267

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作者:ID:8hy+hQU0 ---- 空に月が輝いていた。 その月下に琴の音がひとつ。 台座に赤敷物を敷いて美作が和琴を奏でていた。 その傍らで倉刀が茶を点てている。 二人とも和服が様になっていた。 そして、彼らから離れた先の赤敷物に少女が一人。 月光に劣らぬ銀髪をさらさらと風になびかせ、倉刀が点てた茶を頂いていた。 この少女も着物、身を整えて周りの桜を眺めている。 ハルトシュラーである。 ここは迷い家の庭、ハルトの敷地内だ。 師の提案により、夜桜の花見としゃれこんでいたのであった。 普段と違い、和服正装なのは風情を介するハルトゆえか。 「桜が綺麗だな、倉刀」 飲み干した椀を置き、ハルトは呟いた。 湯の加減をみながら倉刀は頷いた。 「左様で」 「なぜ綺麗か分かるか?」 師の問いに、しばし考える倉刀。 その間にハルトは美作へ声をかける。 「美作はどうだ」 問いかけられた美作は、手を休め師匠をじっと見つめる。 「う~ん……。淡い色してるから、とか?」 「倉刀」 ふたたび見つめられた倉刀は面差しをあげ、師に答えた。 「散るゆえ、かと」 「ほう」 「桜は散ります。ゆえに人はその儚さを感じます」 「なるほどな」 ハルトは立ちあがって二人に近寄り、自ら茶を点てる。そして二人に薦めた。 二人が茶をいだくと、ハルトは口を開いた。 「桜は語らぬ。季節になって花を咲かせ、そして散っていく」 ……ふわり。 ハルトの茶碗に、散った桜の花がひとひら舞い降りた。 それをみてハルトは微笑む。 「後世に続き人々を魅了する物もあれば、一瞬ゆえに魅了する物もある。  不思議。見事よな、作品というものは」 師の言葉に二人はそろって頷いた。 「御意」 「そうだね、婆ちゃん」 三人は桜と、それをうつす月下の夜空を飽きることなく見つめていた。
作者:ID:8hy+hQU0 ---- 空に月が輝いていた。 その月下に琴の音がひとつ。 台座に赤敷物を敷いて美作が和琴を奏でていた。 その傍らで倉刀が茶を点てている。 二人とも和服が様になっていた。 そして、彼らから離れた先の赤敷物に少女が一人。 月光に劣らぬ銀髪をさらさらと風になびかせ、倉刀が点てた茶を頂いていた。 この少女も着物、身を整えて周りの桜を眺めている。 ハルトシュラーである。 ここは迷い家の庭、ハルトの敷地内だ。 師の提案により、夜桜の花見としゃれこんでいたのであった。 普段と違い、和服正装なのは風情を介するハルトゆえか。 「桜が綺麗だな、倉刀」 飲み干した椀を置き、ハルトは呟いた。 湯の加減をみながら倉刀は頷いた。 「左様で」 「なぜ綺麗か分かるか?」 師の問いに、しばし考える倉刀。 その間にハルトは美作へ声をかける。 「美作はどうだ」 問いかけられた美作は、手を休め師匠をじっと見つめる。 「う~ん……。淡い色してるから、とか?」 「倉刀」 ふたたび見つめられた倉刀は面差しをあげ、師に答えた。 「散るゆえ、かと」 「ほう」 「桜は散ります。ゆえに人はその儚さを感じます」 「なるほどな」 ハルトは立ちあがって二人に近寄り、自ら茶を点てる。そして二人に薦めた。 二人が茶をいだくと、ハルトは口を開いた。 「桜は語らぬ。季節になって花を咲かせ、そして散っていく」 ……ふわり。 ハルトの茶碗に、散った桜の花がひとひら舞い降りた。 それをみてハルトは微笑む。 「後世に続き人々を魅了する物もあれば、一瞬ゆえに魅了する物もある。  不思議。見事よな、作品というものは」 師の言葉に二人はそろって頷いた。 「御意」 「そうだね、婆ちゃん」 三人は桜と、それをうつす月下の夜空を飽きることなく見つめていた。 ----

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