探偵は魔境にいる

+ 一冊の本が、ボロボロになったビルの片隅に置き去られている。
一冊の本が、ボロボロになったビルの片隅に置き去られている。
「……それで、貴方はこれで満足なんですか」
「うん?」
「僕に全てを押し付けて。貴方の全てを投げ出して。誰かが救われたところで、これでは、貴方は何も得ることがないじゃないですか」
「理屈っぽいな、お前。いや、そのくらいの方が探偵らしいんだろうが」
何処でもない場所で、無表情で問いかける男に対して、問われた男は、ただ微笑んでいた。
「ましてや、僕が誰かを救えるとも思えない。理想の外殻で作られた僕には、誰かを掬い上げられるような中身なんてない」
「お前、結構悲観的なんだな」
「その僕を作り上げたのは貴方と彼でしょう」
+ 黒い表紙の本に近づいてみると、表紙には白文字で『日誌』と書かれていた。
黒い表紙の本に近づいてみると、表紙には白文字で『日誌』と書かれていた。
「そりゃ、悪いとは思ってるぞ。でもさ、これ以外に方法なんてなかったろ? 今更だよ」
「最初の問いに答えてください。そうするしかなかった、などというお題目など今は問題にしていない」
「探偵ってしつこいんだな……」
のらりくらりと逸らかす男に対して、男は無感情な視線をただ向け続けていた。
「はあ、いや、そりゃ、満足なわけないだろ」
「だったら」
「でもさ、そういうもんだろ? そりゃ、探偵事務所を開いて凄い探偵にはなれなかったのは……約束破ることになるし、
他にも色々やりたいことはあったってのは事実だが。でも、なんでもかんでも夢が叶うんだったら探偵なんて職業、なくなるだろ」
頬を掻きながら、男は笑った。平穏な日々を自ら手放したというのに、それは虚勢でもなんでもなかった。
+ 手に取って観察すると、それは分厚く、長い期間に渡って使用されたもののようで紙がくたびれているようだった。
手に取って観察すると、それは分厚く、長い期間に渡って使用されたもののようで紙がくたびれているようだった。
「俺はそれなりに頑張って、生きて、死んだ。それはまあ、そういうもんだ」
「僕はそんなの、認めたくない」
その一言に男はポカンと口を開き、しばらくしてからクスクスと笑い始める。
「何か可笑しいことを言いましたか、僕は」
「いや、そうじゃなくてさ。……なんつーのかな、安心したってだけ」
「というと」
「中身がないわけないって分かったってだけだよ。俺と同じ気持ちがあるんだろ? だったら……だから、お前に託すんだ」
笑い終わった男は、真剣な表情で『探偵』に向けて語る。
+ 開いてみると、殆どのページが文字で埋め尽くされていたが、最初のページだけは違った。
開いてみると、殆どのページが文字で埋め尽くされていたが、最初のページだけは違った。
「俺は死ぬけど。でも、それで終わりじゃない。俺の命をお前へ渡して、それは続いていくんだ」
「その結果を、貴方は受けることがない。先程からその話を、」
「いいや。お前が受け取ってくれれば、俺は安心して眠れる。それが何よりの報酬……って奴だ」
「結果がどうなるか分からないというのに、ですか」
「今までのやり取りで、大体分かったからな。アレだ、『探偵のカン』……って奴でな」
「そうですか」
「……ツッコまれないと恥ずかしいのは自分でもどうかとは思うんだけどな! そんな見て頷くなよ!」
こほん、と男は咳払いをして、
「お前にバトンを渡すから。繋いでくれ。終わらせて、皆を次へ繋げてくれよ。
俺には直接、それができないけれど。お前のためにそれができるのなら、少しは、約束守れたかな、って思えるからさ。
……頼むよ、『探偵』。何処にでもいる馬鹿から、お前への依頼だ」
「僕は、」
「お前ならできるよ。お前みたいな、一生懸命な奴なら。中身がないなんてのも、その内きっとどうとでもなる。……多分な?」
『探偵』は、
+ そこには、『探偵はここにいるんだ』と、乱雑な走り書きだけが残されていた。
そこには、『俺はここにいたんだ』と、乱雑な走り書きだけが残されていた。



『探偵』からバトンを受け取って、そうして魔境都市を終わらせた。



【探偵は魔境にいた】


職業:探偵

テーマソング:リンカーネイション 歌詞

「何卒、後はよろしくと」

「主役の残骸を踏みつけて」

【最終走者は走る、結末へと】

『終わりにしようか、ここらでさ』


+ 読み込んでみると、日誌の殆どがこの男の活動についてであるようだ。

氷堂(ひょうどう/Hyodo)

年齢:青年期 職業:探偵 性別:男 レベル:8 メイン:異能者 サブ:魔道博士 エクストラ:探偵 追加サブ:マグス 種族:混血
参戦回数:5回 身長:182cm 体重:78kg PL名:ポポカ
テーマソング:Code歌詞 「僕はここにいる 今を生きている」
キャラクターシート アルカナ:XXI.世界(The World)――成就、完全、完成。それ故に、不完全。

「あなたがどう思っていようと、僕は興味も関心もない。ただ、探偵としての責務を果たします」


外見
身長が高く鍛えられた体と、黒い外見と紅い両目、そして整いすぎた顔が人に圧迫感を与える男。
その眼差しは常に一点、前へと向けられている。全てを解き明かしてしまうような瞳は、向けられた者にとって嫌悪感の対象となる。
なにより、あらゆる環境に対して一切微動だにせず表情を変えることもないため、彼の存在は多くの場合、異物となる。
常にスーツを着用し、他の何かを身に着けていることがない。最近、事務作業中にリボンをつけていることがある。

人格
根幹はただの天然ボケだが、それ以外の全てが奇妙さの塊のような、異常人物。
何かを好きになる、関心を持つというようなことがまるでない。
何かを嫌いになる、無関心を務めるというようなことも全くない。
彼が個人の感情で動くことはないが、彼は他人の感情を殆ど勘定に入れない。
にも関わらず、彼は他人が困っている時に積極的な介入を行う。彼はその動機を「探偵としての責務」といった言葉で説明する。
彼は「探偵としての心得」に従って依頼を受け、自身の判断でその依頼を絶対に遂行しようとする。
彼は「探偵」という言葉に何らかの観念を持っているようだが、それを語ることは少ない。

彼はタフでもない。優しいわけでもない。

来歴
彼の過去を知る者は数少ない例外を除いて存在しない。
ただ、彼は自分の過去を「この地でずっと探偵として活動をしていた」と語る。
「家族は存在しない」「名前は既に存在しない」と、まるでフィクションのような話をする。
真実を語っているのか、隠しているのか。それを知る者は彼と、彼の部下だけだろう。

+ 部下

「あの真っ黒お化け! 私にこんなサービス残業させるとか、本当絶望的! っていうか手伝ってくれていいと思うんだけど!?」


彼の部下として働いている、見た目ギャルの少女。
彼女の姿を見た者も、数えるほどしかいない。
彼女は事務所の奥の一室で、何らかの作業を行なわせられているようだが……。

PickUp

「僕は探偵です。依頼を遂行するためなら、なんであろうとなんとかします。だから、そう慌てるような事態ではありませんよ」

彼が探偵として持つ能力は無数にある。厳密に言えば彼は『探偵として必要な能力をほぼ全て』持っている。
そして彼は何にでもなれるだけの能力を持ちながら、それを探偵としてしか活用しない。
自身の身を守るための魔法の才。情報を全て解き明かす知能。話術。身体能力。
彼にも対処できない事象に対処できる仲間を得る幸運。
『探偵権限』。『探偵劇場』。
結果として、その全てが彼を探偵であると証明し続ける。

彼は物語の主役のように、スポットライトを強引に自身の元へ引き寄せる。
彼は物語を動かし、終わりを齎す。それは魔境都市であろうと例外ではない。
彼はこの魔境都市を陳腐な探偵小説にするようにそう動く。

+ 箇条書きだらけのページ

.   (     /    )

年齢:青年期 職業:探偵 性別:男 レベル:7 
メインクラス:異能者 サブクラス:魔道博士 エクストラクラス:探偵 追加サブクラス:マグス 種族:混血
参加回数:4回 身長:182 体重:80kg PL:ポポカ
キャラクターシート

「アンタまた記入サボったでしょ! やり忘れたとか言わせないからね!?」
「そうですね。単純に記入しなかっただけです」
「開き直ってんじゃないよこの真っ黒お化け! 公式文書なんだから記入漏れは厳禁!」
「苗字だけなのはかまわないんですか?」
「……それはまあ、アイデアとか……って、だから自分で考えりゃいいだけの話でしょ!?」
「そうですね」

氷堂 (ひょうどう/Hyodo)


「ここは何を書く欄なんですかね。自由記入とのことですが」


外見
見たままです。

人格
探偵です。

来歴
この街で探偵をしていました。


「ちゃんと書けって言ってんだろうが。毛引っこ抜くぞ」
「はあ、そうですか。無理だと思いますが、そうしたいならお好きなように」
「ああもう! 依頼以外だとアンタがこうだって知ってるやつどんくらいいるんだか!」


彼は探偵である
彼はその黒髪を腰まで伸ばしている
彼の両目は紅い
彼は殆どの場合スーツを着用している
彼はとても背が高く、細身でありながら筋肉質である
彼は全体、また部分として非常なまでに整っている
彼は常に、懐に銃を忍ばせている
彼のネームタグは首にある
彼は探偵である

彼は探偵である
彼は探偵としてのルールに基づき判断を行う
彼が興味、関心、好意、敵意を持つことはない
彼は対象が興味、関心、好意、敵意を持つに値するかどうかを判断することはできる
彼はあまり自分のことに頓着しない
彼は習慣として喫煙、飲酒を行う
彼は探偵である

彼は探偵である
この街で探偵事務所で働いていた
その事務所は村雲市にあったが、壊れた看板だけを運んで帯内市へと移転した
彼の痕跡はそれ以外にない
彼に名前はない


彼は探偵である

+ 走り書きだらけのページ

探偵 (探偵/探偵)


「やる気なっ!?」
「僕を表すならこれで足ります」
「いや一般名詞一般名詞! アンタ一人で全探偵背負わないでよ! 迷惑だから!」
「……では」

来田芥 (クルタ カイ/Kuruta Kai)


「んー、悪くはないけどさ……芥って。ごみとかそういうのでしょ? 名前としてどうなの」
「子供に悪い名をつけ、連れて行かれないようにする風習はそう珍しくありませんよ」
「アンタもう子供って年じゃないでしょ。生活能力は子供以下だけど」
「……では、大人らしく」

鳳梨 (ホウリ/Houri)

「へー、洒落てる感じ? 意味は……パイナップルのことじゃん! なんでフルーツを、それもよりによってパイナップル!?」
「よりにもよって、とは。僕は嫌いじゃないですし、花言葉は”完全な人”ですので、大人らしいかと」
「いやいやいや……パイナップルでしょ? なんか南国でバカンスしている野郎みたいじゃん。格好悪いよ」
「果物差別ではありませんか? 僕は我ながら気に入りましたが」
「でも果物の名前って絶対女難来るでしょ。アタシ姓名判断別に詳しくないけど」
「なるほど、では」

推理力満太郎 (スイリリョク ミチタロウ/Suiriryoku Michitarou)


「あ~っ! ふざけた! ついにおふざけ入った!」
「そもそも必要のないものですから。ツマラナイ作業です」
「もういいよ! アタシがつけるから! なんでもいいんでしょ別に!」
「はじめからそうしてください」
「なんで親でもないのにわざわざ……」

氷堂 (ひょうどう/Hyodo)

年齢:青年期 職業:探偵 性別:男 レベル:5 
メインクラス:異能者 サブクラス:魔道博士 エクストラクラス:探偵 追加サブクラス:マグス 種族:混血
参加回数:0回 身長:平均 体重:平均 PL:ポポカ
キャラクターシート

「してその心は」
「氷みたいな仏頂面でムカつくくらい堂々としてる」
「なるほど」
「あ、これとりあえずの名字だから。名前は自分でつけなさいよね!」
「考えておきましょう」



  「                       僕    は   
  探  偵としての責務             を果    た   
  す  。 そ れ だ            けで  す。」と彼は言
う。彼の外見 を 説 明           す  る こ  と  は
  簡   単  で あ             り困 難  で   
  あ  る。 長く伸ば             し  た髪は無造作で
  セット   し               てい  る よ  う 
には見  えない。スーツ             を  常 に  着 
  用    してい               る  た  めに  
  一   見する と              黒 い人  型の
  塊  とい う  印             象 を受 け  る。
 る。     だ                が   そ    う
                         
                         
                         
   し   た                 
   要   素とは真逆                   に
  彼は   常                 に     清   
  潔  さを維持して              い  る。スーツも 
 頭髪  を    含              め     た身  
 体も  汚れ一つ見当              た     ら   
な い  。    そ              こ     ま   
  で  行くならちゃ              んと    髪   
  も  切    れ              ばい  いのに。  
  つ  いでに彼はと              て  も  整った顔
  立   ち  を               し   ている   
  。 眉目    秀麗                       
    と                    
                         
                         
                             い     
    う                       奴      
    だ                    。ここで人格の話に 
     移                   る       が 
     、  当然               こ       ん 
     な外見                 の奴がまともな社会 
    性                    を       持 
  って                     いるはずがない。一 
  言                      で       言 
  えば                     浮       世 
   離れしている、と              いうやつだ。常識を 
                         知       ら 
                         
                         
                         
      な                     いと     
      い                   うわけではない  
 のだが、それよりも自身              の     信  
 条         を              重視する。彼に  
 と って、彼曰くの 「              探     偵 と
      し                   ての役目」という 
   も  の                   は     彼以 
   外  の誰もの考え              よりも優先する  
  べき  こ                       と と   
  いうわ け                     だ。  た  
 だ、 それを                   除け    ば  
 彼    は非常に付き             合    い易い    
                         
                         
                         
    人   間                
  である。常に理性を働                か      
      せ                  、極端な振る舞   
  いでない限り万人を平                等            
      に                    尊重し     
 、また自身の信条に反さない             限り 協調 を忘 
    れ   る こ              とも   無い。  
 まあ、時々天然じみたボケを           口  にする    
    が   、 そ                こ  も    
 含めて彼    がそ                う       
    悪  い人間でな              いという証左
   でも あ   る。             
                         
                         
                         
                         
    能                    
   力。                    
   彼に                    
   は謎                    
   も多                    
   いが                    
   探偵                    
   とし     て              
    十   分な               
    能力を保持                
                         
                         
                         
                         
                         
                         
   していること。銃              
 を媒介   と                 
      し                  
     た                   
     攻                   
     撃                   
     手                   
      段                  
       を所持               
                         
                         
                         
                         
                         
                         
  し                      
  て     いる               
  こ      と               
  は       確              
  か       で              
  あ       る。            
  彼は  彼                  
   が そ                   
    うす                   
                         
                         
                         
                         
                         
      べき                 
   と判断するこ               
      とを                 
     行う                  
    彼の来歴。               
   この街   が魔              
  境と      化              
    す前か   ら   ずっと         
    こ  の 街    で 探        
     偵業を営     ん で        
              いた。         
―――――――――――――
まとめ
外見は髪が長くてスーツを着ている黒一色の男。
性格は天然ボケで自分勝手だが協調性に満ちている。
能力はキャラクターシート参照。
来歴は現地民の探偵。

+ ページとページの間に、メモが挟まれている。

朝陽京一(あさひ・きょういち)

年齢:青年期 職業:探偵見習い 性別:男 レベル:1 メイン:異能者 サブ:探索者 エクストラ:探偵 追加サブ:- 種族:混血
参戦回数:0回 身長:180cm 体重:67kg PL名:ポポカ
テーマソング:リビングデッド・ユース 歌詞
「僕はせめて味方でありたい 信じられないならそれでもいい」
キャラクターシート アルカナ:0.愚者(The Fool)――自由、純粋、可能性、発想力。そして転落。

「そんな顔されちゃ、放っておけるわけないだろ! 手伝わせてくれ、きっと、なんとかできるはずだ!」


外見
身長は高いが、あまり鍛えていないためやや頼りない印象を与える男。
だがその眼差しは常に前を見据えており、相対する者に奇妙な説得力を感じさせる。
もっとも、リアクションがヨすぎてころころと表情が変わってしまうため、それを意識させる機会は少ない。
スーツが苦手で、私服かシャツのみで過ごすことが多い。

人格
別段取り立てて語るようなところもない、普通の男性。
強いてあげれば、探偵になることを決意するほど探偵小説が好きであること。
そして目の前で困っている人を見過ごせない甘ったれであるということだろう。

来歴
曽祖父が魔族であった程度で、魔法とはあまり関係のない、ごく一般的な家庭で生まれてきた。
両親が共働きのため、外で友達と遊ぶ以外は本を読むことが趣味だった彼は、ある日探偵小説と出会う。
”強さ”をもって誰かと戦うのではなく、”想い”や”思考”で誰かを理解し、誰かを助ける彼ら。
謎を暴き、そして隠し、肉体的には弱くとも(強いものもいるが、それでも殺せないことではない)信念によって事件へ介入する彼ら。
そうした彼らの魅力に惹かれ、探偵を志すようになり、とある探偵事務所に所属することとなった。

中でも好きなのは『フィリップ・マーロウ』。
どんな理不尽にあっても、彼は正しいことをする。自分が正しいと感じたことを。そこに妥協はない。
自分もそうなりたい、と彼は思っていた。
……そうした理想が彼を時々奇妙な事件へと導き、苦しめたが、問われれば彼はきっとそれを笑って語るだろう。

PickUp

「俺は探偵だ。きっと、なんとかしてみせる。……だから、泣かなくていい」

彼が探偵として持つ素質に、「情報の組み立て」というものがある。
これは既存の情報を把握するとともに解体・分析を行い、見落としなく繋げ合わせて一つの絵を描く能力だ。
頭が良くない彼にこのような芸当ができるのは、ひとえに「自身の脳を操作する」という異能を持っているからである。
本人も無自覚なほどに微弱な力だが、極限まで集中したとき、彼は自分の意のままに思考を行える。
雑念を排し、ただ依頼人のために事件をなんとかしようとした時、彼はフィクションめいた「探偵」の力を使うことができるのだ。
もっとも、彼には多数の情報を集める力も、情報が本物かどうかを精査する能力もない。
限定的状況を除いて、彼は他人の助手をする一般人、凡人としてのワトソン役にしかなれないだろう。

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最終更新:2018年02月13日 14:39