1943年3月中旬 ウクライナ
普段と比べて静かなドイツ軍駐屯地にて、二人の軍人が会話をしていた。
「う~・・・・・・・もうすぐ4月だってのに、まだまだ寒いッスね~」
一人は寒さを堪えるように縮こまり、その場にしゃがみこむ童顔の青年。
「1月に比べればまだマシなほうだろう」
もう一人は腕を組み、戦車によりかかる青年より年上と思われる男。
「それはそうッスけど・・・・・・・・・・少尉は寒くないんすか?」
「この程度の寒さに耐えられなくてどうする。バルティ、お前も少しは耐えられるようになれ」
「んなこと言われても・・・・・・・俺は少尉みたいな鍛え方してないから無理っスよ~;」
ブルッと肩を震わせる青年バルティに、男はやれやれといった様子でため息を吐く。寒空のためか息は白くなった。
「ま、お前ほど頑丈なやつはあんまりいないしな。ミハエル」
とそこへ、二人の会話に入ってきた者がいた。
「あ、ロートス先輩」
ロートスと呼ばれた青年は、苦笑を浮かべていつの間にか二人のそばにいた。両手には金属製のコップを三つ持ち、そこから白い湯気が立ち上っている。
「ほら、コーヒーもらってきたから飲むか?」
「うわあ! ありがとうございます!!」
そのうち一つをバルティに手渡せば、彼は子供のように嬉しそうな表情で受け取る。
「ミハエルもどうだ?」
「・・・・・・・・・・」
ミハエルと呼ばれた男も無言で差し出されたコップを受け取る。
「あ~、生き返ったッス!!」
「コーヒー一杯ぐらいで大げさだぞ」
「なに言ってんすか! 今この状況において、この一杯が重要なんすから!」
ぐっと拳を握って力説するバルティに、ロートスは苦笑して自身もコーヒーを口にした。この青年、これでもミハエルの砲手にしてかなりの技量を持っているのだが、どうも緊張感がないというか・・・・・・なんというか・・・・・・・・。だがそういった性格の彼にロートスは少なからず好感を持っている。長く続く戦争において、心が荒んでいくのも珍しくない。だが彼のような明るい性格に接すると、不思議とトゲトゲした雰囲気の和らいでいく。そういった意味ではロートスは彼の存在に感謝していた。そしてそれは、ミハエルもきっと同じことだろう。
「しかし、もう2ヶ月以上経つんすよね~・・・・・・・」
「そうだな・・・・・・・・・」
「あ~、早く終わらせて帰りたいッスね。ドイツに」
「ああ、俺もアンナのやつをからかってやりたいな」
ふと、ロートスがつぶやいた名前にバルティが食いついた。
「アンナって、ロートス先輩のお友達すか?」
「ああ、近所の酒場で働いているんだ」
「ほほ~う、ちなみにどこまでの関係なんすか~?」
とたんにニヤつくバルティに、ロートスは苦笑を浮かべる。
「別にそういう関係じゃないさ。まあ気を許せる友人ってとこだ」
「またまた~、実は気があったりとかするんじゃないんすか?」
おいしい話を見つけたとばかりにロートスに詰め寄るバルティを横目に見ながら、ミハエルは小さく肩をすくめる。何気なくあたりを見渡すと、
「・・・・・・・・・?」
女がいた。うちの軍に女の軍人はいないはず、ということは先日保護した一般人だろうか。年の頃は20歳くらい、どういうわけか空を見上げていた。だがミハエルはその女をどこで見たような気がした。
「バルティ」
「へ?」
ミハエルはいまだにロートスに詰め寄るバルティに声をかけた。
「なんすか少尉?」
「あの娘・・・・・・・・」
言われてミハエルの視線の先に目を向けるバルティも、女の存在に気づいた。
「ああ、先日防空壕で見かけた子ッスね」
「防空壕?」
「はい、なんでも家族が死んで身寄りがなくなったとかで。少尉もちょっとだけ見かけてると思いますよ?」
言われてからミハエルも思い出す。そういえば確かにいたな、あのときは膝を抱えて俯いていたために顔は見えなかったが。
「なんだあいつ、あんな格好で寒くないのか?」
ロートスの言葉にミハエルも気づく。女は軽装な衣服の上にボロボロの布切れを羽織っただけという、ずいぶんと寒そうな格好をしている。
「大丈夫ッスかね~、声ぐらいかけます?」
とバルティが言い終わらないうちに、ミハエルが動いた。
「え、ミハエル?」
「少尉ー?」
二人の驚いた声に何も言わず、ミハエルは女のそばに近寄った。
「おい」
「・・・・・・・・・」
相変わらず空を見上げていた女は、ミハエルに呼びかけられて彼を見る。だがその目は不機嫌そうだった。
「・・・・・・んだよ」
「そんな格好だと風邪をひくぞ」
「・・・・・・・・俺の勝手だろ」
言動とはうらはらに、彼女の肩はわずかに震えている。何をやせ我慢しているのかこの女はとミハエルは呆れる。そしてまだ口をつけていなかったコーヒーを彼女に差し出した。
「あ?」
「寒いのだろう、飲め」
「・・・・・・・・・」
女はややいぶかしんだ表情でミハエルとコーヒーを見比べる。だがやはり寒さには勝てなかったのか、おそるおそるコップを手に取った。かじかんだ両手がコップの熱で温まるのを感じながら、女は一口飲んだ。
「・・・・・・・・・・・」
ふうと小さく息を吐き、女はミハエルから視線をそらした。
「・・・・・・・・ありがとな」
「いや」
「あんた名前は?」
「ミハエル。ミハエル・ヴィットマンだ」
「・・・・・・・・・・・・」
名乗られてから女はやや考えるようなそぶりを見せ、少ししてから口を開いた。
「俺は・・・・・・・・・・レミリア」
「そうか」
それに対するミハエルの返事は簡素なものだったが、レミリアは彼に背を向けて答える。
「あとで返しとくよ、じゃあな」
そう言って、彼女は戻っていった。
「・・・・・・・・・」
残されたミハエルはその後姿を見ていたが、
「なんすか少尉ったらー! かっこいいとこ見せてくれちゃってー♪」
間髪入れずにバルティが冷やかしにきた。その後ろにはロートスもいた。
「珍しいもんだな、お前が女に優しくするなんて」
「もしかして気があるんですか、え? このこの~♪」
「・・・・・・・・・・・」
だがこのときのミハエルに、二人の言葉は聞こえていなかった。
(・・・・・・・・・・・・・・・レミリア、か)
もう見えなくなった彼女の後ろ姿に、ふと何かを感じたような気がした
- これっていつごろの話? -- 名無しさん (2012-09-14 11:22:37)
- 一応『第三次ハリコフ攻防戦』あたりをイメージしています・・・・・・・。でも資料少ないから詳しい情報とかがわからないので、ちょっとアレです; -- うp主 (2012-09-14 11:44:13)
- 직관력이 있어 강한 에너지를 가지고 있는 사람은 이 영역에서 액세스하고 질문하고 거기에 있는 어떤 정보라도 입수할 수 있는 직관력이 있는 사람간이 다른 인간과 연결되면 인간끼리는 이런 식으로 서로 결부되어 있기 때문에 정보를 일상적으로 받게 된다 확실히 나타냄나라토로지 텍스트 -- 他化自在天喇叭 (2013-03-14 23:26:58)
最終更新:2013年03月14日 23:26