坂上波旬の夜


「……くふっ、くくくくく……さら~ば~ご~みどもほ~ろ~ぶ~、いにしえ~よりおれ~、ただおれ~♪」


夕日が沈み辺りも夜の帳が降りる頃。未だ坂上波旬は自室という名の太極座にて、禅を組んで掛け布団に包まり、焦点の合わぬ瞳で『我魂為天狗道-ワガタマシイオレガタメ(作詞・作曲 坂上波旬)』をぶつぶつと口ずさんでいた。時折口元から零れる一人笑いが凄まじく不気味で痛々しい。が、そこは他者からの評価など意に介さぬ唯我の漢、坂上波旬。かれこれ十時間に及ぶ孤独に飽きるどころか充実し、今に至るまでやれ一人シリトリや一人ババ抜きで天狗道タイムを絶賛エンジョイしていた。


「ゆれぬおれ~だ~けを~、たか~らか~にうたえ~、い~ざ~、つぶしあえ~♪ わ~が~ためちる~の」



「―――ヒィィィヤッハァァァアアアアアア!! 行くぜ野郎ども! 夜の街は俺たちのもんだぁあああああ!!」


「「「へい! 刑士郎さん! 何処までも!!」」」



「の……だぁ……?」



あけぼの荘付近をけたたましい騒音と共に過ぎ去っていったのは暴走族。近日この地区を騒がせている『チーム・呂雨漸・禍罵裡獲(ローゼン・カヴァリエ)』の改造バイク集団である。ありとあらゆる魔改造を施された単車を駆り、夜の街を疾走する薔薇のエンブレムの男たち。


その先頭を行くのは、血が通っていないかのような冷たい白貌と色の抜けた白の髪、そして血に飢える吸血鬼の如き真紅の瞳を特徴とする青年、凶月刑士郎。受験戦争に敗れ(というか主に覇吐が通り自分が落ちたという屈辱に耐え切れず)不良として落ちぶれた男は今、急激に勢力を拡大し続ける暴走集団のヘッドとなっていたのであった。


「そうだ……俺たちはもう、『道路交通法(なにもの)』にだって縛られちゃいねぇ! 俺たちは――――何処へだって征けるはずだぁぁああ!!」


脳の髄からアドレナリンを吐き出し、喉が裂けるような狂声を上げて、花屋ローゼン・カヴァリエの跡取り息子は夜の街を仲間と共に暴走する。僅かに湿り気を帯びた夜の風を全身で感じ、光線のように視界の隅へ流れていく景色に震えながら、その先へ、まだその先へとアクセルを回す。


「そうさ、俺は……俺は夜だぁああああああああああ!!」


  • 獣殿、あなたの爪牙が暴走してるので道路交通法を流出させてください……w -- 名無しさん (2012-06-01 12:27:43)
  • 我魂為天狗道続き書いてよwwww -- 名無しさん (2012-08-15 00:59:23)
  • ああ。腹が満たされていくぞ。もっとだ。もっとよこしてくれよ。 -- 他化自在天喇叭 (2013-03-21 13:08:31)
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