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01 王子の受難

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01 王子の受難

目の前に立ちはだかる黒ずくめの魔法使いに向かい、俺は剣を構える。

「お前を倒し、姫を眠りから覚ましてみせる!」

「正義を気取った愚者め。姫は醜い現実など望んではいない。夢の中の世界で幸せに暮らすことを望んでいるのだ!」

「お前の見せる夢などただの幻想だ!俺は、俺は、俺わぁー……」

……えーと、何だっけ。

「はい、カットカットカーット!ですの!」

そう叫びながら近付いて来た蒼田天は、俺の額に銃口を突きつけ、

「絵馬さん!何度トチれば気が済むんですの!それともそのユルみきった脳みその風通しを良くして欲しいんですの!?」

その迫力に、俺は思わずホールド・アップ。この学校は、いつから銃器携帯を許可するようになったんだ?

「まあ良いですの。王子が出ないシーンからやりますの」

天に追い払われ、舞台袖に引っ込もうとした俺を呼び止める声がしたので振り返ると、魔法使い役の四谷壱が冷凍ビームの視線でこっちを見ていた。四谷は俺の肩をぽん、と叩くと、

「絵馬。お前もしかして、台詞が覚えられないんじゃなくて読めないんじゃないのか?台本を貸してみろ。僕が読み仮名を振ってやる」

「それは、どうも、ご親切に……!」

俺は精一杯の作り笑いを浮かべ、乱暴に四谷の手をどかす。さも本気で心配してるような口調がムカつくね。──そう、俺の憂鬱の原因は、クラスでの出し物である『ミュージカル劇・眠れる森の美女』。俺はなんと王子役を仰せつかっている。

「ドンマイ絵馬くん!壱の嫌味なんて気にしなくていいからね?」

舞台袖で落ち込んでいた俺を慰めてくれるのは、オーロラ姫役の六橋はじめ。俺は情けない気分で台本を広げる。この劇は、敵役が魔女に代わって魔法使いだったり、その魔法使いが姫に恋していたり、とオリジナル要素が含まれている。

「……ところで、絵馬くん」  「はい、何ですか?」

名前を呼ばれて台本から顔を上げると、六橋さんが微妙な表情で俺を見ていた。彼女は「あの、その」とか口篭りつつ、ポケットから何か光るものを取り出した。

「それ……ティアラ、壊しちゃったんですか!?」

「わあああっ!どうしよう!?」

それは姫の衣装、頭に付けるティアラだった。真っ二つに割れているが。

「絵馬くん、直せる……?」

うっすら涙の浮かんだ目で、上目遣いに俺を見つめる六橋さん。それは反則的に可愛いね。

「まかせて下さい」

俺は台本に鉛筆で円を描くと、その中にティアラを置く。

「壊したのはいつですか?」 「えっと、5分くらい前、かな?」

5分前、ね。俺は円の端を指でつつく。すると円内に光が発生し、次の瞬間、パキンと小さな音を立てティアラが修復された。

「えっ、嘘。すごい」 六橋さんは目を丸くして歓声を上げる。

「わあー、ありがとう絵馬くん!」

そして、満面の笑み。犯罪的に可愛い。しかし、こんな可愛い子の彼氏が、あの忌々しい黒魔道士四谷だなんて、世の中は間違ってるね。どんな黒魔術でこの子をたぶらかしたんだ、畜生。

ありがとう、と何度も繰り返す六橋さんを複雑な気持ちで見ていると、

「よっ、絵馬」

聞き慣れた声がして振り向くと、黒いマントを羽織ったカイ先輩が立っていた。後ろには弥生先輩もいる。

「先輩、何すかその格好」

「衣装だよ。うちのクラス、お化け屋敷やるんだ。俺はドラキュラ」

成程ね、ハマリ役だ。ま、吸血鬼ならカミカミの方がお似合いだけど。俺はあの偽善的な笑みを思い出しつつ、尋ねる。

「で、何か用ですか」

「……警告しにきた」

口を開いたのは弥生先輩だった。

「近頃、校内に異質な魔力が漂っている。気を付けた方がいい」

何だそりゃ。意味が分からずに黙っていると、

「それと、えみるから伝言」  「あいつから?」

弥生先輩は、無表情にほんの少しだけ笑みを浮かべ、

「絵馬が王子だなんて、嫌──だそうだ」

「うるせえ黙れ──と伝えて下さい」

彼女は「了解」と言うと、カイ先輩と共に去っていった。──つーか、嫌って何なんだよ。俺だってこんな役誰かに代わって欲しいっての。天と四谷による下は大火事上は吹雪のダブル攻撃なんて、もう受けたくないんだよ俺は!

(つづく)

 

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