第二話 まさかの競演


「滅尽滅相ォォォォォォォォォォォォ!」


諏訪原市のはずれに位置する廃工場で男の声が木霊する。それと同時に屋根には穴が開き、窓は到る所が割られ、錆びた鉄骨で出来た工場は一瞬にして灰燼と消えた。これがたった一人の男による破壊だというのを、市外から来た人間が聞いたら性質が悪い冗談としか聞き入れてもらえないだろう。


波旬「......フン」


謝礼を貰いつつ波洵は踵を返した。この仕事に鬱陶しさはしない。むしろ要らん塵を排除できるのであれば喜んで引き受けてやる(引き篭もりである彼がこの職につき続けているのも大義名分を得て滅尽滅相をできるからである)。


しかし、いくら彼とて疲れを感じないわけでもない。一日に最低100件を超す塵掃除をしなければならない。今回の依頼は彼の望んでいる物だが、時には文字どうりただの塵掃除をする事もある。それは彼の望む滅尽滅相の姿ではない。


波洵「・・・」


有能な塵が入らないか、そんなことを考えていた時、彼のケータイがメールの着信を伝えた。冷泉からだ。


冷泉『今すぐ入社したいという者から電話が来ていますが如何致しましょう?早急に職が必要とのことですが・・・』


波洵「・・・」


波洵は数秒黙考し、メールを返信した。


『今すぐ入れろ。面接も何も抜きだ。明日から来させろ』


掃除実行班の大半がいない今の状況では素人だろうがなんだろうが人手がいる。(尤も実行班がいないのは波洵が目障りという理由で滅尽滅相したからであるが)


そうして波洵は次の仕事場へ向かう・・・





~一日前~


諏訪原市の一角にある屋敷と言っても過言ではない一軒家。その庭に二人の人影があった。双方共に金髪、金色の瞳をした美丈夫、美少年であった。


黄金「さてイザーク、そろそろ夕飯にするとしようか」


イザーク「はい、父様」


この親子こそ黒円卓の首領ラインハルト・トリスタン・オイゲン・ハイドリヒとその嫡男であるイザーク・ハイドリヒである・・・が、休日である今日のこの二人は朝食、昼食以外は親子でずっとキャッチボールを他にやる事がないのか、というぐらい続けていた。


さて和やかに夕食を済ませ、親子で風呂に入り、自室に戻りPC(キーボードから何まで金ピカ)を作動させたところまではいつもと同じであった。


黄金「・・・ん?」


ディスプレイに表示される文字に一瞬思考が止まる黄金の獣。何かの間違いと思いそのページのタブを右クリックしページを最新の情報に更新する。しかし、


黄金「......なん・・・だと?」


彼の見ているページは株のページ。彼は株で生活金を得ている。黄金の獣はその卓越した才を持って利益の得る株式会社を発見し、投資するという生活を続け、それで今の生活を手に入れた。(女神を観察しやすいという理由で女神とツァラトゥストラの学生寮の近くにテント張って過ごしているどこぞのニートとは格が違う)


ただし、それは今までの話である。彼が最近から投資していた会社は倒産していた。むろん倒産したのでは投資した金は帰ってこない。そして黄金はその会社に所持金の半分以上を投資していた・・・。



~翌日~


イザーク「行ってきます。父様」


黄金「ああ、気をつけて行ってくるのだぞ」


イザークを学校に送り、その後獣殿は一人では広すぎるリビングで椅子に腰かけ考えた。


黄金「(さて、どうする?)」


幸い、すべてを投資していたわけではないのでここ数か月分は持つ。しかし、そのあとは?


黄金(「株の投資ばかりをして、職に就かなかった私の失態か・・・)」


自嘲気味に失笑する獣殿。そしてケータイ(これもまた全て金ピカ)を取り出す。


黄金「(カールに頼ってみるか・・・)」


獣殿唯一の友人にして最強のニート、コズミック変質者ともいわれるカール・クラフトの番号にかける。しかし、


「今、私は女神のストーカーで忙しいのだ、またあとでかけ直すのだよ諸君、それか、ピーという音の後に・・・」


かの黄金の獣すらもケータイを破壊しそうになるほどのウザイ留守電であった。


黄金「さて、どうしたものか」


ひとまず家にいても状況を打開する策は何も見つからないので外に出る。しかし、どうしたものか。


黄金「すぐにでも職につけてくれる企業はないか・・・ん?」


町内の掲示板を通り過ぎようとしてその張り紙に気が付いた。そこには、


『短時間の掃除で高収入をお約束。完全実力主義で時給は実力に合った分だけお支払いします』


黄金「掃除屋か。そういえばマキナがそのような職に就いてたな」


黒円卓はその聖遺物か自らの趣味に合った職についている。黒騎士もその聖遺物の特性を利用し、一瞬で塵に終焉を与えさせる掃除屋になっている。


黄金「我が部下の商売敵になるのは些か心が痛むが仕方がないことか」


そう思い、張り紙の下のほうにある番号に電話を掛ける。




黄金「あ、マルチクリーニング ハ・ジュン・さんですか?」


  • 私株とかやったことないのでおかしなとこあるとは思いますがご了承してください -- 正田卿のレギオン (2012-06-12 19:53:29)
  • 仮想世界(だよね?)だから、そういう法則を流した変○がいたからそうなった、ということでいいと思いますよ。 -- 名無しさん (2012-06-12 22:17:41)
  • ああ、つまり最終的にはどこかの金髪巨乳美女に付き纏う畸形と回帰を滅尽滅相するんですね、わかりません -- 名無しさん (2012-06-13 20:35:39)
  • 全て金ぴかって、成金臭(または小物臭)がプンプンするんだが・・・(例;OOのアレハンドロ -- 名無しさん (2012-06-13 20:45:18)
  • あの波洵が自ら望んで人を雇うだと… -- 名無しさん (2012-06-13 23:58:54)
  • なんか波旬がスーツ姿でかっこよく街を闊歩する姿を思い浮かべちまった・・・ -- 名無しさん (2012-06-15 00:36:39)
  • でもスーツの背にはでかでかと"俺"と書いてあって、ネクタイも俺字プリントなんですね、わかります -- メル専 (2012-06-15 01:00:02)
  • テント暮らしのくせにニートは携帯もってるんだな。支払いとかどうしてるんだろう・・・ -- 名無しさん (2012-06-15 20:38:18)
  • ↑一応家はあります。女神を観察しやすい理由でテント暮らしをしてます。 -- 正田卿のレギオン (2012-06-15 20:54:44)
  • ↑段ボールじゃないんだ… -- メル専 (2012-06-15 22:06:32)
  • 蛇つながりでそれがあった・・・ -- 正田卿のレギオン (2012-06-15 22:12:43)
  • 何者にもこの飢えと渇きを癒す邪魔はさせはしない。だから、さあ、共に手を取り合って、燦々と輝く至高の語りを、鮮烈に舞い、激烈に闘い、笑い、怒り、哀しみ、喜ぶ者たちが魅せてくれる物語を、永遠と、永久と、限りなく、果てしなく、終焉なく味わいつづけよう。紡ぎ続けよう。 -- 他化自在天喇叭 (2013-03-21 14:10:06)
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最終更新:2013年03月21日 14:10
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