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**スレイド家内 太陽は斜めに落ちていき、同時に月はうっすらと姿を現す昼過ぎ。 俺は、円卓の向こう側に座る相手に、自信満々に自己紹介をしていた。 「俺の名前はサザロス。遥か南にある太陽の国・アポロンズフィールドの王子さ!」 …そう、俺は王子。父さんの手によって栄えた、『太陽の国』と称される魔法の国・アポロンズフィールドの時期国王なのだ。 ジャンは…此方をジッと見詰めて、俺の話を聞いてくれている。興味を持ってくれたのだろう。 その姿を見るなり、俺は自分の話をするのに夢中になっていった。 アポロンズフィールドを旅立ったのは…2、3年前だっただろうか。 あの頃は、やんちゃだった俺も成長していて、王子らしい振る舞いも出来るようになっていた。 そんな俺を育ててくれた父さんは、ある日こう言った… 「サザロス、お前なら立派な国王になれる。お前が王になれるだけの力を手にした時、この王位をお前に託したい」と。 そう言われた時、俺は凄く嬉しかった。なんせ、今まで頼ってきた父さんに認められたのだから。 『早く父さんのように立派な王になりたい』その一心で、俺は旅に出る事にした。 父さんがくれた剣と目指す夢だけ持って、俺は城を出た。 修行の旅という訳だが、大して苦は無かった。 大木を相手に剣を振ったり、動物を追いかけたり、木に登って木の実を食べたり… とにかく、ただ強くなる事だけを目指して、行く先も決まらないまま歩き続けていた。 そのうち、俺はもう15歳になっていた… 「へぇ…修行か。でも、何で此処に来たんだ?修行になるような場所ではないはずなんだけどな」 無我夢中に口を動かす俺に、ジャンは首を傾けつつ問い掛けた。 確かにジャンの言う通りだ。この街は不便が少なく、修行には向かない。 「あぁ、此処に来たのは修行のためじゃないんだ」 俺は即答で答えた。余りの即答っぷりにジャンは顔をしかめたが、とりあえず俺は話を進めた。 実は、此処に来たのは気休めのためである。 と言っても、始めはこのヘブンシティの存在さえ知らなかった。この街の存在を知ったのは、ほんの数日前… 俺はいつものように、ぶらぶらと道を歩いていた。 すると、突然目の前に現れた一人の男… 薄気味悪かった。ちょっと空を見ていただけなのに、気付けば前に立っていたのだから。 魔法だったにしろ、俺の国では見た事の無い類の魔法だった。 ヘブンシティから見れば異国風な服装の俺が言える事ではないが、格好も怪しかった。 まるで宗教団体のようなローブに身を包み、フードで顔をろくに見せていなかった。 そんなわけで、俺は不審に思いながら通ろうとしたのだ。 しかし俺は、その男に呼び止められた。 思わず、初対面であるにも関わらず睨みを効かせてしまったが、彼は構わず俺に話し始めた。 「君…旅人だよね?その服装からすると、アポロンズフィールド出身の15歳前後。」 どうやら、アポロンズフィールドを知っている人らしい。 しかも割と友好的な対応の仕方だったため、俺も多少は気を許した。続けて、彼は俺に問いかける。 「ねぇ、そろそろ旅に疲れてきた頃なんじゃない?そんな君に、ヘブンシティっていう街を勧めたいんだ。」 そう言うと、彼は両の口角を上げた。 顔が見えないため、優しい気持ちで微笑んでいるのか、悪どい考えでにやけているのか、全く分からないが。 彼が言うには、「ヘブンシティは科学力が進んでいて、自然も溢れている。疲れが癒えるだろうし、新たな発見…新たな出会いがあるはずだよ」という話だった。 確かに俺は、休み無く何年か修行を続けていたため、疲れは溜まっていた。 それに、新しい文化を体験するのも、王になった時に有効な経験になると思った。 だから、俺は彼の持ちかけた話を飲み、この街へやって来た… 「………という事で、俺はここに来たんだ。」 長らく口を止めた俺を見るなり、ジャンは机に突っ伏した。どうやら、話を聞く事に疲れたらしい。 ……そんなに長い間、俺は語っていたのだろうか。 そこへ、さっき部屋を出ていったミリフィアが戻って来た。手に持っているのは、待ちわびた食べ物だ。それも、ミリフィアがわざわざ作ってくれたらしい。 「ぅわおっ!!!」 皿に盛られた、バターの香り漂うオムレツ。 オムレツに添えられた、小さなハンバーグ。 そして、彼女に続いて後ろから来たエルフィアが持ってきてくれた、俺の国でも「美味しい」と噂のレモンスカッシュ… これは最高のご馳走である。調理された食べ物なんて、実に3年ぶりだ。 円卓に乗せられた料理を、俺は飢えた獣のように食べ始める。それを見る3人の兄弟は、俺を観察するような目で見てくる。 「サザロス、この街には慣れてないだろ。それ食べ終わったら、街を廻ってみないか?」 ジャンが俺に提案する。そんな彼に、俺は元気よく賛成した。 そして、再び料理にかぶりついた。 今は、日が沈んでいき、月がハッキリと姿を現す夕暮れの時間。 その頃この街の何処かで、感じる事さえ出来ないような僅かな『月光』が、この街に降り注いでいた。 そして、その月を包まんとする夜の闇も…
**スレイド家内 太陽は斜めに落ちていき、同時に月はうっすらと姿を現す昼過ぎ。 俺は、円卓の向こう側に座る相手に、自信満々に自己紹介をしていた。 「俺の名前はサザロス。遥か南にある太陽の国・アポロンズフィールドの王子さ!」 ……そう、俺は王子。父さんの手によって栄えた、『太陽の国』と称される魔法の国・アポロンズフィールドの時期国王なのだ。 ジャンは……此方をジッと見詰めて、俺の話を聞いてくれている。興味を持ってくれたのだろうか。 ……まぁ、その目には疑心の意味も込められているのかも知れないが。 とにかく俺はその姿を見るなり、自分の話をするのに夢中になっていった。 アポロンズフィールドを旅立ったのは……2、3年前だっただろうか。 あの頃は、やんちゃだった俺も成長していて、王子らしい振る舞いも出来るようになっていた。 そんな俺を育ててくれた父さんは、ある日こう言った…… 「サザロス、お前なら立派な国王になれる。お前が王になれるだけの力を手にした時、この王位をお前に託したい」と。 そう言われた時、俺は凄く嬉しかった。なんせ、今まで頼ってきた父さんに認められたのだから。 『早く父さんのように立派な王になりたい』その一心で、俺は旅に出る事にした。 父さんがくれた剣と目指す夢だけ持って、俺は城を出た。 修行の旅という訳だが、大して苦は無かった。 大木を相手に剣を振ったり、動物を追いかけたり、木に登って木の実を食べたり…… とにかく、ただ強くなる事だけを目指して、行く先も決まらないまま歩き続けていた。 そのうち、俺はもう15歳になっていた…… 「へぇ……修行か。でも、何で此処に来たんだ?修行になるような場所ではないはずなんだけどな」 無我夢中に口を動かす俺に、ジャンは首を傾けつつ問い掛けた。 確かにジャンの言う通りだ。この街は不便が少なく、修行には向かない。 「此処に来たのは修行のためじゃないんだ」 俺は即答で答えた。 余りの即答っぷりにジャンは顔をしかめたが、とりあえず俺は話を進めた。 実は、此処に来たのは修行のためではない。 因みに俺は、始めはこのヘブンシティの存在さえ知らなかった。この街の存在を知ったのは、ほんの数日前…… 俺はいつものように、ぶらぶらと道を歩いていた。 すると、突然目の前に現れた一人の男…… 薄気味悪かった。ちょっと空を見ていただけなのに、顔の向きを正面に下ろした時、誰も居なかった筈の目の前に人が立っていたのだから。 魔法だったにしろ、俺の国では見た事の無い類の魔法だ。 ヘブンシティから見れば異国風な服装の俺が言える事ではないが、格好も怪しかった。 まるで宗教団体のようなローブに身を包み、フードで顔をろくに見せていなかった。 そんなわけで、俺は不審に思いながら通ろうとしたのだ。 しかし俺は、その男に呼び止められた。 思わず、初対面であるにも関わらず睨みを効かせてしまったが、彼は構わず俺に話し始めた。 「君……旅人だよね?その服装からすると、アポロンズフィールド出身の15歳前後。」 どうやら、アポロンズフィールドを知っている人らしい。 しかも割と友好的な対応の仕方だったため、俺も多少は気を許した。続けて、彼は俺に問いかける。 「ねぇ、そろそろ旅に疲れてきた頃なんじゃない?そんな君に、ヘブンシティっていう街を勧めたいんだ。」 そう言うと、彼は両の口角を上げた。 顔が見えないため、優しい気持ちで微笑んでいるのか、悪どい考えでにやけているのか、全く分からないが。 彼が言うには、「ヘブンシティは科学力が進んでいて、自然も溢れている。疲れが癒えるだろうし、新たな発見や出会いがあるはずだよ」という話だった。 確かに俺は、休み無く何年か修行を続けていたため、疲れは溜まっていた。 それに、新しい文化を体験するのも、王になった時に有効な経験になると思った。 だから、俺は彼の持ちかけた話を飲み、この街へやって来た…… 「……という事で、俺はここに来たんだ。」 長らく口を止めた俺を見るなり、ジャンは机に突っ伏した。どうやら、話を聞く事に疲れたらしい。 ……そんなに長い間、俺は語っていたのだろうか。それとも、退屈な話し方だったのだろうか。 そこへ、さっき部屋を出ていったミリフィアが戻って来た。手に持っているのは、待ちわびた食べ物だ。それも、ミリフィアがわざわざ作ってくれたらしい。 「ぅわおっ!!!」 皿に盛られた、バターの香り漂うオムレツ。 オムレツに添えられた、小さなハンバーグ。 そして、彼女に続いて後ろから来たエルフィアが持ってきてくれた、俺の国でも「美味しい」と噂のレモンスカッシュ…… これは最高のご馳走である。調理された食べ物なんて、実に3年ぶりだ。 円卓に乗せられた料理を、俺は飢えた獣のように食べ始める。それを見る3人の兄弟は、俺を観察するような目で見てくる。 「サザロス、この街には慣れてないだろ。それ食べ終わったら、街を廻ってみないか?」 ジャンが俺に提案する。そんな彼に、俺は元気よく賛成した。 そして、再び料理にかぶりついた。 今は、日が沈んでいき、月がハッキリと姿を現す夕暮れの時間。 その頃この街の何処かで、感じる事さえ出来ないような僅かな『月光』が、この街に降り注いでいた。 そして、その月を包まんとする夜の闇も……

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