第零章 灰は灰に 塵は塵に 神は神に

 ある日、気が付いたときから不快だった。

 何かが俺に触っている。常に離れることなくへばりついてなくならない。

 なんだこれは。身体が重い。動きにくいぞ消えてなくなれ。

 俺はただ、一人になりたい。俺は俺で満ちているから、俺以外のものは要らない。

 生まれた時からそれだけを望んでいた。

 ベタベタと触れてくる気持ちの悪い二つの塵を目障りに思っていた俺を、何やらよくわからない無数の塵が取り囲んでいる。そして俺を箱に入れたかと思えば、そのまま埋めた。

 ああ、これはいい。これでこの不快からも解き放たれる……。

 ――何故だ。周りにはもう何もいないと言うのに、何故触れられる。何故俺をどこかへ引きずろうとする。

 そして、遂に見つけた。俺と曲がりなりにも比べられる、確かな他者を。

「……こいつだ。こいつが俺に触れているから、俺は一人になれない」

 生まれて初めて口にした言葉は、酷く煩わしくてたまらないが、そんな事がどうでも良くなるほどの激しい怒りが、俺を突き動かした。

「――滅尽滅相!!」

 潜った俺を眼にしたそいつは、なにやらよくわからない事をほざき始めた。

 マルグリット以外が私を殺そうなどと思い上がるなだの、乱入はお断りだの、こんな未知など望んでいないだの……。

 そうしてあれこれと投げつけてきたが……全部無視して、ようやくそれが止まった辺りで腕を薙いだ。

 黒い糞の塊ごと粉々になったそいつは、なにかをつぶやいている。

「……ッ嫌だ。嫌だ。
 嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
 ――こんな結末は認めない!!」

 そうして辺りが騒がしくなった後で、俺もどこかへ引っ張られた。なにやら少し薄らいで来ているが……これでようやく、一人になれるか?





 ある日、気が付いたときから不快だった。



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