「第八話 ゴースト・アンド・サイボーグ」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら
追加された行は緑色になります。
削除された行は赤色になります。
**廃墟前
廃墟から漂う生臭さを気にもせず、俺は戦う。
相手はサイボーグ……どんな攻撃をしてくるか、分かったもんじゃない。
しかし、それでも俺は剣を構えて走る。
何故なら……
「俺は……!」
**&color(red){「腹が減ったんだああああっ!!!!」}
「戦う理由そっち!?」
見事に突っ込まれたが、俺の言葉は正論だろう。
なんせ時間は既に真夜中、ご飯が恋しくなる頃。
奪われた食料を一刻も早く取り返したいと言うのに、こんな所で邪魔をされては、腹が減るばかりだ。
それに、銃口を此方に向けてくるような奴を素通りする事は、常識的に考えて出来ない。
避けては通れぬ戦い、という事である。
「じゃあ放っといてくれれば良いじゃないですか!」
相手は、此方に向けた銃口にエネルギーを溜めている。
一見は回避不能に見える相手の右手だったが、よく見ると狙いが定まっていない。
もう一回言うが、
銃口を向けてくる奴なんて素通り出来ない。そして、銃口を向けてきたのは紛れも無く相手。
向けてきた本人に言われても、そうはいかないのだ。
やがて、相手の攻撃が始まった。
「くっ……&ruby(クロムバスター){黒鉄の討伐者}!」
相手が&s(){ベタ過ぎる}技の名前を叫ぶと共に、光の銃弾が襲いかかって来る。
狙いは定まっていないが、そのせいで弾が何処に飛んで来るかすら読めない。
それでも俺は剣を構え、相手に向かって走る。
……と、次の瞬間に見た物は、高速で迫る光。とうとう正面に飛んで来た恐怖の攻撃……
一か八か、俺は光を弾き返そうと剣を振りかぶった。
そこへ……
「危ないっ!!」
突然、俺の前の地面に亀裂が入り、氷の壁が現れた。
氷の壁は光弾を受け止め、粒となって降り注ぐ……
恐らく、後ろのノゼライが助けてくれたのだろう。
そう察した俺はノゼライの方を向いてみた。
彼女は安心したように息をついていたが、俺と目を合わせると微笑みを浮かべた。
駆け寄って来たノゼライと一緒に、再び光を避けながら走る。
そこへ、軽い身のこなしで攻撃を避けていたジャンも加わった。
「サザロス。剣で斬る以外の攻撃は使えないのか?」
なんだ、嫌味を言いに来たのか……
……と思っていたが、次いでジャンは語り続ける。
「悪魔と戦った時に思ったんだが、お前は&color(red){火を起こす事だけ}に縛られてないか?」
火を起こす事だけ……どういう事なのだろう。
確かに俺は、火を発生させる魔法が得意なのだが、それ以外の属性魔法を使えとでも言っているのだろうか……
そんな事を考えながら、そして遠かった相手との距離を縮めながら、ジャンの話に耳を貸す。
「こんな魔法を使おう、ってイメージがあれば、何とか……よし。『流れ星』をイメージして魔法を使ってみてくれ」
「流れ星を?……よし、分かった!」
ジャンのアドバイスを貰った俺は新しい魔法を期待し、全速力で間合いを詰めた。
一気に攻め上がった俺に動揺した相手は、皮肉にもエネルギーのチャージを止めてしまう。
これはチャンスだ。あとは魔法が成功するかどうか……
「今だ……喰らえっ、俺の新しい技!」
僅か数メートルしか離れていない相手に向けて、俺は己の腕を振り降ろした。
もっと強い魔法を使える事を望みながら。
そしたら、どうなったと思う?
……そう、成功したのだ。
振った腕の軌道から放たれた、人の顔程の火の玉。
向かって来る火の玉を、相手は右手で弾こうとする。
「ぐぅっ……うわあああっ!!」
堅い腕にぶつかった火の玉は、その相手の硬度には負けなかった。5メートル程度だけ吹っ飛んだ相手は、うつ伏せの状態で倒れたままだ。
この勝負……俺達の勝ちは確定したのだ。
俺はトドメとして、もう一度腕を高く上げる。
新たな魔法……『&ruby(スターダストファイア){炎の星屑}』の構えだ。
そんな俺を見て恐怖した相手は、叫び声をあげる。
「あ、ああっ……うああああああああっ!!!!」
……ちょっと攻撃する気が退けた。
なんせ、トドメを刺す相手が泣き叫ぶのだから。
そこへ、ノゼライが俺の攻撃を止めるよう言った。
「……やめたげて。」
彼女は俺に近付き、振り上げた俺の腕を降ろさせる。
その目は、何故か悲しげだ。何を思ったのだろう……
&big(){「アルから離れろっ!!!」}
「何だ?………って うわっ!!?」
何処からか聞こえた怒声に驚いていた俺は、何者かに突き飛ばされた。
まさか不意打ちされるとは、思ってもいなかった……
廃墟の壁に勢いよくぶつかった俺は、背中を擦りながら立ち上がる。
「いっててて……何なんだよ!」
&big(){「お前こそ何だ!アルが何かしたか、アルに何の用だ、私を怒らせようとでも言うのか!!!」}
凄まじい怒りを露にしている相手……だが、驚くべきは怒りの度合いなどではなかった……
それについては、既にジャンが気付いていたようだ。
「サザロスを攻撃したアイツ、何か変だ……!」
顔を歪めたジャン。
何かあるな、と思った俺も相手をよく見てみた。
『アル』と呼ばれた少年サイボーグの前に立つ相手は、俺達と歳の近そうな少女だった。
その服装は昔、アポロンズフィールドに旅行へ来ていた『巫女』と名乗る人が着ていた物と同じ……巫女服、とでも言うべきか。
そして肩の辺りまで掛かる茶色い髪、黒い目。
ここまで見ると普通に見える。だが……
電灯の光を背中から受けていると言うのに、&color(red){地面に影が出来ていない}。
この特徴から察するに、相手は……
&size(15){「ほ……本物の幽霊だああああっ!!!」}
----
**廃墟の上
「よし。これも成功、と……」
サザロス達を廃墟の屋根から見詰める&color(green){あの少年}。
彼は上機嫌そうに鼻を鳴らせば、独りこう呟いた。
その顔は深刻さを物語っているような陰を秘めていた。
「問題はあの二人か……上手い具合に合流するかな。」
独り言を残せば、彼は街の方へと目を移した。
よく見ると、静まった街から微かな光が漏れている。
それを見るなり、彼は再び柔らかい表情になった。
「さて……おでん食べてこよっと。」
最後に言葉を吐けば、彼は一瞬にして姿を消した……
**廃墟前
少年サイボーグ、『アル』……
彼にトドメを刺す寸前で、妨害を加えてきた幽霊。
ノゼライが己の身体を抱えている間、俺は相手との睨み合いを繰り広げていた。
「だから……私達は敵じゃない!」
対峙相手は、アルの仲間らしい少女。
そして、街の噂『ゴースト・アンド・サイボーグ』の本人そのものと思われる幽霊である。
「でもソイツは、俺達が盗まれた食料を取り返す邪魔をしたんだぞ!」
「そ、それは……私よ。」
「は?」
アルを庇うように
「……仕方なかったのよ。」
**廃墟前
廃墟から漂う生臭さを気にもせず、俺は戦う。
相手はサイボーグ……どんな攻撃をしてくるか、分かったもんじゃない。
しかし、それでも俺は剣を構えて走る。
何故なら……
「俺は……!」
**&color(red){「腹が減ったんだああああっ!!!!」}
「戦う理由そっち!?」
見事に突っ込まれたが、俺の言葉は正論だろう。
なんせ時間は既に真夜中、ご飯が恋しくなる頃。
奪われた食料を一刻も早く取り返したいと言うのに、こんな所で邪魔をされては、腹が減るばかりだ。
それに、銃口を此方に向けてくるような奴を素通りする事は、常識的に考えて出来ない。
避けては通れぬ戦い、という事である。
「じゃあ放っといてくれれば良いじゃないですか!」
相手は、此方に向けた銃口にエネルギーを溜めている。
一見は回避不能に見える相手の右手だったが、よく見ると狙いが定まっていない。
もう一回言うが、
銃口を向けてくる奴なんて素通り出来ない。そして、銃口を向けてきたのは紛れも無く相手。
向けてきた本人に言われても、そうはいかないのだ。
やがて、相手の攻撃が始まった。
「くっ……&ruby(クロムバスター){黒鉄の討伐者}!」
相手が&s(){ベタ過ぎる}技の名前を叫ぶと共に、光の銃弾が襲いかかって来る。
狙いは定まっていないが、そのせいで弾が何処に飛んで来るかすら読めない。
それでも俺は剣を構え、相手に向かって走る。
……と、次の瞬間に見た物は、高速で迫る光。とうとう正面に飛んで来た恐怖の攻撃……
一か八か、俺は光を弾き返そうと剣を振りかぶった。
そこへ……
「危ないっ!!」
突然、俺の前の地面に亀裂が入り、氷の壁が現れた。
氷の壁は光弾を受け止め、粒となって降り注ぐ……
恐らく、後ろのノゼライが助けてくれたのだろう。
そう察した俺はノゼライの方を向いてみた。
彼女は安心したように息をついていたが、俺と目を合わせると微笑みを浮かべた。
駆け寄って来たノゼライと一緒に、再び光を避けながら走る。
そこへ、軽い身のこなしで攻撃を避けていたジャンも加わった。
「サザロス。剣で斬る以外の攻撃は使えないのか?」
なんだ、嫌味を言いに来たのか……
……と思っていたが、次いでジャンは語り続ける。
「悪魔と戦った時に思ったんだが、お前は&color(red){火を起こす事だけ}に縛られてないか?」
火を起こす事だけ……どういう事なのだろう。
確かに俺は、火を発生させる魔法が得意なのだが、それ以外の属性魔法を使えとでも言っているのだろうか……
そんな事を考えながら、そして遠かった相手との距離を縮めながら、ジャンの話に耳を貸す。
「こんな魔法を使おう、ってイメージがあれば、何とか……よし。『流れ星』をイメージして魔法を使ってみてくれ」
「流れ星を?……よし、分かった!」
ジャンのアドバイスを貰った俺は新しい魔法を期待し、全速力で間合いを詰めた。
一気に攻め上がった俺に動揺した相手は、皮肉にもエネルギーのチャージを止めてしまう。
これはチャンスだ。あとは魔法が成功するかどうか……
「今だ……喰らえっ、俺の新しい技!」
僅か数メートルしか離れていない相手に向けて、俺は己の腕を振り降ろした。
もっと強い魔法を使える事を望みながら。
そしたら、どうなったと思う?
……そう、成功したのだ。
振った腕の軌道から放たれた、人の顔程の火の玉。
向かって来る火の玉を、相手は右手で弾こうとする。
「ぐぅっ……うわあああっ!!」
堅い腕にぶつかった火の玉は、その相手の硬度には負けなかった。5メートル程度だけ吹っ飛んだ相手は、うつ伏せの状態で倒れたままだ。
この勝負……俺達の勝ちは確定したのだ。
俺はトドメとして、もう一度腕を高く上げる。
新たな魔法……『&ruby(スターダストファイア){炎の星屑}』の構えだ。
そんな俺を見て恐怖した相手は、叫び声をあげる。
「あ、ああっ……うああああああああっ!!!!」
……ちょっと攻撃する気が退けた。
なんせ、トドメを刺す相手が泣き叫ぶのだから。
そこへ、ノゼライが俺の攻撃を止めるよう言った。
「……やめたげて。」
彼女は俺に近付き、振り上げた俺の腕を降ろさせる。
その目は、何故か悲しげだ。何を思ったのだろう……
&big(){「アルから離れろっ!!!」}
「何だ?………って うわっ!!?」
何処からか聞こえた怒声に驚いていた俺は、何者かに突き飛ばされた。
まさか不意打ちされるとは、思ってもいなかった……
廃墟の壁に勢いよくぶつかった俺は、背中を擦りながら立ち上がる。
「いっててて……何なんだよ!」
&big(){「お前こそ何だ!アルが何かしたか、アルに何の用だ、私を怒らせようとでも言うのか!!!」}
凄まじい怒りを露にしている相手……だが、驚くべきは怒りの度合いなどではなかった……
それについては、既にジャンが気付いていたようだ。
「サザロスを攻撃したアイツ、何か変だ……!」
顔を歪めたジャン。
何かあるな、と思った俺も相手をよく見てみた。
『アル』と呼ばれた少年サイボーグの前に立つ相手は、俺達と歳の近そうな少女だった。
その服装は昔、アポロンズフィールドに旅行へ来ていた『巫女』と名乗る人が着ていた物と同じ……巫女服、とでも言うべきか。
そして肩の辺りまで掛かる茶色い髪、黒い目。
ここまで見ると普通に見える。だが……
電灯の光を背中から受けていると言うのに、&color(red){地面に影が出来ていない}。
この特徴から察するに、相手は……
&size(15){「ほ……本物の幽霊だああああっ!!!」}
----
**廃墟の上
「よし。これも成功、と……」
サザロス達を廃墟の屋根から見詰める&color(green){あの少年}。
彼は上機嫌そうに鼻を鳴らせば、独りこう呟いた。
その顔は深刻さを物語っているような陰を秘めていた。
「問題はあの二人か……上手い具合に合流するかな。」
独り言を残せば、彼は街の方へと目を移した。
よく見ると、静まった街から微かな光が漏れている。
それを見るなり、彼は再び柔らかい表情になった。
「さて……おでん食べてこよっと。」
最後に言葉を吐けば、彼は一瞬にして姿を消した……
ー続くー