鳴沢美佐子7


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八十八学園。三年B組の教室。
昼休みなのだが、どこか閑散とした雰囲気があった。
三年のこの時期には基本的に自由登校となり、出席している生徒の数は半分ほどだ。
その中に、唯と竜之介の姿もある。
竜之介は自分の席について、机の上に弁当をひろげている。昼休みなのだから、当然なことである。
しかし、弁当箱の横に分厚い参考書も開かれているというのが、
かつての彼を知るものにとっては、異常な光景であった。
まあ、それも二週間も続けて見せられれば、だいぶ慣れてはきたけれども。
竜之介の表情は真剣そのものだ。視線は開いたページに固定されている。
機械的に箸をつける弁当箱の中身は、まだ半分以上も残っている。
その没入の気色が、周囲のものたちに緊張を強いて、交わす声を潜めさせているのだった。
と、席を立って竜之介へと歩み寄るものがあった。唯である。
途端に集まる注視には気づかぬふりで、唯は竜之介の傍らに立ち、声をかけた。
「竜之介くん」
「………………ん?」
けっこうな時差を置いて、竜之介がようやく顔を上げた。
「お昼休み、終わっちゃうよ」
「……やや? いかん」
言われて時計を見た竜之介、昼休みが残り十分ほどしかないことに気づくと、テキストを閉じて、
猛然と弁当をかっこみ始めた。
ホッと、室内の緊張が解けて、ざわめきはじめる。
それがおかしくて、唯はクスリと笑った。 

竜之介が進学の意志を表明したのが、二週間前。
それ以後の彼の劇的な変身ぶりは、衝撃となって八十八学園を駆け抜けた。大袈裟ではない。
ある初老の物理教師など、竜之介の本気を理解すると、
「教師生活二十五年、これほど感動したことはないいっ!」
と感泣したとか。
その思いは、他の教師たちも同様であったようで、早速竜之介への万全のバックアップ体制が敷かれることとなった。
いくら竜之介の決意が固く真剣なものであっても。なにしろ、これまでがこれまでである。
もとより、卒業後の浪人暮らしは確定しているが、現状では予備校の授業にもついていけない。
竜之介もそれは自覚しているから、連日閉門ギリギリまで教室に居残って自主的な補習を行っているのだが。
その助けとして、さまざまな課題や小テストの類が、担任の片桐先生を介して回ってくるのだった。
それらの心遣いに、竜之介も最大限の努力をもって応えている。
八十八学園一の問題児は、いまや学園一のガリ勉生徒と変貌しているのであった。

「ふー、食った食った」
本気でとりかかれば、あっという間に弁当はカラになった。満足そうに息をつく竜之介に、
「美味しかった?」
傍らに立ったまま見守っていた唯が尋ねる。最近は唯が弁当を作っているからだったが。
しかし、なにかに気をとられてでもいなければ、素直に答える竜之介ではない。
スッとぼけて弁当箱を片していたが、ふと思い至ったふうに唯を見上げて、
「美佐子さん、まだ調子が悪いのかな?」
軽く眉を寄せて、そんなことを訊いた。
「……うん。そうみたい」
唯も表情を曇らせて、頷いた。竜之介が何故美佐子のことを言い出したのかも察しがつく。 

ここのところ、唯は弁当作りの他にも、さまざまな家事を代替わりしていた。
二週間前に突然倒れて以来、どうも本調子ではなさそうな美佐子を気遣ってのことである。
「お母さんは、大丈夫だって言ってるけど。すごく疲れてるように見える」
「そうだよなあ……」
唯の言うことは、竜之介も感じていたことだった。
最近の美佐子は行動の端々に、重い疲労を滲ませているように思えるのだ。
ボンヤリと考えこんでいる姿もしばしば見かけるようになった。
「やっぱり、一度医者に診てもらったほうが、いいんじゃないか?」
「唯もそう言ってるんだけど……」
しかし、そんな時には、美佐子は笑って「心配ないから」と済ませてしまうのだった。
「うーん。唯、おまえさあ、放課後俺につきあってないで、早く帰ってさ、
 少し店の方も手伝ったら?」
唯は連日教室に残って課題をこなす竜之介に付き添っていた。解らないところを教えてもらったりして、
竜之介としても多いに助かっているのだが。
「うん、それも言ったんだよ。でも、お母さん必要ないって。学校に通えるのもあと少しなんだからって」
正確には『竜之介くんと一緒に学校に通えるのも』と美佐子は言ったのだ。
それは現在の状況にかなりの幸福を感じている唯の弱いところを突いていたのである。
「それに……お母さん……」
「うん?」
「体調の問題だけじゃなくて、なにか、悩みがあるんじゃないかなって」
「な、悩みって?」
ドキリとする竜之介。
「それは、わからないけど。でも、暗い顔で考えこんでることが多いし、最近」
「そ、そうなんだ」
美佐子の変調が、心理的な要因からだとすれば、竜之介としては触れたくない問題なのだった。
特に唯の前では。

その時、竜之介を助けるように予鈴が鳴った。
直後騒がしい一団が、ドヤドヤと教室に入ってきた。
三名の男子生徒で、いずれも制服を着崩して髪を染めた、いわゆる不良っぽい連中である。
この手合が、この時期に登校しているのは、出席の帳尻を合わせるためだった。
日頃からやかましい連中だったが、それにしてもやけに昂揚しているようすだ。
「お、竜之介。昼休みもマジメに勉強か」
ひとりが、竜之介の机に置かれたままの参考書に目を止めて、近づいてきた。
「相変わらずの異常事態だな」
「この世の終わりも近い」
好き勝手なことを言ってるが、揶揄や嫌味という調子ではなかった。
竜之介の、ある女生徒が評したところの“ニュートラルな性格”が、この手の連中とも
親交を結ばせていたのだ。
「うるさいですよ、キミたち」
真面目くさった顔と口調を作って、竜之介が答えた。
「学校は、勉強するための場所ではありませんか」
「や、やめれえっ」
「気色が悪すぎる」
「そのように騒がれては、勉学の邪魔ですよ」
「やめろというに」
「そうだ! そんなことより、聞け! 竜之介」
「そうそう。久々に面白いネタだぜ」
勢いこんで、身を乗り出してくる。
どうせ、ロクな話じゃないな、とあたりをつけながらも。
竜之介は、唯が自分の席に戻っているのを確認して、聞く態度をとった。

「昼メシにさ、『珍々軒』にラーメン食いに行ったんだけど」
「キミたち、それは校則違反ですヨ」
「もう、それはええっちゅうに」
竜之介も、いい加減飽きてきたので、口調を素に戻した。
「で? 突然『珍々軒』のラーメンが超絶美味に変わってたとか?」
「イヤ、相変わらずマズかった」
「じゃあ、行くなよ。わざわざ」
「うーん、マズいとわかっていても、時々無性に食いたくなるんだよなあ」
「あれは謎だな」
「おい、話が進んでねえぞ」
「そう、珍々のマズいラーメンのことは、どうでもいいんだ。問題は、その帰り道よ」
「天道に見つかって、殴られたとか?」
「そんなヘマはしねえよ。つーか、それのどこが面白い話なんだよ」
「竜之介、おまえは黙って聞け」
「校門の前によ、ゴツい外車が停まってたんだけど」
「ホントは、行く時にも目についてたんだよな」
「これがまた、全面マスキングで、いかにも怪しいクルマなわけよ」
「……ふーん。それが?」
「それがって、おまえ、そんな場違いなクルマが停まってたら、興味がわくだろが」
「そうかあ?」
「とにかく! これは調査の必要があると思ったね」

「調査って?」
すでに耳を貸したことを後悔しながら、竜之介が訊いた。
「そりゃあ、おまえ、こっそり忍びよってさ」
「こう、身を低くしてな」
「……ヒマだねえ、キミたちも」
「フフン」
「フフン」
「なんだよ? その勝ち誇った顔は」
「ヤってたぞ」
「はあ?」
「だ・か・ら。中で、どこぞのカップルが真っ最中だったの」
「いわゆるひとつの、カーセックスだよ」
「中で、って、見えないんだろ?」
「近くに寄ったらハッキリ聞こえたよ。ハンハンあえいでる女の声が」
「これがまた、イロっぽい声でよう。思い出してもタマんねえよ」
「学校の真ん前で? なんでわざわざ、そんな場所で」
「それは、そういうプレイだってことでしょうが」
「わざと人目がある場所でな」
「マニアなカップルだな。そういうシチュの方が燃えるってこった」
「ふうん……」
「ビミョーに揺れてたもの、車体が」
「嘘くさ! 揺れるかあ?」
「イヤ、マジマジ、マジで。なあ?」
「うん、ユサユサしてたな」
「ホントかよ……」

「でもさ、なんか女の方はイヤがってたっぽくねえ? “あん、やめて、こんなところで”ってさ」
「声色はヤメれ。でも、確かにそんな感じもあったな」
「どうだか。なんだかんだ言っても、あんな場所でヤラせてるんだからな。インランな女じゃん?」
「でも、声はエカッたよう。“アアン、イヤン”って」
「だから、声マネはやめろって! せっかく耳に焼きつけたのに、
 おまえの声と混ざったら、どうしてくれる」
「いーじゃん、俺の声をオカズにすれば。許可するぜ」
三人組は、竜之介を置き去りにして、勝手に盛り上がっていく。
「ありゃ、不倫だな」
「確かに、秘密っぽい雰囲気がありましたな。ハイトクテキ、ってやつ?」
「いかにも、オトナの女って声だったしな」
「…ンププ。どうする? 実はおまえん家のカアちゃんだったら?」
「なんで、ウチのオカンが出てくるんだよ!?」
「やめろよう。せっかくのネタが台無しになるよう」
「おまえも! なんだよ、それは!?」
「ギャハハ。でも、マジであるかも。わざわざ学校の前でってのがさ。
 すぐそこで子供が勉強してるのに、って罪悪感が燃えるわけだよ」
「うひょー、マニアック」
「そう、マニアックすぎるよ、おまえのカアちゃん」
「やめろよう」
「だから! なんでおまえが…」

聞いてるだけで頭が悪くなるような会話が延々と繰り広げられる。
「…………」
竜之介は、つくづくと自分の交友関係への疑問を深めていたのだが。
始業のチャイムが鳴ったのをしおに三人を追い払った。
「ほら、席に戻れよ」
「どうせ次も自習だろ? いいじゃん」
「いくないっつーの」
「まあ、しょうがない。竜之介の勉学の邪魔をするのも悪いよ」
「竜之介、つづきは、後でまたジックリ聞かせてやるから」
「もう、いらん」
すげなく答えて。悪友どもが、それぞれのの席に戻っていくのにヤレヤレと息をついて。
竜之介は、すぐに気持ちを切り替えて、机上の参考書を開いた。

……この時期の午後六時というのは、かなり暗くなっている。
竜之介と唯は、今日も閉門ギリギリに学校を出た。
「あーあ」
大きく伸びをして、グリグリと凝った首をまわす竜之介。
ふと隣りを歩く唯が、やけに周囲を気にしているようすに気づいた。
「どうした?」
「あ、うん。いないね」
「なにが?」
「怪しい車」
「怪しい、車? …………ああ」
少し考えて、昼に悪友たちが話していたことかと思い出した。
そりゃ、五時間以上も前の話なんだから、いないだろうと思いつつ、
「聞いてたのか?」
「あんな大騒ぎしてたら、イヤでも聞こえちゃうよ」
「トホホ……」
やはり恥ずかしいことになってたなあ、といまさらにショボくれる竜之介。
「でも、ホントなのかな、あの話?」
「うーん? まあ、作り話ってこともないだろうけど」
「じゃ、じゃあ、ホントにこんな場所で、その……」
「なに赤くなってんだよ」
「ち、違うよ!」
ますます顔を赤くしながら否定する。

それでいて、唯はなおもその話題にこだわった。
「でも、信じられないよ。そんな場所でなんて…」
「解らなくていいよ。唯には、まだ早い」
「あ、また子供扱いしてる」
「実際、子供だろうが」
「もう!」
プイ、とふくれっ面を作って、そっぽを向いたが。
唯は、すぐにまた竜之介に振り向いて、顔を覗きこむようにして、
「……じゃあ、竜之介くんは、そういうことしたいと思うの?」
「はあ?」
いきなりなにを言い出すのか、と呆れた表情を浮かべながらも。
唯なりの論理の展開を、なんとなく理解できてしまう竜之介。
つまりは、子供の唯には理解できないことで、唯を子供扱いする竜之介には
理解できるというなら、それに対する見解を述べよ、と。
(唯って、時々こういう会話の進め方するんだよなあ)
「どうなの?」
なんで、そんなムキになるか? と思いつつも、どうかな? と自問してみる竜之介。
「……別に、そんな状況でしてみたいとは思わないなあ」
「そうなの?」
何故か、ホッと安堵したようすの唯。
一方の竜之介はというと、
(それに、美佐子さんは絶対そんなこと許してくれるわけないもんなあ)
などと考えていたのだが。
「竜之介くんて、意外と普通なんだね」
「なんじゃそりゃ?」
「フフフ」
まさか、隣りを歩く同い年の男の子が、自分の母親と愛を誓い合ってBまでいったなどとは
知らずに、そんなことを言う唯であった。

……などと、今日はいささか妙な会話を交わしながら。
いつもの帰宅路を進んで、家の近所まで辿り着いた時。
「お、竜ちゃん」
向こうから歩いてきた、犬の散歩中の老人が声を掛けてきた。
「あ、こんばんわ」
見知った顔に竜之介が頭を下げ、唯も、こんばんわとペコリとお辞儀をした。
「はい、こんばんわ」
ニッコリ笑った、この人の良さそうな老人は、この町内の町会長で。
竜之介のことも生まれた時から知っているし、竜之介がヤンチャ坊主だった頃には、
なにかと世話をかけた人物だ。
「聞いたよ、竜ちゃん、大学に行くんだって? それで毎日、こんな時間まで頑張ってるんだろ?」
「ええ、まあ…」
「やっぱり、お父さんと同じ道に進むのかい?」
「いや、まあ……」
弱ったなあ、とか内心で思う竜之介。この手のひとにありがちなことだが、この町会長、話好きなのだった。
案の定、ついこないだまでハナ垂らして走りまわってたのに、とか、私も年をとるはずだ、とか、
これで亡くなった竜之介の母親も安心してるだろう、とか。
次々と持ち出して、竜之介に、どうやって逃げようか、と思案させたのだったが、
「っと、いけない。こんな話をするために呼び止めたんじゃないんだった」
我に返った町会長は、急に顔を曇らせて、
「いや、聞きたかったのは、美佐子さんのことなんだけどね」
「美佐子さん、ですか?」
この町会長は、立場柄、竜之介の家の複雑な事情も知っていて、なにかと気にかけてくれていた。
ついでに言うと、『憩』の数少ない常連客でもあった。

「そう。美佐子さん、体の具合でも悪いのかい?」
心配そうに尋ねる町会長に、え? と聞き返して、竜之介は唯と顔を見合わせた。
美佐子の体調については、竜之介たちも心配していたことだが。
「どうして、それを?」
「どうして、って。最近しょっちゅう店を休んでるじゃないか」
「えっ!?」
虚をつかれた表情になって、竜之介は反射的に『憩』の方を見やった。
『憩』は灯りを落としている。それはこの時間であれば当然のことで。
連日、帰りはこの時間帯になっていた唯と竜之介だから、なんの異変も感じられなかったわけだが。
「憩……休んでるんですか?」
「え、知らなかったのかい? 唯ちゃんも?」
唯も竜之介と同様に驚愕しているのを見て、戸惑う町会長。
「そんなに、頻繁にですか?」
「二日に一日は、閉まってるよ。今日もそうだったな。いや、あの美佐子さんが店を休むくらいだから、
 よっぽどのことだと思ってさ。二、三日前に店を開けてた時に聞いてみたんだけどね」
「美佐子さんは…なんて?」
「それがさ、ちょっと所用でとか、それくらいのことしか言ってくれないんだな。
 だから、竜ちゃんたちに聞いてみようと思ったんだけどね。
 でも、竜ちゃんや唯ちゃんも知らなかったとはなあ…」
その時、唯が突然踵をかえして、家へと駆け出していった。
竜之介も、すぐにその後を追いたい気持ちだったが、
「あ、あの、美佐子さんがあまり体調が良くないのは、確かなんですけど」
「やっぱり、そうか。うん、顔色も良くないようだったしなあ」
「はい、あの、俺も、これから、よく聞いてみますから」
「ああ。なんかあったらさ、いつでも相談にのるから」
「はい、ありがとうございます」
手早く話をまとめて、頭をひとつ下げると、全速力で家へと向かった。

リヴィングで、唯が激しく美佐子に詰め寄っていた。
「ひどいじゃない! なんで、私たちになにも言ってくれないの?
 そんなに具合が悪いなんて、知らなかったから」
「唯、おねがい、落ち着いて…」
美佐子は困惑顔で宥めようとするのだが、激昂した唯は聞かなかった。
竜之介はそんな唯を見て、逆に冷静さを取り戻した。
「唯、まずは美佐子さんの話を聞こうよ」
落ち着いた言葉を掛けて、唯を鎮めて。しかし、正面から美佐子を見つめた竜之介の目は、
もう誤魔化しは許さないといった意志がこめられていた。
「……ごめんなさい。余計な心配をかけてしまったけど。本当に、そういうことじゃないのよ。
 最近、店を休んでいたのは、調子が悪いからじゃないの」
落ち着いた態度で、美佐子は説明を始めた。その言葉は淀みなかった。
「私の知り合いが、病気をして入院しているの。しばらくは寝たきりの状態になるんだけど。
 そのひと、独り暮らしで、近くに親類もいないものだから」
「……それで、お母さんが看病に?」
「ええ。いろいろ不自由をしてるようだから……」
「なあんだ」
唯が脱力する。確かに聞いてみれば、なあんだというような話だった。
「それならそうと、言ってくれればよかったのに」
「ごめんね。逆に心配をかけるかと思ったんだけど……お母さん、間違えてたわね」
「そうだよう。町会長のおじさんに聞かされて、ホントにビックリしたんだから。
 ねえ、おにいちゃん?」
「うん。やっぱり教えといてほしかったな」
「ごめんなさい。本当に」
繰り返して、美佐子は頭を下げた。

「まあ、美佐子さん面倒見がいいから、頼られちゃうんじゃないかな」
竜之介は、そうフォロウしたが、その後に、
「でも、無理はしないでよ。美佐子さんも体が本調子じゃないのは確かだろう?」
真剣な口調で、そう念を押した。
「そうだよ。家のことは、唯も手伝うけど」
「ありがとう。気をつけるわ」
美佐子が微笑んで、この話題は決着した。
「さあ、食事にしましょう。ふたりとも、着替えてらっしゃい」
美佐子はキッチンに、唯と竜之介は自分の部屋へと散っていく。
唯と竜之介の表情は晴れている。美佐子の釈明に完全に納得して。
小さな騒動は、あっさりと落着した。
唯と竜之介には、美佐子を疑う理由はなにもなかったから。
キッチンに立つ美佐子の顔に深い慙愧が浮かんでいたことを知るよしもなかったから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






 

 

 

 

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