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第八話 ゴースト・アンド・サイボーグ」(2012/06/09 (土) 15:49:02) の最新版変更点

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**廃墟前 廃墟から漂う生臭さを気にもせず、俺は戦う。 相手はサイボーグ……どんな攻撃をしてくるか、分かったもんじゃない。 しかし、それでも俺は剣を構えて走る。 何故なら…… 「俺は……!」 **&color(red){「腹が減ったんだああああっ!!!!」} 「戦う理由そっち!?」 見事に突っ込まれたが、俺の言葉は正論だろう。 なんせ時間は既に真夜中、ご飯が恋しくなる頃。 奪われた食料を一刻も早く取り返したいと言うのに、こんな所で邪魔をされては、腹が減るばかりだ。 それに、銃口を此方に向けてくるような奴を素通りする事は、常識的に考えて出来ない。 避けては通れぬ戦い、という事である。 「じゃあ放っといてくれれば良いじゃないですか!」 相手は、此方に向けた銃口にエネルギーを溜めている。 一見は回避不能に見える相手の右手だったが、よく見ると狙いが定まっていない。 もう一回言うが、 銃口を向けてくる奴なんて素通り出来ない。そして、銃口を向けてきたのは紛れも無く相手。 向けてきた本人に言われても、そうはいかないのだ。 やがて、相手の攻撃が始まった。 「くっ……&ruby(クロムバスター){黒鉄の討伐者}!」 相手が&s(){ベタ過ぎる}技の名前を叫ぶと共に、光の銃弾が襲いかかって来る。 狙いは定まっていないが、そのせいで弾が何処に飛んで来るかすら読めない。 それでも俺は剣を構え、相手に向かって走る。 ……と、次の瞬間に見た物は、高速で迫る光。とうとう正面に飛んで来た恐怖の攻撃…… 一か八か、俺は光を弾き返そうと剣を振りかぶった。 そこへ…… 「危ないっ!!」 突然、俺の前の地面に亀裂が入り、氷の壁が現れた。 氷の壁は光弾を受け止め、粒となって降り注ぐ…… 恐らく、後ろのノゼライが助けてくれたのだろう。 そう察した俺はノゼライの方を向いてみた。 彼女は安心したように息をついていたが、俺と目を合わせると微笑みを浮かべた。 駆け寄って来たノゼライと一緒に、再び光を避けながら走る。 そこへ、軽い身のこなしで攻撃を避けていたジャンも加わった。 「サザロス。剣で斬る以外の攻撃は使えないのか?」 なんだ、嫌味を言いに来たのか…… ……と思っていたが、次いでジャンは語り続ける。 「悪魔と戦った時に思ったんだが、お前は&color(red){火を起こす事だけ}に縛られてないか?」 火を起こす事だけ……どういう事なのだろう。 確かに俺は、火を発生させる魔法が得意なのだが、それ以外の属性魔法を使えとでも言っているのだろうか…… そんな事を考えながら、そして遠かった相手との距離を縮めながら、ジャンの話に耳を貸す。 「こんな魔法を使おう、ってイメージがあれば、何とか……よし。『流れ星』をイメージして魔法を使ってみてくれ」 「流れ星を?……よし、分かった!」 ジャンのアドバイスを貰った俺は新しい魔法を期待し、全速力で間合いを詰めた。 一気に攻め上がった俺に動揺した相手は、皮肉にもエネルギーのチャージを止めてしまう。 これはチャンスだ。あとは魔法が成功するかどうか…… 「今だ……喰らえっ、俺の新しい技!」 僅か数メートルしか離れていない相手に向けて、俺は己の腕を振り降ろした。 もっと強い魔法を使える事を望みながら。 そしたら、どうなったと思う? ……そう、成功したのだ。 振った腕の軌道から放たれた、人の顔程の火の玉。 向かって来る火の玉を、相手は右手で弾こうとする。 「ぐぅっ……うわあああっ!!」 堅い腕にぶつかった火の玉は、その相手の硬度には負けなかった。5メートル程度だけ吹っ飛んだ相手は、うつ伏せの状態で倒れたままだ。 この勝負……俺達の勝ちは確定したのだ。 俺はトドメとして、もう一度腕を高く上げる。 新たな魔法……『&ruby(スターダストファイア){炎の星屑}』の構えだ。 そんな俺を見て恐怖した相手は、叫び声をあげる。 「あ、ああっ……うああああああああっ!!!!」 ……ちょっと攻撃する気が退けた。 なんせ、トドメを刺す相手が泣き叫ぶのだから。 そこへ、ノゼライが俺の攻撃を止めるよう言った。 「……やめたげて。」 彼女は俺に近付き、振り上げた俺の腕を降ろさせる。 その目は、何故か悲しげだ。何を思ったのだろう…… &big(){「アルから離れろっ!!!」} 「何だ?………って うわっ!!?」 何処からか聞こえた怒声に驚いていた俺は、何者かに突き飛ばされた。 まさか不意打ちされるとは、思ってもいなかった…… 廃墟の壁に勢いよくぶつかった俺は、背中を擦りながら立ち上がる。 「いっててて……何なんだよ!」 &big(){「お前こそ何だ!アルが何かしたか、アルに何の用だ、私を怒らせようとでも言うのか!!!」} 凄まじい怒りを露にしている相手……だが、驚くべきは怒りの度合いなどではなかった…… それについては、既にジャンが気付いていたようだ。 「サザロスを攻撃したアイツ、何か変だ……!」 顔を歪めたジャン。 何かあるな、と思った俺も相手をよく見てみた。 『アル』と呼ばれた少年サイボーグの前に立つ相手は、俺達と歳の近そうな少女だった。 その服装は昔、アポロンズフィールドに旅行へ来ていた『巫女』と名乗る人が着ていた物と同じ……巫女服、とでも言うべきか。 そして肩の辺りまで掛かる茶色い髪、黒い目。 ここまで見ると普通に見える。だが…… 電灯の光を背中から受けていると言うのに、&color(red){地面に影が出来ていない}。 この特徴から察するに、相手は…… &size(15){「ほ……本物の幽霊だああああっ!!!」} ---- **廃墟の上 「よし。これも成功、と……」 サザロス達を廃墟の屋根から見詰める&color(green){あの少年}。 彼は上機嫌そうに鼻を鳴らせば、独りこう呟いた。 その顔は深刻さを物語っているような陰を秘めていた。 「問題はあの二人か……上手い具合に合流するかな。」 独り言を残せば、彼は街の方へと目を移した。 よく見ると、静まった街から微かな光が漏れている。 それを見るなり、彼は再び柔らかい表情になった。 「さて……おでん食べてこよっと。」 最後に言葉を吐けば、彼は一瞬にして姿を消した…… **廃墟前 少年サイボーグ、『アル』…… 彼にトドメを刺す寸前で、妨害を加えてきた幽霊。 ノゼライが己の身体を抱えている間、俺は相手との睨み合いを繰り広げていた。 「だから……私達は敵じゃない!」 対峙相手は、アルの仲間らしい少女。 そして、街の噂『ゴースト・アンド・サイボーグ』の本人そのものと思われる幽霊である。 「でもソイツは、俺達が盗まれた食料を取り返す邪魔をしたんだぞ!」 「そ、それは……私よ。」 「は?」 アルを庇うように 「……仕方なかったのよ。」
**廃墟前 廃墟から漂う生臭さを気にもせず、俺は戦う。 相手はサイボーグ……どんな攻撃をしてくるか、分かったもんじゃない。 しかし、それでも俺は剣を構えて走る。 何故なら…… 「俺は……!」 **&color(red){「腹が減ったんだああああっ!!!!」} 「戦う理由そっち!?」 見事に突っ込まれたが、俺の言葉は正論だろう。 なんせ時間は既に真夜中、ご飯が恋しくなる頃。 奪われた食料を一刻も早く取り返したいと言うのに、こんな所で邪魔をされては、腹が減るばかりだ。 それに、銃口を此方に向けてくるような奴を素通りする事は、常識的に考えて出来ない。 避けては通れぬ戦い、という事である。 「じゃあ放っといてくれれば良いじゃないですか!」 相手は、此方に向けた銃口にエネルギーを溜めている。 一見は回避不能に見える相手の右手だったが、よく見ると狙いが定まっていない。 もう一回言うが、 銃口を向けてくる奴なんて素通り出来ない。そして、銃口を向けてきたのは紛れも無く相手。 向けてきた本人に言われても、そうはいかないのだ。 やがて、相手の攻撃が始まった。 「くっ……&ruby(クロムバスター){黒鉄の討伐者}!」 相手が&s(){ベタ過ぎる}技の名前を叫ぶと共に、光の銃弾が襲いかかって来る。 狙いは定まっていないが、そのせいで弾が何処に飛んで来るかすら読めない。 それでも俺は剣を構え、相手に向かって走る。 ……と、次の瞬間に見た物は、高速で迫る光。とうとう正面に飛んで来た恐怖の攻撃…… 一か八か、俺は光を弾き返そうと剣を振りかぶった。 そこへ…… 「危ないっ!!」 突然、俺の前の地面に亀裂が入り、氷の壁が現れた。 氷の壁は光弾を受け止め、粒となって降り注ぐ…… 恐らく、後ろのノゼライが助けてくれたのだろう。 そう察した俺はノゼライの方を向いてみた。 彼女は安心したように息をついていたが、俺と目を合わせると微笑みを浮かべた。 駆け寄って来たノゼライと一緒に、再び光を避けながら走る。 そこへ、軽い身のこなしで攻撃を避けていたジャンも加わった。 「サザロス。剣で斬る以外の攻撃は使えないのか?」 なんだ、嫌味を言いに来たのか…… ……と思っていたが、次いでジャンは語り続ける。 「悪魔と戦った時に思ったんだが、お前は&color(red){火を起こす事だけ}に縛られてないか?」 火を起こす事だけ……どういう事なのだろう。 確かに俺は、火を発生させる魔法が得意なのだが、それ以外の属性魔法を使えとでも言っているのだろうか…… そんな事を考えながら、そして遠かった相手との距離を縮めながら、ジャンの話に耳を貸す。 「こんな魔法を使おう、ってイメージがあれば、何とか……よし。『流れ星』をイメージして魔法を使ってみてくれ」 「流れ星を?……よし、分かった!」 ジャンのアドバイスを貰った俺は新しい魔法を期待し、全速力で間合いを詰めた。 一気に攻め上がった俺に動揺した相手は、皮肉にもエネルギーのチャージを止めてしまう。 これはチャンスだ。あとは魔法が成功するかどうか…… 「今だ……喰らえっ、俺の新しい技!」 僅か数メートルしか離れていない相手に向けて、俺は己の腕を振り降ろした。 もっと強い魔法を使える事を望みながら。 そしたら、どうなったと思う? ……そう、成功したのだ。 振った腕の軌道から放たれた、人の顔程の火の玉。 向かって来る火の玉を、相手は右手で弾こうとする。 「ぐぅっ……うわあああっ!!」 堅い腕にぶつかった火の玉は、その相手の硬度には負けなかった。5メートル程度だけ吹っ飛んだ相手は、うつ伏せの状態で倒れたままだ。 この勝負……俺達の勝ちは確定したのだ。 俺はトドメとして、もう一度腕を高く上げる。 新たな魔法……『&ruby(スターダストファイア){炎の星屑}』の構えだ。 そんな俺を見て恐怖した相手は、叫び声をあげる。 「あ、ああっ……うああああああああっ!!!!」 ……ちょっと攻撃する気が退けた。 なんせ、トドメを刺す相手が泣き叫ぶのだから。 そこへ、ノゼライが俺の攻撃を止めるよう言った。 「……やめたげて。」 彼女は俺に近付き、振り上げた俺の腕を降ろさせる。 その目は、何故か悲しげだ。何を思ったのだろう…… &big(){「アルから離れろっ!!!」} 「何だ?………って うわっ!!?」 何処からか聞こえた怒声に驚いていた俺は、何者かに突き飛ばされた。 まさか不意打ちされるとは、思ってもいなかった…… 廃墟の壁に勢いよくぶつかった俺は、背中を擦りながら立ち上がる。 「いっててて……何なんだよ!」 &big(){「お前こそ何だ!アルが何かしたか、アルに何の用だ、私を怒らせようとでも言うのか!!!」} 凄まじい怒りを露にしている相手……だが、驚くべきは怒りの度合いなどではなかった…… それについては、既にジャンが気付いていたようだ。 「サザロスを攻撃したアイツ、何か変だ……!」 顔を歪めたジャン。 何かあるな、と思った俺も相手をよく見てみた。 『アル』と呼ばれた少年サイボーグの前に立つ相手は、俺達と歳の近そうな少女だった。 その服装は昔、アポロンズフィールドに旅行へ来ていた『巫女』と名乗る人が着ていた物と同じ……巫女服、とでも言うべきか。 そして肩の辺りまで掛かる茶色い髪、黒い目。 ここまで見ると普通に見える。だが…… 電灯の光を背中から受けていると言うのに、&color(red){地面に影が出来ていない}。 この特徴から察するに、相手は…… &size(15){「ほ……本物の幽霊だああああっ!!!」} ---- **廃墟の上 「よし。これも成功、と……」 サザロス達を廃墟の屋根から見詰める&color(green){あの少年}。 彼は上機嫌そうに鼻を鳴らせば、独りこう呟いた。 その顔は深刻さを物語っているような陰を秘めていた。 「問題はあの二人か……上手い具合に合流するかな。」 独り言を残せば、彼は街の方へと目を移した。 よく見ると、静まった街から微かな光が漏れている。 それを見るなり、彼は再び柔らかい表情になった。 「さて……おでん食べてこよっと。」 最後に言葉を吐けば、彼は一瞬にして姿を消した…… ー続くー

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