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夜明け・ガリ卓
夜明けはきの卓
夜明け飛鳥卓/神楽坂学園卓
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夜明け梅酒卓/新世界卓
黄昏の門
学園卓V3
夜明け2015卓/十四夜会卓
夜明け2015卓/学園戦争卓
夜明け2016卓/悪徳の街
夜明け2016卓/水の都
夜明け2016卓/空島
夜明け2017卓/学園都市
夜明け2017卓/魔境都市
夜明け2018卓/悪徳の街2 色彩戦線
夜明け2018卓/常夏島
夜明け2019卓/大魔城学園
夜明け2019卓/戦国劇場卓
夜明け2019-2020卓/次元旅団
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+ | データ |
アイテムデータ
├消費アイテム ├道具・乗り物 └装備品 ├通常武器 ├通常防具 ├マジックアイテム:片手剣 ├マジックアイテム:両手剣 ├マジックアイテム:槍 ├マジックアイテム:斧 ├マジックアイテム:短剣 ├マジックアイテム:弓 ├マジックアイテム:盾 ├マジックアイテム:鎧・服 ├マジックアイテム:装身具 ├マジックアイテム:特殊・砲 └マジックアイテム:銃と魔弾 |
+ | 久々利の花嫁修業 |
夕闇の交差する街、鬼灯市。
かつて百鬼夜行との戦いによって傷を受け、それでも尚賑わい続ける人と妖の根付く街。 激動の冬を終え、訪れた春を十字に区切られた桜並木が歓迎する。 時は三月。高校に通う3年生は卒業の季節であり、2年生はこれからの進路を明確にしていく時期でもあった。 それは、十四夜会として活動していた姫神久々利にとっても例外のない話であった。
「私の進路……ですか?」
高校の教室で、久々利はきょとんとしながら声を上げる。 3月も半ば近くまで過ぎ去り、直に訪れる春休みを目前へと控えたある日の教室。自分の席に座っている久々利の周りには、数名の女子生徒が集まっている。 「そうそう。姫神さんは魔法使いやってるんでしょ? 続けるのか、それとも頭いいから大学行くのかなって話題になってさー」 髪を金に染め、爪の一枚一枚に精緻なネイルアートを施した女子生徒が代表して受け答えを行う。あからさまにギャル風の印象を与える少女だが、スカートの膝丈など校則に関連する部分はギリギリのラインをしっかりと守っているあたり、こう見えて意外に真面目なのかもしれない。 むしろ、リーダー的風格を持つ彼女がクラスの女子を取りまとめているからこそ、大きな問題が起こっていないことをクラスの事情にあまり興味のない久々利でも知っていた。姉御肌、とでもいうのだろうか。少なくとも久々利に対する質問に悪意の色は伺えない。純粋な興味で聞いてきているようだ。もしかしたら心配してくれているのかもしれない。久々利はそんなことを考えながら、返答する。 「そうですね。少なくとも進学は考えていません。家庭的な事情もありますので……」 「ふむふむ。もったいないねー」 「えぇ。だから今は魔法使いとしてお金を貯めて」 「貯めてー?」 「弟の学費と結婚費用にしようかと思っています」 「おお、弟想いだねー。今から弟さんの結婚まで考えてるとか」 「あ、結婚は私のです」 「あそっか」 「はい」 沈黙が教室の中に舞い落ちる。 直後「「「どえぇぇぇぇっ!?」」」っと部屋中に叫び声の多重起動が響き渡る。あまりの大音量に電線に停まっていたスズメが一斉に飛び去った。 「誰と!?」「いつ!?」「マジで!?」「気が早すぎない!?」などと、矢継ぎ早に女子集団が質問を繰り返す。クラスの中でも美人だが物静かで最もそういった色恋沙汰とは無縁に思える……いや、考えてみれば他人の色恋沙汰には意気揚々と首を突っ込んできたが、そんな彼女に特定の恋人(しかも結婚という単語が即座に出てくる)がいるなどとは考えの外だったのだ。 「え、その……あの?」 一方の久々利は目を白黒とさせながら勢いに圧倒されている。 彼女としてみれば、このぐらいの年頃の少女なら誰かと付き合って、結婚の約束をしているぐらいはおかしくないんじゃないかという(夜会基準の)思考に毒されきっている身だったので、これほど想像以上の反応が来るとは思っていなかった。ほんの少し前の彼女ならば隠していたかもしれない。だが、主に誰とは言わないが親友の14歳の今代クシナダや、同じく14歳の年上彼女持ちの夜鷹の変化、ひどいことばかりする自称化け物の2歳の恋人という甘い状況を日常として見続けていた彼女は、その辺の常識がちょっとずれてしまっていた。あと久々利は最近知ったがツヴァイと霧とか。 「「「お! し! え! て!」」」 そんな混乱中の久々利が、そういった恋愛事情に興味津々の女子高生たちの追及を逃れられるわけが……なかった。
そうして、少女たちが久々利から得た情報は以下の通りだった。
・世界一かっこいい ・彼氏は7歳年上 ・現在魔法使いだが、今後の職は未定 ・男の友人が多い(本人は友人と認めたがらない) ・執事服と着物が似合う ・眼鏡も似合う ・最近いじわる ・やっぱり宇宙一です これらの情報を得た少女たち、そして教室内で聞き耳を立てている級友達は一つの結論へと到達する。 「これ騙されているのでは?」と。 純朴な女子高生を騙して貢がせようとしている悪辣なホスト風の輩なのでは? と。 質問を始めた直後はただただ狼狽えながら返答するだけだった久々利は、時間が経つにつれ高揚したようにその彼氏のいいところを自分から話し続ける、というよりも明らかに惚気続けている。これを聞くほうが砂糖を口の中に突っ込まれたような甘い感覚を覚え始める。 「あの、姫神さん?」 「はい! 何でしょうか?」 代表格の少女が、仲間たちの「あなた言ってよ」「いや……これいえる?」という空気と視線に耐えられずに未だ続けられていた惚気話を打ち切り、話しかける。 「その人がいい人なのはわかったけど、その、大丈夫?」 「はい? 何がでしょうか? 私は幸せですよ」 「えー、その、何か金銭を要求されてたりはしてない……?」 「されてません!!」 机を大きく叩いて立ち上がる久々利。うっかりなところはあるが、元より頭はよく人の心の機微に敏感な彼女だ。少女たちが何を言わんとしているかはすぐに察しがついたらしい。 「ク……滝瀬さんはそんな人じゃないんです!」 「いや、それはその、ね?」 普段おとなしい久々利の激昂した姿に思わず一歩下がりそうになるが、そこは立場というものがあるのだろうか。それとも彼女を放っておいたらヤバイと判断したのだろうか。臆しながらも話を続ける。 「ひ、姫神さんとその人が、釣り合う感じとはちょっと思わなかった、みたいなところがあってつい……ね?」 彼女としてはあくまで「年も離れてるし、まさかみたいな」という外部からの意見に過ぎない。だが、久々利だけは全く別の意味で捉えてしまった。 「私と滝瀬さんが釣り合わない……?」 ふらり、と久々利は席に座りなおす。まるで幽霊のようにゆっくりと、重力が仕事をしていないように。 「あ、姫神さん……?」 「……すみません。少し一人にしてください」 あまりの急行直下な久々利の態度の変化ぶりに、代表の背後の数名がひそひそと話し声を立てる。 「あーうん、こっちもいろいろ悪かったし、疲れさせちゃったかな? またね!」 そんな様子を気にしてか、代表の少女はその数名を引き連れてそそくさと去っていく。彼女としても心配ではあるが、ここは下手に触れるのは危険だろうと本能が囁いていた。クラス内の揉め事を何度も押しのけてきた経験の為せる勘であり、彼女はそれを信頼していた。気遣いもそこそこに、その場を離れる。 そして、一人残された久々利は放心を受けたように椅子に座り込みながら、両手で体を抱えて呟く。 「……私は、滝瀬さんに相応しい花嫁になれるんでしょうか?」 呟きに答えるものは、その場には誰もいなかった。
甘味処『はなのき』
日の落ち始めた昼下がり。花ノ木倫太郎改め花ノ木リンネは『はなのき』2階の茶室で一人の女性と相対していた。 その女性の名前はもちろん姫神久々利であり、リンネとしてはあまり見覚えのない制服姿を大仰に褒め称えながら話を聞く姿勢に移る。 時をさかのぼること少し前。リンネはいつものように『はなのき』にて花ノ木夫妻の手伝いをしていた。 夕闇通りの近くの学校が終わり、学生客が増えてさあこれから忙しくなるぞといったところで久々利は姿を現した。 リンネが営業スマイルで接しに行ったところ、久々利は「相談に乗ってくださいリンネさん!」と大声で叫び、ほぼほぼ強引にリンネを連れて慣れた足取りで2階の茶室へと向かっていったのであった。客として来ていたのであろう、狐耳の少女にして百鬼夜行の総大将はニヤニヤと笑ってその様子を眺めていた。 そして至ること現在。神妙な様子の久々利に対して、リンネは『はなのき』のエプロンを外して座りながら問いかける。 「それで、どうしたんですか久々利さん。こんな唐突に」 「花ノ木さん……クルトさんに相応しい花嫁になるにはどうしたらいいでしょうか!」 その答えを聞いたリンネは、目を丸くしてげほげほと咳き込み、心底可笑しそうに笑って。 「ふうっ。一体何かと思ったら。 今のままでも、久々利さんは世界で一番滝瀬さんに相応しい女性ですけど、そうですね……」 ご存知の通り、ここでのリンネは久々利やクルトのためなど欠片も考えやしない。 彼の脳裏は全力で『久々利に何を提案したら面白いものが見れるか』へと向かっていた。十四夜会で蓄積してきた経験と『専門知識<弥生来人>』が弾き出した結論は―― 「……クルトさんはこれまでの人生の長きを執事として過ごしてきましたからね。ひょっとしたら、久々利さんにも仕え人としての延長線でつい接してしまうこともあるかもしれません」 「でも、旦那さんとお嫁さんというのは対等な関係であるべきです。それは良くない。」 「ここはひとつ、久々利さん側からもクルトさんにお仕えしてみるというのはどうでしょうか? 立場を変えて、趣向を変えてみれば。次第にフラットな関係を導けると僕は思います。」 「そう、試しにメイドさんになってクルトさんに接してみましょう!」 この時のリンネの笑みを見たら、おそらく大多数の人がかわいらしい子供の笑みという感想を抱くだろう。だが、リンネのことをよく知る宵草から見れば「透き通った闇色の笑み」と思うのではないだろうか。そして残念なことに、久々利はリンネのことをよく知りながら「かわいらしい笑顔」と表現する女性だった。 「対等……なるほど! 哥津己さんにメイド服を借りてきます! ありがとうございます!」 本気の顔でそう答えた。晴れやかな笑顔だ。一寸の疑いも持っていない。 「いえいえ。僕も久々利さんのお役に立てるなら光栄です」 早速とばかりに席を立ち勢いよく頭を下げる久々利に対して、罪悪感など欠片も持っていないといいたげな表情で久々利に対して手を振るリンネ。 「では! 今度また食べに来ますね! ありがとうございましたっ!」 1階へと降りる階段でまた礼をして、姿が見えなくなるまで片手をぶんぶんと大きく振りながら久々利は去っていく。 「またのご利用お待ちしていまーす」と定型通りの文句を告げて。 彼は滝瀬の狼狽える姿を想像し、一人嗤っていた。
鬼灯市某所
「クルトさんに相応しい花嫁になるにはどうしたらいいでしょうか!」 おそらくはアパートかマンションの一室だろうか。暗い部屋に一声、久々利の声が響き渡る。 問われている人物の姿は、奇妙としか言いようがない。 風呂上りでも無いようなのに、バスローブを着込んで豪奢な椅子に座り片手にワインを持ち、口には葉巻を咥えている。 だが、さらに輪をかけて奇妙なのは顔に付けた仮面だろうか。赤い線の走ったような模様を持つ仮面をはめ、久々利の言葉を聞いている。 彼の名は鑢ヶ縁津。忍者である。それと同時に、滝瀬について深いかかわりを持つ男であった。 なお、今現在なぜバスローブを着ているのかは不明である。 彼は、久々利の言葉を聞いて……無言で自らの腹をさすった。 「……はい?」 久々利は、そんな彼の行為が何を意味するのか理解できずに疑問符を浮かべ、小首をかしげる。 「滝瀬もまあ子供の顔が見たいのではないかね……」 津はそれだけ呟き、口に葉巻を咥えたまま器用にワイングラスを傾ける。 久々利はしばしの間、何度も津の言葉を反芻するように目をぐりぐりと回していたが、やがてその意味をとらえたかのように顔を真っ赤に染める。 「な――な、なななななななななななななななななにを言ってるんですかぁ!?」 指を津に向かって突き刺しながら上下に振りまくる。かなり動揺しているようで、ずずずずと後ろに10歩近く下がり、壁に背を押し付ける。 「早いってこともないだろ?」 仮面で表情を読めないままにワインを飲み干す。葉巻を咥えたままで。 「い、いや、その、もう少し二人の時間を過ごしたいな、というのもありますけど、それ以上に責任に対する不安があって、そもそもそういう行為はやっぱり私たちにはまだ早いというか、段階を踏んでという話がありまして、ほら、リコリスもいますから! …………でも、本当に滝瀬さんもほしいん、でしょうか、子供」 最後の一言は自分に向けて問いかけるように零しながら、久々利は片手を胸の前に持ってきてぎゅっと握りしめる。 かくいう津は、口元だけがにんまりと笑っている。 「……え、えと、参考にします! ありがとうございましたー!!!」 久々利はそのまま逃げるように部屋を後にする。参考にする、と言いながら心に新たな痛みと心地よさを抱えながら。 津は、残された部屋でただ一人で何事か呟いた。それは誰にも聞かれることなく消え去った。
鬼灯市のとあるアパート
その一室で、二人の少女が向かい合って座っていた。 一人は姫神久々利。そしてもう一人は和装を着込み、茶に染まった艶やかな髪をポニーテール状に束ねた小柄な美少女であった。くりくりとした大きな瞳は突然押しかけてきた来客であろうと、歓迎の色に満ちて輝いている。 彼女の名は尼崎櫛奈。今世クシナダにして久々利の親友でもある少女だ。二人揃うとところかまわずべたべたくっついているので、両者共に恋人がいるというのに、その気を疑われることもある。 久々利が『はなのき』でお土産に買った和菓子をテーブルに並べながら、その親友に対して口を開く。 「くしなん、理想の花嫁の条件って何だと思う?」 「おお、乙女な話題だねくくりん」 「わかる?」「わかる」「乙女っぽいよね私たち」「うんうん」などと、お互いに頷き合いながら顔を近づけあっていく。実際は乙女な話題というわけでも無いのだろうが、二人とも一度火が付いたらブレーキを踏まないタイプなので突っ込みを入れる人は誰もいなかった。もしもここに櫛奈の彼氏がいたら「いや乙女っぽいってわけでも無いでしょ。ていうか近っ!? 距離近っ!?」と突っ込んでくれただろうが彼はここにはいなかった。 「んー、理想かはわかんないけど、旦那様に何かしてあげたいとか、旦那様が好きーとか、そういう気持ちを常に忘れない事が大事かなーって! くくりんなら今の気持ちを貫けばだいじょぶ!」 ウィンク混じりにサムズアップを決める櫛奈。その笑顔に一点の曇りもない。 「好きな気持ち……かぁ。いいのかな、今のままでも」 それを聞いた櫛奈は、テーブルを回り込んで久々利の横へと櫛奈はぴったりとくっつく。 「いいんだって! 好きなんでしょ、彼氏さん」 にこっという擬音がふさわしいぐらいの快活な笑顔を浮かべて櫛奈はそう言い切った。それを見た久々利は、そのまま自らの横にいた櫛奈に向かって飛びつくようにして抱きしめる。 「くーしーなーんー!」「わわっ、重いよくくりんー」 微笑みながらぎゅうぎゅうと抱き合うその絵は、見ようによっては非常にまずいものとなっているが当人たちにその自覚はない。 「わかった。頑張ってみる……でも、ほかの人にもアドバイス受けてるから、それを試してみるね」 「お、なんだかよくわからないけどくくりんファイトー!」 「おー! えへへー」「ふふふー」 二人の戯れは、その後日が暮れるまで続けられていた。
夜も更け、薄暗い月明りだけが街を照らすようになった頃。久々利は自宅であるアパートの一室で悩んでいた。
久々利の立っている場所の前には、全身が映るような姿見の鏡があり、そこには久々利の姿が映し出されている……のだが。 その姿というのが、袖から腹部までピチピチに張ったメイド服を着こんだものというのだった。本来ならば太腿まですっかり隠せるようなスカートも股下を隠すだけにとどまり、上着は体のすべてを覆えずにすらりとしたウェストはへそに至るまで丸見えとなっている。特に胸部ははちきれんばかりに広がっている。 久々利は恥ずかしそうに赤面しながら、どうにかして正面からだけでも全部見えないようにできないかとスカートのフリルを抑えて伸ばしていた。 「ちょ……ちょっと小さすぎましたかね……?」 無理もない。久々利がメイド服を借りた相手というのは哥津己駆梨。久々利よりも20cm以上背の小さい相手だ。彼女の所持している中でも最も大きいものを借りてきたが、それでもまだ彼女にとってはだいぶ小さかった。彼女にまだほんの少しでも冷静さがあったのならば貴族風の生活を送っているツヴァイあたりを頼ることも考えただろうが、今の久々利にその余裕はなかった。そもそもそんなに頭が回るならメイド服を着て対等に接しようなんて考えていない。 「だ、大丈夫です! そう、ちょっとでもメイドらしいところを見せれば行けるはずです!」 誰に向かってか、高らかに宣言して久々利は鏡の前でいろいろとポーズを取り始める。 「――クルトさんのためのメイドですから」 久々利の想像するザ・メイドといったポーズでクールなメイドっぽさをアピールしてみたり。 「すっごいぷるぷるにゃんですっ!」 どこかのケモ耳メイドカフェで働いていそうなメイドになりきってみたり。 「大好きですご主人様♪ こ、子供に興味……は、うあぁぁぁぁあぁぁぁあぁぁぁ!!!」 ストレートに気持ちを伝え、津の教えを実行しようとしてついに悶絶して床をゴロゴロと転がる。 「ち、ちがっ、これ違います! あ、違うっていうのはクルトさんが好きなことじゃなくてこれは恥ずかしすぎてなんか違うってことです! こんなことできません! いややってほしいならやりますけど!」 手に持った枕を振り回しながら叫ぶ。あまりの五月蠅さに隣の部屋から大きく壁を叩く音が轟く。安普請のアパートゆえに、こういったことよく起こる。 久々利は相手に見えないというのに、咄嗟に壁に頭を下げて謝ることとなった。
その様子を扉の隙間から戦々恐々と言った様子で眺める小学生程度の男子が一人。
彼の名は姫神道人。姫神久々利の弟であり、久々利とは違う自覚のある転生体だ。 道人は、姉の奇行を目の当たりにしながら携帯電話を取り出してある人物にメールを送っていた。 『To.アケル 姉ちゃんが壊れた』 送り先の人物の名はアケル。過去の記憶の大半が抜け落ちているという事情を持ちながらも、楽観的なムードメーカーと称される少女だ。彼女は久々利の家に付いて来たときに道人と面識を持ち、それ以降たまに二人でこうして話すこともあった。 数十秒後、簡潔極まりない返答がアケルから送られてくる。 『くわしく』 道人は、それを受けて多少迷いながらも現在の状況を見たままに伝える。 『鏡に向かってパッツパツのメイド服で変なポーズ繰り返してる』 『写メか動画はよ』 『俺は姉ちゃんの社会的人権を喪失させるつもりはない』 十四夜会の噂は火よりも早く広がる。ご飯が食べられると姉に連れて行ってもらった夜会の会合で眼鏡の人物が言っていたのを覚えていたからか、道人は懸命にも姉の人権を守った。もっとも、彼女に話した時点でどこからか漏れてしまうというのは火を見るよりも明らかだったが。 道人とアケルがそのような会話を繰り広げている間に、久々利は元の服に着替え直してぽすんと布団の上に膝を抱えて座り込んでいた。 棚の上に飾ってあった細い目をしたペンギンのぬいぐるみに手を伸ばし、胸の中に抱えてそのまま後ろ向きに倒れる。 「……好き」 「好き、好き、好き、大好き、愛……してる」 花占いのようにぬいぐるみの手足を引っ張りながらぶつぶつと呟く。ただ、胸の中で言い表せない好意の言葉を唱え続ける。 「好き、なのは間違いないんです」 だけど、自分とクルトさんは年も立場も離れています。その言葉を飲み込んで、頭を振る。 今までは「愛の力があればどうとでもなります!!」と自分で言ってきたし、同じ立場の人間がいれば必ずそのように声をかけるだろう。姫神久々利にとって本来、その程度のことは問題ですらない。それでも、今まで見ようとしていなかったことをいざ突きつけられることは、彼女にとってもう一つの考えないようにしていたことを否応なく思い起こさせることでもあった。 「……もしも」 「もしも、クルトさんと菜々美さんが何事もなく一緒に居続けた世界があったとして、私はどうしていたんでしょうか」 「応援できるのか、それとも割り込むのか……」 「私は、私は菜々美さんに勝ったんですか? それとも、隙間に入り込んだだけなんですか?」 「……聞けませんよ。こんなこと」 腕を眼前にかざす。何でもない蛍光灯の光がいやに眩しい。 久々利は、その明かりから目をそらすように横になりぬいぐるみを抱きしめて瞳を閉じた。
暗い、暗い空間だ。
日の光も、月の光も届かない細長い洞窟の下り坂。久々利はそこに立っていた。 ひんやりとした風が地の底から吹いてくる。左右の壁が圧迫感を募らせる。 ここがどこかは分からないが、久々利は不思議とこの場所を知っている気がしていた。まるで、かつてこの場所を訪れたことがあるような―― 「ああ、そこから先は進まないほうがいいよ。振り向けなくなる」 坂の下から声がする。一寸先も見渡せない暗闇だというのに、しっかりとわかる。年若い少女だ。長い黒髪をしなやかに揺らした、高価そうな服装に身を包んだ少女がそこにいた。 一見するだけで手間がかかっているとわかる見事な衣装なのに、それに着られているという印象が全くない。完全に着こなしている、正真正銘のお嬢様。久々利はそういった感想を抱いた。 「振り向けなくなる……ですか? というよりも、ここはいったい?」 驚くほど冷静に久々利はその場で少女に声をかける。夜会で死の危機に瀕したことが一度や二度ではないからだろうか。今の彼女は日常的な状況よりもこういった理解の及ばない場面のほうが肝が据わっていた。 「いい質問だ。だけど答えている時間はない。残念なことにね」 「僕も君と話してみたかったのだけど」と付け加えながら少女は肩をすくめた。その動作がやけに似合っている、というより何か見覚えのあるものに思えた。 「そうですか……時間がないということは、何か他に用があるんですか?」 「ああ、察しがよくて助かるよ」 暗闇の中に立ち止まったまま、二人は顔を向かい合わせる。 「といっても、僕はただ一つ質問がしたいだけだ。簡単な質問だよ」 「質問? はい、なんでしょうか」 2、3度瞬きをしながら久々利は聞き返す。物々しい雰囲気の場所である割に、少女の調子も軽く、なんだか拍子抜けしてきたのだ。 だが、その気持ちは次の質問で打ち砕かれることとなる。 「カー……伝わらないか。クルト、いいにくいなあ。クルト」 その名が出たことで、久々利の心臓が跳ねる。 「君はクルトのことが好きなのは知っているが、僕もそうでね。はいそうですかと諦めるのは惜しい」 その先を聴きたくはない、耳をふさぎたいが体は硬直し動かない。 「君が迷うのなら、僕が奪ってもいいかな?」 だからその言葉を黙って受け止めるしか 「ああ、何も知らない間柄というわけでもないよ。カートに自覚は無いが、彼のファーストキスは僕がいただいて「嫌です!!!!!!」 被せるように、ただ唯一動く口を大きく開いて返答する。熱い呼気が漏れる、華奢な喉が破れるかと思うほどの絶叫。 「聞こえませんでしたか、嫌です!!! たとえ、たとえ誰が相手であったとしても、私は、クルトさんを誰にも渡したくはありません!!」 「私は、私がクルトさんを世界で一番大好きなんですから!」 洞窟の中に叫びが響き渡る。それを正面から受けた少女は、しばしの間驚いたように硬直していたがやがて声をあげて笑い始めた。 「ふふ、ははっ。これは中々どうして、本音は随分と強いものじゃないか。もっとも、そのぐらいでなければ僕も張り合いがないわけだけどね」 少女は、威圧的な瞳で久々利を見上げる。その表情は自信に満ち溢れていた。だけど何故だろうか。その奥底に、別の感情が見え隠れしているのは。 久々利は絶叫の後、肩で呼吸をしながら少女のその姿を見て大きく息を吸い込む。 「そこまで言えるのならば、次にどうすればいいかなんてことは分かって――」 「あの、すいません」 遠慮がちな、だけどもよく通る久々利の凛とした声が、言葉を切ろうとしていた少女を遮る。 「……何かな? 僕としては、そこまで言い切ったのならば早いところ元の場所に帰って欲しいんだけどね」 言いたいことを止められて一転、不愛想な様子となった少女がどこか棘のある口調で久々利を責め立てる。 対する久々利は、ゆっくりと一言ずつ区切るように言葉を紡いでいく。 「……好きなんですよね。まだ。クルトさんのことが」 「さっきそう言っただろう。だったら、なんなんだい?」 何度も同じことを言わせないで欲しいとでも言いたげな語調で少女は返す。 「私も、あなたに言いたいことはたくさんありました。手紙も書きました。そして、傲慢かもしれませんけどついさっきは貴女よりも愛されたいと願いました。それは、紛れもない本心です」 「……前に、楓さんからも注意されて、愛想をつかされそうになったんですけど、やはり私は、こうしなければだめみたいなんです」 「私は、貴女も救いたい。これもまた、私の本心です」 決して大きくは無い声量で発せられた言霊は、確かな意思を伴って少女の傍を吹き抜ける。 少女は細い爪を、陶磁器のように白い掌に食い込ませながら黙ってその言葉を聞いていた。 「例え、貴女が生きていたとしても。同じ人を好きになったとしても。いえ、同じ人を好きになったからこそ、幸せになって欲しいんだと思います」 「だったら、だったらどうするっていうんだよ」 反論。少女は聡明であった。そして久々利とは違い、現実を理解し、受け入れるという素養があった。 だからこそ彼女は、御月遊里に彼のことを託した。自らの運命を悟ったからこそ。 故に、今ここで認めるわけにはいかない。目の前の女の妄言にも似た理想を。 久々利は、一歩前に踏み出して言葉を続けた。 「貴女の想いも私が背負います」 「二人分幸せにして、幸せになってみせます」 「傲慢だとは分かっています。ただ幸せになるのは私だけで、自己満足かもしれません。それでも、私は貴女の分まで背負って進みます」 「それが、私の答えです」 その言葉が届いたのか。答えに満足を得たのか。仔細は分からないが少女は握っていた拳を開きながら口を開く。 「……良く言えば馬鹿、悪く言えば独善的な狂人だね。君は」 「知っています。それでも、私は私を変えることはできません」 「……ただ、少し発破をかけに来ただけなんだけどね。ああ、そんな事をする意味も無い自惚れ屋だったか」 皮肉交じりの言葉を、どこか吹っ切れたような笑みで叩きつける。 「僕の想いを君が背負えば、3歩も進まないうちに圧死するのがオチさ」 「僕は過去にはならないよ。これからもカートの中で生き続ける」 「だから全力で向かってきなよククリ。借りものじゃない、自分自身の想いで」 少女は闇の中を一歩、久々利に向かって踏み出して指を突きつける。 「受けて立ちますよ、―――さん」 その名前は届かずに、ゆっくりと白に染まりゆく世界の中に霧散する。 「……時間か。一つだけ伝言を頼まれてくれないかな」 「愛の告白以外なら引き受けましょう」 「そんなんじゃないさ……次は菜の花を持って来るのを待ってる、とね」 「……必ず」 誰に告げるべきか、誰からと告げるべきか聞きはしない。それだけが必要な言葉だったから。 「じゃあ、さよならだ。もう会うこともないだろうけどね」 「ええ。百年は会うつもりも会わせるつもりもありませんから」 「ああ。そうしてくれ」 そして、久々利は振り向いて歩きだした。振り返ることなく、光の道へと。
「必ず、伝えますから!」
久々利は布団から跳ねるように飛び起きた。 「うおっ!? どうしたんだ姉ちゃん、怖い夢でも見たか?」 急に動き出した久々利に対して、驚きのけぞった姿勢の道人が声をかける。久々利が起きなければそのまま掛けるつもりだったのだろうか。手には厚手の毛布を持っている。 「……いえ」 「いい夢、だったと、思います」 どこか呆けたような表情で目をこする。 「はあ……? まあ別にいいけど。寝るならきっちり寝ようぜ。もう9時だし」 言われて久々利は時計を見る。時刻は9時丁度。自分が横になってから30分も経っていない。 そのことに驚くよりも早く、久々利は立ち上がっていた。 「ごめん、少し出てくる」 「え、今から? ちょっと姉ちゃん、いったいどうしたって」 「説明できないけど、行かなきゃいけないの!」 手荷物だけひっつかんで、玄関へと駆け出す。 「ごめん、先に寝てて!」 「姉ちゃん!? ねえちゃーん!?」 久々利は夜の鬼灯を走る。自分の気持ちを伝えるために。彼女の言葉を届けるために。そして、ただ遭いたいがために。 その瞳は、いつも以上に自分に向き合う輝きに満ち溢れていた。
「……自分で立ち直った、か。誰かの力を借りたやも知れんがな」
「生者と死者の調停を為した女神の転生体。自覚こそないが、その力の片鱗を見せたとしてもおかしくはない」 「ま、本当にただの夢かもしれねーけど。どうだっていいか。大事なのは姉ちゃんが立ち直ったかどーかってことで」 「ああ、明日の朝飯は自分で作るかー……」 |
+ | 通常セッション |
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+ | 番外 |
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+ | 友人関係 |
鳴海業斗
食いしん坊さんです。でも腕が取れて平然としているのはどうかと思います。 あなたが夢の中で一度死んでしまった時は、本当に心に絶望が押し寄せました。 助けられて、そしてお酒を飲みにつれて行ってもらって本当によかった。今ではそう思うことができます。
花之木倫太郎
強い人ですね。館に乱入してくれた時はかっこよかったです。 いつか驚かせてあげましょう(達成しました!)。 褒めるとぷいっとそっぽを向くのが可愛いんですよ。 だいぶ雰囲気変わりましたねー。うまくやってくれたんでしょうか。 やっぱり、友達と仲良くしているのが一番ですよね。可愛かったです。
灰水有尾(はいみずあるび)
見た目はちょっと怖いですけど、優しいですよ。素直な優しさが心に響きます。 小さくなる薬を使われた時の姿がとてもかわいらしかったです。もう一度見て抱きしめたいですけど……どうしましょうか。
御酒創真
頑打武! 頑打武! 正義の使者! あのような巨大な空想を出せる、強い思いを持った方です。 また頑打武との思い出を聞かせてもらいましょう。 意外と面倒見もいいのですね。それに情にも熱いです。世が世なら冒険活劇の主人公を飾っていたでしょう。
尼崎櫛奈
一番のお友達です! 夜久さんの彼女ですね。絶対に幸せになってもらいます。これからたくさん遊びますよ! 決して生贄になんてさせません。何としても守ります。絶対に。 くーしなん♪ 今度一緒にスイーツパーラーとかに行こうね 気持ち、本物だったよ。相談に乗ってくれてありがとう。お互いにずっと、好きな人と一緒に生きていこうね。 クルトさんと事故でキスしちゃってるところを見た時は本当に驚いたけど……嫌いになるわけないじゃないの。
オムライスの指導ありがとう! これで少しは何とかなるかも!
相羽慶
なんかひどいことしかされてない気がしますが、誰よりも人間らしい人です。 それでも『化け物』であることにこだわるのなら、私は絶対にそちら側にはいきません。 それが私にできる彼への精いっぱいの誠意ですね。 先日の深い部屋ではどうもありがとうございました……相羽さんの助けがなかったら私、結構やばかったと思います。 本当に頼りになる人です。ただ、その、性格がちょっとというかひどいことしてくるのをなんとかしてほしいんですけど……
ツヴァインシュタイン・V=ヴァイスハイト
動じない精神力を持った人です。 あの時、強制転移で引き寄せてからはたいてくれてありがとうございます。あれがなければ私はどうなっていたか……。 好奇心が強いですが、デリカシーというものを知った方がよいと思います。 ぶれずに自信を貫くその姿は一周回って尊敬したいほどです。 でもあんまりひどいことは言ったらいけませんからね?
特殊部隊「純華」
気配りの利く方です。紅茶はとてもおいしかったです。この女子力の高さはとてもとても見習いたいです。
神凪楓
時刻さんと親密な仲のお姉さんです。 確かにあなたから見たら私は誰も彼も救いたがっている滑稽な人かもしれません。 でも、私はこの道を曲げないと決めました。 救えるのなら、誰であろうと手を伸ばしてみます。
時刻時計
楓さんといい仲の人ですよ。 見た目とは裏腹に、とても大人的な行動力を持っています。 私、告白を応援してるって言いましたけど、自分がこんなに告白渋ってたのを知られたら笑われちゃいそうですね。 これからもお幸せに、です。 友達とも仲良くやってるみたいですねー。うんうん。いいことです。 でもなんででしょうか。最近の時刻さんの私を見る目に何か冷ややかなものが混ざっている気がするのですが。 私何かしたかな……全く身に覚えがないのですが。 あーそのー……熱病を黙っていたことはごめんなさいです。
アケル
自由な子です。ムードメーカーですね。 自由奔放に見えて大切なところは見逃しません。 なんだかたまに家に来るのですが……弟と何か話しているようです。 私の料理はおいしいって宣伝してくれることに期待しています。
ココ・エルピス=ピュラー
空想そのもののような人です。 私も、人が助かるのを見るのが好きです。 我儘でもいいんです。自分がそれを望むのならば。 ただ、どうせならもっと我儘になってしまいましょう。 ココさんも笑顔で、みんなを助けられる道。探してみませんか? 私はあなたの笑った顔が見たいです。
早瀬零夜
お互いに必ず死なせないと約束しました。たまに一緒に遊びに行きます。
ごめんなさい。あなたの想いは、とても嬉しいです。
ですが、それを受け入れるわけにはいきません。 その気持ちを知らずに、たくさん傷つけてしまいました。 私がこういうのもおかしな話かもしれませんが……いつかあなたにとって素敵な人ができることを、心から祈っています。 これからも、大切なお友達でいましょう。
風結樹 紫音
頭を食べられました
玲卯月嶺
えーと、その、頑張ってください。
クリス・スクアーロ
常に笑顔の方でした。人の嫌がるようなことはしてはいけませんよ? それに悪意がなくてもです。
白野京子
女子高生です。年も近いですし仲良くなりたいですね。とてもいいツッコミ能力を持っています。
伊東ミコト
千年以上生きているというお狐様です。 とてもしっぽがモフモフしてました。もふもふ。 長く生きているということはそれだけ別れもあったのでしょう。それでも愛する人のことを思い続けることのできる人です。大尊敬してしまいます。
鑢ヶ縁 津
み、みえけんけんちょうしょざいち? かっこいい大人の人です。クルトさんのことを気にかけてくれますね。クルトさんも表面上はああですけど、まんざらじゃないですよ。 まるで、悪友同士みたいって言ったら怒られちゃいますかね? これからも彼と、リコリスをよろしくお願いします。私も頑張っちゃいますよー。
不動明
お医者さんです。 知識も豊富で行動力もあるという探索系の聖職者として尊敬している人です。 実は私の今のスタイルは割と不動さんを参考にしているんですよ。 ……私にだって色気ぐらいはありますよ。ふんだ。
葛葉鵺
鵺さんです。名字で呼ばれたくないみたいです。 相変わらずワイルドな人でした。ああいったタイプにもちょっと惹かれますけど、私には優しい人の方が合うかなあ……あ、もちろん鵺さんも優しいですよ! 危険を顧みずに助けてくれたこと、感謝しています。
伊邪那岐様
私の主神です! 国産みと神産みの神様ですね。愛する人に会うために黄泉の国まで赴いたロマンチストな一面もあります! クシナダを助けたスサノオのお父さんでもあるんですよ! ただいつも自分勝手に行動されるのは困るというか……毎年神有月の宴会ではしゃぎ過ぎるのは、ツクヨミさんが胃痛で転げまわることになるのでやめていただきたいのですが……あれ、私何か言いましたっけ?
姫神道人
弟です。ちょっと生意気なぐらいが可愛いのですよ。 たまに大人びた様子を見せます。そして姉を敬いません。 元気に幸せに育ってください。お姉ちゃんからのただ一つのお願いです。
リコリス
ウサギの女の子です。私の提案した名前で決まっちゃったみたいですね。 今度たっぷりもふもふさせてくださいねー。でも案内人の子が怒るかなあ。 この世界は、怖いことも辛いこともたくさんあり、毎日のようにそれを受けている人だっています。 でも、それがすべてじゃありません。言葉と一緒に、そのことも教えてあげます。
あ、こっそり「パパ」という単語を教えておきましょう。ふふふ、クルトさんの驚く顔が見たいです。
弥生菜々美
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