悪魔達の侵略20(20130104)


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魔女四人がシールドを盾にしてレッドデスサイズとの攻防を繰り広げる中、ティファレットは白く濁りながらも透き通った液体の入った瓶をクレイルへ手渡した。
「クレイル、ここからはあなたの判断に任せるわ」
「一体何のことです? それは……?」
「極秘薬と呼んでいる魔力の薬よ。それはあなたの父、マグナさんがイヴ姉さんとの結婚した後に私の母、セフィラに納品したものなの」
「父さんが作った薬……?」
「えぇ。触れて分かるでしょうけど、魔女の魔力を見事に封印しているものよ。マグナさんの傑作でしょうね」
「何故、今ここに?」
「セフィラお母様が、ね。レッドデスサイズを倒すのはあなただって」
それを聞いて、クレイルに緊張が走る。
「御婆様が?」
「そう。私たちではなく、あなたしかいないのだそうよ。だから……それを渡せって」
「でも、この極秘薬は父さんから御婆様へ向けて作ったものでしょう? 僕に適合するかどうか――」
クレイルの言葉を聞いて、ティファレットが首を横に振る。
「あなたが来た時、『寿命を一年よこせ』なんて言って、魔力を奪ったのを覚えてる?」
その言葉に、クレイルはあのときの苦しみを思い出し、頷く。
「あれ、魔力を奪ったのは確かだけど、自分の寿命を増やそうだなんて思ってなかったのよ」
「まさか……」
それを聞いて、クレイルが手に持つ瓶を見つめる。
「そう。あなたから奪った魔力を、その極秘薬に混ぜ込んだの。あなたに適合するように」
クレイルの心に、自分で理解できない、くすぐられる様な感覚が生まれた。
あの行為はクレイルを拒絶したものではなかったのだ。
魔女の息子と言えど、あの領域に踏み込むのは許されないんだと、そう思っていた。
だから近づかないように、仕打ちを受けさせたのだと――
「それにね、あぁ見えてもやっぱり少し嬉しかったんだと思う。素直じゃないのよ、あの人」
ティファレットが笑いながら言う。
「フフフ……そのようですね」
クレイルも、それに答えるように、瓶を強く握り、笑った。

「本当に、いいのね? もう一度言うけど……こうやって手を汚すのは、私たちの仕事なのよ?」
ティファレットの言葉に頷くクレイル。
その瞳にはもう、微塵の迷いも見られない。
「ありがとうございます。でも、これは僕がやります。妹二人とレオルスのことをお願いします」
その答えを聞いて、今度はティファレットが頷く。
「わかったわ」
ティファレットにそう伝えると、クレイルはテンペストをそばへ寄せた。
「……クレイル?」
召喚獣をそばへ寄せたことに疑問を抱くティファレット。
クレイルはそのまま、静かに獣へ語りかけた。
「テンペスト、すまない。また君の力を借りたいんだ」
「…………」
「……ん?」
すると、テンペストがクレイルの言葉に、反応するようにゆっくりと口を動かし
『構わない』
一言、静かにそう言った。
「え?」
「召喚獣が言葉を……?」
ティファレットとクレイルが同時に言葉を漏らす。
だがクレイルは慌てることもなく、急に言葉を話したテンペストがおかしくて話を続けた。
「言葉、話せる様になったのかい?」
『あの悪魔……言語を変換とか言ってただろう? それを真似したら出来た』
「真似しただけで?」
「初めて聞いたわ、召喚獣のそんな技術……」
『おかしいならやめるが』
「フフ……構わないよ。便利なこともあるだろう」
『だが、これでも変に魔力を消耗するらしい。あの羽根から魔力供給を受けた今しか使えないだろう』
「十分だ」
『さて、どうする? 獣人化する程度の事も、今なら出来るかもしれんが――』
「いや――そうじゃない」
クレイルが躊躇することなく、瓶のふたを開け、隣にテンペストを座らせる。
「クレイル、何を? その極秘薬はきっと、あなたにしか適合しないわよ?」
その様子を見て、ティファレットがクレイルに声をかけるが、すでにクレイルは極秘薬を口にし、半分を飲み込んだ。
そして残った半分をテンペストの口へ運ぶ。
「まさか……やめなさい! 魔力の波長が合わなければ――」
慌てるティファレットに、クレイルは首を横に振って答える。
「テンペストの契約は、僕の魔力を使っている。極秘薬で同時に二つの魔力を増強し、そこから一つになる!!」
そう言い放つと同時に、クレイルとテンペストの身体の内側から激しい光が発生する。
その場にいた全員がその光に巻き込まれ、全ての視界を輝く光に奪われた。

「クレイル……?」
不安そうなティファレットの声。
その声に反応する様に、草の上に瓶が落ちる。
「なっ――!!」
やがて視界が戻り、全員がクレイルのその姿に目を奪われる。
「お兄ちゃんと、テンちゃん!?」
「そんなことが可能なの……?」
「召喚獣と融合したのか!?」
姉妹とレオルスも、それを見て驚愕する。
発生した強力な魔力によって巻き起こされた煙が、ゆっくりとクレイルからほどけていく。
頭部にはテンペストの持つ大きな耳と角、背中には空を駆けるための翼が生えていた。
同様に、長く美しいテンペストの白い尻尾までもが、クレイルに備わり、ゆっくりと開いたクレイルの目の下にはテンペストの顔の白い模様が、黒へと色を変えて現れた。
その場に立つ、ただそれだけのクレイルから放たれる魔力量は、計り知れない物になっていた。
「ヒヒヒ、やるじゃないか。さすがはイヴの子だ」
ゲブラーがクレイルを見て笑う。
魔女たちが全員、目を奪われるほどの存在。
レッドデスサイズの存在が霞むほどに、その立ち姿は迫力あるものだった。
「ティファレット……あの子の身体、大丈夫なの?」
思わず攻撃の手を止めたケセドも、クレイルを見て言う。
「分からない……。あの極秘薬自体、お母様しか理解できない物だから――」
ティファレットがそこまで言って、瞬時にシールドへと目を向けた。
クレイルのその姿と圧倒的な力を感じているのは魔女たちだけではない。
レッドデスサイズの鎌はそれを見て強敵として判断したのか、溢れる魔力の存在に反応し、魔女たちの目の前でさらにその大きさを増した。
「まずいッ! みんなもう一度シールドを――」
だがその言葉に反応する魔女を嘲笑(あざわら)うかの様に、レッドデスサイズの一振りが、強化されたシールドを切り裂いた。

「GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」

「テンペスト」
『何だ』
「いけるかい?」
『いつでも』
「ありがとう」
シールドを破壊した獣の咆哮を合図に、クレイルはレッドデスサイズへ飛びかかった。

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