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この世界は俺だけしか人間がいない。
少なくともこれまで他の人間を見たことが無い。
だから少しだけ孤独感を感じていた。
人の温もりに…飢えてたのかもしれない。

第9話 Village ~集落~

真とヴェルモンはとある草原を歩いていた。
目的地などありはしない。もともとこの旅にゴールなど存在しないのだから。
彼等はただひたすら歩いていた。その先に何かがあることを信じて。
「で、町はまだかよ…」
「町とはいえないが…この先にとある集落がある。そこで少し休めるだろ」
滅んでしまった町から遠く離れ、異郷の地を歩く二人。
ヴェルモンが負ってしまった傷は深い。
だが最近はその傷も少しずつ癒えてきている。
それだけでも旅をした意味があっただろう。
「集落って…どんなところだ?」
「たしか…二つの集落があって毎年決まった時期に争ってるそうだ。そういえばそろそろその時期だったかな」
「そんな時期に行って大丈夫か?巻き込まれたらやだぞ?」
「争っているといっても年間行事のようなもんだ。そもそもそんなに険悪な仲だったら年中戦争だろ」
「それもそうか…」
しばらく歩いていると、段々とテントのようなものが見えてきた。
そのテントは周囲に幾つも立っており、まるで一つの村のようだった。
「ここがその集落か…」

「旅の者、我が里に何か御用かな?」
その声は突然彼等の後ろから聞こえた。
驚いた二人は飛びのいてから声の主を見る。
それは青い毛を生やした狼であった。
「これは失礼…どうやら驚かせてしまったようだな」
「あなたは…この集落の長か」
「いかにも、我が名はガルルモン。この『犬の里』を統べる長である」
ガルルモンはあくまで優しそうに二人を見つめていた。
「…犬の里?」
気になった真は辺りを見回してみるとそこには犬の姿をしたデジモンたちが彼等を眺めていた。
「…なるほど、ここにいるデジモンたちはみんな犬型なわけだ」
「さよう、数こそは少なく特ににぎわっているわけでは無いが平和に暮らしているよ。ところで…旅の者たちに頼みがあるのだが」
それまで優しそうであったがルルモンの顔が途端に険しくなる。
それと同時に周りの空気も段々重苦しいものになっていた。
「何かあったのか?」
「長…それはここらで毎年行われる争いについてか?」
「そう…我等『犬の里』は毎年近くにある『猫の園』と争いをしてきた。まぁお互いを憎しみ合っていたのも昔の話、今ではもはや年間行事の対抗戦のように行ってきただけだ。今年の開催も明日に控えていたのだが…」
そのとき、一つのテントから剣を持った犬が狼のような耳をした犬に連れられて出てきた。
その身体には無数の包帯が巻かれており、深い傷を負っているようであった。
「あいつら…今回の出場者になってたザンザモンを闇討ちしやがったんだ!」
「やめろネフェカトモン…俺が弱かったのがいけないんだ…」
狼の耳をした犬が叫ぶと剣を持った犬がそれをなだめる。
「ザンザモンの傷は深くとてもじゃないが戦える状態ではない。それに出場者を狙ったとなると他の者にもやらせ難い」
「つまり…俺等に代わりに出てほしい、というわけだな?」
「…うむ。たまたまここを通り過ぎただけの旅の者を危険な目にあわせるのは心が痛むが…頼む」
ガルルモンは二人に深々と頭を下げると周りのデジモンたちも同様に頭を下げていた。
「俺等は…」
「別にいいんじゃねぇの?俺等が出ても」
険しい顔で答えようとしたヴェルモンに対し真はあっさりと出場を決めてしまった。
「な…お前はどうしてそう短絡的なんだよ!」
「いいじゃねぇか、腕試しみたいなもんだろ。それにアンタここを素通りしたら後味悪すぎだろ?」
「チッ…わかったよ、どうせ俺が出ないって言ったら自分だけでも出るつもりだろが」
「段々俺のことわかってきたじゃねぇか。というかアンタだって一人で出るつもりだったろ?」
「チッ…余計なことだけは鋭いんだからな…」
「で、では…」
期待のまなざしを向ける人々に対して二人は指を天に指しながら答える。
『今晩ご馳走頼むぜ!』

その日の夜。沢山の食べ物を食べた二人は眠りに付こうとする。
だが真はなかなか寝付けずにいた。
「なぁ…」
「んだよ…」
「もし本当に隣の集落が襲ってたとしてだ…目的は何なんだ?」
「…んなの俺が知るわけないだろ」
「だってよ…対抗戦みたいだっていうことはさ…勝っても特にメリットとか無いんだろ?だったら襲う理由も無いはずだろ?」
「まぁな。可能性があるとすればあの長が何か隠しているか…そもそも襲ったのが別の何かか」
「別の何か?それってまさか…」
「恐らく『パンドラ』の連中だろうな。俺の場合それが目的でもある…『パンドラ』は全部潰しておかなければな」
傷が治りかけているとはいえ、未だ彼の心には『パンドラ』に対する憎しみが渦巻いていた。
それは晴れることのない憎悪。それこそが今の彼の原動力でもある。
「…そっか」
「もう寝ろ…明日は多分連戦になるからな…」
そうして彼等は眠りに付いた。

そして翌日、集落と集落との間にある広場。
そこでこの年の対抗戦が始まろうとしていた。
「頼みます旅の方…どうか…」
「勝てばいいんだろ?大丈夫大丈夫!」
「全く…気楽なもんだ」
昨夜のことも忘れたようにはしゃぐ真の横でヴェルモンは険しい表情をしていた。
その原因は相手側の様子にある。
こちら側は相手側に襲われたということもあり敵対心が強く現れているがどうやら相手側も同じような雰囲気だった。
「つまり…奴等の可能性が濃厚ってわけか」
「ん?何か言ったか?」
気になって尋ねた真に対して曖昧な返事をしてその場を離れようとする。
しかしそれを長に呼び止められた。
「お二人とも、外部の者とはいえ『犬の里』の代表として出られるわけですから…これを身に付けてください。」
そう言うと横にいた犬の獣人が二人にある物を差し出した。
「…マジ?」

第9話 完
次回 Protection ~擁護~