【1】

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---- むかしむかし、とおいとおい異国の地に、立派なお城がありました。 そこには領主様と、綺麗な奥様がすんでいました。 領主様はハルトシュラーといい、まわりではしらない人がいない、立派なおかたです。 ハルトシュラーは何不自由ない暮らしをおくっていたのですが、 たったひとつ、たったひとつだけ悩みがありました。 「どうして私には、子宝にめぐまれないのだろう?」 奥様とはたいへん仲がよろしかったのですが、子供ができなかったのです。 いろんな方法をためしたのですが、いっこうにききめがありません。 ほとほと困り果てたハルトシュラーは、おふれをだしました。 「だれでもいい。ききめがあった者にはほうびをやる」 おふれをだしてからしばらくすると、ひとりの男がやってきました。 男はまっくろな衣に身をつつんで、たいそう気味がわるかったのですが ハルトシュラーは威厳をくずさずにたずねました。 「おまえにはできるのか?」 「もちろんでございます。効果がなければ、いかようにしてくださってもかまいません」 そういうと男は、赤い袋と青い袋をさしだしました。 なかには、なにやら薬草がはいっています。 「男子がほしければ赤を、女子がほしければ青の薬草を奥様にのませください」 ハルトシュラーはさっそくためしてみることにしました。 「男の子がいいかな、女の子がいいかな。そうだ、ふたつともためしてみよう」 ハルトシュラーは赤と青の袋をふたつとも奥様にのませました。 するとどうでしょう。 一年がすぎると女の子が、それから二年がすぎると男の子がうまれました。 ハルトシュラーはたいそうよろこび、 女の子にはジークリンデ、男の子にはジークフリードとなづけました。 「そうだ、あの者にほうびをやらないとな」 ハルトシュラーは男をよびだそうとしたのですが、もう国には姿がみつかりませんでした。 「ほうびも貰わずにたちさるとは、欲がないのか、それともききめがなかった時のことを  おそれてにげだしたのか」 兵士たちにめいじて、ゆくえをさがさせたのですがみつけることはできませんでした。 それから年月がたち、二人のこどもはすくすくと成長しました。 ジークリンデは、大人たちにまじって狩りにでかける元気な子に、 ジークフリードは、絵や本をこのむ大人しい子にそだちました。 「うんうん、これで性格が逆ならさらに良かったが、そこまでは贅沢すぎるな」 ハルトシュラーは待ちに待ったこどもたちを、たいそうよくかわいがりました。 そんなある日のこと、今度は奥様が病にたおれました。 ハルトシュラーはとてもとてもかなしみ、いっしょになって看病しました。 いろいろな薬や祈祷をためしたのですが、ききめがありません。 おふれもだしたのですが、よい知恵をもっているものはあらわれませんでした。 「ああ、どうしよう。このままでは妻がたいへんなことになってしまう」 こまっているハルトシュラーに、ジークリンデはいいました。 「お父様、黒い男をさがしてはどうかしら。男ならなにかしってるかもしれないわ」 「黒い男。ああ、あの男か。むすめよ、わたしもさがさせたのだが、  あの男はいまでもみつからないのだよ」 「兵士たちは給金分しかはたらかないから、きっとさがし方がわるいのよ。  わたしがさがしだしてきて首根っこをつかまえてくるわ」 ハルトシュラーはそれをきいてびっくりしました。 「ああ、むすめよ。せっかくさずかった我が子を、わたしはきけんな目にあわせたくないのだ」 「お父様、かわいい子には旅をさせよときいたことがあります。 それに、親孝行をするのはこどものつとめです」 ハルトシュラーはなんとかジークリンデをなだめようとしましたが、 ジークリンデは頑としてきこうとしません。 しかたなく、背負い袋にぎゅうぎゅうと物をつめこんでむすめをおくりだしました。 家来をいっしょにつかわせたかったのですが、ジークリンデはそれもことわりました。 「お父様、むだな出費はおさえるのがけいえいしゃのつとめです」 小さいくせに、なかなかこまっしゃくれたことをいいかえします。 ハルトシュラーは、むすめのうしろ姿をいつまでもみおくっていました。 ジークリンデは、ひとりでお城の外にでることができてよろこびました。 外にでようとすると、めしつかいがあとをついてくるからです。 でも今はだれもいません。こごとをいうものもいません。 みしらぬ場所にいけるのは、とても興味がわきます。 でもでも、目的をわすれる事はもちろんありません。 「ほうびをもらわずにたちさるなんて、いいどきょうね。  お父様を恩知らずとののしりたいのかしら」 しばらく道をすすんでいましたが、ジークリンデはふと、あしをとめました。 「あんなことをいったけどやっぱりひとりじゃ、なにかとふべんね。  小間使いはひとりくらい、いたほうがいいかもね」 そうおもうとさっとお城にひきかえしました。 お城ではジークフリードが枕を抱いてねています。 その首根っこをつかんで背負い袋にいれると、はやばやとお城をあとにしました。 目がさめると、ジークフリードはびっくりしました。 ふかふかのベッドから、ごわごわの袋のなかにいたのです。 あたまをだしてまわりをよくみると、姉が鼻歌をうたいながらパンを食べています。 「お姉ちゃん、どうして僕はここにいるの?」 「グッモーニン、ブラザー。よろこべ、貴君をわが軍の雑役兵に任命する」 「ええ、どういうこと? 僕そんなのやだよ」 「麦は日が照るからこそよく実る。弟よ、これはお父様のたっての願いなの。  獅子はわが子を千尋の谷に突き落とすという。これも大人になるための試練なの」 「父上が? 本当に?」 「あなたは本ばっかりよんで、世間をしらないわ。じっさいに自分の目でみることも  たいせつなことではないのかしら」 「うん、うん、それもそうだね、僕がんばる」 「そうね、いっしょに頑張りましょう。そしてお母様を元気にしましょう」 「そうだね、お姉ちゃん」 こうして、ふたりの旅がはじまりました。 いっぽうそのころ、ハルトシュラーはジークフリードの部屋にあった手紙をみて おどろきました。 ―――やっぱりひとりじゃきけんなので弟をつれていきます      治すほうほうは、私たちがきっとみつけてみせます                  しんぱいしないでください                         愛するお父様へ                             ジークリンデ――― ハルトシュラーはこれをみて、たおれてしまいました。 かわいそうに、ハルトシュラーは妻といっしょにねこんでしまいました。 ----

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