とうとう1時間が過ぎた。あと30分もある。
1時間の間に二人はケーキを取りに12往復・・・。
恐らく10キロのケーキを完食したはずだ。
間違いなく体重計でプラス10キロは増えている。
ハルヒが太ろうが気にはならんが、朝比奈さんプラス10キロは厳しい。
いや、あのぱんっぱんに膨らんだお腹を取り除けば元の朝比奈さんだ。
太ったわけじゃない。
そう考えれば・・・納得できない事も無いな。

「ふぅ・・・・さすがに飽きてきたわね・・・」
ハルヒのケーキを口に運ぶスピードが落ちる。
一方の朝比奈さんはお腹をさすって動かない。
「どうしたの、みくるちゃん?」
「もうごちそうさまですぅ。さすがに・・・食べ過ぎましたぁ・・・・」
いやそりゃそうだ。
さっきまではそうでもなかったが今の朝比奈さんは出産直前の臨月腹。
ワンピースのお腹の部分が今にもはちきれそう。
もし今度、ここに来るときはマタニティドレスを着るべきだ。
「あと30分はハルヒだけで食ってろ。朝比奈さんはリタイヤ」

「なに言ってるの!!!!」
突然ハルヒが大声で叫ぶ。
「これじゃあギャル曽根の量に届かないわ!! みくるちゃんもまだ食べなさい!! 二人で極限まで食べる事で何かがわかるのよ!!」
「おい!! むちゃをいうなっ!!!」
「そうでぇ~す・・・・もう・・・お腹にはいりませぇ~ん・・・・」
「いいから食べるのよ!! アタシも食べるから!!」
怒り心頭に来たようなハルヒ。
再びものすごいペースでケーキをわしづかみにし自らの口に運ぶ。
さらに・・・・
その合間に朝比奈さんの口にもケーキを無理やり突っ込む!!
「んん~っ!!!!!」
「おいっ!! やめろ!!」
俺はあわててハルヒの後ろに回り、両手を押さえようとする。
しかし・・・・


ぶんっ!!!!


「おわっ!!???」

ドサッ!!

ハルヒにものすごい力で吹っ飛ばされた。
体だけでなく力まで増えている・・・?
「くそっ!! うっ!!!???」
俺は立ち上がろうと必死に腰を上げるが、腰が上がらない。
どうも吹き飛ばされたときに変なところを打ち付けたようだ。

「んん~・・・も・・う・・・もぐもぐ・・・ごっくん!!」
「そうそうっ!! まだ入るわ!! まだお腹に入るわよ!!」
ハルヒが朝比奈さんのパンクしそうなお腹をさすりながら無理やりケーキを口に詰め込む。
朝比奈さんも呼吸困難を回避すべく口に詰め込まれたケーキをなんとか飲み込んでいく。
そして、朝比奈さんが一つケーキを飲み込むたびにお腹から悲鳴にも似た奇妙な音が・・・・。

ぎゅるるるるる~・・・・

ぴちっ!!! ぴちっ!!!!

「はむはむ・・・・ごっくん!!! ぷはっ!!! はい次!! みくるちゃんっ!!!」
自らの腹にケーキをどんどん詰め込み、どんどん膨らませ既にテーブルにお腹がつっかえてまともに座れないハルヒは椅子から立ち上がってまでテーブルのケーキに手を運ぶ。
一方の朝比奈さんも既にハルヒといい勝負のお腹にまで成長しながら椅子の上で仰け反っている。
お腹が膨れすぎてまともに座れないのだ。
そんな朝比奈さんの口に容赦なくケーキを運ぶハルヒ。

とうとう朝比奈さんが変な汗を流し始めた。

「ひぃ・・・ん・・・。もう・・・・入んないィィィィっ!!!!!」
「大丈夫よ!!!! お腹破裂した位じゃ人間死なないんだから!!!!」
おいおい・・・そんなバカな話があるか!!!!
「くっ・・・!!??」
俺はハルヒの暴挙を止めようと声を出した・・・・。
しかし・・・出ない!!
脊髄をぶつけたらしく一時的に神経が麻痺したようだ。
このままでは朝比奈さんがハルヒに殺されてしまう!!
「んぐ~~~っっ!!!!」

むりむりっ!!!

ぐいっ!!!!

ごっく・・・ん・・・!!!!

「ふう・・・入った・・・・ん??」
朝比奈さんにケーキをねじ込み飲み込ませた事を確認すると満足げな表情を浮かべるハルヒ。
すでに俺の目の前にいるのはSM女王と化したハルヒに他ならない。
それなら・・・・俺で我慢しろっ!!!!
などと考えているうちに朝比奈さんの様態が急変した。
「お・・・・おなか・・・・が・・・・・んん~~っっ!!!!!」

みちっ!!! ぎちっ!!!!

「ど、どうしたの!! みくるちゃん!!!!」
「どうしましたっ!!??」
あわてて駆け寄るハルヒと古泉。
「・・・・・・」
おいっ!! 長門、冷静に最後の一口を食ってる場合じゃない!!
「んひィ~~~っっ!!!!!」
朝比奈さんがものすごい声であえぎ始めた!!!!
ある意味・・・これは・・・・
かなりいい感じで・・・・
いやそれどころじゃないっ!!!!
「ひぃィっっんっ!!!!」
「う、生まれるの!!??」
「ラマーズ法です!! 朝比奈さんっ!!!!」
違うっ!!! そうじゃないっ!!!!

ブチッ!!!! ブチッ!!!!

おいっ!!! 変な音がするぞっ!!!!
みんな、その音に気づけっ!!!!

「手を握って!!」
「んん~っ!!!」
「ひっ、ひっ、ふぅ~~~・・・ひっ、ひっ、ふぅ~~~~・・・・」

違うんだって!!!! 朝比奈さんまで・・・・ああ・・・・
ハルヒの手を握ってって・・・おいっ!!!!!
朝比奈さんのお腹が・・・お腹が・・・・

あっ!!!!




ボンッ!!!!!!!!!


「きゃあっ!!!!!」
「うわっ!!!!!!」
「ひんっ!!!!!!」

朝比奈さんのお腹から何かが弾ける音が・・・・

あぁ・・・・・目の前で俺はとんでもないものを新年早々見ることになった。
朝比奈さんがハルヒに猟奇殺人されてしまった・・・・。
あの清楚で可愛らしい微笑を俺に投げかけてくれた朝比奈さん。
もう・・・その朝比奈さんは・・・・。

俺は薄れ行く意識の中で・・・・

って???

「きゅぅ・・・・」
「あら、気絶しちゃったわ」
「涼宮さん、どうしましょう。これ・・・・」
あまりにも朝比奈さんのお腹が膨らみすぎたため、細身用のワンピースのお腹のところがはじけてしまったのだ。
おかげで朝比奈さんは大きなまん丸のお腹を丸出しにして気を失っている。
「どうしようもないわ。しょうがない、あと20分あるけど今日は終わりにしましょう」
「そうですね。では僕が朝比奈さんを運びますから・・・・長門さん、彼をお願いします」
古泉にそういわれると長門はコクリと頷き俺のところへ寄って来る。

朝比奈さんはお腹丸出しのまま古泉にお姫様抱っこされ、一方俺は長門に肩を抱えられグランドホテルを後にした。
そして肝心要のハルヒは・・・・
満面の笑みで自分のアドバルーンのように膨れ上がった腹をパンパンと叩きながらついてくる。

きっとこのあと土俵に上がって塩を撒くに違いないな、こいつは・・・・。


――――――――――――――


次の日、朝比奈さんは学校を休んだ。
お腹の調子が悪いらしい。

当たり前だ・・・。

お腹が破裂するのではないかというくらいハルヒにケーキをねじ込まれ失神して運ばれたのだから至極当然。
んでもって当の加害者のハルヒは・・・・今日は遅かった。

がらがら・・・・

一斉にクラスメートが教室の扉を見る。
「・・・・げっ!!」
そこにいたのは・・・

「なに? キョン? アタシの顔に何か付いてる?」
「お、お前・・・・一日でそんなに・・・・?」

いや、これは幻覚だ。
ハルヒや朝比奈さんが恐ろしい量のケーキを食べたのを見たからそういうふうに見えるだけだ。
そうじゃないと説明が付かない。
もし一日でこうなるとすればハルヒの新陳代謝かなにかが狂っているとしか思えない。
「そうよ!! 太ったわよ!! あんだけ食べればなるわよ!!」

昨日まで爆乳AV女優なみのぽっちゃりボディだったハルヒはついに重量級ボディに成長していた。
今度こそ本当に制服が着れないらしく体操着に無理やり肉を詰めている。
Tシャツの胸元は恐らくKカップくらいまで成長した超乳のおかげで今にもはちきれそうに張り詰め、そして乳頭がくっきりと浮き出ている。
どうもブラが完全に合わなくなったらしくノーブラなのが分かる。
視線を少し下に落とすと、ぎっちぎちになってしまったTシャツから立派な三段腹が丸々と顔をのぞかせている。
へそがあったと思われる場所にくっきりと肉の段がつき、マワシを付けたらどんなに似合うだろうなどと余計な想像をしてしまう。
二の腕には袖がぎっちりと食い込み、若干血行が心配だ。
そして・・・・ブルマから飛び出した朝比奈さんの腰くらいありそうな太もも・・・。
完全に『肉』と化したハルヒは一目も気にせず俺の後ろの席にどっかりと座り込み、いつものように頬杖をつきながら外を見る。
「なあ・・・・お前の体は一体どうなってるんだ? これはこれでギャル曽根以上の超常現象だと思うが・・・」
「分からないわよ!! アタシだって!! おかげで見てよ!! この胸!! みくるちゃんのおっぱい、3つ分以上はあるわ!!」
そういいながら自分の胸を寄せ上げ、俺に突き出してくるハルヒ。
「やめろ・・・・、いくらその体で乳を自慢されても興奮しないから・・・」
「しっつれいね!! それよりもみくるちゃんはどう?」
「ああ・・・休みだ・・・・」
「そう・・・」
そうって・・・アンタ・・・・
あなたが加害者なんですけど?
そんな平和そうにぶくぶく太ってる場合じゃないと思いますけどね。
普通はお見舞いの一つも持って・・・
「それよりもちゃんと今日も部室来なさいよ。今日はアタシとアンタ二人だけだけど仕方ないわ。昨日の反省をしなきゃ」
「反省のしようがあるのか? 食べ過ぎて太ったとか若干一名に重傷を負わせたとか・・・」
「い、いいから来なさいっ!!!! 来ないと死刑よ!!!」
「わかった・・・・」
今度は本当に殺されそうだ・・・

完全に俺を二周りくらい上回った肉体で攻撃されたらひとたまりも無い。
チェ・ホンマンとボビーどころの騒ぎではない。

昼休みには周囲から俺のところにハルヒの豹変振りについての問い合わせが多数寄せられた。
はいはい・・・ご意見ご要望などございましたら下のあて先まで・・・ってね。
ま、真実の程はさすがに話せなかったがケーキバイキングのことは話しておいた。
若干名の女子生徒が来週あたり予定を組んでいる。
男子生徒からはとうとう「肉宮ハルヒ」などというけったいなあだ名が付いた。
この調子で朝比奈さんが「肉比奈みくる」などと言われることを考えると・・・・心が痛む。
明日は朝比奈さん、来るだろうか?
多分・・・いつもどおりの清楚で可憐な朝比奈さんが来ると願いたい。

間違ってもハルヒみたいなむっちむちのぼよんぼよんになっていませんように。
いや、普通はありえないがハルヒの事だ。何が起きるか分からん。

そんなことを考えているうちにお約束どおり放課後になる。
まったくハルヒと出会ってから一日が速くて仕方が無い。

とりあえず俺は教室を出て文芸部の部室に向かった・・・・。

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