ハルトシュラー年代記序章より


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作者:[―{}@{}@{}-]◆LV2BMtMVK6(?)

「修羅となれ、貼ると修羅だ。」
集ったハルトシュラー総員が湧いた。歴史の歯車が噛み合い、それは音を立てて動き始めた。
だが、これに先立つ一つの事件があったことを知らずして、この演説の影響を測ることはできない。

 11月のある寒い日に、あるいは定めて、あるいは期せずして同じ場所に居合わせた者たち。
その日焼きとり屋から香ばしい煙が昇る街角に現われた、物々しい警備。
ハルトシュラー親衛隊が列を組んで粛々と行進する後ろには――希代の神総統ハルトシュラーが。
前席で運転手の眼光は、鋭くあたりの隅々に配られている。
一行はある古骨董屋の前で進むのをやめ、一人の親衛隊長がドアを開くと、
追随しようとする者を手で制止し、ハルトシュラーは狸の置物の向こうの開かれた戸口の向こうへ入っていった。

「粗茶では御座いますが、どうぞ召されませ」
「ありがとう。ところで、今回の要件であるが」
 茶に形ばかり口を付け、音楽家は口を開いた。
「じっと見守って来ていたが、賑わいが足りぬようだな」
「左様、住人の気質が……あの様で御座ります故」
 正座した燕尾服の影は、ある種の虫の名を憚ったとも見えた。
「ああ…あの者らは兎に角……あの様であるから。表に参っている者たちも、一皮むけばカサカサなどと口走る」
「えゝ、左様に御座いましよう、そろそろ御身を顕わされては如何」
「余直々にであるか。それも考えぬではなかった。だが、彼らの気質は感想よりも、今少し創作活動に向けられて然るべきと考える故、沈黙を守っておった」
「御身様は万能であらせられますゆえ」
 庭の紅葉を透かして障子に陽が射す。映った葉影はさやかに揺らいだ。
しばらくの間、二人は沈黙を守っていた。
「では」
「畏れ」
 二人は同時に口を開き、閉ざした。
「同時だぁーっ!?」
 頓狂な声がしたのは、隣の家からでもあっただろうか。
 いずれにせよ、次に口を開いたのは音楽家であった。
「では、余を顕すこととせん。斯くなる上は容赦はせぬぞ」
「御意、承りまして御座います」
 燕尾服姿に柔らかい笑みが差した。

 以降、水面下にハルトシュラーの手が伸び始めた。前兆が訪れたのは一週間ほど後のことであった。
第二次の移転、新規ブームと、それに伴う住人の流入である。だが、これらは前兆にすぎなかったのだ。
25日夜、ハルトシュラーは蜂起を断行した。それに伴う前述の演説は、ハルトシュラー全員の心を揺り動かした。
こうして、彼らはここに、歴史の新たな1ページを記したのである。
ハルトシュラーは表舞台に姿を現した。最早止めうる者は――。


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