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スレイド家


(side:サザロス)

「ただいまー」
「おかえりーっ!(むぎゅー)」
「おっと……急にどうした?」
「お兄ちやん、寝ぼけちゃってる?私がお兄ちゃんを心配した時は、いつもこうやっ「あーあーあー、何も聞こえないー」

何だ今の。兄弟同士の熱い抱擁を見たような?

おっさん……もとい秀吉店長にジャンの家に送ってもらったのだが、
ドアを開けた途端に飛び込んできたのは外ハネ金髪の少女ミリフィア。
ジャンの妹であり、エルフィアの双子の妹でもある。
そんな彼女、帰って来たジャンに笑顔でダイブ。


ブラコンとシスコンとは……底知れぬ兄弟だ。

「そういや、エルフィアのやつが居ないな……」
「エルフィア?もう寝たよ。」
まぁ、普通はそうだろう。
なんせ今は真夜中、よほどの事が無い限りは寝ている筈。
恐らく兄のジャンを待っていたんだろう……なんて良い妹だ。


「へぇ、ジャンとミリィは仲が良いんだね。」
ノゼライが微笑ましげに呟く。
……ミリィ?ミリフィアの事だろうか。
いつの間に仲良くなってたんだろう。

「小さい頃には『お兄ちゃんと結婚するー』って言われた位だ」
「シィィーーーーーーッ!!!」
ミリフィアが人差し指を立てて口元に当て、「静かに」のサイン。
そんな事しなくても大丈夫、ジャンは既にシスコンで定着しているから。
「あと、何日か前には頬にキs」
「あーあーあーっ、何にも聞こえないよーっ!!」
心なしか、ジャンが胸を張っているように見える。
彼はシスコンと呼ぶに相応しい男だと改めて思った。この思い、きっと揺るぎはしない。

「「「……」」」
気弱そうなサイボーグのアルと巫女っぽい服装のエレヴィン、記憶を中途半端に失っているノゼライの三人が居辛そうに顔を背ける。
……あ、違うな。この様子を見て恥ずかしくなったらしい。
その証拠に、全員が赤い顔をしていた。

「ジャン、そろそろ部屋の手配を……」
「あぁ、そうだったな。7人が寝る分の部屋が必要だから……」
「7人?私とお兄ちゃんとエルフィア、サザロスとノゼライと……」
「んーとな、ちょっと人体改造を施した人間の少年アルと」
つまりサイボーグ。
「一回死んだけど生き返った少女エレヴィンだ。」
つまり……






「幽霊ぃぃいいいいいいぃぃぃぃっ!!!!!」











「驚いてごめんなさい……」
「「驚かせてごめんなさい……」」
TVがついた部屋……ジャン曰くの『リビング』で、落ち着いたミリフィアとアル&エレヴィンが互いに謝罪し合う。

人の声とは少し違う、機械音が混じったようなアルの声。
透き通っていると言うか、生命力が欠けてそうなエレヴィンの声。
ジャンにはあまり似ていない声質のミリフィアの声。
3つの声が今、一度に謝罪をする。
ナイス・ハモリ。

ちなみに俺とノゼライとジャンは、その様子に背を向けてTVを見ている。
TVの画面の端に表示された時計は2時24分を示している……
そろそろ、多大な睡魔が俺に 牙を向く頃、か……








「……て…」

……








「…ぇ……起きて………」

……


「ねぇ、起きてーっ」


「ハッ!!」
危うく寝てしまう所だった……その間に謝罪は済んだようだ。
とにかく、どうせ寝るならベッドで寝たいな。
……そういえば、部屋割りはどうなったのだろう?
「なぁジャン、誰が何処で寝るんだ?」
「それなら……俺とミリフィアとエルフィアが二階の寝室、お前とノゼライは一階の寝室、アルとエレヴィンは和室……でどうだ?」
「「和室……って何?」」
「和室ってのは、東の国っぽく作られた造りの部屋だ。床に布団を敷いて寝るんだ。」
「「ふぅん……」」
和室なんて部屋、存在すら知らなかった。
これからもジャンは辞書として役立ってくれるだろう。

「それじゃ、風呂は?ヘブンシティにも風呂の習慣はあるだろ?」
「あぁ、勿論だ。」
アポロンズフィールドの常識の一部はこの街でも通じるようだ。
「まずは俺とミリフィアが入
「ちょっと待とうか」
前言撤回!
風呂は男女で入ってはいけないもののはずだ!

「ジャン、お前もしかして……」
「冗談に決まってるだろ。」
だよね、良かった良かった。心からホッとした……





スレイド家 浴室


結局、俺→ノゼライ→エレヴィン→アル→ジャン→ミリフィア、の順に入る事になった。
綺麗な浴室に設けられた湯槽に浸かりながら、今日の疲れを癒す。
何と言う至福の時間だろう……



「(そういえば、気になる事がたくさんあるな……)」
体を暖めながら、不意にそんな事を考えてみる。
まず、『あの少年は何者なのか』。
此処に来る前にも会ったけど、彼は色々と不思議だ。
初対面な筈の俺の事を完全に理解していたのも怪しい。
それに、服を見ただけで出身と年齢を当てるなんて尋常じゃない……
それに、さっきはクレアって人(と言うよりは幼女?)と一緒に俺達を助けに来てくれたが、どうやって俺達の危険を知ったのだろう。
もしかして、あの少年は俺のスパイなのだろうか……
あ、それと光の翼も気になるかな。


二つ目、『悪魔の目的』。
今日、俺達に襲いかかってきた悪魔達は、皆ノゼライを狙って来た。
奴等の目的が同じというのは、かなり怪しい事だ。

そして三つ目、『ノゼライの過去』。
彼女は、何故だか記憶を(中途半端に)失っていた。
始めは『頭をぶつけたんじゃないか』って案に達したが、それだけで済ましてはいけないような……そんな気がする。
それに、悪魔が彼女を執拗に追っていた事にも繋がる気が、する……

「ふぁあー……」
……いけない、眠気が再び……



来……




… ……… ……










スレイド家 1F寝室


「ハッ!!!」
何たる事、どうやら入浴中にも関わらず寝てしまっ



ん、待てよ?

「着替えが済んでいて、場所も違う……?」
さっきまでの状況と今の状況を整理してみよう。
まず、俺は風呂に入っていた。
この時、俺は腰にタオルを巻いていただけの簡単な格好だった。
途中で寝てしまった。
そして目が覚めたら、知らないうちにジャンから借りる事にしたパジャマ(って名前だっけ)を着ていて、寝室のベッドで寝転がっていた……



「何か、とてつもない恥をかいたような気がする……!」
なんて事だ、俺の半裸を風呂で晒す事になろうとは。
しかも着替えまで済んでいるという事は、つまりそういう事になる。
とりあえず此処まで運んでくれた人にありがとう、そしてその人が同性である事を心から祈ろう……




ガチャッ

「あ、サザロス。良かったー、無事だったんだね」
「無事じゃない=溺死 だろうから、無事じゃないと俺が困るぞー」
ドアを開けて入ってきたノゼライに、ベッドの中から目を向けた。
風呂に長い時間入っていたのか、その頬はほんのり赤かった。
そして、湯上がりだけあって結んでいた髪は下ろしていた。
初めに出会った時のツイン&ポニーのトリプルテールとは違う印象であると同時に、女性らしさがよく伝わる髪型だ。
銀に輝く、綺麗で長い髪……このままの方が似合うかも。
それと、彼女が着ているパジャマも可愛らしく見える。
ジャンがミリフィアに買った物を借りたのだろう。
「まぁ、そうかもね。……っていけない、早く寝ないと」
緑色で数字が表示される電子時計は、間もなく3時を示す。
「夜更かしは毒だからな、俺もそろそろ寝るよ」
「あ、サザロス」
目を瞑ろうかと思った矢先、ノゼライに呼び止められる。
その目は、ちょっと寂しそうな……そんな感じがした。

「あの、私のベッドで一緒に寝
「おやすみノゼライ良い夢を!」
「えぇー、本物のお化けが来るかもしれないでしょっ?」
「俺はサザロスであって盾じゃないぞ!?」
「むっ……」
俺を盾にするのは程々にしてくれないと、俺の身がもたない。
それと、思春期の少年にその発言は控えるべきだと思う。
読者の皆様もそう思うよね!

どちらにせよベッドが近い彼女は、諦めたのか大人しくなった。
それを境に俺も息を静め、眠りの世界へと向かっていった。











スレイド家 和室


(side:アル)

お風呂上がり、ジャンに和室へと案内された僕。
そこは立派な和室で、広くて畳も気持ち良かった。
「悪いなアル、お前達だけベッドが用意出来なくて。」
「気にしないで下さい、住まわせて貰うだけでも充分嬉しいですから」
「そうか、まぁ少しでも喜んでくれているんなら俺も満足だ」
押し入れから布団を出しながら、ジャンは楽しそうに言う。

ただ、ちょっと布団を出す彼の手付きが引っ掛かった。
慣れない物を扱うような、少し手間取っている手が。
それが気になりながらも、僕は和室の優美な造りを見回した。

でも……此処でも何か引っ掛かったんだ。
「あの……どうして和室があるんですか?貴方の趣味では無さそうですけど……」
「ん?」
和室は和やかで良いけど、若い少年が欲しがるとは思えない。
「それは、父さんの趣味だな。」
「……そのお父さんは、何処に居るんですか?」
「父さん……か?」
言葉に詰まるジャン。何か難しい質問を押し付けちゃったのかな。

「……アル。お前には、秘密とか隠し事とかってあるか?」
「へ?秘密や隠し事……ですか?」
突然の問い掛けに思わず声を裏返してしまった。
彼は真っ白な布団を畳の上に敷きながら、背の後ろに立つ僕に問う。
そして僕は、達者な言葉を並べる事が出来ずにその答えを考える。
隠し事、秘密……勿論、僕にも無い訳ではない。
「幾つかありますけど……」
「そうか……それをどうして隠す?誰のために隠す?」
ジャンが僕を責めたてるように問い続ける。
怒っているようには見えないけど……
ちょっと怖い。
敷き終えた布団を綺麗に並べながら、ジャンは質問してくる。
「それは……」
この質問には、僕も答えに困った。
正直に答えるべきなんだろうけど、こんな事を他人に言うのは……

でも、僕は『本当の事を言うべきなんだ』という意思を固めた。
「……失ったもののため、自分自身のため……でしょうか。」



「……アルも、か。」





僕の言葉を聞いて、ジャンは呟いた。
その呟きは思いがけない言葉で、ついつい僕の耳を疑ってしまった。






「アル、出たわよ。」
「あ……エレヴィン。うん、分かったー」
「ん、おかえり。それじゃあ俺はテレビでも見るかな、っと……」
僕達が沈黙を続けていると、ガラララッと音をたてて扉が開いた。
そこにはいたのは、お風呂から出てきたエレヴィン。

……そっか、次は僕が入る番だったっけ。
「それじゃ、僕入ってくるね!」
部屋から出ていったジャンに続き、僕も着替えを持って部屋を出る。
ジャンが貸してくれたパジャマは、割と薄着で涼しげ。
これを着て寝るとなると、風邪でもひいちゃいそうだなぁ……



ー続くー