしがり屋の真奈美ちゃんに唐突に体重を聞くのは何となく気が引けたが、先程お姫様抱っこをした時の重さからは、おそらく満腹でなかったとしても50kg台後半、60kg近くはある筈だ。僕は、女の子とはもっと軽い物だと思っていたが、それは大きな間違いだったと改めさせられた。それと同時に、小学校の時に、花壇の中で肥料を吸い太陽の光を一杯に受けて育ったひまわりと、校舎の裏の日陰で痩せた土地で育ったひまわりを見比べて、おなじひまわりでも育つ環境でこんなに変わるのかと衝撃を受けたこと思い出した。

 僕は出来上がったカップヌードルを真奈美ちゃんと向かい合うようにして、二人で食べ始めた。空腹という事もあって、僕にはとても美味しく感じられた。しかし、先ほど大食いの締めのケーキを5個ほど食べたはずの真奈美ちゃんも、とても美味しそうに食べている。「美味しいですね。今度から、カップラーメンも食べてみようかなぁ。」…この子には満腹とか食べ飽きたとかいう言葉は似合わないようだ。とにかく、美味しそうに麺を口に運ぶ顔が可愛かった。僕はそれを見ているだけで胸もお腹も一杯になった。「あぁ、もうお腹一杯だよ。それに比べて真奈美ちゃんは凄いよね。僕より小柄なのに、僕なんかとは比べ物にならないほど大きなエンジンを積んでるんだから。」僕は憧れのまなざしで真奈美ちゃんのお腹を見つめた。「えぇ?これ、エンジンなんですかぁ?」「だって、真奈美ちゃんの行動の活力や体を作るための原動力を産み出してるんでしょ?」「そうですねぇ…。えへっ。」

 「ごちそうさま。」真奈美ちゃんは幸せそうな顔をしている。それは、今夜「僕」という彼氏が出来た事に対してだろうか、それとも満腹感によるものなのだろうか…。おそらく、両方が合わさったのだろう。しばらく心地よい沈黙が続いた。…最初に沈黙を破ったのは、真奈美ちゃんのお腹だった。静かなマンションの一室に「ギュルルルルル…」という音が響き渡った。真奈美ちゃんは「やだ、お腹鳴っちゃった…。」と恥ずかしそうにうずくまった。「まさか、お腹が空いたんじゃないよね?」「違います。多分、胃が…また動き出したんだと思います。」「そうかぁ。でも、あんまり動かすとさっきのケーキとカップヌードルが混ざってまずくなっちゃうよ。」「あ、もうそれは絶望的だと思います。だって、もうだいぶ混ざってますから。」真奈美ちゃんは腰を浮かせ、脚を踏ん張った状態で胴体を上下させて揺すって見せた。先程の僕にとっては抱きかかえて運ぶのがやっとだったその真奈美ちゃんのボディは、真奈美ちゃん自身の脚力によって、いとも簡単にダイナミックに上下している様を見せつけられた。僕は無言のまま、再びそのお腹に惹き付けられるように近づき、耳を着けた。先程は早い心拍しか聞こえなかったそのお腹からは、「ぐじゅるるるる…ゴポゴポゴポ…」と、とてつもない音が聞こえてきた。「ねぇ、中から凄い音が聞こえるんだけど。」「やだ!恥ずかしいから、あんまり聞かないで下さい。」…あんまり聞かないでと口では言いながらも、僕を払いのけようとはしない真奈美ちゃん。それにしても、外見の大らかさや感触の優しさとは裏腹に、中からかすかに聞こえてくる逞しく野蛮な音。僕は、とてつもない食料を蓄えて密かに消化活動に入ったそのお腹の凄さを、もっと身をもって体感したいと思った。

 「ねぇ、さっきの揺するような動き、もう一度やってくれる?」「あ、ハイ。いいですよ。」再び床の絨毯から腰を浮かし、今度は先程より大きくお腹を揺する真奈美ちゃん。僕はすかさず床に寝ころび、真奈美ちゃんの上下動する腰の下へと頭を滑り込ませた。そしてすぐさま僕の顔に「ずむっ!」と落ちてくる柔らかいお尻。膨らんだお腹が視界を遮り、自らの足下が見えなくなっている真奈美ちゃんには、お尻の下でにわかに発生した事態が掴めず、少しとまどったようだった。「……きゃっ!高瀬さん、大丈夫ですか?」「平気平気。真奈美ちゃんの体は柔らかいから。ねぇ、そのまま座っちゃってよ。」「そんな事したら、死んじゃいますって…。」真奈美ちゃんは最初は極度に心配している様子だったが、その後はじわじわと脚の力を緩め、少しずつ体重を僕の頭にあずけてきた。最初はクッションのように僕の顔面にフィットし始めた真奈美ちゃんの黒いジャージのお尻は、そのままズムズムと潰れていき、程よい圧力を伴いながら僕の顔面を覆っていった。そして更にお腹の重みが上乗せされ、僕の頭部は身動き出来ないくらい完全に捕獲されてしまった。真奈美ちゃんの肉体全ての重みと、その中に秘められた食べ物達全ての重みが僕の頭蓋骨に掛かっている。…あぁ、このお腹の中に蓄えられた食べ物達も、完全にこなされて、近いうちにこのお尻から捨てられてしまうのだろうか…。時間にして1分くらいだろうか。僕はそんな事を考えていたが、真奈美ちゃんはまた僕とは別のことを考えていたようだった。かすかに聞こえてきた真奈美ちゃんの独り言では、「あぁ、…幸せ」とか「高瀬さん、あたしの中から産まれてくれば良かったのに…」とかいうように聞こえた。顔面が塞がれた僕が息苦しくなる前に、真奈美ちゃんはそっと優しく腰を上げ、僕が起きあがるための手助けをしてくれた。

 「ねぇ真奈美ちゃん、さっき何か言ってたみたいだけど…。産まれてくるって?」「聞こえてたんですか?恥ずかしい…。だって高瀬さん、私のお尻からこのお腹の中に本当に入って来たみたいな感じがして…。」「本当に、僕が丸ごと一人入っちゃいそうな立派なお腹だね。…大好きだよ。」どうやら真奈美ちゃんは、胎内に僕が入ってしまうことを想像していたようだ。胃下垂の真奈美ちゃんの場合、口から呑み込まれたたくさんの食べ物達は、殆ど子宮と隣り合わせくらいのところまで行っているのではないだろうか…。ポッコリと膨らんだ柔らかいお腹の中に入って、上から真奈美ちゃん本人に撫でられながら優しく語りかけて貰えるのだとしたら、そんな包まれ感とぬくもりのある、気持ちの良い居場所はこの世のどこを探しても他に無いような気がした。

 僕は正座して真奈美ちゃんと向き合った。「今日はもう帰らなきゃ。真奈美ちゃん、今日は一杯いろんな物を食べて活躍したね。お疲れ様でした。」僕はあらためて真奈美ちゃんにお礼を言っておじぎをした。すると真奈美ちゃんは、僕がお腹に対してお礼を言ったのと勘違いしたのだろうか。自分のお腹をさすりながら「本当。ありがとうねあたしのお腹。高瀬さんという素敵な人を惹き付けてくれて、ありがとう。」僕は、自分に自信が無く、自分嫌いの様子があった真奈美ちゃんが変わり、自分の体を愛している姿を見て、ますます真奈美ちゃんが好きになったのである。その後の毎週末、真奈美ちゃんの一人大食い映画鑑賞会が一人ではなく二人の愉しみになったのは言うまでもない。

 -完-

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