悪戯好きで生意気だけど、ちょっとツンデレな少女『チィ』。
彼女とサザロスが遭遇した頃、ジャン達は遊園地を満喫していた……
ノア・パーク 観覧車
(side:アル)
「……ん、うーっ……」
そろそろ太陽が空から降りてくる昼下がり、僕は目を覚ました。
涼しくて、寝心地が良くて、景色も良い。此処は一体何処なのかな……
僕は仰向けになっていた体を起こした。すると、
「あ……アル。気が付いた?」
僕の右側の椅子には、優しく微笑みかけるエレヴィンが居た。
ショボつく目を擦って辺りを見回す。
此処は……見てみた限り、観覧車の中みたいだ。
「外は暑いでしょ?涼しい所なら、すぐに起きてくれるかなって……」
どうやら、お化け屋敷で気絶した僕をエレヴィンが運んでくれたらしい。
彼女の言葉から察するに、僕が起きるのを待っていてくれたみたいだ。
「でも、どうして僕に早く起きて欲しかったの?」
「え?どうしてって……」
僕は素朴な質問をしたつもりだけど、エレヴィンは答えに困っている。
そんなに難しい事を聞いちゃったのかな?
「……アルが起きるまでずっと心配だったから、かな……」
向かい合った態勢のまま、エレヴィンは顔を外に向ける。
こんな大きな観覧車だから、まだまだ上がり続けるゴンドラ……
そこから見える綺麗な景色を楽しみながら、僕は呟いた。
「心配してくれたんだね。でも、僕なんかを心配しなくても……」
「ううん、逆にアルだからこそ心配なのよ……
アルって、前まで私が気に入っていた男の子に似てるんだ。
守ってあげたくなる子だった、っていうのもそっくりだし、……」
……エレヴィン、なんか自分の世界にのめり込み過ぎてない?
「小さくて可愛いのも似てたし、優しいのもアルそっくりで、……」
そろそろ止めてくれないと、僕が照れ臭くなるんだけどな……
そう思っていたら、彼女の口から黒い話が飛び出してきた。
「でも、好きだったその子はもう居なくなっちゃったの……
私が守ってあげられなかったばかりに、ね。」
エレヴィンは、決意のような何かを思わせる強い目をしていた。
今の話を軽く聞いちゃったけど、彼女にとっては重い話だったみたい。
それもあってか、彼女は話を終えてからずっと暗い顔をしていた。
何とか元気になってもらいたいんだけど……
「(……そうだ!)」
僕は、自分の頭の中からある記憶を引っ張り出してきた。
時は昨日の夜、エレヴィンと二人で秀吉おじさんのお店に行った時。
僕達がおでんを食べた後、おじさんは僕を呼び止めて、こう囁いたんだ。
「ショt……アル。エレヴィンを元気にする方法を教えてやるぜぃ」
おじさんの方法を使えば、エレヴィンを元気付けてあげられるかも……
よし、やってみよう。
(秀:アルがエレヴィンにやるから効果がある、皆は真似するなよ?)
「ねぇ、エレヴィン。」
「ん……どうしたの?」
「僕、早くエレヴィンに元気になって欲しいな……(上目/指咥」
「アルううううぅぅぅぅっ!!!!!///」
「わわっ エレヴィンが飛びついていた!!?」
エレヴィンの安定した精神と僕の身の安全も考えて、
この方法は暫く封印しようと思った。
一方、その様子を何処からか観察していた者が居た。
「……秀吉」
「なんでぃ、ティブル。」
「彼(アル)に何を吹き込んだんだい?」
「カッハッハ!!……おでん奢ってやるから、見てない事にしてくれ」
「おっけぃ。」
ノア・パーク ゲームコーナー
(side:エルフィア)
「「バニラアイス下さーい!」」
「はいよ、ちょっと待ってくれ」
アトラクションを堪能した俺達は、ゲームコーナーで休憩していた。
ご丁寧に休憩コーナーもあるし、アイスでも食べて雑談しようかな、と。
そんな訳で、俺達は『ジャックのアイスクリームSHOP』に来ている。
「なぁ……『ジャック』さんって聞き覚えがあるんだけど、誰だっけ?」
「武器屋のジャック店長でしょ?前にHeven'sTV出てたっけ」
「そっか。ジャック店長の店って時点で怪しいけど、大丈夫だよな?」
「出張して売店まで開いてるんだから、多分大丈夫なんじゃない?」
ジャック店長の話題がやけに弾む。そんな中、
「ほらよ。バニラ2つで300円だぜ」
噂をすれば何とやら。2つのバニラアイスのカップを持った本人だ。
俺達はペコリ、と小さくお辞儀をしてアイスを受けとる。
……バニラビーンズ入りの本格アイスだ、品質的には大丈夫そう。
「……ん?ちょっと待ってくれ、黒ツインテのメッシュ嬢ちゃん!」
「凄い呼び方……えっと、どうかしました?」
背中を向けて歩き去ろうとしたリーナが呼び止められる。
「確か、こないだのテレビ番組に出てたよな?」
「えっ、出てませんけど?」
「出てなかったか?……そうか。呼び止めて悪かったな!」
驚いた様子を見せるリーナ。まぁ、そりゃそうだろうけど。
とりあえずその場を離れ、休憩コーナーで話す事に。
……それにしても、秀吉店長(舞台裏)といいジャック店長といい、
どうしてテレビのタレント等と見間違えるんだろう……
ノア・パーク 休憩コーナー
「ねぇエルフィア。どうしていつも私と一緒に居てくれてるの?」
「どうしてって……一緒に居ると楽しいから、かな」
「そっか。」
ゲームコーナーから歩いて1分の所にあった休憩コーナー。
お土産屋にレストラン、果ては服屋と様々な店が近くにある。
こんな場所なもんだから、周りは耳障りな程に賑やかで明るい雰囲気だ。
「俺ぁ強盗だァ!!さっさと金出しやがれ、金!!」
「そういうお前が出せやゴルァ!!! バキッ」
「ギャアアアアアアッ!!わわわわ分かった、自首しますよ自首っ!!」
もうすぐCBA(詳しくは
ヘブンシティの項を参照)の警察が来るようだ。
……大丈夫か?こんな遊園地で。
「何か……変な遊園地だよな、此処。」
「そうよね……って、あれは?」
「ヒャッハァーーッ!!その女を差し出せェ!!!」
「嫌あああああああっ!!!!」
「「出た、変人……!」」
この街には、こんな噂がある。
迷惑にして強力、且つ変態な男が居る……と。
彼曰く、その名をジョー……バギー・ジョーと言うそうな。
「リーナ。」
「うん、エルフィア。」
「「帰ろう」」
その頃、ジャン達はジェットコースターの列に並んでいた。
「お兄ちゃん……やっぱり怖いっ……」
「安心しろ。隣には俺が座るからな、怖くなんかないだろ?」
「うぅ、ジェットコースター乗りたい、なんて言わなきゃ良かった……」
ピロリロリンッ♪
「ん?エルフィアからメールか……」
『件名:帰ろうよ
また、あの変人が出たんだ!
被害に会う前に帰ろうよ、兄さん!』
「……ミリフィア、帰るぞ」
「え?」
「アイツが出たらしい」
「うん、帰ろ。」
その後、サザロス・ノゼライ・アル・エレヴィンは招集をかけられ、
全員がノア・パークを帰る事を余儀なくされました。
最終更新:2012年07月23日 22:16