Dies irae -新たな敵- 第六話

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光の中に消えた青年を見送ると曙光一同も一息をつく。 夜行「さらばだ、最早会うことも叶わぬが、行き先に幸ある事をせめて祈ろう」 座から断絶された世界に構成される新世界では、彼らに接触する術は無い。 よしんば、存在したとしても、それは座の世界に彼らを取り込んでしまうことに他ならない。 彼らの世界には座も神も無い、彼ら自身が切り開くしかないのだ。 覇吐「まっ、そんな心配する必要もねえだろ。何せ、俺らの大先輩の大英雄なんだしよ」 にかっと、朗らかな笑みを浮かべ、益荒男達は主神の下へと帰っていく。 そして新世界では――― - 快晴の空の下、せわしなく行き交う人々は、日常の営みを絶やす事無く日々を送る。全て世は事も無し、今の世の中は平和である。 -- 名無しさん (2013-07-28 20:46:27) - 「はあ……今回も駄目か」 そんな中、ビルの前で意気消沈する青年が一人。出てきたビルは出版社だ。 -- 名無しさん (2013-07-28 23:38:53) - 彼は自前の小説を売り込みに行ったのだが、にべも無く編集者に断られたのだ。この会社で既に5社目、未だに成果は出ていない。 -- 名無しさん (2013-07-29 00:17:41) - 「……今回の編集の人は、強烈だったなあ」 とことこと歩きながら思い出す。非常に周りくどく、もったいぶっていながら悪魔染みた的確さで指摘する長髪の編集者の姿を。 -- 名無しさん (2013-07-29 00:19:13) - 「指摘は大体当たってたんだけど…………何で、あんなに俺の小説のキャラに似てるんだ?」 その編集者、何故か彼が書いている小説の一編に出てくる黒幕に非常によく似ていた。殊更印象に残っているのは、そのためかもしれない。 -- 名無しさん (2013-07-29 00:21:16) - 「そういえば……あだ名も似てたな、『水銀の編集長』……どんな偶然だよ」 -- 名無しさん (2013-07-29 00:22:44) - 青年が首を捻るが、取り敢えず近くの公園のベンチに座り、蝉の合唱をBGMに汗を拭った。 -- 名無しさん (2013-07-29 00:57:10) - 「次はどうするかな……俺のコンセプトに理論を入れたこれのどこが悪いんだろうか?あの指摘も分かるが、これを否定はしたくないな……絶対に」 -- 名無しさん (2013-07-29 00:58:14) - 細かい文体や構成に対しての指摘は有り難いが、根本となるストーリーラインへの指摘は到底受け入れられない。 『この筋書きはありきたりだよ。演劇かドラマならば至高の役者を揃えれば面白くなるだろうが……小説ではな。作者の実力が全てになる』 -- 名無しさん (2013-07-29 01:04:55) - 「俺の実力がそこまでだってのなら分かる……けどよ、中身を変えたくはねぇんだよ」 -- 名無しさん (2013-07-29 01:06:40) - だが、帰る間際に残したあの編集長の言葉が引っかかっていた。 『だが……究極になればなるほど陳腐になる。飾る言葉など無為に等しいが……個人的には否定はせぬよ。…………ありがとう(・・・・・)』 「何がありがとうなんだ?意味が分からん」 -- 名無しさん (2013-07-29 01:07:54) - カバンに入れていた缶コーヒーを飲みながら天を見上げる青年。 -- 名無しさん (2013-07-29 01:08:29) - 「だが、そうなると他を当たるとするか。あ~……参った」 「どうかしたのかい?兄さんよ」 「ん?」 声を掛けられ、前を向くと――数人の学生らしく少年たちがいた。 「俺に何か用か?」 「いんや?ウチの大将があんたを見かけてな。何か深刻そうな顔をしてたんで、俺が先鋒を仕ったってわけよ」 「大したことじゃないさ」 -- 名無しさん (2013-07-29 01:13:43) - 存外に構うな、と青年が雰囲気を醸し出すが、目の前の道化じみた少年は引き下がらなかった。 「あんた、何か物書きでもしてるのかい?」 「……なんでそう思うんだ?というか、どこの学生だ?」 「月乃澤学園だが?」 「なんだ、となるとそこの後輩に当たるわけだな」 -- 名無しさん (2013-07-29 01:16:12) - 「へえ、兄さんウチらの先輩か」 少年はいつの間にか隣に座る。 -- 名無しさん (2013-07-29 02:24:22) - 「名前は?」 「遊佐司狼ってんだ。んで、あっちで女連中に囲まれてるのが」 「いいや、いいさ」 「あん?」 「人の名前にはそれぞれ意味があるが、この場では意味がない。お前たちがお前たちであればいい(この少年たちも、俺の描く物語の登場人物に似てるな……なぜ?)」 -- 名無しさん (2013-07-29 05:32:39) - 「んで?あんたはこんな所で何してんだよ?リストラか?」 「そんなんじゃねぇよ……ちょいと軽い挫折を体験してる真っ最中だよ。そろそろ夢のゴールインをしたいんだが、中々ゴールが見えなくてな」 -- 名無しさん (2013-07-29 15:51:00) - 「どんなの書いてんだよ?」 「というより、年上に対して言葉遣いをなんとかしたらどうなんだ?」 「悪いな、こっちはこういう性分なんでな」 「ほら司狼。あんた何してんのさ」 仲間内の中で、彼に一番親しそうな、というより雰囲気が似ている青髪の少女が寄ってきた。 「あ、すいませんね。こいつ口が悪くて」 -- 名無しさん (2013-07-29 19:41:10) - 「いいや、まあいいさ……そうだな。とある女神を舞台とした、超越の物語だよ……ここに原稿がある。読んでみるかい?」 -- 名無しさん (2013-07-29 21:42:53) - 司狼と名乗った少年と青髪の少女が手に取り、原稿を読んでいくと――一瞬だけ、己に似た人物の映像が走馬灯のように流れたが、それは一瞬のことで幻覚だったのかもしれない。だが、不敵に二人は笑みを浮かべて青年に意味深な発言をした。 「安心しろ……気に入らねえ部分は大きいが、そう悪くはねぇよ。それと……ありがとうな(・・・・・・)」 「あたしら、感謝してるよ(・・・・・・)」 「?こんな原稿を見せた程度で感謝をされてもな……」 青年は意味が分からず、首を傾げた。 -- 名無しさん (2013-07-29 21:49:46) - 「ん~~、なんかよ、礼を言わなきゃなって気がしてよ……あんたとは完全に初対面のはずなんだが」 「あ~~、あんたも? 私もそんな気がしてさ、なんでかお礼しなきゃって」 二人も首を傾げていた。 -- 名無しさん (2013-07-29 22:34:59) - だが、自然とどこかでイライラはするものの、そう悪い感じはしていなかった。 -- 名無しさん (2013-07-29 22:44:38) - まるで――この人物はそういうのだと、どこか予感めいた、どこかであったことがあるかのような奇妙な錯覚を二人は抱いていた。 「おい、何やってんだよ司狼に本城」 「待ってよダーリン」 「レアのダーリンじゃないよ?私のダーリンだもの♪」 そこに、離れていた少年と数人の少女たちが近づいてきた。そして、金髪のフロイラインを青年が視た瞬間――自然と、涙を知らずに一筋流していた。 「ふぇ?なんで泣いてるの?」 「あん?あ……本当だ。なんでだ?」 青年も首を傾げていた。 -- 名無しさん (2013-07-29 22:47:21) - 交わるはずがないこの邂逅と幻覚のようなもの。だが、それでも彼の心に、彼らの魂の根幹に刻まれているのはそれほどデカイのだ。例え――座から切り離されようと、彼らそのものは不変なのだから。 -- 名無しさん (2013-07-29 23:59:51) - 「……知り合いさん?」 「……初めて会った、筈なんだけど……前にも会った事があるような」 レアと呼ばれた少女が金髪の少女に問う。 「……デジャブって奴かな、俺も会った事があるような気がする……皆と初めて会った時も感じたんだけどさ」 「えっ、お前も? 俺も実はデジャブってたんだけどよ」 ハンカチを青年へと差し出す少年に、司狼は驚いたように呟いた。 -- 名無しさん (2013-07-30 00:19:10) - 「ありがとうな」 「いいや……それで?馬鹿司狼、お前この人になにちょっかい出してんだよ?」 「はぁ?ちょっかいじゃねえよ。単に悩んでそうだったから悩みを聞いてやろうかなってよ」 「お前が赤の他人にそこまでするなんて…………よ…………」 『俺たちは永遠になれない刹那だ。どれほど憧れようと、幻想にはなれないんだ』 座から切り離され、もうツァラトゥストラではない少年の胸に己に似た残影と声が内側から木霊した。 「あん?どうし…………た…………」 『最後に勝ちを狙って何が悪い』 「「…………」」 二人の少年は互いを見て、青年を見ていた。 「ん?どうかしたのか、お前ら……というか、俺なんかに構わずどこかへ行ったらどうだ?」 訝しむ青年はまったく気づいておらず、首を傾げるばかりだった。だが、少年二人はもう磁石同士である自滅因子でも、超越する少年でもない。だがしかし、根幹に刻まれた魂が眼前の青年を見て、自然と笑みを零していた。 「訳が分からん……まあいいか。俺は行くよ……悪くないと言ってもらえただけ、俺の作品も喜ぶだろうよ」 そういってベンチから立ち上がり、公園から去ろうとしていた。 -- 名無しさん (2013-07-30 13:08:07) - その時、金髪の少女の髪が風で靡いたと同時に――彼が考えた台詞と同じセリフが知らずに、金髪の少女の口から紡がれていた。 「わたしは平気だから……だから、幸せになって」 「――――――――」 青年の脚は止まり、瞠目していた。 ……新世界。 覇吐「おい夜行……座から切り離してもう関係ないんじゃないのかよ?」夜行「覇吐、それはそうなのだが少し違うな。彼らの魂の根幹に刻まれたモノは座から切り離そうと関係はないのだよ」 干渉はもう出来ないが、その世界を盗み見ることができる曙の一行は、彼らを見て各々呟いていた。 -- 名無しさん (2013-07-30 13:25:43) - 竜胆「皆、明るく笑顔を作っているな」 紫織「女神さんも、座と関係なくたって女神なんだね」 宗次郎「そうですね」 刑士郎「あの野郎も立ち位置は変わってねぇようだしな」 咲耶「あのお方はそれを誇りにしている……こちらの新世界でも、あちらの新世界でもお変りなくいらっしゃるなんて」 龍水「なんというか……凄いのだな」 -- 名無しさん (2013-07-30 13:27:42) - 敬意と感心を持って新世界を見やる一同。 覇吐「……宴会だ」 そこで、突然の提案を入れる。 -- 名無しさん (2013-07-30 19:19:53) - 刑士朗「はっ、お前今からか?」 覇吐「あったりめーよ。嬉しい時とめでたい時に飲まねーでどうすんだ」 -- 名無しさん (2013-07-30 19:20:57) - 竜胆「まあ待て、皆の意見も必要だろう。異論のある者は……居ないか」 あるはずもないかと、心中微笑む竜胆。 -- 名無しさん (2013-07-30 19:22:23) - 桜の下で、誰が言い出したでも無く、示し合わせるように皆が杯を掲げる。 -- 名無しさん (2013-07-30 19:23:23) - 覇吐「そんじゃ、言いだしっぺとして俺が仕切るか。新世界の、大先輩達の輝かしい未来を祝って――――乾杯!」 -- 名無しさん (2013-07-30 19:24:32) - 益荒男の言葉に続き、曙光は酒に手をつける。仲間と飲む酒は当然美味い、桜吹雪の絶景のなかなら尚格別、祝い酒ともなればそれはもう神世の領域。本日の宴会は、粛々と、だが満ち足りた美味と共に進んでいく。 -- 名無しさん (2013-07-30 22:30:09) - …… 「何だったんだろうな……」 あの後、名残惜しさを感じつつも、青年は次の出版社への売り込みの為に駅を目指した。駅のホームで、携帯電話に登録された新しい連絡先を眺める。 別れ際、あの司狼という少年に半ば無理やり交換させられた彼らの連絡先だ。 -- 名無しさん (2013-07-31 00:36:39) - 「でも、悪くは無いな」 むしろ、非常に清々しい気分だった。全身に気力と体力が満ち溢れたような気がするし、うだるほどに暑い日差しも心地よい春の日向のように感じられた。 -- 名無しさん (2013-07-31 00:39:01) - 「美人に応援されて舞い上がっちまったかな」 あの編集者にメタメタにやられて、陰鬱だった気分が嘘のようだ。 「……やるか、女神様に応援されたんだ。俺の夢は叶う……叶えるぜ、絶対」 我ながら単純だと思う。それでも、彼女の言葉は不思議なほどずっしりと心に残っている。 -- 名無しさん (2013-07-31 00:43:30) - 電車が来る。何が特別というわけではない。だが、そこに乗り込んで次の勝負の場に向かうと思うと、不思議とワクワクしてくる。 -- 名無しさん (2013-07-31 01:26:47) - この気持ちは、小説を書く時と同じだ。自分が描く世界の中で、登場人物たちがどんな物語を紡いでくれるのか、知りたくてたまらない。 -- 名無しさん (2013-07-31 01:28:52) - 小説を書く最大のモチベーションが疼き始めた。 -- 名無しさん (2013-07-31 01:29:40) - 「帰ったら、また書くかな。新しいやつ題名はーー」 -- 名無しさん (2013-07-31 01:30:45) - 「怒りの日……いいや、神咒神威神楽……」 「!?」 青年の先の言葉を隣にいた、金髪で長髪の男性が本を読みながら呟き、それを青年は聞いていた。独り言、だと青年は思いたいがどうも吃驚して見てしまった。 -- 名無しさん (2013-07-31 01:48:29) - 背丈がまず高く、それでいて佇むだけで圧倒されるほどの神々しい、人を魅了する何かを持っているような男性がいた。まるで黄金のように輝く金髪の長髪は鬣の如く、薄黄色の着物はまさに彼のために誂えられて作られたかのように完璧だった。 -- 名無しさん (2013-07-31 01:50:16) - (この男……いつの間に俺の隣に?) 「思うに、卿は物書きかね?」 またも唐突に投げられた言葉で気付いた。本を読みながら隣にいる彼に声を掛けていたのだ。 前を見ながら青年は受け答えをした。 「今日はなんかあんたのように勘の鋭い奴に出くわす日だな……別にまあ、大した物書きじゃねえけどよ」 -- 名無しさん (2013-07-31 01:52:30) - 「そうかね?卿は卿が思うほど矮小な身ではないと思うのだがな」 「俺の作品を見たこともない奴がよく言えるな?」 「勘だよ……気に障ったのなら謝ろう」 -- 名無しさん (2013-07-31 01:57:13) - 「い、いや、そんなに畏まらなくても」 雰囲気に似つかわしくない、意外なほど謙虚な姿勢にむしろこちらが困ってしまう。 -- 名無しさん (2013-07-31 02:09:47) - 「私はこれでも多くの者たちを見てきているつもりだよ。その中で、卿ほどの物書きはいないと思っているよ」 「大袈裟だな……名も売れていない小説も出せていない俺なんかより、有名な奴なんて一杯いるだろ?」それは事実。しかし、隣の彼は首を横に振った。 -- 名無しさん (2013-07-31 02:13:32) - 「表面上はそういった輩も多いだろ……良いシナリオを書く者は須らく特異な者ばかり。卿はそうだな……いずれ大物になれると確信しているのだがな」 「初対面……なのにか?」 -- 名無しさん (2013-07-31 02:18:43) - 「人を見る目はあると自負しているよ」 -- 名無しさん (2013-07-31 02:19:43) - 電車の扉が開き、左右に分かれて人が出てくるのを待ち、中に入ると不思議なことに彼ら二人しか車両には載っていなかった。 (いつもは結構な数がいるのに……何故?) 「座らないのかね?青年」 隣を指して言う。 -- 名無しさん (2013-07-31 02:30:11) - 青年は黄金の男の隣に座ると、車両の扉が閉まり電車が出発した。中には二人しかおらず、まるで幽霊電車に乗ったような感覚だ。 -- 名無しさん (2013-07-31 02:37:41) - 「私はドイツから来た身で、多くの書物に芸に雅楽など数多のものに触れてきた」 己の事を不意に語りだした。 「その中で、私は不意にこの日本に来てとある編集長に出くわしてね」 (編集長……?) -- 名無しさん (2013-07-31 02:39:20) - 「その男が私が訪れるや否やこう言ったのだよ」 『今日は来客が多いが、君で二人目だよ。私に珍しくも懐かしい想いを感じさせてくれたのは』 「?意味が分からん」 「私も分からんよ……だが、その男と話をしていて、悪い気はしなかったよ」 -- 名無しさん (2013-07-31 07:43:36) - この車両には二人だけ。互いに隣に座りながらも、黄金の男は微笑んでいた。まるで、懐かしい思い出に浸っているかのようだ。 「見たことも、感じた覚えもない……だが、何故だろうか。不思議なのだが、あの邂逅も、あの時飛来した思いも……何もかもがそれもまた良しと思ったのだよ」 『私は総てを愛している……愛でるためにまずは壊そう』 ……龍水「黄金殿……」 覇吐「龍明がゾッコンだった黄金様だろ?座から切り離そうと、あの鮮烈な輝きは消えねえだろうよ」 竜胆「そうだな……私はあの方の想いも引き継いだのだ。到底勝てるなどと吹聴はしないがな」 夜行「我らは先達があってこそ、今ここにある……宴の席で互いに飲み交わしてみたかったものよ」 宗次郎「それは僕らも同じですよ」 紫織「そうそう。女の勝負じゃ中途半端だったけど、ああ言った手前負けたくもない。けど、宴の席で願うことなら飲み交わしたかったよ」 龍水「お前はどうなのだ、刑士郎?息が合いそうだったしな(ニヤニヤ)」 -- 名無しさん (2013-07-31 08:43:06) - 刑士郎「あん?誰に言ってんだクソチビが」 龍水「誰がチビだ!?」 覇吐「いやお前だぐぼっ!?お、お前……お、俺のソハヤ丸を、俺の偉大な息子を蹴るなよォ」 膝を付く覇吐は痙攣していた。 -- 名無しさん (2013-07-31 13:25:22) - 竜胆「今のは覇吐が悪い」 紫織「まあ、全面的にかな?」 咲耶「お兄様もお口が悪うございます」 刑士郎「事実は事実だろうが。この中で他に該当するチビなんかいねえだろが」 夜行「まあ、否定はできぬな」 宗次郎「同じく」 覇吐「ほら!俺間違ってねえじゃねえかよ!?謝罪しろ謝罪!!」 -- 名無しさん (2013-07-31 14:53:55) - 龍水「喧しいわ! そんな粗末なものに下げる頭はない!!」 覇吐「なんだとおう!!」 刑士郎「……あいつ、とんでもねえ発言してねえか?」 -- 名無しさん (2013-07-31 19:39:33) - 夜行「男にとっては粗末なモノと言われると、傷つくと同時に尊厳を抉られるようなものだからな」 その時、龍水がピタリと止まった。 -- 名無しさん (2013-07-31 19:46:29) - 覇吐「ニヤリ)おやぁ~?どうかちたのかにゃ~?龍水たん、お顔が真っ青でちゅよ~?」 刑士郎「おい覇吐今すぐその口調は止めろマジでブチ殺すぞ」 竜胆「あの水銀殿を想起させるから真面目に止めろ、覇吐……いつぞやのように、お前を女体化させるぞ?」 -- 名無しさん (2013-07-31 19:47:58) - 覇吐「それだけはご勘弁を!!」 速攻で頭を下げる。 天照『あれは……笑うに笑えなかったぞ』 我が子の表情も引きつる。 -- 名無しさん (2013-07-31 19:51:30) - 宗次郎「あの時は……あ……あ、あの時……(フラッ」 紫織「おっと(ポヨン)」紫織の柔らかいクッションで抱き留めた。あの時の女性陣営の悩ましい姿を想像でもしたのだろう。 刑士郎「お前は何処までなんだ?ま、覇吐の女体化なんて利益なんてな――」 咲耶&龍水&竜胆「あるに決まっているだろ/ますわお兄様!!!!」 物凄い剣幕で刑士郎に顔をドアップさせた。 -- 名無しさん (2013-07-31 20:25:27) - 刑士郎「どこにあんだよ!?」 夜行「まあまあ皆落ち着け……それより、面白い展開になってきているぞ?あちらの世界では」 そう言って目の前の映像を見てみると――座から切り離されたラインハルト・ハイドリヒこと黄金の男が、青年が描いた原稿を読んでいた。 -- 名無しさん (2013-07-31 20:26:56) - 竜胆「そういえば、我らも彼らのこと細かい部分は知らないのであったな」 紫織「一度でいいから、あの原稿を読んでみたいねぇ」 龍水「そういえば、こちらの世界の下界では……えぇ~と……『Dies irae』という題名の長編の小説が出回っているようだぞ?」 -- 名無しさん (2013-07-31 20:30:28) - 覇吐「おいおい、それって……」 咲耶「あのお方ですか?」 龍水「さぁな?なんでも、無名の作家が出したそれが爆発的に売れたらしくてな。かなりの完成度が受けて、映像化されてもいるらしい。私はそこまで詳しいわけではないからな。これ以上は分からん」 -- 名無しさん (2013-07-31 20:36:32) - 夜行「……アンナ ライヒハートとやらが作者らしいな」 早速、天眼で本の著者を調べてみる。あくまで名前だけだが。 -- 名無しさん (2013-07-31 20:48:50) - 宗次郎「その名前って……」 刑士郎「奴奈比売の野郎と、夜刀じゃねえか」 竜胆「もしくは、その二人の名を合わせた何者か、という推察はできるな」 -- 名無しさん (2013-07-31 20:50:15) - 竜胆「よし覇吐、その本と『でぃーぶいでぃー』とやらを買ってこい」 覇吐「俺パシリか!?」 紫織「機械の方は私に任せて頂戴♪こん中じゃ、私が一番精通してるしね♪」 咲耶「頼もしいですね」 刑士郎「ということだ、頑張れよパシリよ」 覇吐「黙れシスコンチンピラ」 二人「あん?やんのかコラァ!?」 -- 名無しさん (2013-07-31 20:51:53) - ふう、と竜胆がため息を一つ付き。 竜胆「うるさいわ!! 貴様らあああ!!!」 一閃。喧嘩していた二人は天高く吹き飛ばされ、脳天から大地に帰還する。 -- 名無しさん (2013-07-31 21:09:43) - 覇吐「ぐほっ!?」 刑士郎「イッテぇ~!?てめぇのせいだぞ、覇吐!!俺まで巻き添えを喰らわせやがって!!」 覇吐「黙れやシスコンが!!」 メンチ切る2人の前に、 「よう、久しいなお二人さん」 タバコを吸って現れたのは、赤いコートに金髪、ニヒルな笑みを浮かべたあの少年だった。 刑士郎「てめぇは……あの洋服じゃねえのか?」 「ありゃバイトの時の恰好だよ、あんなん四六時中来てたら目立ってしょうがねえよ」 覇吐「嫌今でも十分目立ってると思うぞ?」 -- 名無しさん (2013-07-31 21:12:40) - 「んなことよりだ……どうしたんだ?上空から吹っ飛んできやがって……あれか?どこぞの怖い野郎にでも人間吹っ飛び新記録でも出すための試運転でもされたのか?」 二人『あながち間違ってねえな』 二人は否定しなかった……後に、孫悟空のように頭を締められるのは余談だ。 覇吐「そういやよ、え~と……『Dies irae』っていう小説知ってるか?」 「唐突だな……ああ、有名だしな。あの超絶版の奴だろ?」 刑士郎「まさか、もうねえのか!?」 超焦る刑士郎。持って帰らなければ血の雨(誤字に非ず)が降ること間違いない。 「いんや?俺やダチが数冊ダブらせて買ってるからよ、1、2冊は余って持ってるぞ?」 覇吐「それを譲ってくれ!」 刑士郎「後生だ!!」 -- 名無しさん (2013-07-31 21:16:23) - 「あ~そりゃいいんだがよ。あれって絶版で売ればかなりの値打ちが付くからな~」 二人「マジで頼む!」 二人が遊園地で頭を下げた。頬を掻く少年だったが……ニヒルに嗤った。 「だが、金儲けならもう結構稼いでるからよ……ほらよ」 そう言って袋に入っていた二冊の『例』の本を手渡してくれた。 覇吐「うお!?マジか!?」 「んだ?人に頼んでおいて、その信じられねえって顔はよ?」 -- 名無しさん (2013-07-31 21:27:18) - 刑士郎「ていうか、なんでてめぇがその本を持ってんだよ?」 「ん~……俺のラッキーアイテムがよ『珍しい本』だったんだよ。んで、さらにラッキースポットがこの遊園地……だから、たまたま(・・・・)なんだよ」 最後にニヒルに笑みを浮かべた少年。 -- 名無しさん (2013-07-31 21:28:42) - 「そんじゃあな」 それだけ言うと、さっさと帰ろうとする少年。 「あ、そうそう――あの出来そこないにもしも会えたら伝えてくれや。――妄想ごっこは下らねえなりにそこそこ笑えたってよ。後、そっちにはもうちょっかいかけねえから、精々頑張れよってな」 背を向けながら、最後に付け加える。 -- 名無しさん (2013-07-31 23:30:29) - 覇吐「お前、何を……」 覇吐達が呼び止めようとするも、雑踏に紛れてすぐに姿をくらます少年。 -- 名無しさん (2013-07-31 23:31:39) - 刑士朗「……何の事だと思う?」 覇吐「……あの世界の話、か?」 -- 名無しさん (2013-07-31 23:33:09) - それは、黒井和哉というファクターが模倣という事象で生み出した擬似的な神話世界。そして、彼が忘れることが出来ない美しくも至高の女神と彼らとの物語。今の言い方は、どうみてもそうだろう。 -- 名無しさん (2013-07-31 23:50:02) - 刑士郎「……あの野郎。座から切り離そうと変わらねえのかよ」 覇吐「流石は夜刀の……蓮の自滅因子にして相棒だな。敵わねえよ」 頭を掻きながら苦笑する覇吐。 -- 名無しさん (2013-07-31 23:51:06) - 彼らは和哉を嫌悪しているし、憎悪した。其れは最後の最後で凝縮した憤怒を彼にぶつけていた。彼は無意識にもであろうが、彼らを己の世界の舞台装置としていたのだ、恨まれても無理はない。 -- 名無しさん (2013-07-31 23:52:20) - だが――あの憎たらしい言い方は、どこかお前らしいがな、と呆れた感じながらも友であると誇っているかのように感じられた。彼は蓮の裏側。つまりは、彼の総体意志でもある。ここまでくれば、かつての遊佐司狼とこの世界の遊佐司狼、もはや差異などはないのかもしれない。 -- 名無しさん (2013-07-31 23:53:54) - 覇吐「よく勝てたよな?お前」 刑士郎「うっせ……俺はあいつに認められた『人間』だ。その矜持だけは曲げるつもりはねぇよ」 覇吐「へへっ、そうかい。ま、女神さんにはもう一度会っておきたかったが、仕方ねえか。あ、そういえば紫織はどこにいるんだ?」 刑士郎「あん?あいつもこの世界に来てるってのかよ?」 -- 名無しさん (2013-07-31 23:58:41) - 覇吐「でぃーぶいでぃーっていう、絵巻物を見れる道具を用意してる筈だ……」 紫織『もうとっくに終わってるよ、早く戻ってきな』 -- 名無しさん (2013-08-01 00:03:54) - 念で連絡してくる紫織。 刑士朗「……はええな」 覇吐「何時の間にやらだ……俺らも戻っか」 天から延びる光に導かれ、二人は座へと戻る。 -- 名無しさん (2013-08-01 00:05:19) - 紫織「遅いよ、あんたら」 戻って最初にかけられた一言がこれだ。 覇吐「俺らも相当早く手に入れたんだが」 龍水「そんなことよりだ、早く本を見せてくれ」 -- 名無しさん (2013-08-01 00:09:17) - 覇吐「労いの言葉も無しかよ……」 夜行「よくやったな二人とも、大義であったぞ」 刑士朗「何だ、その無駄に尊大で腹立つ労いは」 -- 名無しさん (2013-08-01 00:11:34) - 夜行「ふむ……水銀殿と黄金殿を真似たのだが、如何か?」 -- 名無しさん (2013-08-01 00:20:39) - 皆「腹が立つわ!」龍水「カッコイイです~!」 覇吐&刑士郎「あ~、はいはい馬鹿は放っておいてと」 紫織「宗次郎、そっちの機材の電源を押して?あ、コンセントを入れてプラグにも挿してね?」 宗次郎「え?『ぷらぐ』?『こんせんと』?」 -- 名無しさん (2013-08-01 00:27:03) - 聞きなれない言葉に、しばし沈黙し、 宗次郎「……それで、僕はなにを斬ればいいんでしょうか?」 紫織「……私がやるから待ってな」 結局、全ての準備は紫織がした。 -- 名無しさん (2013-08-01 00:59:03) - 程なく始まる上映会。天照含む曙光達は正座で先達たちの活躍をモチーフにした物語を見るのだった。 -- 名無しさん (2013-08-01 01:01:39) - …… 「ふう……」 青年は自宅に帰ると、すぐさま敷きっぱなしの布団に倒れこむ。あの後、金髪のお方から情け容赦無いドストレートな助言を受け……周りくどい編集者以上にメタメタにされながらも、次の出版社に向かった。――結果は、予定調和の如く不採用。 -- 名無しさん (2013-08-01 01:03:59) - しかし、目を瞑り今日一日を振り返ると、一分もしないうちに飛び上がり、机に向かう。 -- 名無しさん (2013-08-01 01:04:53) - 「書くか……いや、書かずにはいられないだろ、これは」 書いている最中はハイになっているのか、何とも奇妙な行動や言動が飛び出し続けると、彼の親しい女性(彼女ではない、断じて。悲しくなるが、断じて)は良く言うが、今回は相当ヤバいと自覚がある。 -- 名無しさん (2013-08-01 01:06:38) - 心の中に浮かぶ情景を、言葉を、キャラクターの生き様を、浮かぶがままに殴り書く。 -- 名無しさん (2013-08-01 01:07:38) - 金髪のお方には、何処までも荒々しく稚拙で技術に拙く、情景は怪奇極まり、話の脈絡の前後が意味不明、キャラクターの書き訳がとにかく下手、等々洗練という言葉の対極にあると酷評された。しかし情熱だけは……何かを伝えたいという誰にも負けんと……そこだけは高く評価されている。 -- 名無しさん (2013-08-01 01:10:41) - そして彼の特技の一つは、速筆。速く速くとにかく速く、猛る情念のままに物語を書き連ねる技術。それは、瞬く間に一遍の短編を作り上げる。 「……できた」 -- 名無しさん (2013-08-01 01:15:10) - 作り上げたものは、何でもない、しかしとても愛おしい日常の物語。全能たる神も思い通りになる世界も無い、しかし、そこに宿る思いは――至高のものだと信じている。 -- 名無しさん (2013-08-01 01:17:01) - その作品をファイルに綴じると、すぐにまた次の作品に取り掛かる。 -- 名無しさん (2013-08-01 01:17:37) - 彼は舞い上がる心の中で、ふと今日であった少年達を思い出す。公園であった彼らには、自分の小説が認められた時には共に祝いの席でも設けたいと思う。偏屈な編集者と金髪の吾人とは、自分を誇れるようになった時、酒でも酌み交わしたいと思う。 -- 名無しさん (2013-08-01 01:19:50) - そんな思いが原動力。進む、進む、書き進む。 -- 名無しさん (2013-08-01 01:20:09) - そんなに都合よくはいかないだろう。きっと、彼はこれからも何度も何度も打ちのめされ、挫折を味わい、もしかしたら筆を折る日が来るかもしれない。 -- 名無しさん (2013-08-01 01:20:47) - だが、それがどんな道であろうと――真っ直ぐな夢があるなら、どこまでだった歩いて行ける。 -- 名無しさん (2013-08-01 01:21:31) - 満ち足りた気持ちが、体からとめどなく溢れい出て、何処までも作品へと注ぎこまれていく。 -- 名無しさん (2013-08-01 01:22:16) - この世界に神はいない。世界をひっくり返す、ご都合主義の舞台装置もまた存在しない。 -- 名無しさん (2013-08-01 01:22:54) - 気に入らない事も、どうしようもない事も、そしてどうあってもちっぽけな人間のままでしかない自分とも、一生涯付き合わねばならない。 -- 名無しさん (2013-08-01 01:23:43) - なればこそ、それでいいのだ。 -- 名無しさん (2013-08-01 01:24:43) - 「飽いていればいい!飢えていればいいんだ!」 ……刑士郎「!?」 映像を見ていた時、まだ接続していたモニターに映る彼の言葉に刑士郎が反応していた。 -- 名無しさん (2013-08-01 01:25:33) - 「生きる場所の何を飲み、何を食らっても足りない。けど、それで上等なんだ、甘えてはならない!」 -- 名無しさん (2013-08-01 01:26:25) - 思いを書く。描く。書き続ける。挫折をしよう。挫けよう。前を見ていられなくなるだろう。だが、それでも―― 「俺は光を信じて、己の道を歩んでやる!」 -- 名無しさん (2013-08-01 01:27:54) - 彼らの閃光を、彼らの燃焼を、書いてやる!描いてやる!画いてやる!どれほどの時間が掛かろうと書いてやる! -- 名無しさん (2013-08-01 01:28:41) - そんな話だ。運命も宿命も特別も何もない、ただの男の物語。半ばで倒れようと、道を外れようと、輝かしい未来を掴もうと、奈落の果てに落ちようと……全てが青年で、何も否定は出来ない。 -- 名無しさん (2013-08-01 01:29:35) - 彼の前途に何があろうと、世界は勝手に進んでいく。もう、他者に憧れるだけの観測者はいない、仮初の世界でどうしようもない渇きにあがき続けた模倣の神は存在しない――そこに居るのは一人に人間。 -- 名無しさん (2013-08-01 01:30:53) - ――そうか……それがお前なら、やってみな。やれる限りよ―― 青年は遥か彼方からの声を幻視した。それでも彼は止まらない、その言葉すら燃料にただひたすらに書き続ける。 -- 名無しさん (2013-08-01 01:32:01) - ――その後、彼が物書きとして大成するのか道半ばで諦めるのか、はたまたまるで違う道を選ぶのか――それは神様だってわからない。何もかもが不透明で、確かなものなどまるで無い、故に無限の可能性。――誰にも冒せない不可侵なる未知の世界。 -- 名無しさん (2013-08-01 01:34:28) - だけど、青年は持っている。未知の世界を突き進む、燭台(ゆめ)を想い(たねび)を――そして、何にも代えがたい、体の芯の芯、原初の奥底までに刻みつけられた――――――大事な絆を。 -- 名無しさん (2013-08-01 01:36:07) - ――斯くのごときに物語は終わります。この先、青年が何を成すか、彼の前に何が立ち塞がるか――それは、彼自身の彼だけが持ちうる誰にも真似できない人生(けいけん)でございます。 -- 名無しさん (2013-08-01 01:38:08) - なればこそ、この場は一幕、幕引きといたしましょう。これより先の彼の物語は――いつぞや、また語られるのかもしれませぬ。 「ではでは、皆様。名残惜しいですが、これにて閉幕」 -- 名無しさん (2013-08-01 01:39:53) #comment() - 登場キャラ:アーチャー、ランサー、七夜、言峰、ギル、青子、橙子、ジューダス、和哉。 - 新キャラ:ブラッド(父)、アビル(娘)、オルバ(息子)。←三人とも、不老不死。呪縛から解放された。 -- 案山子さん #comment()
光の中に消えた青年を見送ると曙光一同も一息をつく。 夜行「さらばだ、最早会うことも叶わぬが、行き先に幸ある事をせめて祈ろう」 座から断絶された世界に構成される新世界では、彼らに接触する術は無い。 よしんば、存在したとしても、それは座の世界に彼らを取り込んでしまうことに他ならない。 彼らの世界には座も神も無い、彼ら自身が切り開くしかないのだ。 覇吐「まっ、そんな心配する必要もねえだろ。何せ、俺らの大先輩の大英雄なんだしよ」 にかっと、朗らかな笑みを浮かべ、益荒男達は主神の下へと帰っていく。 そして新世界では――― - 快晴の空の下、せわしなく行き交う人々は、日常の営みを絶やす事無く日々を送る。全て世は事も無し、今の世の中は平和である。 -- 名無しさん (2013-07-28 20:46:27) - 「はあ……今回も駄目か」 そんな中、ビルの前で意気消沈する青年が一人。出てきたビルは出版社だ。 -- 名無しさん (2013-07-28 23:38:53) - 彼は自前の小説を売り込みに行ったのだが、にべも無く編集者に断られたのだ。この会社で既に5社目、未だに成果は出ていない。 -- 名無しさん (2013-07-29 00:17:41) - 「……今回の編集の人は、強烈だったなあ」 とことこと歩きながら思い出す。非常に周りくどく、もったいぶっていながら悪魔染みた的確さで指摘する長髪の編集者の姿を。 -- 名無しさん (2013-07-29 00:19:13) - 「指摘は大体当たってたんだけど…………何で、あんなに俺の小説のキャラに似てるんだ?」 その編集者、何故か彼が書いている小説の一編に出てくる黒幕に非常によく似ていた。殊更印象に残っているのは、そのためかもしれない。 -- 名無しさん (2013-07-29 00:21:16) - 「そういえば……あだ名も似てたな、『水銀の編集長』……どんな偶然だよ」 -- 名無しさん (2013-07-29 00:22:44) - 青年が首を捻るが、取り敢えず近くの公園のベンチに座り、蝉の合唱をBGMに汗を拭った。 -- 名無しさん (2013-07-29 00:57:10) - 「次はどうするかな……俺のコンセプトに理論を入れたこれのどこが悪いんだろうか?あの指摘も分かるが、これを否定はしたくないな……絶対に」 -- 名無しさん (2013-07-29 00:58:14) - 細かい文体や構成に対しての指摘は有り難いが、根本となるストーリーラインへの指摘は到底受け入れられない。 『この筋書きはありきたりだよ。演劇かドラマならば至高の役者を揃えれば面白くなるだろうが……小説ではな。作者の実力が全てになる』 -- 名無しさん (2013-07-29 01:04:55) - 「俺の実力がそこまでだってのなら分かる……けどよ、中身を変えたくはねぇんだよ」 -- 名無しさん (2013-07-29 01:06:40) - だが、帰る間際に残したあの編集長の言葉が引っかかっていた。 『だが……究極になればなるほど陳腐になる。飾る言葉など無為に等しいが……個人的には否定はせぬよ。…………ありがとう(・・・・・)』 「何がありがとうなんだ?意味が分からん」 -- 名無しさん (2013-07-29 01:07:54) - カバンに入れていた缶コーヒーを飲みながら天を見上げる青年。 -- 名無しさん (2013-07-29 01:08:29) - 「だが、そうなると他を当たるとするか。あ~……参った」 「どうかしたのかい?兄さんよ」 「ん?」 声を掛けられ、前を向くと――数人の学生らしく少年たちがいた。 「俺に何か用か?」 「いんや?ウチの大将があんたを見かけてな。何か深刻そうな顔をしてたんで、俺が先鋒を仕ったってわけよ」 「大したことじゃないさ」 -- 名無しさん (2013-07-29 01:13:43) - 存外に構うな、と青年が雰囲気を醸し出すが、目の前の道化じみた少年は引き下がらなかった。 「あんた、何か物書きでもしてるのかい?」 「……なんでそう思うんだ?というか、どこの学生だ?」 「月乃澤学園だが?」 「なんだ、となるとそこの後輩に当たるわけだな」 -- 名無しさん (2013-07-29 01:16:12) - 「へえ、兄さんウチらの先輩か」 少年はいつの間にか隣に座る。 -- 名無しさん (2013-07-29 02:24:22) - 「名前は?」 「遊佐司狼ってんだ。んで、あっちで女連中に囲まれてるのが」 「いいや、いいさ」 「あん?」 「人の名前にはそれぞれ意味があるが、この場では意味がない。お前たちがお前たちであればいい(この少年たちも、俺の描く物語の登場人物に似てるな……なぜ?)」 -- 名無しさん (2013-07-29 05:32:39) - 「んで?あんたはこんな所で何してんだよ?リストラか?」 「そんなんじゃねぇよ……ちょいと軽い挫折を体験してる真っ最中だよ。そろそろ夢のゴールインをしたいんだが、中々ゴールが見えなくてな」 -- 名無しさん (2013-07-29 15:51:00) - 「どんなの書いてんだよ?」 「というより、年上に対して言葉遣いをなんとかしたらどうなんだ?」 「悪いな、こっちはこういう性分なんでな」 「ほら司狼。あんた何してんのさ」 仲間内の中で、彼に一番親しそうな、というより雰囲気が似ている青髪の少女が寄ってきた。 「あ、すいませんね。こいつ口が悪くて」 -- 名無しさん (2013-07-29 19:41:10) - 「いいや、まあいいさ……そうだな。とある女神を舞台とした、超越の物語だよ……ここに原稿がある。読んでみるかい?」 -- 名無しさん (2013-07-29 21:42:53) - 司狼と名乗った少年と青髪の少女が手に取り、原稿を読んでいくと――一瞬だけ、己に似た人物の映像が走馬灯のように流れたが、それは一瞬のことで幻覚だったのかもしれない。だが、不敵に二人は笑みを浮かべて青年に意味深な発言をした。 「安心しろ……気に入らねえ部分は大きいが、そう悪くはねぇよ。それと……ありがとうな(・・・・・・)」 「あたしら、感謝してるよ(・・・・・・)」 「?こんな原稿を見せた程度で感謝をされてもな……」 青年は意味が分からず、首を傾げた。 -- 名無しさん (2013-07-29 21:49:46) - 「ん~~、なんかよ、礼を言わなきゃなって気がしてよ……あんたとは完全に初対面のはずなんだが」 「あ~~、あんたも? 私もそんな気がしてさ、なんでかお礼しなきゃって」 二人も首を傾げていた。 -- 名無しさん (2013-07-29 22:34:59) - だが、自然とどこかでイライラはするものの、そう悪い感じはしていなかった。 -- 名無しさん (2013-07-29 22:44:38) - まるで――この人物はそういうのだと、どこか予感めいた、どこかであったことがあるかのような奇妙な錯覚を二人は抱いていた。 「おい、何やってんだよ司狼に本城」 「待ってよダーリン」 「レアのダーリンじゃないよ?私のダーリンだもの♪」 そこに、離れていた少年と数人の少女たちが近づいてきた。そして、金髪のフロイラインを青年が視た瞬間――自然と、涙を知らずに一筋流していた。 「ふぇ?なんで泣いてるの?」 「あん?あ……本当だ。なんでだ?」 青年も首を傾げていた。 -- 名無しさん (2013-07-29 22:47:21) - 交わるはずがないこの邂逅と幻覚のようなもの。だが、それでも彼の心に、彼らの魂の根幹に刻まれているのはそれほどデカイのだ。例え――座から切り離されようと、彼らそのものは不変なのだから。 -- 名無しさん (2013-07-29 23:59:51) - 「……知り合いさん?」 「……初めて会った、筈なんだけど……前にも会った事があるような」 レアと呼ばれた少女が金髪の少女に問う。 「……デジャブって奴かな、俺も会った事があるような気がする……皆と初めて会った時も感じたんだけどさ」 「えっ、お前も? 俺も実はデジャブってたんだけどよ」 ハンカチを青年へと差し出す少年に、司狼は驚いたように呟いた。 -- 名無しさん (2013-07-30 00:19:10) - 「ありがとうな」 「いいや……それで?馬鹿司狼、お前この人になにちょっかい出してんだよ?」 「はぁ?ちょっかいじゃねえよ。単に悩んでそうだったから悩みを聞いてやろうかなってよ」 「お前が赤の他人にそこまでするなんて…………よ…………」 『俺たちは永遠になれない刹那だ。どれほど憧れようと、幻想にはなれないんだ』 座から切り離され、もうツァラトゥストラではない少年の胸に己に似た残影と声が内側から木霊した。 「あん?どうし…………た…………」 『最後に勝ちを狙って何が悪い』 「「…………」」 二人の少年は互いを見て、青年を見ていた。 「ん?どうかしたのか、お前ら……というか、俺なんかに構わずどこかへ行ったらどうだ?」 訝しむ青年はまったく気づいておらず、首を傾げるばかりだった。だが、少年二人はもう磁石同士である自滅因子でも、超越する少年でもない。だがしかし、根幹に刻まれた魂が眼前の青年を見て、自然と笑みを零していた。 「訳が分からん……まあいいか。俺は行くよ……悪くないと言ってもらえただけ、俺の作品も喜ぶだろうよ」 そういってベンチから立ち上がり、公園から去ろうとしていた。 -- 名無しさん (2013-07-30 13:08:07) - その時、金髪の少女の髪が風で靡いたと同時に――彼が考えた台詞と同じセリフが知らずに、金髪の少女の口から紡がれていた。 「わたしは平気だから……だから、幸せになって」 「――――――――」 青年の脚は止まり、瞠目していた。 ……新世界。 覇吐「おい夜行……座から切り離してもう関係ないんじゃないのかよ?」夜行「覇吐、それはそうなのだが少し違うな。彼らの魂の根幹に刻まれたモノは座から切り離そうと関係はないのだよ」 干渉はもう出来ないが、その世界を盗み見ることができる曙の一行は、彼らを見て各々呟いていた。 -- 名無しさん (2013-07-30 13:25:43) - 竜胆「皆、明るく笑顔を作っているな」 紫織「女神さんも、座と関係なくたって女神なんだね」 宗次郎「そうですね」 刑士郎「あの野郎も立ち位置は変わってねぇようだしな」 咲耶「あのお方はそれを誇りにしている……こちらの新世界でも、あちらの新世界でもお変りなくいらっしゃるなんて」 龍水「なんというか……凄いのだな」 -- 名無しさん (2013-07-30 13:27:42) - 敬意と感心を持って新世界を見やる一同。 覇吐「……宴会だ」 そこで、突然の提案を入れる。 -- 名無しさん (2013-07-30 19:19:53) - 刑士朗「はっ、お前今からか?」 覇吐「あったりめーよ。嬉しい時とめでたい時に飲まねーでどうすんだ」 -- 名無しさん (2013-07-30 19:20:57) - 竜胆「まあ待て、皆の意見も必要だろう。異論のある者は……居ないか」 あるはずもないかと、心中微笑む竜胆。 -- 名無しさん (2013-07-30 19:22:23) - 桜の下で、誰が言い出したでも無く、示し合わせるように皆が杯を掲げる。 -- 名無しさん (2013-07-30 19:23:23) - 覇吐「そんじゃ、言いだしっぺとして俺が仕切るか。新世界の、大先輩達の輝かしい未来を祝って――――乾杯!」 -- 名無しさん (2013-07-30 19:24:32) - 益荒男の言葉に続き、曙光は酒に手をつける。仲間と飲む酒は当然美味い、桜吹雪の絶景のなかなら尚格別、祝い酒ともなればそれはもう神世の領域。本日の宴会は、粛々と、だが満ち足りた美味と共に進んでいく。 -- 名無しさん (2013-07-30 22:30:09) - …… 「何だったんだろうな……」 あの後、名残惜しさを感じつつも、青年は次の出版社への売り込みの為に駅を目指した。駅のホームで、携帯電話に登録された新しい連絡先を眺める。 別れ際、あの司狼という少年に半ば無理やり交換させられた彼らの連絡先だ。 -- 名無しさん (2013-07-31 00:36:39) - 「でも、悪くは無いな」 むしろ、非常に清々しい気分だった。全身に気力と体力が満ち溢れたような気がするし、うだるほどに暑い日差しも心地よい春の日向のように感じられた。 -- 名無しさん (2013-07-31 00:39:01) - 「美人に応援されて舞い上がっちまったかな」 あの編集者にメタメタにやられて、陰鬱だった気分が嘘のようだ。 「……やるか、女神様に応援されたんだ。俺の夢は叶う……叶えるぜ、絶対」 我ながら単純だと思う。それでも、彼女の言葉は不思議なほどずっしりと心に残っている。 -- 名無しさん (2013-07-31 00:43:30) - 電車が来る。何が特別というわけではない。だが、そこに乗り込んで次の勝負の場に向かうと思うと、不思議とワクワクしてくる。 -- 名無しさん (2013-07-31 01:26:47) - この気持ちは、小説を書く時と同じだ。自分が描く世界の中で、登場人物たちがどんな物語を紡いでくれるのか、知りたくてたまらない。 -- 名無しさん (2013-07-31 01:28:52) - 小説を書く最大のモチベーションが疼き始めた。 -- 名無しさん (2013-07-31 01:29:40) - 「帰ったら、また書くかな。新しいやつ題名はーー」 -- 名無しさん (2013-07-31 01:30:45) - 「怒りの日……いいや、神咒神威神楽……」 「!?」 青年の先の言葉を隣にいた、金髪で長髪の男性が本を読みながら呟き、それを青年は聞いていた。独り言、だと青年は思いたいがどうも吃驚して見てしまった。 -- 名無しさん (2013-07-31 01:48:29) - 背丈がまず高く、それでいて佇むだけで圧倒されるほどの神々しい、人を魅了する何かを持っているような男性がいた。まるで黄金のように輝く金髪の長髪は鬣の如く、薄黄色の着物はまさに彼のために誂えられて作られたかのように完璧だった。 -- 名無しさん (2013-07-31 01:50:16) - (この男……いつの間に俺の隣に?) 「思うに、卿は物書きかね?」 またも唐突に投げられた言葉で気付いた。本を読みながら隣にいる彼に声を掛けていたのだ。 前を見ながら青年は受け答えをした。 「今日はなんかあんたのように勘の鋭い奴に出くわす日だな……別にまあ、大した物書きじゃねえけどよ」 -- 名無しさん (2013-07-31 01:52:30) - 「そうかね?卿は卿が思うほど矮小な身ではないと思うのだがな」 「俺の作品を見たこともない奴がよく言えるな?」 「勘だよ……気に障ったのなら謝ろう」 -- 名無しさん (2013-07-31 01:57:13) - 「い、いや、そんなに畏まらなくても」 雰囲気に似つかわしくない、意外なほど謙虚な姿勢にむしろこちらが困ってしまう。 -- 名無しさん (2013-07-31 02:09:47) - 「私はこれでも多くの者たちを見てきているつもりだよ。その中で、卿ほどの物書きはいないと思っているよ」 「大袈裟だな……名も売れていない小説も出せていない俺なんかより、有名な奴なんて一杯いるだろ?」それは事実。しかし、隣の彼は首を横に振った。 -- 名無しさん (2013-07-31 02:13:32) - 「表面上はそういった輩も多いだろ……良いシナリオを書く者は須らく特異な者ばかり。卿はそうだな……いずれ大物になれると確信しているのだがな」 「初対面……なのにか?」 -- 名無しさん (2013-07-31 02:18:43) - 「人を見る目はあると自負しているよ」 -- 名無しさん (2013-07-31 02:19:43) - 電車の扉が開き、左右に分かれて人が出てくるのを待ち、中に入ると不思議なことに彼ら二人しか車両には載っていなかった。 (いつもは結構な数がいるのに……何故?) 「座らないのかね?青年」 隣を指して言う。 -- 名無しさん (2013-07-31 02:30:11) - 青年は黄金の男の隣に座ると、車両の扉が閉まり電車が出発した。中には二人しかおらず、まるで幽霊電車に乗ったような感覚だ。 -- 名無しさん (2013-07-31 02:37:41) - 「私はドイツから来た身で、多くの書物に芸に雅楽など数多のものに触れてきた」 己の事を不意に語りだした。 「その中で、私は不意にこの日本に来てとある編集長に出くわしてね」 (編集長……?) -- 名無しさん (2013-07-31 02:39:20) - 「その男が私が訪れるや否やこう言ったのだよ」 『今日は来客が多いが、君で二人目だよ。私に珍しくも懐かしい想いを感じさせてくれたのは』 「?意味が分からん」 「私も分からんよ……だが、その男と話をしていて、悪い気はしなかったよ」 -- 名無しさん (2013-07-31 07:43:36) - この車両には二人だけ。互いに隣に座りながらも、黄金の男は微笑んでいた。まるで、懐かしい思い出に浸っているかのようだ。 「見たことも、感じた覚えもない……だが、何故だろうか。不思議なのだが、あの邂逅も、あの時飛来した思いも……何もかもがそれもまた良しと思ったのだよ」 『私は総てを愛している……愛でるためにまずは壊そう』 ……龍水「黄金殿……」 覇吐「龍明がゾッコンだった黄金様だろ?座から切り離そうと、あの鮮烈な輝きは消えねえだろうよ」 竜胆「そうだな……私はあの方の想いも引き継いだのだ。到底勝てるなどと吹聴はしないがな」 夜行「我らは先達があってこそ、今ここにある……宴の席で互いに飲み交わしてみたかったものよ」 宗次郎「それは僕らも同じですよ」 紫織「そうそう。女の勝負じゃ中途半端だったけど、ああ言った手前負けたくもない。けど、宴の席で願うことなら飲み交わしたかったよ」 龍水「お前はどうなのだ、刑士郎?息が合いそうだったしな(ニヤニヤ)」 -- 名無しさん (2013-07-31 08:43:06) - 刑士郎「あん?誰に言ってんだクソチビが」 龍水「誰がチビだ!?」 覇吐「いやお前だぐぼっ!?お、お前……お、俺のソハヤ丸を、俺の偉大な息子を蹴るなよォ」 膝を付く覇吐は痙攣していた。 -- 名無しさん (2013-07-31 13:25:22) - 竜胆「今のは覇吐が悪い」 紫織「まあ、全面的にかな?」 咲耶「お兄様もお口が悪うございます」 刑士郎「事実は事実だろうが。この中で他に該当するチビなんかいねえだろが」 夜行「まあ、否定はできぬな」 宗次郎「同じく」 覇吐「ほら!俺間違ってねえじゃねえかよ!?謝罪しろ謝罪!!」 -- 名無しさん (2013-07-31 14:53:55) - 龍水「喧しいわ! そんな粗末なものに下げる頭はない!!」 覇吐「なんだとおう!!」 刑士郎「……あいつ、とんでもねえ発言してねえか?」 -- 名無しさん (2013-07-31 19:39:33) - 夜行「男にとっては粗末なモノと言われると、傷つくと同時に尊厳を抉られるようなものだからな」 その時、龍水がピタリと止まった。 -- 名無しさん (2013-07-31 19:46:29) - 覇吐「ニヤリ)おやぁ~?どうかちたのかにゃ~?龍水たん、お顔が真っ青でちゅよ~?」 刑士郎「おい覇吐今すぐその口調は止めろマジでブチ殺すぞ」 竜胆「あの水銀殿を想起させるから真面目に止めろ、覇吐……いつぞやのように、お前を女体化させるぞ?」 -- 名無しさん (2013-07-31 19:47:58) - 覇吐「それだけはご勘弁を!!」 速攻で頭を下げる。 天照『あれは……笑うに笑えなかったぞ』 我が子の表情も引きつる。 -- 名無しさん (2013-07-31 19:51:30) - 宗次郎「あの時は……あ……あ、あの時……(フラッ」 紫織「おっと(ポヨン)」紫織の柔らかいクッションで抱き留めた。あの時の女性陣営の悩ましい姿を想像でもしたのだろう。 刑士郎「お前は何処までなんだ?ま、覇吐の女体化なんて利益なんてな――」 咲耶&龍水&竜胆「あるに決まっているだろ/ますわお兄様!!!!」 物凄い剣幕で刑士郎に顔をドアップさせた。 -- 名無しさん (2013-07-31 20:25:27) - 刑士郎「どこにあんだよ!?」 夜行「まあまあ皆落ち着け……それより、面白い展開になってきているぞ?あちらの世界では」 そう言って目の前の映像を見てみると――座から切り離されたラインハルト・ハイドリヒこと黄金の男が、青年が描いた原稿を読んでいた。 -- 名無しさん (2013-07-31 20:26:56) - 竜胆「そういえば、我らも彼らのこと細かい部分は知らないのであったな」 紫織「一度でいいから、あの原稿を読んでみたいねぇ」 龍水「そういえば、こちらの世界の下界では……えぇ~と……『Dies irae』という題名の長編の小説が出回っているようだぞ?」 -- 名無しさん (2013-07-31 20:30:28) - 覇吐「おいおい、それって……」 咲耶「あのお方ですか?」 龍水「さぁな?なんでも、無名の作家が出したそれが爆発的に売れたらしくてな。かなりの完成度が受けて、映像化されてもいるらしい。私はそこまで詳しいわけではないからな。これ以上は分からん」 -- 名無しさん (2013-07-31 20:36:32) - 夜行「……アンナ ライヒハートとやらが作者らしいな」 早速、天眼で本の著者を調べてみる。あくまで名前だけだが。 -- 名無しさん (2013-07-31 20:48:50) - 宗次郎「その名前って……」 刑士郎「奴奈比売の野郎と、夜刀じゃねえか」 竜胆「もしくは、その二人の名を合わせた何者か、という推察はできるな」 -- 名無しさん (2013-07-31 20:50:15) - 竜胆「よし覇吐、その本と『でぃーぶいでぃー』とやらを買ってこい」 覇吐「俺パシリか!?」 紫織「機械の方は私に任せて頂戴♪こん中じゃ、私が一番精通してるしね♪」 咲耶「頼もしいですね」 刑士郎「ということだ、頑張れよパシリよ」 覇吐「黙れシスコンチンピラ」 二人「あん?やんのかコラァ!?」 -- 名無しさん (2013-07-31 20:51:53) - ふう、と竜胆がため息を一つ付き。 竜胆「うるさいわ!! 貴様らあああ!!!」 一閃。喧嘩していた二人は天高く吹き飛ばされ、脳天から大地に帰還する。 -- 名無しさん (2013-07-31 21:09:43) - 覇吐「ぐほっ!?」 刑士郎「イッテぇ~!?てめぇのせいだぞ、覇吐!!俺まで巻き添えを喰らわせやがって!!」 覇吐「黙れやシスコンが!!」 メンチ切る2人の前に、 「よう、久しいなお二人さん」 タバコを吸って現れたのは、赤いコートに金髪、ニヒルな笑みを浮かべたあの少年だった。 刑士郎「てめぇは……あの洋服じゃねえのか?」 「ありゃバイトの時の恰好だよ、あんなん四六時中来てたら目立ってしょうがねえよ」 覇吐「嫌今でも十分目立ってると思うぞ?」 -- 名無しさん (2013-07-31 21:12:40) - 「んなことよりだ……どうしたんだ?上空から吹っ飛んできやがって……あれか?どこぞの怖い野郎にでも人間吹っ飛び新記録でも出すための試運転でもされたのか?」 二人『あながち間違ってねえな』 二人は否定しなかった……後に、孫悟空のように頭を締められるのは余談だ。 覇吐「そういやよ、え~と……『Dies irae』っていう小説知ってるか?」 「唐突だな……ああ、有名だしな。あの超絶版の奴だろ?」 刑士郎「まさか、もうねえのか!?」 超焦る刑士郎。持って帰らなければ血の雨(誤字に非ず)が降ること間違いない。 「いんや?俺やダチが数冊ダブらせて買ってるからよ、1、2冊は余って持ってるぞ?」 覇吐「それを譲ってくれ!」 刑士郎「後生だ!!」 -- 名無しさん (2013-07-31 21:16:23) - 「あ~そりゃいいんだがよ。あれって絶版で売ればかなりの値打ちが付くからな~」 二人「マジで頼む!」 二人が遊園地で頭を下げた。頬を掻く少年だったが……ニヒルに嗤った。 「だが、金儲けならもう結構稼いでるからよ……ほらよ」 そう言って袋に入っていた二冊の『例』の本を手渡してくれた。 覇吐「うお!?マジか!?」 「んだ?人に頼んでおいて、その信じられねえって顔はよ?」 -- 名無しさん (2013-07-31 21:27:18) - 刑士郎「ていうか、なんでてめぇがその本を持ってんだよ?」 「ん~……俺のラッキーアイテムがよ『珍しい本』だったんだよ。んで、さらにラッキースポットがこの遊園地……だから、たまたま(・・・・)なんだよ」 最後にニヒルに笑みを浮かべた少年。 -- 名無しさん (2013-07-31 21:28:42) - 「そんじゃあな」 それだけ言うと、さっさと帰ろうとする少年。 「あ、そうそう――あの出来そこないにもしも会えたら伝えてくれや。――妄想ごっこは下らねえなりにそこそこ笑えたってよ。後、そっちにはもうちょっかいかけねえから、精々頑張れよってな」 背を向けながら、最後に付け加える。 -- 名無しさん (2013-07-31 23:30:29) - 覇吐「お前、何を……」 覇吐達が呼び止めようとするも、雑踏に紛れてすぐに姿をくらます少年。 -- 名無しさん (2013-07-31 23:31:39) - 刑士朗「……何の事だと思う?」 覇吐「……あの世界の話、か?」 -- 名無しさん (2013-07-31 23:33:09) - それは、黒井和哉というファクターが模倣という事象で生み出した擬似的な神話世界。そして、彼が忘れることが出来ない美しくも至高の女神と彼らとの物語。今の言い方は、どうみてもそうだろう。 -- 名無しさん (2013-07-31 23:50:02) - 刑士郎「……あの野郎。座から切り離そうと変わらねえのかよ」 覇吐「流石は夜刀の……蓮の自滅因子にして相棒だな。敵わねえよ」 頭を掻きながら苦笑する覇吐。 -- 名無しさん (2013-07-31 23:51:06) - 彼らは和哉を嫌悪しているし、憎悪した。其れは最後の最後で凝縮した憤怒を彼にぶつけていた。彼は無意識にもであろうが、彼らを己の世界の舞台装置としていたのだ、恨まれても無理はない。 -- 名無しさん (2013-07-31 23:52:20) - だが――あの憎たらしい言い方は、どこかお前らしいがな、と呆れた感じながらも友であると誇っているかのように感じられた。彼は蓮の裏側。つまりは、彼の総体意志でもある。ここまでくれば、かつての遊佐司狼とこの世界の遊佐司狼、もはや差異などはないのかもしれない。 -- 名無しさん (2013-07-31 23:53:54) - 覇吐「よく勝てたよな?お前」 刑士郎「うっせ……俺はあいつに認められた『人間』だ。その矜持だけは曲げるつもりはねぇよ」 覇吐「へへっ、そうかい。ま、女神さんにはもう一度会っておきたかったが、仕方ねえか。あ、そういえば紫織はどこにいるんだ?」 刑士郎「あん?あいつもこの世界に来てるってのかよ?」 -- 名無しさん (2013-07-31 23:58:41) - 覇吐「でぃーぶいでぃーっていう、絵巻物を見れる道具を用意してる筈だ……」 紫織『もうとっくに終わってるよ、早く戻ってきな』 -- 名無しさん (2013-08-01 00:03:54) - 念で連絡してくる紫織。 刑士朗「……はええな」 覇吐「何時の間にやらだ……俺らも戻っか」 天から延びる光に導かれ、二人は座へと戻る。 -- 名無しさん (2013-08-01 00:05:19) - 紫織「遅いよ、あんたら」 戻って最初にかけられた一言がこれだ。 覇吐「俺らも相当早く手に入れたんだが」 龍水「そんなことよりだ、早く本を見せてくれ」 -- 名無しさん (2013-08-01 00:09:17) - 覇吐「労いの言葉も無しかよ……」 夜行「よくやったな二人とも、大義であったぞ」 刑士朗「何だ、その無駄に尊大で腹立つ労いは」 -- 名無しさん (2013-08-01 00:11:34) - 夜行「ふむ……水銀殿と黄金殿を真似たのだが、如何か?」 -- 名無しさん (2013-08-01 00:20:39) - 皆「腹が立つわ!」龍水「カッコイイです~!」 覇吐&刑士郎「あ~、はいはい馬鹿は放っておいてと」 紫織「宗次郎、そっちの機材の電源を押して?あ、コンセントを入れてプラグにも挿してね?」 宗次郎「え?『ぷらぐ』?『こんせんと』?」 -- 名無しさん (2013-08-01 00:27:03) - 聞きなれない言葉に、しばし沈黙し、 宗次郎「……それで、僕はなにを斬ればいいんでしょうか?」 紫織「……私がやるから待ってな」 結局、全ての準備は紫織がした。 -- 名無しさん (2013-08-01 00:59:03) - 程なく始まる上映会。天照含む曙光達は正座で先達たちの活躍をモチーフにした物語を見るのだった。 -- 名無しさん (2013-08-01 01:01:39) - …… 「ふう……」 青年は自宅に帰ると、すぐさま敷きっぱなしの布団に倒れこむ。あの後、金髪のお方から情け容赦無いドストレートな助言を受け……周りくどい編集者以上にメタメタにされながらも、次の出版社に向かった。――結果は、予定調和の如く不採用。 -- 名無しさん (2013-08-01 01:03:59) - しかし、目を瞑り今日一日を振り返ると、一分もしないうちに飛び上がり、机に向かう。 -- 名無しさん (2013-08-01 01:04:53) - 「書くか……いや、書かずにはいられないだろ、これは」 書いている最中はハイになっているのか、何とも奇妙な行動や言動が飛び出し続けると、彼の親しい女性(彼女ではない、断じて。悲しくなるが、断じて)は良く言うが、今回は相当ヤバいと自覚がある。 -- 名無しさん (2013-08-01 01:06:38) - 心の中に浮かぶ情景を、言葉を、キャラクターの生き様を、浮かぶがままに殴り書く。 -- 名無しさん (2013-08-01 01:07:38) - 金髪のお方には、何処までも荒々しく稚拙で技術に拙く、情景は怪奇極まり、話の脈絡の前後が意味不明、キャラクターの書き訳がとにかく下手、等々洗練という言葉の対極にあると酷評された。しかし情熱だけは……何かを伝えたいという誰にも負けんと……そこだけは高く評価されている。 -- 名無しさん (2013-08-01 01:10:41) - そして彼の特技の一つは、速筆。速く速くとにかく速く、猛る情念のままに物語を書き連ねる技術。それは、瞬く間に一遍の短編を作り上げる。 「……できた」 -- 名無しさん (2013-08-01 01:15:10) - 作り上げたものは、何でもない、しかしとても愛おしい日常の物語。全能たる神も思い通りになる世界も無い、しかし、そこに宿る思いは――至高のものだと信じている。 -- 名無しさん (2013-08-01 01:17:01) - その作品をファイルに綴じると、すぐにまた次の作品に取り掛かる。 -- 名無しさん (2013-08-01 01:17:37) - 彼は舞い上がる心の中で、ふと今日であった少年達を思い出す。公園であった彼らには、自分の小説が認められた時には共に祝いの席でも設けたいと思う。偏屈な編集者と金髪の吾人とは、自分を誇れるようになった時、酒でも酌み交わしたいと思う。 -- 名無しさん (2013-08-01 01:19:50) - そんな思いが原動力。進む、進む、書き進む。 -- 名無しさん (2013-08-01 01:20:09) - そんなに都合よくはいかないだろう。きっと、彼はこれからも何度も何度も打ちのめされ、挫折を味わい、もしかしたら筆を折る日が来るかもしれない。 -- 名無しさん (2013-08-01 01:20:47) - だが、それがどんな道であろうと――真っ直ぐな夢があるなら、どこまでだった歩いて行ける。 -- 名無しさん (2013-08-01 01:21:31) - 満ち足りた気持ちが、体からとめどなく溢れい出て、何処までも作品へと注ぎこまれていく。 -- 名無しさん (2013-08-01 01:22:16) - この世界に神はいない。世界をひっくり返す、ご都合主義の舞台装置もまた存在しない。 -- 名無しさん (2013-08-01 01:22:54) - 気に入らない事も、どうしようもない事も、そしてどうあってもちっぽけな人間のままでしかない自分とも、一生涯付き合わねばならない。 -- 名無しさん (2013-08-01 01:23:43) - なればこそ、それでいいのだ。 -- 名無しさん (2013-08-01 01:24:43) - 「飽いていればいい!飢えていればいいんだ!」 ……刑士郎「!?」 映像を見ていた時、まだ接続していたモニターに映る彼の言葉に刑士郎が反応していた。 -- 名無しさん (2013-08-01 01:25:33) - 「生きる場所の何を飲み、何を食らっても足りない。けど、それで上等なんだ、甘えてはならない!」 -- 名無しさん (2013-08-01 01:26:25) - 思いを書く。描く。書き続ける。挫折をしよう。挫けよう。前を見ていられなくなるだろう。だが、それでも―― 「俺は光を信じて、己の道を歩んでやる!」 -- 名無しさん (2013-08-01 01:27:54) - 彼らの閃光を、彼らの燃焼を、書いてやる!描いてやる!画いてやる!どれほどの時間が掛かろうと書いてやる! -- 名無しさん (2013-08-01 01:28:41) - そんな話だ。運命も宿命も特別も何もない、ただの男の物語。半ばで倒れようと、道を外れようと、輝かしい未来を掴もうと、奈落の果てに落ちようと……全てが青年で、何も否定は出来ない。 -- 名無しさん (2013-08-01 01:29:35) - 彼の前途に何があろうと、世界は勝手に進んでいく。もう、他者に憧れるだけの観測者はいない、仮初の世界でどうしようもない渇きにあがき続けた模倣の神は存在しない――そこに居るのは一人に人間。 -- 名無しさん (2013-08-01 01:30:53) - ――そうか……それがお前なら、やってみな。やれる限りよ―― 青年は遥か彼方からの声を幻視した。それでも彼は止まらない、その言葉すら燃料にただひたすらに書き続ける。 -- 名無しさん (2013-08-01 01:32:01) - ――その後、彼が物書きとして大成するのか道半ばで諦めるのか、はたまたまるで違う道を選ぶのか――それは神様だってわからない。何もかもが不透明で、確かなものなどまるで無い、故に無限の可能性。――誰にも冒せない不可侵なる未知の世界。 -- 名無しさん (2013-08-01 01:34:28) - だけど、青年は持っている。未知の世界を突き進む、燭台(ゆめ)を想い(たねび)を――そして、何にも代えがたい、体の芯の芯、原初の奥底までに刻みつけられた――――――大事な絆を。 -- 名無しさん (2013-08-01 01:36:07) - ――斯くのごときに物語は終わります。この先、青年が何を成すか、彼の前に何が立ち塞がるか――それは、彼自身の彼だけが持ちうる誰にも真似できない人生(けいけん)でございます。 -- 名無しさん (2013-08-01 01:38:08) - なればこそ、この場は一幕、幕引きといたしましょう。これより先の彼の物語は――いつぞや、また語られるのかもしれませぬ。 「ではでは、皆様。名残惜しいですが、これにて閉幕」 -- 名無しさん (2013-08-01 01:39:53) - 登場キャラ:アーチャー、ランサー、七夜、言峰、ギル、青子、橙子、ジューダス、和哉。 - 新キャラ:ブラッド(父)、アビル(娘)、オルバ(息子)。←三人とも、不老不死。呪縛から解放された。 -- 案山子さん

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