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My servant is the Alchemist


信じられなかった。
理論は完璧なはず、だった。
しかし現実は非情で残酷で――
彼の前には、人間の容をしていない母のはずのナニカと、
左足を喪った自分と、
弟が居『た』痕跡のみ。

「畜生……返せよ」
鎧に血印を描く。
「弟なんだよ……」
出来るはずだ。彼には行う前からそれが理解できた。
「足だろうが!」
『あれ』を見た自分であれば可能なはずなのだ。
「両腕だろうが!」
それに相応しい、代償さえ支払うことが出来れば。
「……心臓だろうがくれてやる」
血まみれの両腕を差し上げる。まるで神に請い願うように。
「だから!!」
彼は一瞬だけ、『それ』が腕を持っていかなかったことを感謝し――
「返せよ!! たった一人の弟なんだよ!!」
両の手のひらを叩きつけるように打ち合わせた。

……誰も居なくなった部屋で、彼は目覚めた。
「兄さん?」
兄を呼ぶ声に応えは返らない。
「兄さん?」
身を起こし、室内を見渡す。
――陣の上の人の容をとどめない何かに目を留め、それが何か認識して彼は絶叫した。
彼、アルフォンス・エルリックが自身の状態と彼らが冒した禁忌の結果を理解するにはまだ幾ばくかの時を必要とするようだった。

「何……これ?!」
ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは動揺していた。
彼女だけではない。
彼女を取り巻く学友たちも動揺と慄きを含んだざわめきを揚げている。
中には、綺麗に断ち切られた足の断面を直視してしまいその場で嘔吐する者すら居た。
「何なのよ! これは!」
春、2年生に進級した魔法使いが行う使い魔召喚の儀式。
その儀式で、ルイズが呼び出した使い魔、それは。
「水を得意とする生徒は前に出なさい! 早く、回復魔法を掛けるんだ! 死なせてはならない!」
儀式を監督するコルベールの必死の声も、ルイズには遠い。
彼女が呼び出した使い魔は見るからにただの少年であった。
左足を根元から喪った血まみれの少年を見下ろしたまま、彼女は何をすることも出来ずただ呆然と立ち尽くしていた。

虚無の魔法使い、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
ガンダールヴにして錬金術師、エドワード・エルリック。
二人はこうしてめぐり合い、運命の歯車は回り始める。