「Dies irae ~Das Evangelium des Momentes~ プロローグ」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら
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世界が広がる。
黄昏の光に満ちた温かい流出が、彼女を中心に流れていく。
『大丈夫』
それは慈愛の光 それは母性のぬくもり
『私、ちゃんとみんなを包むから』
曇りなき慈しみに満ちた、母の愛そのもの
『私がみんなを・・・・・・・抱きしめる』
すべてを抱きしめ、すべてを愛する女神の愛は、今温かい海の如く世界を塗り替える
・・・・・・・その刹那
『・・・・・・・・・・・・?』
彼女の流出に、何かが触れるのを感じた。
『・・・・・・・・・・・・・誰?』
慈愛の女神は見つけたそれを掬い取り、手にする。それは一瞬だけ見えた光。今にも消え入りそうな、しかし美しく輝く小さな光だった。これはなんだろう。はじめて見るはずなのに、なんだかとても懐かしい。女神はその光に魅入られるように、自らの流出を弱めてしまった。
しかし
『――――――――――!』
今度は女神の胸から、あふれ出てくるものがある。だがそれは世界を塗り替える流出ではなく、彼女の胸の内にもとからあったもの。
『・・・・・・・・・・・・そうか』
それを体感したのは、彼女自身ではない。だがその記憶は、彼女にとってかけがえのない、美しき刹那の思い出。
『あなたも、いたんだね・・・・・・・・・』
手のひらにある小さな光を見て、彼女はやわらかな笑みを浮かべる。
『大丈夫だよ・・・・・・・・・私はちゃんと、みんなを抱きしめる』
再び女神の流出が始まる。温かい黄昏の本流が、変わらず全てを塗り替えていく。
『だから、あなたも幸せになって』
そう呟き、女神は手のひらの光を、自らの黄昏の海へと流した。光は黄昏の抱擁に包まれ、どこまでも流れていく。
『幸せになってね・・・・・・・・・レン』
女神の視線のさきには、もう光は見えなくなっていった
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