「今年の干支は丑」

 大晦日。
 俺は一人、こたつで黙々と年越し蕎麦を食べていた。
 見もしないテレビから聞こえてくる除夜の鐘が、やけに胸に沁みる。
 ずるずると蕎麦をすすり、こーんと細く長く延びる鐘の音を聞く。世の人々は、暖かな家で一家団らんを過ごしているのだろうか。
 と、蕎麦を食べ終えたところで、にわかにテレビが騒がしくなった。
 どうやら百八回まで後十回になったらしい。
 盛り上がるテレビの向こうがどこか遠くに思え、俺は今ここにいない真希のことを想った。

 というのも、一緒に年を越そうと誘ったのに、なぜか断られて、年が明けてから来るということになったのだ。
 ……あいつが居れば……。と、言い知れない気持ちを抱きつつも、年が明けるのを待つ。

――こーん

 テレビの向こう、一定の間を置いて鐘が鳴り、ついに百七回目が突かれた。テレビがいっそう騒がしくなる。
 次が新年の始まりを告げる鐘だ。

――ごーん

 一際強く鐘の音が響くと同時、
「おまたせ~」
 という真希の声と共に、玄関のベルが鳴った。俺は待ちわびたようにこたつから立ち上がり、玄関へ向かう。
 鍵を外して扉を開けると、そこに真希がいた。
 服装はフードの付いた暖かそうな茶色の裾の長いコートに、それに合わせた色の長いブーツを履いている。長いコートに隠れてスカートは見えず、白い素足がそのまま続いていて、傍目にはなにもはいていないように見えそうだ。寒いのかフードは深めにかぶっている。
 俺がどんな言葉から始めようか、決めかねていると、真希が笑顔をこちらに向けて、
「明けましておめでと~!」
 と、新年早々から若干ハイテンションに挨拶してきた。
「明けましておめでとう」
 と、俺はとりあえず挨拶を返し、
「ところで、タイミングが良すぎるんだが、外で待ってたんじゃないか?」
 その問いに、真希は一瞬笑顔のままで固まったが、
「え、そんなことないって~」
 と、手を振って否定する。
「本当にそうか?」
 と、訝しがる俺に、
「ほんと、ほんと~」
 と、言いかけて、
「――くしゅん」
 と、小さくくしゃみをした。
 しまった、という顔をした真希の腕を俺は掴み、
「とりあえず中に入れよ。外は寒い」
 と言って、真希を家の中に入れ、ドアを閉める。

 玄関は、しばらくドアを開けたままだったのでだいぶ冷えてしまったが、それでも外よりははるかに暖かい。
 暖かい屋内にはいって、真希の顔がほころんだ。
「全く、外で待ってるんだったら、さっさと入ってくれば良いのに」
 と、俺が非難の目を向けると、
「良いじゃない。ちょっとやりたいことがあったのよ」
 と、答える。
 その答えに俺がムスッとした顔をすると、真希はニヤリとして、
「あ、ひょっとして寂しかったの?」
 と、上目遣いでのぞき込んできた。
 図星を突かれてなにも言えない俺を、そのままニヤニヤと見上げてくる。
 堪えかねた俺は顔を逸らして、
「そうです。その通りです。悪うございましたね」
 と、苦々しく吐き捨てた。
「ふふん、それならそうと言えば良いじゃない」
「はいはい……」
 楽しそうな真希にすっかり脱力しつつ、俺は本題に入る。

「で、そのやりたいことって何だったんだ?」
「んっとね~」
 真希はそう言いながら、コートに手をかけて外し始めた。
 すべて外し終えると、真希はこちらを向いて、
「この為よ」
 と、言って、ばっとコートを脱いだ。
「どう? 今年の干支は丑だから、牛のコスプレをしてみたの」
 そう言う真希の姿は確かに牛だった。角と耳の突いた牛柄の帽子に、臍の見えるくらいに短い牛柄のチューブトップ、そして、牛柄のミニスカートだ。毎度のごとくスカートの丈は膝よりかなり高い位置である。
「確かに牛だが……。寒そうだな」
 俺が素直に感想を述べると、
「なによ。せっかく喜ぶと思ってこうしたのに」
 と、真希は不満そうに頬を膨らませる。
「いや、嬉しいが、風邪引かないか心配だったからさ」
「ん……それならいいんだけどね。でも、部屋の中は暖かいから大丈夫よ」
 そう言って真希は胸を張った。

 正直、年初めから負けてばかりでは嫌なので、俺は少し痛いところを言ってやろうと思い、口を開く。
「そういえば、牛、牛って言うが、本当に牛になってないか?」
「え?」
 意味が分からなかったのか、真希はきょとんとしていた。
「いや、年末に忘年会やら何やらで食べまくってたように思うんだが、太ったんじゃないか? どれ、確かめてやろう」
 俺は一気にそういうと、服に隠れていない真希の脇腹に手を伸ばして、ギュッと掴んだ。
「きゃ。いきなり何するのよ」
 と、真希はこちらを睨むが、手を離させようとはしない。
 俺は掴む力を色々と変えつつ感触を確かめてゆく。
 しばらくそうしていた俺だったが、
「あれ……、太って……ない?」
 俺の手に伝わる感触は年末前のものと大して変わらないように思われた。
 俺の呟きを聞いた真希は、
「どうよ。別にお腹は太ってなんかないわよ?」
 と、胸を張って言う。
「そうみたいだな……」
 予想がはずれて、がっくりと肩を落とす俺。
 が、そんな俺に、
「でも、ある意味牛になったかも」
 と、真希が言った。
「どういう意味だ?」
 そう俺が聞くと、真希は腕を胸の下で組んで、前屈みになって、
「どう? 分からない?」
 と、やや色っぽく聞いてくる。
 その目は期待に満ちていた。これは間違うわけには行かない。
 妙なポーズを取った真希を上から下まで舐め回すようにてみた。
 二本の黄色い角と耳が付いた帽子は、実によくできていて、真希のこだわりが感じられる。顔はナチュラルメイクで、しかし、十分に真希の美しさを引き出していた。ややつり目がちの勝ち気そうな目がこちらを見つめている。
 上半身に目をやれば、細く滑らかな腕が、もともと大きな胸を持ち上げ、さらに強調していた。確かに真希ならば、牛には適任だろう。
 更に下に目をやると、腕の下からちらりと臍がのぞき、ミニスカートから柔らかそうな太ももがすらりと伸びていた。
 俺はそれをみてしばし考え、
「胸が大きくなった……?」
 と、疑問符付きでようやく答えを出した。
「そうそう!」
 と、正解がでて真希は目尻を下げて頷く。
「でも、真希がそんなポーズをしたからじゃないのか?」
 俺がそうつっこむと、
「そんなことないよ、ほら」
 と言って、真希は俺の両手を握って、自分の胸に当てさせた。
「分かるでしょ?」
 こともなげに真希はそうこちらに聞いてくる。が、俺としてはびっくりし過ぎて反応出来ない。
 早鐘を打つ自分の胸とは対照的に、手に伝わる真希の鼓動は落ち着いていた。
 促されるままに触れていた俺だったが、少し手を力を入れ、確かめてみる。
「確かに……大きくなってるな」
 若干ではあるが、間違いなくボリュームがアップしていた。
「分かった? これでEになったの」
 真希は得意げにそう自慢する。
「はは、そうなのか。じゃあ、確かに牛だな」
 俺が苦笑しつつそういうと、真希は俺の手を胸から離させて、
「じゃあ、そろそろ中に入れてよ。晩御飯抜きできたんだから」
 と、舌舐めずりしながら言った。
「あぁ、そうだな。ちゃんと準備はしてあるからこたつで待ってろ」
 そう言って真希を部屋にあげ、こたつに座らせてから俺はキッチンへ向かった。
 今回は品数ではなくそのボリュームに重点を置いたので、料理自体にはあまり時間はかからない。が、出来たてこそがうまいものだから、真希にはしばらく待ってもらうしかなかったのだ。

 二十分くらいして、俺は料理を終えてリビングに戻ってきた。真希は待ちかねたようにすでに箸を手にスタンバイさせている。
「出来たぞー」
 俺はそういいながら、いまだにジュージューと音をたてるそれを持ってきた。
 その音と臭いに反応して、
「ん、お肉かな?」
 と、鼻をひくつかせる。
「あぁそうだ」
 俺はそういいながら、どんとそれをテーブルに置いた。
「お、おっきーね~」
 その大きさに真希が歓声を上げる。その肉は上から見れば大して普通のサイズと変わらないが、分厚さは普通の五六倍はあった。
「あぁ、すごいだろ。これで一キロ有るんだ」
「へぇ、そうなんだ」
 真希は感慨深げに言い、こちらを見上げると、
「でも、もしかして、私を本当に牛にしたいんじゃないの?」
 と、悪戯っぽく笑う。
 それが妙に艶っぽくてドキリとするが、
「別にそんなことはない」
 と、俺は答えつつ、
「で、これがサラダだ」
 と、この家で一番大きなボウルに入れられた野菜サラダをこたつにおいた。
「こっちも多いね」
「あぁ、肉ばかりだったら、体に悪いだろ」
「うん」
 真希は頷き、いただきます、と言いかけて、
「そういえば飲み物は?」
「あぁ、ちゃんとあるよ」
 そう言ってこたつに乗せたのは一リットル入りの牛乳パックとコップである。
「まぁ、丑年ってことで、牛に感謝だ」
「なるほどね」
「一応、五本買ってきたから、遠慮しなくて良いぞ」
「うん。いただきます」
 真希はそう言うと、まずはサラダに取りかかった。

 生野菜を使っているので、シャキシャキと音がする。真希はサラダの山をザクザクと切り崩していった。
「ドレッシングが足りなかったら言ってくれ」
「ん、大丈夫だよ。別になくても食べられるから」
 そう言いつつも、真希はどんどんとサラダをお腹に収めてゆく。
 半分ほど食べたところで、
「そろそろお肉を食べよっかな」
 と言って、箸をフォークとナイフに切り替えた。
 それなりのスピードで食べているのに、そのナイフ捌きは上品で、俺は真希の意外な一面に驚く。
 少し食べたところで、
「何か足りない気がするんだけど……」
 と、真希が首を傾げた。
「ん、なにかまずかったか?」
「ううん、そういう訳じゃないんだけど……」
 と、そこで気づいたのか、
「あ、ライスがないのよライスが」
「あぁ、すまん。すっかり忘れてた。炊飯器にあるからすぐ持ってくる」
 俺はそう言うと、炊飯器から皿に移したご飯をキッチンから持ってきた。
「ん、ありがと」
 と、言うと、真希は再び食べ始める。
 用意しておいたライスは三合。サラダと合わせれば、肉とちょうどあうはずだ。
 ぱくぱくとおいしそうに食べる真希を俺は右から眺めていた。やはり、自分の作ったものをおいしそうに食べてくれるのはとても嬉しい。
 大体全体の半分くらい食べたところで、一本目の牛乳が切れた。すぐさま二本目を開けて、こたつにおいでやる。横から見てみると、真希のお腹はぽっこりと膨らんで来ていた。とはいえ、これくらいはまだまだ序の口である。真希は俺の視線に気づくと、
「おいしいよ。焼き加減もちょうど良いし」
 と、笑顔でお腹をさする。
「あぁ、そこら辺はきちんと調べたからな」
「そうなの」
 そう言ってまた食べ始めようとした真希に、あることを思いついた俺は、
「一つ頼みたいことが有るんだが、いいか?」
 と、声をかけた。
「ん、何?」
 小首を傾げる真希に、
「その……、膝枕してくれないか?」
 と、躊躇いがちに聞く。
「え?」
「いや、下からのアングルで見てみたいなと思ってさ。せっかくこたつだし、よいかなと」
「あ~、なるほどね。うん。いいよ」
 そう言うと、真希はこたつから膝まで引き出して、俺の入れるスペースを作ってくれる。
 お言葉に甘えて俺はその右膝の上に頭を乗せた。柔らかな感触が後頭部を襲い、どこからか甘い匂いがしてくる。視界には左側にこたつ、右側にぽっこり膨れたお腹と牛柄の大きな胸、細いおとがいが見えた。
「じゃあ、食べるわ。こぼしたらごめんね」
 真希はそう言うと再び料理を食べ始めた。
 下から見るとまた別の見え方になるものだ。
 真希の腕が右から左に伸び、戻ってくるときには、その先に料理を乗せて戻ってくる。そしてそれは口の中に吸い込まれ、再び真希は腕を伸ばすのだった。
 その様に見とれているうちにも、着実に料理はお腹に収められ、その体積を増していく。いつの間にか、右頬に真希の膨らんだお腹が触れていて、胸の見える面積がだいぶ小さくなっていた。
「スカートをゆるめなくて大丈夫か?」
 俺は心配になって下から尋ねる。
「あ、うん。大丈夫。今回はゴムにしてみたの」
 真希はそういうと、スカートの帯の部分を引っ張った。ゴムはみゅーんと伸びて、まだまだ余裕がありそうである。
「ん、ならいいが、俺の頭が邪魔になったら言ってくれ」
「うん。わかった」
 そういうと、真希はもう残り少なくなったであろう料理を平らげに掛かる。
 まず、ご飯がなくなり、つぎに肉が、そして最後にサラダが残った。
 シャキシャキと音を立てながら、真希が最後のサラダを食べきる。
「ごちそうさまでした~」
 真希は手を合わせてそう言った。下から見ると、膨らんだお腹でほとんど胸は見えなくなっている。
「お粗末さまでした」
 と、俺が言うと、
「ううん。とってもおいしかったよ。あのデミグラスソースは手作りでしょ?」
「ぉ、わかったのか。実はあれは三日間かけて煮込んだものだったんだぞ」
「へぇ、すごいね。ありがとう」
 そういうと、真希は満足げに膨らんだお腹をさする。
「じゃあ、私もちょっとサービスしようかな?」
「ん? 何かしてくれるのか?」
「うん。牛乳を五本も買ってきてくれたんでしょ?」
「あぁ、そうだが」
「せっかく買ってきてくれたんだし。余っても困っちゃうだろうから、全部飲んであげるよ」
「ぉ、そうか。でも、お腹は大丈夫か?」
「まかせてよ」
 真希はそういうと、二本目の残りを一気にぐいっと飲み干した。
「じゃあ、残りも持ってくるから待っててくれ」
 俺はそう言って立ち上がると、キッチンから牛乳を三本持ってくる。
 それをこたつの上におくと、真希は自分の膝を指差して、
「ここ、いいよ?」
 と、促してくれた。
 改めて横から見ると、お腹はだいぶ膨らんで、妊娠七ヶ月といっても大丈夫そうな感じである。あの中に、あれだけの食事が詰まっているのだ。
 俺を再び膝枕すると、真希は上からこちらを覗き込んで、
「じゃあ、飲むよ」
 と、コップに注いだ牛乳を飲み始めた。
 白い牛乳が桜色の唇に飲み込まれ、そして目の前のお腹に収められてゆく。
 ごくり、ごくりと喉が音を立てるたびに、じわり、じわりとお腹が膨らんでゆくのが分かる。
 頬に伝わるお腹の感触は、少しずつ、硬く、緊張を持ったものへと変わっていく。
 三本目を飲み干したところで、俺は真希のお腹が冷たくなってきたように感じた。
 よく見ると、真希の手が震えている。
「おい、真希。大丈夫か?」
「う~ん……。お腹が冷たくなっちゃって、寒くなってきたの」
「それなら早く言ってくれれば良いのに。俺がホットミルクにしてやるよ」
「うん。ありがと」
 俺は再び立ち上がって、キッチンで二パック分のホットミルクを作ってリビングに戻ってきた。
 真希はこたつの毛布をお腹に乗せて暖めている。もう少し奥に入ればいいようなものだが、おそらくお腹がつかえるのだろう。
「できたぞ」
 と、俺が声をかけると、膝枕のできるスペースをまた空けてくれた。
 俺が定位置に仰向けになると、
「じゃあ、いくね」
 と言って、真希が飲み始める。
 流石に寒かったのか、一気に一本分くらいの牛乳を飲んでしまった。
 パンパン膨らんだお腹でもう胸は全然見えない。頬に触れるお腹の感触は、破裂しそうなほど張り詰めているように思われた。
 真希はそんなお腹に手を当てて、
「これでだいぶ温まったね~。結構苦しいけど、全部飲むよ」
 と、背中を丸めて笑顔をこちらに向けてくる。
「無理はしなくていいんだぞ」
「ううん。せっかくのお正月だし、羽目をはずしてもいいじゃない?」
「ん……、そうか」
 俺がそういうと、真希は再びホットミルクを飲み始める。
 流石に限界が近いのか、一口一口が重さを持っているように感じられる。
 真希が一口嚥下するたびに、目の前のお腹がどんどん張り詰めていった。
 そしてようやく最後の一口を飲み終えると、
「ん~。飲んだ飲んだ。もう限界だよ~」
 といって、真希はそのまま仰向けになった。
 流石にこのまま膝枕されているのもおかしい気がしたので、頭を起こして真希を見やる。
 真希のお腹は臨月の妊婦と比べてもほとんど遜色がない。本物の妊婦と並べて、どちらが本物か当てさせても、結果は半々ぐらいになるんじゃないだろうか。
 真希はそのお腹を満足げにさすりながら、
「どう? よかったでしょ?」
「あぁ……。限界まで食べてくれたのは、これがはじめてだしな」
 真希は頷くと、
「流石にこのままだときついから、ベットを借りても良いかな?」
 と、尋ねてきた。
「あぁ、いいぞ。立てるか?」
 俺が手を貸してゆっくりと真希が立ち上がる。
 ベッドルームまで歩き始めると、チャポチャポとお腹の中から音が聞こえてきた。
 その音に真希は嬉しそうな顔をして、
「あはは、まるでミルクタンクみたいだね」
「そうだな。五リットルも入ってるんだからな」
 そんなことを言いつつ俺がドアを開け、ベッドまで案内する。
 真希が横になると、ミシミシとベッドが音を立てた。
「うふふ、流石に今日はかなりの重さになってるみたい」
 と、真希は楽しそうだ。
 俺が手持ち無沙汰にそれを眺めていると、
「これで本当に牛って感じがしない?」
 といって、大きく膨らんだお腹を軽くポンポンと叩いた。
 それにあわせてチャポチャポとお腹が音を立てる。
「でも、牛なら、牛乳が搾れるものだろ?」
 俺が意地悪くそういうと、
「でも、これだけの飲めば出てくるかもよ?」
 と、胸を絞るような仕草をした。
 が、当然のごとく出てくるはずもない。
 その滑稽さに二人して笑う。
「で、どう? お腹触りたい?」
 ひとしきり笑った後、真希が誘うように聞いてきた。
「あぁ、もちろん」
 と、俺が言うと、真希は腕をどけて、こちらが触れるように場所を空けてくれた。
 流石に苦しいのかあまり身じろぎをしようとはせず、横になったままの真希のお腹に俺は手を伸ばす。
 触れてみると、これ以上にないというほどパンパンに膨らんでいた。頬よりも手のほうがはるかに敏感で、その違いが如実に分かる。
 張り詰めたお腹に手を這わせると、時折グルグル言う音が手に伝わり、胃が食べ物をこなしているのが分かった。
 少し躊躇いつつも、やんわりと押し込んでみると、強く反発され、ほとんどへこみもしない。
 俺はたまらない気分になって、顔をお腹に押し付けてみた。
 真希はなされるがままにスペースを空けてくれ、仰向けになる。
 俺はみぞおちの辺りに頭を持っていってみた。
 頬にはちきれそうなお腹の感触を感じつつ、後頭部にマシュマロのように柔らかな二つの膨らみを感じる。
 俺の中で、何か良く分からないが、何かが確かに満たされていくのが分かった。

 その状態でしばらくぼんやりとしていた俺だったが、いつの間にか真希が寝息を立て始めていることに気がついた。
 真希の顔をのぞくと、とても満足そうな表情で眠っている。
 俺はそっと真希に布団をかけると、その横に自分も横になった。
 満ち足りた気分のまま、真希の寝顔を眺めながら、まどろみの中に沈んでゆく。

 ……こんな正月も悪くない。
 そんなことを思いながら、俺は眠りに落ちていった。




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