その３、ノリがいいのも悪いのも
今日は三人揃って蒼田先生からたんこぶを塩漬けにされた翌日、全校朝会。球技大会レギュレーション発表、らしい。
「昨日はマジで死ぬかと思った……」
「災難だったな、三人とも。俺らは即家庭科室に冷やしに行ったから平気だったが」
「それもう少し早く言ってくれてればあんな目に遭わずにすんだのに……」
「たんこぶ引いたからいいんじゃない？」
「……結構非情なんですね」
「そりゃあ俺を影でこき使ってるぐらげふぉっ！」
「絵馬、口には気を付けなさい」
えみるが思いっきり絵馬先輩に蹴りを入れる、と同時に影で弥生先輩がくくっと笑った。
そして、急に幕が開くとステージの中央には秋華会長がマイクを持って仁王立ちしていて、更に頭の上には……校長。なんかミスマッチだけどそれは置いといて、ウサギっぽいマオ校長が下から差し出されたマイクに向かって
「おはようございまーす。本日は球技大会のルール他発表です。新春の行事なので盛り上がっていきましょー。ってなわけで、暮崎会長、どーぞー」
と、挨拶を述べてそのまま居座る。秋華会長の頭の上から降りる気はないようだ。
「そういうわけでルールは俺様が説明する。よく聞くよーに」「聞くよーに」
どこから取り出したのかかなり小さなマイクを持って校長が相槌を打つ。そのお陰で少し話がややこしくなったりしたけれどもまとめると弥生先輩曰くこういう内容になるらしい。
「競技種目はテニスのシングルとダブルスの混合で、参加者は職員及び生徒会役員は全員、一般生徒は各学級から最低一人の出場となっていて、予選は当日発表のドッキリ種目で１６人までふるい落とされる。魔法の使用は可能で、優勝者にはかなり豪華な賞品がある」
そろそろ説明も終わりに近付いてきたのか、ちょっとした注意事項に入っていた。
「……というわけでシングルスやダブルスに切り替わるときはトーナメントもシャッフルされる。出る羽目になりそうな奴は今の内に色々と祈っておいた方がいいかもな。あと、最後になるが、何かトラブルなんかがあったときはいつもの通り遠慮なく絵馬に回して構わんぞ」
それを聞いて絵馬先輩が露骨に嫌な顔をすると一瞬だけ秋華会長はこっちを睨んで、また何もなかったかのように
「以上、球技大会の説明だ。ちなみに当日は色々と自由が利くから楽しみにしてろよ」
と言って朝礼は終わった。
後から聞いたところ、ウチの学校の球技大会はいっつもそんな感じらしい。ついでに弥生先輩に会長のさっきの睨みの意味を聞いてみたところ、
「あんま文句言うなよ絵馬、いい加減にしないとまたぶっ飛ばすぞ－だそうだぞ」
と言ってまたくくっと笑った。勿論その言葉を聞いて絵馬先輩が顔を青くしたのは言うまでもない。
……もしかして絵馬先輩、今日は厄日ですか？
