減損会計

 1.減損会計の意義

 
 減損会計とは、固定資産の潜在的な価値が低下して帳簿価額が回収できない状態となった場合に、価値の低下に伴って将来発生が予想される損失を、前倒しで財務諸表に反映させるために行われる会計処理のことである。
 

2.減損会計の特徴

 
(1)  臨時的に行われるもの(→減価償却との違い)
 
(2)  投資の回収計算の視点(→時価評価、臨時償却との違い)
 
(3)  期末だけの会計処理ではない(→実務的な事情を考慮)
 
(4)  評価損は計上するが評価益は計上しない(→時価評価との違い)
 

3.適用対象資産

 
事業用固定資産に対して適用する。
 
- - ×
貸借対照表の区分 具体的資産名 判定
流動資産    
固定資産
建物、構築物、機械装置、車両、工具器具備品、土地、建設仮勘定など
     
     
無形固定資産 営業権、特許権、商標権、借地権、自社利用のソフトウェアなど ○
市場販売目的のソフトウェア ×
投資その他の資産 有価証券、貸付金、繰延税金資産など ×
投資不動産 ○
注 記 所有権移転外ファイナンス・リースを賃貸借処理している場合 ○
 
 

4. 適用手順

 
資産のグルーピング (注) キャッシュ・フローを生み出す最小単位を設定する。
減損の兆候の把握 (注) 減損が生じている可能性を示す事象があるか?
減損損失を認識するかどうかの判定 (注) 帳簿価額 ⇔ 割引前将来キャッシュ・フローの総額
減損損失の測定 (注) 帳簿価額-回収可能価額
減損損失の計上
 
 
<現 在> <将 来>
 
 
 現在価値     キャッシュ・フロー 
∧ ・・・・・ 減損損失の計上
 
帳簿価額
 
 
 
5. 会計処理と表示
 
(1)  会計処理
(減損損失) ×××    (固定資産)     ×××
-特別損失-
* 帳簿価額 - 回収可能価額
(2)  表 示
原則:減損処理前の取得原価から減損損失を直接控除
容認①:減損損失累計額を取得原価から間接控除(減損損失累計額・減価償却累計額は区別)
容認②:減損損失累計額を取得原価から間接控除(減損損失累計額・減価償却累計額を合算)
なお減価償却と減損損失の性格は異なるため、減価償却累計額と減損損失累計額の表示方法は統一する必要はない。
具体的例示(減価償却累計額の表示方法は間接控除法)
取得原価:1,000,000 減価償却累計額:500,000 減損損失累計額:300,000
原則(直接控除形式) 容認①(独立間接控除形式)
建     物 700,000
減価償却累計額 500,000 200,000
建     物 1,000,000
減価償却累計額 500,000
減損損失累計額 300,000 200,000
 
 
容認②(合算間接控除形式) 容認②(合算間接控除形式)
建     物 1,000,000
減価償却累計額及び減損損失累計額 800,000 200,000
 
建     物 1,000,000
減価償却累計額 800,000 200,000
 (注) 減価償却累計額には減損損失累計額300,000が含まれている。
 
6. 会計基準及び適用時期
 
(1)  会計基準等
名  称 作 成 年月日
固定資産の減損に係る会計基準の設定に関する意見書
(固定資産の減損に係る会計基準・固定資産の減損に係る会計基準注解) 企業会計審議会 平成14年8月9日
固定資産の減損に係る会計基準の適用指針
(企業会計基準適用指針第6号) 企業会計基準委員会 平成15年10月31日
(2)  適用時期
① 早期適用:平成16年3月31日に終了する事業年度
② 原則適用:平成17年4月1日以降開始する事業年度
 
 
 
 
1. 資産のグルーピングの方法
 
他の資産または資産グループのキャッシュ・フローから、概ね独立したキャッシュ・フローを生み出す最小の単位について、減損を考慮する。
(1)  継続的な収支を把握できる単位であること。
(2)  キャッシュ・フローが他の単位と相互補完性でないこと。
(当該単位を切り離したときに、他のグループのキャッシュ・フローに大きな影響がない)
(3)  遊休資産は、重要なものはそれだけでキャッシュ・フローを生み出す最小の単位とする。
 
 
以下に示す〔資 料〕は、当社の固定資産の状況である。減損会計を適用するに当たっての資産のグルーピングを行いなさい。
 
〔資 料〕
(単位:百万円)
A部門 B部門 C部門 遊休資産 合計
建物 300   200   100   0   600  
機械装置 150   200   300   0   650  
器具備品 50   0   100   0   150  
土地 0   900   1,200   500   2,600  
合 計 500  
1,300  
1,700  
500  
4,000  
A~C部門は、管理会計上の部門である。
遊休資産となっている土地は、当社にとって重要性がある。
 
 
   解  答                             (単位:百万円)
A部門 B部門 C部門 遊休資産
500
1300
1,700
500
 
 
   解  説   
1. 遊休資産
遊休資産は、それだけで独立の単位とする。
2. 管理会計の部門
通常、管理会計の事業部門は独立したキャッシュ・フローを生み出す単位とされる。
 
 
 
 
1. 減損の兆候とは
 
減損が生じている可能性を示す事象のこと。
 
2. 適用指針における減損の兆候の例示
 
① 営業活動から生ずる損益*1またはキャッシュ・フローが継続して*2マイナスか、継続して*2マイナスとなる見込みである。
② 使用範囲または方法について回収可能価額を著しく低下させる変化*3がある。
③ 経営環境が著しく悪化している。
④ 市場価格が著しく下落*4している。
*1 営業活動から生ずる損益
管理会計上の損益区分に基づく営業上の取引に関連して生じた損益
項 目 判定
売上高 ○
売上原価 ○
販売費・一般管理費 ○
本社費等 ○
棚卸資産の評価損 ○
支払利息・受取利息などの営業外損益等 ×
利益を課税標準とする税金 ×
*2 実質的に3期連続の場合を指す。
*3 事業の廃止や再編、著しく早い処分、予定と異なる用途への変更、遊休状態など
*4 簿価の概ね50%以上の下落
 
 
 
当社の事業部Sはここ数年赤字傾向にある。以下の〔資 料〕を参考にして、事業部Sは減損の兆候が見られるかどうか、判断しなさい。
 
〔資 料〕 ここ数年の事業部Sの事業部別損益計算書(管理会計資料)
(単位:百万円)
項 目 12期 13期 14期 当期見込
売上高 5,000   4,000   3,000   2,500  
売上原価 △4,000   △3,600   △2,700   △2,400  
販売費・一般管理費 △500   △450   △400   △350  
本社費負担額 △120   △120   △120   △100  
棚卸資産の評価損 0   0   △500   △400  
支払利息 △200   △200   △200   △200  
法人税等負担額 △70   0   0   0  
事業部利益 110   △370   △920   △950  
* 売上原価及び販管費の中には減価償却費が各期200百万円含まれている。
 
 
   解  答   
減損の兆候がある。
 
   解  説   
支払利息、法人税等負担額を除いて事業部利益を再計算してみる。なお、キャッシュ・フローではないので、減価償却は含めて計算する。
項 目 12期 13期 14期 当期見込
売上高 5,000   4,000   3,000   2,500  
売上原価 △4,000   △3,600   △2,700   △2,400  
販売費・一般管理費 △500   △450   △400   △350  
本社費負担額 △120   △120   △120   △100  
棚卸資産の評価損 0   0   △500   △400  
事業部利益 380   △170   △720   △750  
この結果、当期見込を含めて3期連続赤字となっているので、減損の兆候が見られる。
 
 
 
 
1. 判定方法
 
帳簿価額 > 割引前将来キャッシュ・フローの総額
この場合に、減損損失を認識する。
 
2. 割引前将来キャッシュ・フローの見積方法
 
(1)  見積期間
資産の経済的残存使用年数*1 短いほう
20年*3
資産グループの中の主要な資産*2の経済的残存使用年数
*1 著しい相違がある等の不合理がなければ税法上の残存耐用年数によってもよい。
*2 資産グループの中で、将来キャッシュ・フローに最も重要な構成資産のこと。
*3 20年としたのは見積期間が長期になる場合、見積の不確実性が高くなるためである。
(2)  割引前将来キャッシュ・フローの見積方法
① 経済的残存使用年数が20年以内の場合
将来C・Fの総額 : 割引前将来C・F + 正味売却価額*
(見積期間分) (見積期間経過時点)
* 正確には資産または資産グループの主要な資産の経済的残存使用年数経過時点での正味売却価額のこと。
② 経済的残存使用年数が20年超の場合
将来C・Fの総額 : 割引前将来C・F + 回収可能価額*
(20年分) (20年経過時点)
* 次の2つの価額のうちの高い金額のこと。
20年経過時点での正味売却価額
20年経過時点での使用価値
 
現時点 20年後 経済的残存使用年数
 
20年時点での現在価値 21年以降のC・F
大きいほう 割 引
正味売却価額
 
③ 用語解説
用  語 意    義
正味売却価額 時価より処分費用見込額を差し引いた金額のこと。
時価 公正な評価額のこと。通常、観察可能な市場価格のことを言い、市場価格が観察できない場合は、合理的に算定された価額のことを言う。
回収可能価額 資産または資産グループの正味売却価額と使用価値のいずれか高い金額のこと。
使用価値 資産または資産グループの継続使用と使用後の処分により生ずると見込まれる将来キャッシュ・フローの現在価値
(3)  将来キャッシュ・フローの見積に当たっての注意点
① 営業活動から生ずる損益に係わるキャッシュ・フローにより計算する。
(第3節減損の兆候2.①参照のこと。ただし、キャッシュ・フローなので減価償却などの調整が必要である。)
② 資産または資産グループの現在の使用状況と合理的な使用計画等を考慮する。
(現在の価値を維持するための修繕費や合理的に予想される設備投資を加味する。よって、計画されていない将来の設備増強や事業の再編は含めない。)
③ 将来キャッシュ・フローの見積方法には最頻値法と期待値法がある。
最頻値法:最も起こりやすい数値を持って予測値とする方法
期待値法:それぞれのキャッシュ・フローの起こりやすさを、その確率で加重平均して予測値とする方法
④ 割引率は貨幣の時間価値を反映した税引前の利率とする。
(税引前とするのは、将来キャッシュ・フローが税引前の数値であるから。)
⑤ 将来キャッシュ・フローが見積値から乖離するリスクは加味しない。
(ただし、減損損失の測定では加味する。)
 
 
当社のA資産グループに減損の兆候が認められたため、減損損失の認識判定を行うことになった。判定に当たっての割引前将来キャッシュ・フローを求め、判定しなさい。計算の結果、百万円未満の端数が生じるときは、四捨五入しなさい。
1. A資産グループの資産構成
帳簿価額 経済的残存使用年数 正味売却価額
資産X(主要な資産) 4,000百万円 25年 160百万円*
資産Y 100百万円 10年 8 百万円*
* 経済的残存使用年数が到来した時の価額である。
2. 資産Yは10年経過後に再投資するが、当該資産Yの25年経過時点の正味売却価額は8百万円とする。
3. 当社の用いる割引率は5%とする。
4. 割引前将来キャッシュ・フローの状況は以下のとおりである。(単位:百万円)
1~10年間 10年経過後
資産Y再投資 11~20年 21~25年 25年経過後
資産X売却 資産Y売却
1,600 △140 1,400 毎年60 160 8
5. A資産グループの20年経過時点での正味売却価額は168百万円である。
 
 
   解  答   
割引前将来キャッシュ・フロー: 3,259  百万円
判定: 減損損失の計上を行う。
 
   解  説                                                       (単位:百万円)
1.  20年経過時点での回収可能価額
主要な資産Xは経済的残存使用年数が20年を超えるため、20年経過時点での回収可能価額を算定しなければならない。
(1)  20年以降のキャッシュ・フローの20年経過時点での現在価値
60 + 60 + 60 + 60 + 60+160+8
1.05 (1.05)2 (1.05)3 (1.05)4 (1.05)5
=391.400→391
(2)  20年経過時点での正味売却価額:168
(3)  回収可能価額
391>168   ∴ 391
2. 割引前将来キャッシュ・フローの総額
1,600 + 資産Y売却8 - 資産Y再投資140 + 1,400 + 391 = 3,259
3. 判定
帳簿価額:4,000+100=4,100
割引前将来キャッシュ・フローの総額:3,259
4,100>3,259
よって、減損損失の計上を行う。
 
 
 
 
1. 減損損失の測定
 
(1)  減損損失
帳簿価額 - 回収可能価額
(2)  回収可能価額
正味売却価額と使用価値のいずれか高い金額
(3)  減損損失を認識するかどうかの判定と異なる点
① 将来キャッシュ・フローをすべて現在価値に割り引く
② 将来キャッシュ・フローが見積値から乖離するリスクを加味する。
割引率に乖離リスクを反映させる方法*(実務上はこちらが多い。)
将来キャッシュ・フローに乖離リスクを反映させる方法
* 具体的には以下のようなものが考えられる。
(A) 固有のリスクを反映した収益率
(B) 加重平均資本コスト
(C) 類似した資産または資産グループに固有のリスクを反映した市場平均と考えられる合理的な収益率(市場平均収益率)
(D) その資産または資産グループのみを裏づけとして大部分の資金調達を行った時に適用されると合理的に見積もられる利率(ノン・リコースの利率)
 
2. 減損損失の計上
 
回収可能価額まで帳簿価額を減額する。
(1)  会計処理
(減損損失) ×××    (固定資産)     ×××
-特別損失-
* 帳簿価額 - 回収可能価額
(2)  資産グループの場合
(減損損失) ×××    (建物)     ×××
   (機械装置)     ×××
   (工具器具備品)     ×××
   (土地)     ×××
 
* 資産グループの減損損失は、各資産に配分する。
各構成資産の帳簿価額の比率による配分
配分方法 各構成資産の時価を考慮した配分
その他合理的な方法による配分
 
3. 減損処理後の会計処理
 
(1)  切り下げ後の帳簿価額に基づいて、通常の減価償却計算を行う。処分予定資産についても、減価償却する。
(2)  減損損失の戻し入れは行わない。
 
 
 
当期(第10期)の期末時点において当社のA資産グループについて減損の兆候が発生しているため、減損損失の認識の判定及び減損損失の測定を行うことになった。そこで以下の諸問に答えなさい。計算の結果、千円未満の端数が生じるときは、四捨五入しなさい。
問1 減損損失の認識判定を行いなさい。
問2 減損損失の測定を行い、仕訳を示しなさい。
1. A資産グループの固定資産の状況
帳簿価額 経済的残存使用年数
(当期末時点) 正味売却価額
当期末時点 10年後(第20期末)
50,000千円 10年 30,000千円 5,000千円
2. 今後10年間のA資産グループの損益見込及びキャッシュ・フローの見込
(単位:千円)
当期(第10期) 第11期~第15期 第16期~第20期
営業利益 △4,000    毎年△4,000   毎年2,000  
設備投資* △100    毎年 △100   毎年△200  
減価償却費 4,500    毎年 4,500   毎年4,500  
キャッシュ・フロー 400    毎年  400   毎年6,300  
*  設備投資は既存の資産の修繕維持費用である。
3. 当社の用いる割引率は5%とする。なお現在価値係数は以下のとおりである。
1年後 2年後 3年後 4年後 5年後 6年後 7年後 8年後 9年後 10年後
0.952 0.907 0.864 0.823 0.784 0.746 0.711 0.677 0.645 0.614
 
 
   解  答   
問1 割引前将来キャッシュ・フローの総額38,500千円は、帳簿価額50,000千円より小さいので、減損を認識する。
 
問2  (単位:千円)
(減損損失) 20,000    (固定資産) 20,000
 
 
 
   解  説                                                         (単位:千円)
1. 将来キャッシュ・フローの計算
現在価値係数 C・F 現在価値
当期末 1.000
1年後(第11期) 0.952 400 380.8
2年後(第12期) 0.907 400 362.8
3年後(第13期) 0.864 400 345.6
4年後(第14期) 0.823 400 329.2
5年後(第15期) 0.784 400 313.6
6年後(第16期) 0.746 6,300 4,699.8
7年後(第17期) 0.711 6,300 4,479.3
8年後(第18期) 0.677 6,300 4,265.1
9年後(第19期) 0.645 6,300 4,063.5
10年後(第20期) 0.614 11,300* 6,938.2
38,500
26,177.9
 
* C・F6,300+正味売却価額5,000=11,300
2. 減損の認識の判定
将来C・Fの総額:割引前C・F+正味売却価額=38,500
∴ 帳簿価額50,000 > 割引前将来C・Fの総額38,500
減損を認識する。
3. 減損損失の測定
将来C・Fの現在価値26,177.9 < 現時点の正味売却価額30,000
∴ 回収可能価額は正味売却価額30,000となる。
帳簿価額50,000-回収可能価額30,000=20,000
 
 
 
当社のA事業部門に減損の兆候が認められたため、減損損失の認識判定の結果減損処理を行うことになった。減損会計適用に係わる仕訳を示しなさい。
1. A事業部門の資産構成(単位:千円)
帳簿価額
建物 600,000       
機械装置 300,000       
器具備品 100,000       
合 計 1,000,000       
2. A事業部門の回収可能価額は750,000千円であった。
3. A事業部門を減損判定の資産グループとしている。
 
 
   解  答                                                         (単位:千円)
(減損損失) 250,000    (建物) 150,000
   (機械装置) 75,000
   (器具備品) 25,000
 
   解  説                                                        (単位:千円)
1. 減損損失
帳簿価額1,000,000 - 回収可能価額750,000=250,000
2. 減損損失の配分
問題には帳簿価額しか示されていないので、帳簿価額の比により配分する。
帳簿価額 帳簿価額比 減損損失の配分額
建物 600,000     60%       150,000     
機械装置 300,000     30%       75,000     
器具備品 100,000     10%       25,000     
合 計 1,000,000     100%       250,000     
 
 
 
 
 
1. 共用資産とは
 
本社ビル、研究施設、工場の管理棟、社宅、保養所など、単独ではキャッシュ・フローを生成しないが、他の複数の資産または資産グループのキャッシュ・フロー生成に寄与する資産
 
2. 共用資産がある場合の減損手続
 
(1)  共用資産を加えたより大きな単位で減損処理を行う方法(原則)
共用資産が関連する複数の資産または資産グループに共用資産を加えたより大きな単位で減損処理を行う。
(2)  共用資産の帳簿価額を各資産または資産グループに配分する方法(例外処理)
共用資産の帳簿価額を合理的な基準により各資産または資産グループに配分し、各資産または資産グループごとに減損処理を行う。
 
3. 共用資産を加えたより大きな単位で減損処理を行う方法
 
(1) 減損処理手順
共用資産を含まない資産または資産グループごとに、減損の兆候・減損損失の認識の判定・減損損失の測定と計上を行う。
 
 
減損の兆候 共用資産を含むより大きな単位について減損の兆候が見られる。
 
共用資産そのものに減損の兆候が見られる。
 
 
減損損失の認識の判定 共用資産を含むより大きな単位で判定
 
 
減損損失の測定と計上 共用資産を含むより大きな単位で測定・計上する。
 
 
(2)  減損損失の配分
① 減損損失の配分は次のようになる。
共用資産を加えることによる減損損失総額
各資産または資産グループの減損損失 共用資産を加えることによる
減損損失増加額
 
各資産または資産グループに配分 共用資産に配分
② 会計処理
減損損失増加額だけ共用資産の帳簿価額を減額する。
(減損損失) ×××    (固定資産)     ×××
-特別損失- -共用資産-
(3)  共用資産の正味売却価額が判明している場合の注意点
① 注意点
減損処理後の共用資産の帳簿価額は、正味売却価額以上でなければならない。そのため、共用資産を加えることによる減損損失増加額が、共用資産の帳簿価額から正味売却価額を差し引いた差額を超える場合、その超過額につき共用資産を含まない資産または資産グループに合理的な基準で配分しなければならない。
例えば、次のような事例を考えてみる。
共用資産の減損処理前簿価: 1,000
共用資産を加えることによる減損損失増加額:700
共用資産の正味売却価額:600
この場合、共用資産の減損最大額は、簿価1,000-正味売却価額600=400となり、減損損失増加額のうち、共用資産に配分できるのも、400となる。そのため残りの300については、共用資産を含まない資産または資産グループに配分することになる。
共用資産の簿価 最大減損額
 
 
共用資産の
正味売却価額 共用資産を含まない
 
資産または資産グループ
に配分
 
 
② 会計処理
(減損損失) ×××    (固定資産)     ×××
-特別損失- -共用資産-
   (固定資産)     ×××
-A資産グループ-
   (固定資産)     ×××
-B資産グループ-
 
 
 
当社はA~Cの3つの事業部から構成されており、共用資産Yとあわせて現在、減損会計の適用を検討中である。次の〔資 料〕を参考にして、次の諸問に答えなさい。
問1 A~C資産グループのうち減損を認識すべき資産グループの減損損失はいくらか。
問2 共用資産Yを含む大きな単位の減損損失はA~C資産グループの減損損失よりいくら多いか。
問3 減損損失計上に係わる仕訳を示しなさい。
問4 共用資産の正味売却価額が260百万円だった場合、減損損失計上に係わる仕訳はどのようになるか。この場合、A資産およびC資産の各グループの回収可能価額は、それぞれ320百万円、480百万円とする。
 
〔資 料〕
1. 各資産グループ及び共用資産の帳簿価額等
帳簿価額 割引前将来
キャッシュ・フロー 回収可能価額
A資産グループ 400百万円 440百万円 360百万円
B資産グループ 1,000百万円 800百万円 740百万円
C資産グループ 600百万円 640百万円 580百万円
共用資産Y 500百万円 - -
2. 共用資産Yを含む大きな単位について
共用資産YはA~C資産グループに係わる資産であり、共用資産Yを含む大きな単位について割引前将来キャッシュ・フロー及び回収可能価額の合計を計算すると1,960百万円、1,800百万円であった。
3. 減損の兆候
(1) A資産グループ、B資産グループに減損の兆候がみられた。
(2) 共用資産Yを含む大きな単位についても減損の兆候がみられた。
4. 減損損失を各資産グループに配分する必要がある場合は、帳簿価額を基準とすること。
 
 
 
   解  答   
問1 B資産グループ 260百万円
問2 減損損失増加額 440百万円
問3 (単位:百万円)
  (減損損失) 700    (固定資産)     440
-共用資産-
   (固定資産)     260
-B資産グループ-
 
問4 (単位:百万円)
  (減損損失) 700    (固定資産) 240
-共用資産-
   (固定資産) 80
-A資産グループ-
   (固定資産) 260
-B資産グループ-
   (固定資産) 120
-C資産グループ-
 
 
   解  説                                                       (単位:百万円)
1. A~C資産グループの減損の認識判定及び減損損失の測定
帳簿価額 割引前将来C・F 判定*1 回収可能価額 減損
A資産グループ 400 440 認識しない 360 -
B資産グループ 1,000 800 認識する 740 260*2
C資産グループ 600 640 - 580 -
*1 判定は帳簿価額>割引前将来C・Fで行う。
*2 帳簿価額1,000-回収可能価額740=減損損失260
 2. 共用資産Yを含む大きな単位についての減損の認識判定及び減損損失の測定
減損の認識判定及び減損損失の測定は、B資産グループの減損計上前の状態で行う。
(1)  減損の認識判定
帳簿価額:資産グループ(A400+B1,000+C600)+共用資産Y500=2,500
割引前将来C・F:1,960
帳簿価額2,500>割引前将来C・F1,960
よって、減損を認識する。
(2)  減損損失の算定
帳簿価額2,500-回収可能価額1,800=700
(3) 減損損失の増加額
共用資産Yを含む大きな単位700-B資産グループ260=440
3. 減損損失の仕訳
共用資産の正味売却価額は問題文中不明であり、減損損失の増加額440は共用資産の帳簿価額500を超えないため、減損損失の増加額は全額、共用資産に配分される。
4. 共用資産の正味売却価額が260百万円だった場合
(1)  共用資産の減損限度額
帳簿価額500-正味売却価額260=240
(2)  各資産グループに配分すべき減損損失の増加額と配分額
減損損失の増加額440-共用資産配分額240=200
B資産グループは回収可能価額まで減損処理しているため、A・C資産グループに対して配分する。
A・C資産グループに配分する増加額200× A資産グループ簿価400
 
A簿価400+C簿価600
A・C資産グループに配分する増加額200× C資産グループ簿価600
A簿価400+C簿価600
 
 
 
 
 
1. 共用資産の帳簿価額を各資産または資産グループに配分する方法
 
共用資産がある場合、その帳簿価額を合理的な基準により各資産または資産グループに配分し、各資産または資産グループごとに減損処理を行うことができる。
 
2. 減損処理手順
 
共用資産をその帳簿価額を合理的な基準により各資産または資産グループに配分
 
 
減損の兆候 各資産または資産グループに減損の兆候が見られる。
 
 
減損損失の認識の判定 各資産または資産グループで判定
 
 
減損損失の測定と計上 各資産または資産グループで測定・計上する。
3. 減損損失の測定・計上
 
(1)  減損損失の測定
減損損失:帳簿価額 - 回収可能価額
(2)  会計処理
(減損損失) ×××    (固定資産)     ×××
-特別損失- -共用資産-
   (固定資産)     ×××
-A資産グループ-
* 減損損失は、合理的な配分基準により、共用資産と各資産または資産グループに配分する。
 
 
当社はA~Cの3つの事業部から構成されており、共用資産Yとあわせて現在、減損会計の適用を検討中である。次の〔資 料〕を参考にして、減損損失計上に係わる仕訳を示しなさい。なお、共用資産Yについては、その帳簿価額を各資産グループの帳簿価額を基準として各資産グループに配分して、減損手続を適用する。
 
〔資 料〕
1.  各資産グループ及び共用資産の帳簿価額
A資産グループ: 400百万円 共用資産Y: 500百万円
B資産グループ: 1,000百万円
C資産グループ: 600百万円
2.  共用資産Yの帳簿価額を配分した後のキャッシュ・フロー等
割引前将来キャッシュ・フロー 回収可能価額
A資産グループ 450百万円 380百万円
B資産グループ 1,300百万円 1,200百万円
C資産グループ 900百万円 850百万円
3.  A、Bの各資産グループに減損の兆候がみられた。
 
 
   解  答   
(単位:百万円)
  (減損損失) 120    (固定資産)     24
-共用資産-
   (固定資産)     96
-A資産グループ-
 
   解  説                                                       (単位:百万円)
1.  共用資産の簿価の配分
資産グループ 配分前帳簿価額 共用資産簿価の配分 配分後帳簿価額
A 400 100*1 500
B 1,000 250*2 1,250
C 600 150*3 750
*1 共用資産簿価500× 400 =100
400+1,000+600
*2 共用資産簿価500× 1,000 =250
400+1,000+600
*3 共用資産簿価500× 600 =150
400+1,000+600
2.  A~C資産グループの減損の認識判定及び減損損失の測定
資産グループ 配分後帳簿価額 割引前将来C・F 判定*1 回収可能価額 減損
A 500 450 認識する 380     120*2
B 1,250 1,300 認識しない -     -
C 750 900 - -     -
*1 判定は帳簿価額>割引前将来C・Fで行う。
*2 帳簿価額500-回収可能価額380=減損損失120
3.  減損損失の共用資産とAグループの固定資産への配分
問題文中帳簿価額以外の合理的な基準は提示されていないので、帳簿価額により配分する。
共用資産:減損損失120× 100 = 24
400+100
Aグループ資産:減損損失120× 400 = 96
400+100
 
 
 
 
 
1. のれんの分割
 
のれん(営業権や連結調整勘定・借方残高)も共用資産と同様、単独ではキャッシュ・フローを生成しないが、他の複数の資産または資産グループのキャッシュ・フロー生成に寄与する資産である。
のれんは資産グループより大きな単位である複数の事業単位にまたがって取得されることがある。このような場合、のれんの帳簿価額を合理的な基準により各事業単位に分割する。
事業部 資産グループ
甲 B
のれん
乙 E
 
2. 各事業単位に配分されたのれんの減損手続
 
(1)  のれんを加えたより大きな単位で減損処理を行う方法(原則)
のれんが関連する複数の資産または資産グループにのれんを加えたより大きな単位で減損処理を行う。
(2)  のれんの帳簿価額を各資産または資産グループに配分する方法(例外処理)
のれんの帳簿価額を合理的な基準により各資産または資産グループに配分し、各資産または資産グループごとに減損処理を行う。
 
 
3. のれんを加えたより大きな単位で減損処理を行う方法
 
(1)  減損処理手順
のれんを含まない資産または資産グループごとに、減損の兆候・減損損失の認識の判定・減損損失の測定と計上を行う。
 
 
減損の兆候 のれんを含むより大きな単位について減損の兆候が見られる。
 
 
減損損失の認識の判定 のれんを含むより大きな単位で判定
 
 
減損損失の測定と計上 のれんを含むより大きな単位で測定・計上する。
 
(2)  減損損失の配分
のれんを加えることによる減損損失総額
各資産または資産グループの減損損失 のれんを加えることによる
減損損失増加額
 
各資産または資産グループに配分 のれんに配分 *
* ただしのれんの帳簿価額を超過する場合は、各資産または資産グループに合理的な基準により配分する。
(3)  会計処理
① のれんの帳簿価額>減損損失増加額
(減損損失) ×××    (営業権)     ×××
② のれんの帳簿価額<減損損失増加額
(減損損失) ×××    (営業権)     ×××
   (固定資産)     ×××*
-A資産グループ-
   (固定資産)     ×××*
-B資産グループ-
* のれんの帳簿価額を超えた減損損失増加額を、各資産または資産グループに合理的な基準により配分した額
 
 
4. のれんの帳簿価額を各資産または資産グループに配分する方法
 
(1)  減損処理手順
のれんをその帳簿価額を合理的な基準により各資産または資産グループに配分
 
 
減損の兆候 各資産または資産グループに減損の兆候が見られる。
 
 
減損損失の認識の判定 各資産または資産グループで判定
 
 
減損損失の測定と計上 各資産または資産グループで測定・計上する。
(2)  減損損失の測定・計上
① 減損損失の測定
減損損失:のれんを含む帳簿価額 - 回収可能価額
② 会計処理
(減損損失) ×××    (営業権)     ×××*1
   (固定資産)     ×××*2
-A資産グループ-
   (固定資産)     ×××*2
-B資産グループ-
*1 減損損失は、のれんに優先的に配分する。
*2 のれんの帳簿価額を超えた減損損失増加額を、各資産または資産グループに合理的な基準により配分した額
 
 
当社はX・Yの2つの事業部から構成されており、のれんとあわせて現在、減損会計の適用を検討中である。次の〔資 料〕を参考にして、事業部Yに係わる減損損失計上に係わる仕訳を示しなさい。なお、のれんについては、その帳簿価額をX・Y事業部の帳簿価額を基準として分割して、原則的処理方法により減損手続を適用する。
 
〔資 料〕
1. 各事業部及びのれんの帳簿価額
X事業部: 600百万円 営業権: 400百万円
Y事業部: 1,000百万円
2. 事業部Yの帳簿価額等
事業部YはA~Cの資産グループから構成され、帳簿価額、割引前将来キャッシュ・フロー、回収可能価額は以下のとおりである。 (単位:百万円)
帳簿価額 割引前将来C・F 回収可能価額
A資産グループ 200 210 200
B資産グループ 300 250 240
C資産グループ 500 700 650
のれんを含む事業部Y全体 1,250 1,200 1,150
3. A、Bの各資産グループ及びのれんを含む事業部Y全体に減損の兆候がみられた。
 
 
   解  答   
(単位:百万円)
  (減損損失) 100    (営業権)     40
   (固定資産)     60
-B資産グループ-
 
   解  説                                                       (単位:百万円)
1.  のれんの簿価の配分
事 業 部 配分前帳簿価額 のれん簿価の配分 配分後帳簿価額
X 600 150*1 750
Y 1,000 250*2 1,250
*1 営業権簿価400× 600 =150
600+1,000
*2 営業権簿価400× 1,000 =250
600+1,000
2.  Y事業部のA~C資産グループの減損の認識判定及び減損損失の測定
資産グループ 帳簿価額 割引前将来C・F 判定*1 回収可能価額 減損
A 200 210 認識しない - -
B 300 250 認識する 240 60*2
C 500 700 - - -
*1 判定は帳簿価額>割引前将来C・Fで行う。
*2 帳簿価額300-回収可能価額240=減損損失60
3.  のれんを含む事業部Yの減損処理
(1) 減損の兆候:あり
(2) 減損認識の判定:
のれんを含む事業部Yの帳簿価額1,250>のれんを含む事業部Yの割引前将来C・F1,200
よって減損損失を計上する。
(3) 減損損失の測定
帳簿価額1,250-回収可能価額1,150=100
(4) 減損損失増加額
のれんを含む事業部Y全体の減損損失100-B資産グループの減損損失60=40
減損損失増加額40<営業権の帳簿価額
よって減損損失増加額40は営業権に配分する。
 

 

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最終更新:2012年04月27日 11:12