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心の傷はなかなか癒えない。
俺にはそんな力はない。
俺には何も無い。
俺に出来ることって何だろうか。

第4話 pride ~誇り~

前回のあらすじ
町を離れ荒野を旅する二人にセーバードラモンが襲い掛かる。
空を飛ぶ相手に苦戦したが機転を利かせ勝利した。

「なぁ…町まだかよ…」
ひたすら荒野を歩く二人。
旅に慣れてない真にとって連日の野宿は辛かった。
「もうすぐだ…そろそろ見えてくる」
ヴェルモンの言うとおり、微かだが町並みが見えてきた。
それは少し大きくにぎわった町であった。
「本当だ…さっさと行こうぜ!」
「お、おい!」
二人は町に向けて走り出す。
だが彼等はその後ろにいる存在に気づくことは無かった。
「例の奴等が入った…作戦を決行せよ」

「ようこそ我が町へ!」
町に入ったとたん、二人は突然歓迎された。
疲れていた真はそれを好意的に受け取っていた。
「お、サンキュー」
「とにかく宿を取りたいんだが…」
「はい!でしたらこちらへ!」
元気な町人に連れられ二人は宿へと向かった。

「どうぞごゆっくりお休みください!」
二人は宿の部屋へと案内された。
部屋は綺麗で充分な広さだった。
「すごいなここ…こんなに広いぞ?」
「…あぁ」
この町にきてから、ヴェルモンの顔は険しくなっていた。
理由は簡単、あまりにも好意的すぎるからである。
沢山の町を知っているわけではないがそれでもこの町は異常だった。
「…すぐに出るぞ。付いて来い」
「んあ?いいじゃねぇか、もっとゆっくり休んでようぜ?」
だが真はそのようなことは気にしていなかった。
もとより彼は少し前まで普通の子供だった。
故に人の好意を疑うことなどするはずが無かった。
「いいから来い!」
「お、おい!」

「一体どうしたってんだよ!」
「この町は怪しい、さっさと出るぞ」
ヴェルモンは真を引っ張って入り口へと向かう。
真はその腕を振り払った。
「何なんだよアンタ!どうしたってんだよ!」
「いいから来いってんだよ!」
「わけわかんねぇんだよ!説明してくれたっていいだろ!」
「るせぇ!いいから来い!」
説明しないヴェルモンに対し、言うことを聞けるはずが無い。
真は宿へと戻ろうとしていた。
だが、その前に彼等を案内した町人が現れる。
「すいません…宿に戻ってくれませんか?」
「あ、今戻るとこ…」
「悪いがこれから行くから戻らんぞ」
ヴェルモンの言葉に残念そうにため息をつく。
「仕方が無いですね…みなさん、彼等を取り押さえてください」
気が付くと、町の人々が彼等を取り囲んでいた。
人々は段々と彼等ににじり寄ってくる。
「チッ…こう数が多くてはな…」
「ど、どうすんだよ…」

「『コスモファイア』!」
その時、突如人々に隕石が降り注いだ。
突然のことに驚いた人々は怯む。
その間に彼等は包囲網から抜け出すことに成功した。
「は、早く捕まえなさい!でないと…」
叫ぶものたちを尻目にひたすら町の中を駆けていく。
「こっちです!早く!」
その時、何処からか彼等を呼ぶ声が聞こえた。
その方向を見てみるとそこには紫色のトカゲのようなデジモンがいた。
「早く!皆に見つかってしまう前に!」
二人はその話を信じて路地裏へと向かった。

「ここまでくれば大丈夫です…」
彼等が案内された先、そこはとある空家だった。
中には案内したもののほかにも何人か隠れるようにしていた。
その中には傷つき動けないもの、そして子供までいた。
「一体ここは…」
「ってかアンタ誰だよ」
「あ、自己紹介が遅れました…僕はコスモモンです」
自己紹介を済ませるとコスモモンは話し始めた。
「実は…この町はあるものに支配されています。それは突然この町にやってきて町長を殺してしまいました」
「なるほどな…町のリーダーでもある町長を殺された恐怖からそいつに従っているというわけか」
「えぇ…僕たちはそれに反抗したのですがこうして傷つき隠れているわけです」
コスモモンはため息をつきながら彼等に目を向ける。
その目は未だ諦めることの無い強い目であった。
「お願いがあります…二人の力を、『貸して』ください」
「…『助けて』くださいじゃないんだな…」
「もちろんあなたたちにはその支配者を相手してもらいます。ですが…」
「まだ何かあるのか?」
コスモモンは苦い表情で暫く黙る。
だが彼は決心して話し出した。
「…奴は今人質を取っています。そのせいで皆も奴に従わされてるんです…」
「じゃあアンタ等は…」
「はい、私達は人質を解放します。そうすれば皆も…」
「そう上手くいくか?」
ポツリと、ヴェルモンが呟いた。
それは何か悟ったような、それでいて何かに絶望したかのような声だった。
「どういうことだよ…」
「どうでもいい。ともかく俺たちはその支配者を相手すればいいんだろ?」
「え、えぇ…」
「ならさっさと行くぞ。場所は?」
「え、えぇ…場所は…」

町長が住んでいた家。
そして今は『支配者』が根城としている家。
「…逃げたものは捕まえられたのか?」
「い、いえ…反乱民の邪魔が入り行方をくらましております…」
そこにいたのは町民の一人、そして右手に剣を持った丸い体をした機械がいた。
「チッ…とにかく早く探し出して捕らえろ」
「は、はい…」
町民が下がろうとしたそのとき、何処からか爆発音がした。
その音は段々近くなってくる。
「ななな何ですかこれは!」
「うるさい!敵襲に決まっているだろう!」
彼等がうろたえている間に二つの影が部屋に飛び込んでくる。
それはホーンドラモンと真であった。
「っと…ここか」
「で…お前が例の『支配者』か」
「えーと…よし、出た!」

DETA FILE
テッカモン。丸い体に大きな目と口、右手に"斬電剣"を持つマシーン型デジモン。必殺技は凄まじい切れ味の剣に電撃を纏わせ、敵の構成データもろとも真っ二つにする斬電剣。

「…ククク」
踏み込まれたはずのテッカモンだが彼等を見たとたん不気味な笑みを浮かべた。
「何が可笑しい?」
「クク…一体どれほどの奴が出てきたかと思えばお前達だけか…いくらオーガモンやセーバードラモンを倒したと言っても…数の差には対抗できまい!」
「さぁみなさん、出番ですよ!」
町民が叫ぶと部屋に沢山の人々が入ってきた。
皆、この町の人々である。
「この数…あなたに勝ち目はありませんよ…」
「フン…雑魚がいくらそろってきたところで…負けねぇよ」

一方、町長の家の地下。
そこに一人、コスモモンがいた。
これが彼等の作戦だった。
まずコスモモンが場をかく乱し、その隙にホーンドラモンたちが侵入する。
そしてホーンドラモンたちに意識が集中したところでコスモモンが地下に潜り込み人質を助け出す。
その作戦は見事に成功し現在コスモモンは人質が捕らえられている牢を目指していた。
「ここに…あるはず…」
暫くして、その場所を発見した。
中には数人の人々が捕らえられている。
皆からだが弱っており、元気が無いようだった。
「みなさん…助けに来ました。一緒にここから脱出しましょう」
突如やってきた救いの手を彼等は喜んで取った。

「フフフ…どうした?動きが鈍いようだが?」
そして沢山の人々と戦うホーンドラモン。
彼等を一思いに片付けることが出来無いため必然的に本気が出せない。
故に彼は苦戦し体力を消耗していた。
「フン…自分で戦えない奴が言うことか」
「そういう戯言はこの状況を切り抜けられたら言うんだな…さぁ、止めを刺せ!」
「了解しました」
「ほ、ホーンドラモン…」
人々がホーンドラモンに飛びかかろうとしたそのとき、ドアをぶち破る音がした。
その音の主は…コスモモン。
「みなさん、人質は助け出しました!もうあんな奴に従う必要は無いんです!」
意気揚々と叫ぶコスモモン。だが人々はただ戸惑うだけだった。
「な、なんてことを…」
「これで俺たちも終わりだ…」
「こ、殺される…」
「ど、どうしたんです!何で…」
「だから言っただろう」
その光景を黙ってみていたホーンドラモンが呟く。
「こいつ等に誇りなんてもんもうねぇんだよ…もうこいつ等に人質なんて関係ない。ただ自分の命があれば充分なんだ」
「そ、そんな…」
ホーンドラモンの言葉にコスモモンは愕然とする。
今まで彼等を信じてきた彼である。その反応は無理も無い。
「で…アンタ等どうすんだよ…まだやるのか?」
「さっきまでは『時間稼ぎ』の為に本気を出さなかったが…今度はそうは行かねぇぞ」
ホーンドラモンのにらみに人々は怯み一歩下がる。
もはや信じるものの無い彼等にとって恐怖は絶大なものだった。
「さぁ選べよ…今すぐ消えるか、ここで死ぬか」
「ひ、ヒィ!」
部屋から逃げるように出て行く人々。
気が付けばその部屋にはホーンドラモンたちとテッカモンだけが残っていた。
「な、バカな…こんなことが…」
「てめぇの敗因は唯一つ…あんな腑抜野郎どもを味方にしたことだな」
「グググ…ならせめて貴様だけでも!『斬電剣』!」
右手に持った剣に電気が纏わり、それを振り上げる。
だがもはや本気を出したホーンドラモンの敵ではない。
「後ろががら空きなんだよ…雑魚が!」
瞬時に後ろに回りこみ、その体をツノで貫く。
テッカモンは防御が出来ずにその場に倒れた。
「デジタルデータ…ロード!」
そしてテッカモンのデータはD・フォンⅡに吸収されデジタマだけが残った。
「ったく…これだからこういうのは嫌なんだよ」
その声は、『敵』のいなくなった部屋にむなしく響いていた。

「みなさん…本当にありがとうございました」
お礼を言って頭を下げるコスモモン。だがその声は暗かった。
「あ、いや…アンタはこれからどうするんだ?」
「そのことなんですが…僕も一緒に行ってはいけませんか?」
その言葉に頭を上げたコスモモンが答える。
『自分をこの町から連れ出してくれないか』と。
「…悪いが、それは無理だな」
「何故です?!危険だからとでも言うつもりですか!そりゃ貴方達に比べればそこまで力はありませんけど…」
「お前がこの町を出た後、誰があいつ等を守る」
コスモモンはハッとして後ろを振り向く。
そこにはあの隠れ家にいたものたちがいた。
「確かにこの町は腐ってる…だがお前のようにまだ誇りを失ってねぇ奴等もいるんだ…そいつ等を守らないでどうする」
「僕は…」
「…大切なものは命を張ってでも守れ…一度折れた誇りは二度と戻らねぇぞ」
ヴェルモンは呟きながら振り向いて前へと進む。
彼が守りたかったものはすでに無い。
彼の顔は依然として暗いままだった。

第4話 end
次回 ghost ~亡者~