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「第二話 太陽の歩み」(2012/05/30 (水) 17:33:11) の最新版変更点
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**スレイド家内
太陽は斜めに落ちていき、同時に月はうっすらと姿を現す昼過ぎ。
俺は、円卓の向こう側に座る相手に、自信満々に自己紹介をしていた。
「俺の名前はサザロス。遥か南にある太陽の国・アポロンズフィールドの王子さ!」
…そう、俺は王子。父さんの手によって栄えた、『太陽の国』と称される魔法の国・アポロンズフィールドの時期国王なのだ。
ジャンは…此方をジッと見詰めて、俺の話を聞いてくれている。興味を持ってくれたのだろう。
その姿を見るなり、俺は自分の話をするのに夢中になっていった。
アポロンズフィールドを旅立ったのは…2、3年前だっただろうか。
あの頃は、やんちゃだった俺も成長していて、王子らしい振る舞いも出来るようになっていた。
そんな俺を育ててくれた父さんは、ある日こう言った…
「サザロス、お前なら立派な国王になれる。お前が王になれるだけの力を手にした時、この王位をお前に託したい」と。
そう言われた時、俺は凄く嬉しかった。なんせ、今まで頼ってきた父さんに認められたのだから。
『早く父さんのように立派な王になりたい』その一心で、俺は旅に出る事にした。
父さんがくれた剣と目指す夢だけ持って、俺は城を出た。
修行の旅という訳だが、大して苦は無かった。
大木を相手に剣を振ったり、動物を追いかけたり、木に登って木の実を食べたり…
とにかく、ただ強くなる事だけを目指して、行く先も決まらないまま歩き続けていた。
そのうち、俺はもう15歳になっていた…
「へぇ…修行か。でも、何で此処に来たんだ?修行になるような場所ではないはずなんだけどな」
無我夢中に口を動かす俺に、ジャンは首を傾けつつ問い掛けた。
確かにジャンの言う通りだ。この街は不便が少なく、修行には向かない。
「あぁ、此処に来たのは修行のためじゃないんだ」
俺は即答で答えた。余りの即答っぷりにジャンは顔をしかめたが、とりあえず俺は話を進めた。
実は、此処に来たのは気休めのためである。
と言っても、始めはこのヘブンシティの存在さえ知らなかった。この街の存在を知ったのは、ほんの数日前…
俺はいつものように、ぶらぶらと道を歩いていた。
すると、突然目の前に現れた一人の男…
薄気味悪かった。ちょっと空を見ていただけなのに、気付けば前に立っていたのだから。
魔法だったにしろ、俺の国では見た事の無い類の魔法だった。
ヘブンシティから見れば異国風な服装の俺が言える事ではないが、格好も怪しかった。
まるで宗教団体のようなローブに身を包み、フードで顔をろくに見せていなかった。
そんなわけで、俺は不審に思いながら通ろうとしたのだ。
しかし俺は、その男に呼び止められた。
思わず、初対面であるにも関わらず睨みを効かせてしまったが、彼は構わず俺に話し始めた。
「君…旅人だよね?その服装からすると、アポロンズフィールド出身の15歳前後。」
どうやら、アポロンズフィールドを知っている人らしい。
しかも割と友好的な対応の仕方だったため、俺も多少は気を許した。続けて、彼は俺に問いかける。
「ねぇ、そろそろ旅に疲れてきた頃なんじゃない?そんな君に、ヘブンシティっていう街を勧めたいんだ。」
そう言うと、彼は両の口角を上げた。
顔が見えないため、優しい気持ちで微笑んでいるのか、悪どい考えでにやけているのか、全く分からないが。
彼が言うには、「ヘブンシティは科学力が進んでいて、自然も溢れている。疲れが癒えるだろうし、新たな発見…新たな出会いがあるはずだよ」という話だった。
確かに俺は、休み無く何年か修行を続けていたため、疲れは溜まっていた。
それに、新しい文化を体験するのも、王になった時に有効な経験になると思った。
だから、俺は彼の持ちかけた話を飲み、この街へやって来た…
「………という事で、俺はここに来たんだ。」
長らく口を止めた俺を見るなり、ジャンは机に突っ伏した。どうやら、話を聞く事に疲れたらしい。
……そんなに長い間、俺は語っていたのだろうか。
そこへ、さっき部屋を出ていったミリフィアが戻って来た。手に持っているのは、待ちわびた食べ物だ。それも、ミリフィアがわざわざ作ってくれたらしい。
「ぅわおっ!!!」
皿に盛られた、バターの香り漂うオムレツ。
オムレツに添えられた、小さなハンバーグ。
そして、彼女に続いて後ろから来たエルフィアが持ってきてくれた、俺の国でも「美味しい」と噂のレモンスカッシュ…
これは最高のご馳走である。調理された食べ物なんて、実に3年ぶりだ。
円卓に乗せられた料理を、俺は飢えた獣のように食べ始める。それを見る3人の兄弟は、俺を観察するような目で見てくる。
「サザロス、この街には慣れてないだろ。それ食べ終わったら、街を廻ってみないか?」
ジャンが俺に提案する。そんな彼に、俺は元気よく賛成した。
そして、再び料理にかぶりついた。
今は、日が沈んでいき、月がハッキリと姿を現す夕暮れの時間。
その頃この街の何処かで、感じる事さえ出来ないような僅かな『月光』が、この街に降り注いでいた。
そして、その月を包まんとする夜の闇も…
**スレイド家内
太陽は斜めに落ちていき、同時に月はうっすらと姿を現す昼過ぎ。
俺は、円卓の向こう側に座る相手に、自信満々に自己紹介をしていた。
「俺の名前はサザロス。遥か南にある太陽の国・アポロンズフィールドの王子さ!」
……そう、俺は王子。父さんの手によって栄えた、『太陽の国』と称される魔法の国・アポロンズフィールドの時期国王なのだ。
ジャンは……此方をジッと見詰めて、俺の話を聞いてくれている。興味を持ってくれたのだろうか。
……まぁ、その目には疑心の意味も込められているのかも知れないが。
とにかく俺はその姿を見るなり、自分の話をするのに夢中になっていった。
アポロンズフィールドを旅立ったのは……2、3年前だっただろうか。
あの頃は、やんちゃだった俺も成長していて、王子らしい振る舞いも出来るようになっていた。
そんな俺を育ててくれた父さんは、ある日こう言った……
「サザロス、お前なら立派な国王になれる。お前が王になれるだけの力を手にした時、この王位をお前に託したい」と。
そう言われた時、俺は凄く嬉しかった。なんせ、今まで頼ってきた父さんに認められたのだから。
『早く父さんのように立派な王になりたい』その一心で、俺は旅に出る事にした。
父さんがくれた剣と目指す夢だけ持って、俺は城を出た。
修行の旅という訳だが、大して苦は無かった。
大木を相手に剣を振ったり、動物を追いかけたり、木に登って木の実を食べたり……
とにかく、ただ強くなる事だけを目指して、行く先も決まらないまま歩き続けていた。
そのうち、俺はもう15歳になっていた……
「へぇ……修行か。でも、何で此処に来たんだ?修行になるような場所ではないはずなんだけどな」
無我夢中に口を動かす俺に、ジャンは首を傾けつつ問い掛けた。
確かにジャンの言う通りだ。この街は不便が少なく、修行には向かない。
「此処に来たのは修行のためじゃないんだ」
俺は即答で答えた。
余りの即答っぷりにジャンは顔をしかめたが、とりあえず俺は話を進めた。
実は、此処に来たのは修行のためではない。
因みに俺は、始めはこのヘブンシティの存在さえ知らなかった。この街の存在を知ったのは、ほんの数日前……
俺はいつものように、ぶらぶらと道を歩いていた。
すると、突然目の前に現れた一人の男……
薄気味悪かった。ちょっと空を見ていただけなのに、顔の向きを正面に下ろした時、誰も居なかった筈の目の前に人が立っていたのだから。
魔法だったにしろ、俺の国では見た事の無い類の魔法だ。
ヘブンシティから見れば異国風な服装の俺が言える事ではないが、格好も怪しかった。
まるで宗教団体のようなローブに身を包み、フードで顔をろくに見せていなかった。
そんなわけで、俺は不審に思いながら通ろうとしたのだ。
しかし俺は、その男に呼び止められた。
思わず、初対面であるにも関わらず睨みを効かせてしまったが、彼は構わず俺に話し始めた。
「君……旅人だよね?その服装からすると、アポロンズフィールド出身の15歳前後。」
どうやら、アポロンズフィールドを知っている人らしい。
しかも割と友好的な対応の仕方だったため、俺も多少は気を許した。続けて、彼は俺に問いかける。
「ねぇ、そろそろ旅に疲れてきた頃なんじゃない?そんな君に、ヘブンシティっていう街を勧めたいんだ。」
そう言うと、彼は両の口角を上げた。
顔が見えないため、優しい気持ちで微笑んでいるのか、悪どい考えでにやけているのか、全く分からないが。
彼が言うには、「ヘブンシティは科学力が進んでいて、自然も溢れている。疲れが癒えるだろうし、新たな発見や出会いがあるはずだよ」という話だった。
確かに俺は、休み無く何年か修行を続けていたため、疲れは溜まっていた。
それに、新しい文化を体験するのも、王になった時に有効な経験になると思った。
だから、俺は彼の持ちかけた話を飲み、この街へやって来た……
「……という事で、俺はここに来たんだ。」
長らく口を止めた俺を見るなり、ジャンは机に突っ伏した。どうやら、話を聞く事に疲れたらしい。
……そんなに長い間、俺は語っていたのだろうか。それとも、退屈な話し方だったのだろうか。
そこへ、さっき部屋を出ていったミリフィアが戻って来た。手に持っているのは、待ちわびた食べ物だ。それも、ミリフィアがわざわざ作ってくれたらしい。
「ぅわおっ!!!」
皿に盛られた、バターの香り漂うオムレツ。
オムレツに添えられた、小さなハンバーグ。
そして、彼女に続いて後ろから来たエルフィアが持ってきてくれた、俺の国でも「美味しい」と噂のレモンスカッシュ……
これは最高のご馳走である。調理された食べ物なんて、実に3年ぶりだ。
円卓に乗せられた料理を、俺は飢えた獣のように食べ始める。それを見る3人の兄弟は、俺を観察するような目で見てくる。
「サザロス、この街には慣れてないだろ。それ食べ終わったら、街を廻ってみないか?」
ジャンが俺に提案する。そんな彼に、俺は元気よく賛成した。
そして、再び料理にかぶりついた。
今は、日が沈んでいき、月がハッキリと姿を現す夕暮れの時間。
その頃この街の何処かで、感じる事さえ出来ないような僅かな『月光』が、この街に降り注いでいた。
そして、その月を包まんとする夜の闇も……