このヘブンシティには昔、エデン学園と呼ばれる場所がありました。
そこは街で唯一の学園であり、孤児院でもあり、研究施設でもある、
ちょっと風変わりな建物でした。
そして此処には、とても心優しい少年が居ました。

彼の名前はアーロン。彼もまた、親と別れた孤児なのでした……


エデン学園


(side:アーロン)

「皆、今日はこのクラスの新しいメンバーを紹介するぞー」
「えっ、誰かがこのクラスに入るんですか!?」
「おおー」「なんて名前?」「俺より馬鹿か?」「それは無いわね」
自己紹介って、こんなに緊張するものだったっけ……
僕は黒板の方を向き、皆には背中を向けておくようにと言われていた。

このエデン学園は、ヘブンシティの15歳までの子供を対象にした、
この街で一つしかない教育機関なんだって。
そして、この学園の中でも能力が高かったり、
一生懸命努力が出来る人だったり、裕福だったりする人は、
僕が入ったこの『ハイクラス』に入る事が出来るんだ。
ハイクラスは少人数クラスで、学年の差も無くて学年はバラバラ。
……基本的に、13歳から15歳しか居ないけどね。
僕はお金も能力も少ないけど、誰かが僕を推薦してくれたんだ。

「それじゃ、アーロン。自己紹介を始めてくれ。」
このハイクラスを担当する先生は、クラーク・ドルトリア先生。
長くてサラサラした青い髪が特徴的な男の先生だ。
「はい……僕は、えーと……アーロンですっ、宜しくお願いします」
「……コイツ、なんかフニャフニャしてそうな奴だなぁ」
今、呆れたように呟いていた男の子はラドン・マグネス。
後から聞いた話だけど、身体能力が凄いんだって。
「アンタよく言うわねー、自分だって頭はガチガチ岩石なくせに」
「何ぃっ、だぁれがガチガチ岩石だ!!」
この黄色い髪の人はセレン・ルビー。強気な学級委員なんだって。
「新入りに甘く見られるぞ、この私のように堂々たる姿勢を……」
「「煩いっ、このナルシメガネ!!」」
眼鏡をかけた知的な男の人、ネオン・バリームだ。
皆は『残念エリート』って呼んでいたけど、何でだろう?
「そうそう……アーロンを推薦したのは、そこに居るエレナだ」
「ようこそ、アーロン」
先生が指さした方に居た人は、エレナ・ヴェステジーナ。
このクラスを纏める、もう一人の学級委員なんだって。

他にも信仰深い人や双子、怪我をしている二人組にお金持ち……
色んな仲間が居るこのクラスで、僕はこれから生活していくんだ。


~~~~
「じゃあ次の授業までに、アーロンに質問でもしておくんだぞー」


やっぱり質問時間だ……こういうのは定番なんだろうね。
緊張が絶えないこの時間はあまり好きじゃない。
すぐに質問が終わると良いけど……

「よぉアーロン、スリーサイズ教えろよ」

なにそれ。

「アンタ馬鹿ねー、この子は男の子なのよ?」
「こんなフニャフニャした男は見た事ねーもん」
うーん……どうやらラドンとは馬が合いそうに無いみたいだ。
それはセレンも同じようだけどね。
「じゃあ、次は私ね……アンタの得意な科目は?」
「あー、僕そんなに運動も勉強も出来なくて……」
僕は頭脳も体力も、平均より下回っている。
得意な科目を強いて言うならば、家庭科の調理くらいだ。
こんな自分って、やっぱり情けないよねぇ……
「そうなんだ?じゃあハイクラスはキツいかもねー……
座る席、私の隣に来ても良いわよ。優しく指導してあげるから」
「ちょっ……お前の隣は俺の席じゃねえかよ!?」
「あのねぇ、問題有り有りなアンタが隣に居るのはウンザリなの!」
「酷ぇ!おいエレナ、セレンが言葉の暴力を!」
「それ、ラドンの言えた事?アーロンの事を馬鹿にしてたじゃない」
「あぐっ……チッ、新入りだからってチヤホヤされやがって!」

こんな言い合いは他所でやって欲しい。
隣で苦笑いをするしかない僕の気持ちも考えて欲しいな。
……それにしても、エレナとセレンは僕に優しい。
エレナは僕を、この貴重なハイクラスに入れてくれた。
セレンは、頼りない僕を手助けしてくれる様子だ。
この二人なら、これから先ずっと仲良くしていけるかもしれない。

「くそっ、おいアーロン!いつか叩きのめしてやるからな!」
ラドンとは、ちょっと……無理かもしれない。


ー弐の欠片へ続くー

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最終更新:2012年08月12日 21:16